フリーランスの手取り|税金・保険料の計算方法と経費の計上方法を解説!

フリーランスの手取り|税金・保険料の計算方法と経費の計上方法を解説!

フリーランスとして働くにあたり、重要となってくるのは手取り金額の計算です。会社員とは異なり受け取る金額がそのまま手取り金額にはなりませんので、自分で計算して把握しておく必要があります。

特にフリーランスは後から税金や保険料など様々な支払いをしなければなりません。自分の見込み手取りを計算して、支払いに必要な金額を残さなければなりません。手取り金額を把握する重要性を理解し、具体的な計算方法について理解していくようにしてください。

フリーランスの手取りはどのように計算するのか

最初にざっくりとフリーランスの手取り金額の計算方法を解説します。今回のご説明の基本となる部分ですので、必ずここから理解するようにしてください。

手取り金額の大まかな計算方法

フリーランスの手取りは以下の式で計算するとここでは定義します。

手取り金額 = 売上金額 – (社会保険料 + 税金 + 経費)

この他にも任意保険などが差し引かれる計算方法はありますが、それらは今回の手取りの計算では考えないこととします。フリーランスとして必ず必要となる最低限の支出だけで手取りを考えていきます。

計算式では会社員と大きく変わらないが手取りは変化

上記で示した式から分かるかもしれませんが、フリーランスの手取り金額の計算式自体は会社員とあまり大きな違いはありません。ただ、実際はフリーランスの手元に残る金額は、会社員とは大きく異なる傾向があります。

手取り金額が異なる理由は様々ありますが、大きく影響するのは
「社会保険料の算出式の違い」「計上される経費の違い」「個人事業税の存在」
となっています。この点を理解せずに会社員のようにフリーランスの手取り金額を計算すると、各種支払い時に痛い目を見ることになってしまいます。

なお、細かな算出式は後ほどご説明しますが、フリーランスの場合は会社員の手取りの8割程度になってしまいます。ざっくりと会社員とフリーランスでは手取り金額が異なる点を頭に入れておいてください。

フリーランスが手取りを算出するために知っておきたい計算式

フリーランスの手取り_img1
それでは具体的にフリーランスが手取りを算出するために利用する計算式を解説します。フリーランスで働いているとどれも利用する可能性がありますので、今すぐ利用しない場合でもどのような計算式なのか頭の中に留めておくようにしましょう。

社会保険料:国民健康保険料

国民健康保険は居住地域によって保険料が異なる仕組みです。一定の割合だけで計算されるものではありませんが、概算としては所得の7%から11%程度です。
居住地域によって具体的な数値が異なりますが、国民健康保険料は以下の式で算出されます。

国民健康保険料 = 平等割 + 均等割 + 所得割

まず、平等割は全ての世帯が負担しなければならない保険料です。一世帯あたりいくらと定められています。

続いて均等割は被保険者数に基づいて計算されます。自分以外にも配偶者や子どもなどの被保険者がいれば、こちらの均等割の保険料が高まります。

最後に所得割は算定基礎所得金額に基づいて算出されます。こちらは所得税などの算出に利用される所得とは異なり、国民健康保険料を算出するための数値です。

なお、注意点としてフリーランスの場合は保険料を全額本人が負担しなければなりません。会社員の場合は会社が半分負担してくれましたが、フリーランスの場合は、保険料を全額負担しなければならないことを頭に入れましょう。

社会保険料:国民年金保険料

国民年金保険料は加入者全員が同じ金額の支払いをします。毎年保険料の見直しが行われますが、2021年4月から2022年3月までは月額16,610円です。所得金額によって左右されません。

なお、国民年金保険料は先の分までまとめて納付できる仕組みとなっています。最大で翌々年の3月まで納付できます。収入に余裕があった年度は先払いしておける仕組みなのです。

そのためこの制度を利用すると、手取り金額の調節が可能です。貯金しておいて毎年納める方法はありますが、事前に支払っておいて翌年度の手取りを増やすことも可能です。

しかも、先払いしておくと少しだけですが割引を受けられます。手取り金額の調節とともに、割引が受けられますのでメリットもあります。

社会保険料:介護保険料

介護保険も居住地域によって保険料が異なる仕組みです。上記でご説明した国民健康保険料の1/4程度だと考えておきましょう。
居住地域によって具体的な数値が異なりますが、介護保険料も以下の式で算出されます。

