CPS(サイバーフィジカルシステム)とは?IoTやDXとの違いについても易しく解説

CPS(サイバーフィジカルシステム)とは?IoTやDXとの違いについても易しく解説

日本はもちろん、世界的にIoTが続々と導入されている時代です。センサーなどを活用して情報を収集し分析したり、屋外から室内の家電製品を操作したりできるようになりました。皆さんも何かしらのIoT機器を利用しているのではないでしょうか。

そのような時代からさらに進化して、現在はCPS(サイバーフィジカルシステム)と呼ばれるものが利用されるようになっています。普及の過程であり、理解できていない人は多いと思われますが、物理的な世界とデジタルな世界を組み合わせた概念です。今回はCPSとはどのような概念であるのか解説します。

CPS(サイバーフィジカルシステム)とはなにか

最初にCPSとはどのような概念であり、今まで普及してきたIoTやDXとはどのように異なるのかを解説します。

CPSの概要

CPS(サイバーフィジカルシステム)とは、物理的な世界(フィジカル世界)とデジタル的な世界(サイバー世界)を結びつけ、相互に影響するシステムを指します。一般的に、システムはコンピューターとネットワークから構成されますが、CPSでは物理的な世界が加えられることが特徴です。

まず、デジタル的な世界は、物理的な世界で起きた幅広い活動を取り入れることができます。デジタル化された情報を分析するなどして、物理的な世界の最適化を目指すのです。人間では気が付かないようなことでも、システムが分析することによって、最適解を提案できます。

また、物理的な世界はデジタルな世界で分析された情報などを取り入れて、最適な状態を保つことが可能です。例えば、交通量をシステムに連携することで、信号の切り替えタイミングを操作するようなことが考えられます。データの取得にとどまらず、デジタルな世界からのフィードバックを活かす仕組みになっていることが、CPSの大きな特徴だと考えましょう。

IoTやDXとの違い

CPSと間違えられやすい考え方に、IoTやDXが挙げられます。これらとの違いについて、簡単にまとめると以下のとおりです。

CPSとIoTの違い

CPSもIoTも、物理的な世界とシステムを繋ぎ合わせた仕組みには違いありません。そのような観点では、共通の目的を持った概念だといえます。ただ、実現に向けたアプローチや応用分野には違いがあるため注意しなければなりません。

IoTは、センサーやネットワークに接続したデバイスから、データを収集してシステムへ連携します。また、システムではデータを集約したり分析したりして、新たなことに役立てる流れです。ただ、あくまでもデータの収集や連携が主な目的であり、直接的に物理環境を操作するものではありません。

しかし、CPSは上記で解説した通り、物理環境との相互作用を重視しています。例えば、監視しているデータに問題があるならば、システムから機器を制御するようなことがあるのです。データを踏まえて、直接的に物理世界を操作するものであるかどうかが、大きな違いだと考えましょう。

CPSとDXの違い

CPSとDX(デジタルトランスフォーメーション)は、どちらも技術革新や進歩を目指したものです。ただ、重視している観点や適用範囲には違いがあるため、必ず理解しなければなりません。

CPSは、解説してきたとおり物理的な世界とデジタル的な世界を結びつけるシステムを指します。物理的な世界をモニタリングして、その結果を踏まえてデジタル的な世界で処理し、物理的な世界へとフィードバックするのです。それぞれが相互に関与することが大きなポイントです。

それに対してDXは、組織がビジネスプロセスや企業文化、カスタマーエクスペリエンスなどをデジタル化するための取り組みです。ビジネスモデルそのものをデジタルの力で変革し、新たな価値を生み出し、競争優位を獲得するための取り組みを指します。つまり、DXは特定のテクノロジーではなく、デジタル技術を活用した組織全体の変革を意味するのです。

日本でCPSが注目される背景

日本ではCPSの導入が増えている状況です。今回の記事で詳細を初めて理解した人がいるかもしれませんが、確実に浸透しています。このような状況について「なぜ日本でCPSが注目されているのか」と気になる人は多いでしょう。

相互に関与し合う仕組み

日本に限らず世界でCPSが注目されている背景には、CPSが持つ特徴があると考えられます。具体的には、データの収集だけではなく、物理的な世界の最適化まで実現できることが背景にあるでしょう。人間の「直感」ではなく、データに基づいていることが重要です。