介護保険料 = 平等割 + 均等割 + 所得割

算出式は先ほどの「国民健康保険料」と同じです。平等割は全ての世帯が負担しなければならない保険料。均等割は被保険者数に基づいて計算される保険料。所得割は算定基礎所得金額に基づいて算出される数値です。

なお、介護保険料は加入者の中に40歳以上の人が含まれる場合にのみ支払いが発生します。フリーランス本人や加入者となる家族に40歳以上の人がいなければこちらの保険料は手取りから差し引かれません。

税金:所得税

所得税は国に納めなければならない税金です。1年間の所得に応じて税額が定められ、フリーランスの手取りを大きく左右するものです。

フリーランスの中でも所得税の課税対象になるのは、1年間の所得が38万円以上の人です。多くのフリーランスが対象になるはずですので、所得税は納めなければならないものと捉えておきましょう。

なお、日本では累進課税制度が採用されていますので、所得が多くなると税率が高くなります。具体的に適用される税率は以下のとおりです。

 

課税所得 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超330万円以下 10% 97,500円
330万円超695万円以下 20% 427,500円
695万円超900万円以下 23% 636,000円
900万円超1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

参照:No.2260 所得税の税率|所得税|国税庁

上記からも分かるとおり、所得が多くなるにつれて税率が高くなるようになっています。なお、控除額とは算出された税額から差し引かれる金額を指しています。
例えば課税所得が400万円の場合、支払うべき所得税は以下のように計算できます。

所得税 = 4,000,000円 × 20% – 427,500円 = 372,500円

課税所得が400万円の場合、所得税として約37万円を差し引いて手取り計算をしなければなりません。なお、平成25年から令和19年までの確定申告は、所得税の他に復興特別所得税と呼ばれる税金を納付しなければなりません。そのため手取り金額は、ここで計算したものよりも少し下がってしまいます。

税金:住民税

住民税は都道府県や市区町村に納めなければならない税金です。こちらも1年間の所得に応じて税額が算出されますが、税額の算出式は居住地域によって少し異なります。
まず、住民税には定額の「均等割額」と所得に応じた「所得割額」があります。これらを合計した金額が一年間の住民税となります。

居住地域によって具体的な数値はやや異なりますが、均等割額と所得割額は以下の式で算出されます。

均等割額 = 都道府県税 + 市区町村税
所得割額 = 課税所得金額 × 所得割税率

均等割額は居住地域によってやや異なります。ただ基本的には都道府県民税は1,000円で市区町村税は3,000円ですので、合計で4,000円です。一部の地域では少々高くなったり安くなったりする場合があります。また、一時的に変化する場合もありますので、居住地域のWebサイトなどで詳細を確かめる必要があります。

また、所得割税率も基本的には10%です。そのため手取りを計算する際には、4,000円+課税所得額×10%を差し引くようにしましょう。

税金:個人事業税

個人事業税は個人で事業をしている場合に納めなければならない税金です。会社員では発生せず個人事業主やフリーランスにのみ発生します。個人向けの法人税のようなイメージを持つと良いでしょう。
個人事業税は以下の式で算出されます。

個人事業税 = (課税対象額-290万円) × 個人事業税率

ただ、個人事業税が発生するのは、課税対象額が290万円を超えてからです。駆け出しのフリーランスなど課税対象が290万円以下の場合は、手取りの計算に個人事業税の計算をする必要はありません。

個人事業税の税率は業種によって業種によって異なり、3%~5%に決定されています。例えばIT系のフリーランスは5%と定められています。

繰り返しですが課税対象額が290万円以下のフリーランスの場合、個人事業税はゼロ円かマイナスになってしまいます。この場合は個人事業税を納める必要がありません。

なお、個人事業税は開業届を出していなくても発生します。「個人事業主」は開業届を出した人のみが名乗れますが、個人事業税は開業届を出していなくとも個人で事業をしていれば課税対象となります。「自分は開業届を出していないから関係ない」と考えていると、予想以上に手取りが下がってしまう可能性があり注意が必要です。

参照:個人事業税 | 税金の種類 | 東京都主税局

税金:消費税

消費税は商品の販売やサービスの提供などに対して発生する税金です。フリーランスの取引も大半は消費税が発生します。

ただ、基本的には消費税が発生するものの「小規模事業者に係る納税義務の免除」と呼ばれる制度があります。こちらは「2年前の課税対象額が1,000万円以下の場合消費税の納付が免除される」というものです。そのため、フリーランスの場合はこちらの条件に当てはまる場合が多々あります。

参照:国税庁|第4節 納税義務の免除

納付しなければならない場合は、消費税額を算出して手取りから差し引かなければなりません。皆さんもご存知の通り消費税は基本的に10%です。一部定率減税が適用されますが、10%の消費税を預かっておいて納めなければならないのです。

皆さんに注意しておいてもらいたいのは、消費税はあくまでも預かっている税金である点です。売上金額には含まれますが、後ほど納税しなければなりません。売上金額がかさ増しされているような状況になりますので、手取り金額の算出にあたり特に意識しなければならないのです。

関連記事:【確定申告】フリーランスは消費税の申告が必要?消費税の関係について解説!

フリーランスが手取りを増やすために重要なのは意識的な経費の計上

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フリーランスが手取りを増やすためには、売上を上げるか上記の差し引かれる金額を減らすかのどちらかです。売上を上げるのは簡単にできるものではなく、考えるべきは差し引かれる金額を減らすことでしょう。

実は経費の計上を正しくすれば、フリーランスは手取りを増やせる可能性があります。続いては意識的な経費の計上についてご説明します。

経費を計上すると税金や保険料が下がる

社会保険料や税金を下げるためには、課税対象額を適切に減らすことが重要です。これを適切に減らすためには、抜け漏れなく経費の計上をしなければなりません。

先に経費のご説明をしておきます。経費とは、業務を継続するにあたり必要な物やサービスに対して支払った費用を指します。例えばエンジニアをしているフリーランスは、パソコンや専用ソフトウェアの購入が経費に該当します。また、どのようなフリーランスでもお客様先に出張が発生すれば、交通費や宿泊費などの出張費用が経費に該当します。

さて、フリーランスの場合、上記のように発生した経費は売上高と相殺できるようになっています。そしてこの相殺された結果の金額が、課税対象額として社会保険料や税金の算出に利用される仕組みとなっています。

例えば売上高300万円のフリーランスが、事業のために100万円の経費を支払ったとします。この時の課税対象額は300万円から100万円を差し引いた200万円となります。この200万円を利用して、社会保険料や税金が算出されます。

厳密にはやや異なりますが、経費を計上すれば課税対象額が下がります。結果、社会保険料や税金が下がり手取り金額を多くできます。

経費の計上方法

先ほどの説明で「経費が多いほどお得だ」と感じた人は多いでしょう。確かに経費が多いと課税対象額は下がりますが、経費にできるものには限りがあります。

上記でも触れたとおり経費は「業務を継続するために必要な」支払いが該当します。どのような支払いでも経費にできるわけではありません。例えば友人とランチをした費用は、事業に関係ないため経費となりません。

また、どの程度の経費が発生したのかどうかは、確定申告で申告する必要があります。支払った金額を所定の項目で分類分けして、申請しなければなりません。

さらに、確定申告で経費を申請する際は、基本的に領収書やレシートが必要です。一部これらがなくとも経費に認められるものがありますが、証拠があって初めて経費に計上できると考えましょう。

関連記事:フリーランスの経費とは?経費を確定申告して賢く節税しよう!
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まとめ

フリーランスは売上高から様々なお金が差し引かれます。会社員のように差し引かれた状態で支給されるわけではありませんので、どの程度差し引く必要があるのか自分で計算し把握しておく必要があります。

なお、手取りを計算するために必要となる社会保険料や税金は、確定申告した際の課税対象額から算出されます。そのためフリーランスはしっかりと経費を計上しておけば差し引かれる金額を小さくできます。ただ、経費にできるのは事業に関係あるものだけですので、不必要なものを計上してはいけません。

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