例えば、上記でも紹介した通り、信号機のシステムは交通量を分析して最適なタイミングで切り替えが可能です。また、天候や事故の状況など、複数の要因を組み合わせて最適なタイミングを導くこともできます。今まではタイミングが固定されていたものが、柔軟に変更できるようになるわけです。

また、そもそも、システムの導入が活発になっていることも背景にあるでしょう。今まではシステム化されていなかった世界でも、システム化されるようになっています。このような活用場所の増加も、CPSが世界的に注目される背景だと考えられるのです。

導入コストの低下

導入できる場面が増えたことにより、CPSの需要は格段に高まっています。そのため、CPSの実現に必要な機器やシステムの価格が下がり、導入しやすくなっているのです。このような金銭的な負担の軽減も、CPSが普及する背景にあると考えられます。

一般的に、システムの導入コストは、企業にとって大きな負担です。高機能なシステムは何百万円から何千万円もの負担が求められ、簡単に導入できるものではありません。また、CPSではセンサーなどの設置も必要となるため、さらに多くの費用負担が生じてしまいます。

ただ、需要と供給のバランスが整ってきたことで、以前よりも少ない費用で導入できるようになりました。結果、さらなるCPSの普及を後押ししています。

CPSを採用する3つのメリット


CPSを採用することにはいくつものメリットが存在しています。それらの中でも、特に注目しておきたいメリットをピックアップして解説します。

デジタルツインの実現

CPSのように物理的な世界の情報を収集することで、デジタルツインを実現できることがメリットです。デジタルツインとは、現実の世界から収集した情報を踏まえて、コンピュータ上に再現する技術を指します。コンピュータ上に再現できれば、現実に起きるであろうことを、コンピュータで想定することができます。

例えば「雨が降った場合、人の流れがどのように変化するか」ということを知りたいとしましょう。本来、これを知るためには、実際に雨が降った日に大量の情報を集めるしかありません。いつ雨が降るかは明確ではないため、情報収集に必要な期間を見積もることは不可能です。しかし、CPSである程度の情報を収集していれば、それを元に雨が降った場合のシミュレーションができます。実際に雨が降る日を待たなくとも、コンピュータ上で近しい環境の再現や人の流れの確認まで可能なのです。

CPSによってデジタルツインを実現すれば、検証が難しいことについても簡単に検証できるようになります。より短時間で正確な判断を下せるようになることがメリットです。

生産の最適化

製造業においては、CPSを採用することで生産の最適化を実現できることがメリットです。人間だけでは判断が難しい部分においても、システムがデータに基づいて判断を下すことで、より良い選択ができるようになります。

例えば、生産ラインで軽微なトラブルが発生している場合、それが解消されるまでの対処法を導くことが可能です。特定のラインで製造する数を増減させたり、人員の追加配置を提案したりします。これにより、生産ライン全体や目標とする生産数に影響を与えることなく、生産を続けることが可能です。

また、品質管理システムとCPSを組み合わせることによって、不良品をいち早く検知することもできます。不良品が多発したり流通したりすると、企業として問題を抱えかねません。しかし、CPSにより最適化しておけば、トラブルを未然に防げます。

判断の自動化

CPSはデータの収集や分析に長けているため、判断の自動化を実装できることがメリットです。「絶対に間違いのない判断」は不可能ですが、人間よりも素早く正確な判断を下してくれる可能性が高まります。

具体的に、CPSは物理的な世界から収集したデータをリアルタイムにシステムへ連携することが可能です。このデータを特定のタイミングで処理させることで、判断の自動化につなげられます。人間がデータを理解して判断すると時間を要しやすいですが、コンピュータで完結すれば短時間です。

また、AIなどと組み合わせておくことで、数値を分析して根拠に基づいた判断ができます。特定の人間が持つ「経験」や「勘」に依存するものではなく、統計学などの理論を踏まえることが可能です。一般的には、学問的な判断のほうが信憑性が高いため、CPSは「より正確な判断」を自動的に下してくれます。

日本におけるCPSの導入事例


日本でもCPSは導入が続いていて、いくつもの業界や業種で確認できる状態です。今回は、それらの中から代表的なものを紹介します。

公共交通機関

公共交通機関を可能な限り適切に運行するためCPSが利用されています。人の位置や流れなどを観測して、それらを踏まえた運行を実現するのです。電車やバスはルートと時刻が決まっているため、これら以外の部分で問題を解決します。

例えば、駅に設置されたセンサーを活用すれば、どの階段が混雑しているかの把握が可能です。これを踏まえて、エスカレーターの「上り」「下り」をどのように設定すれば、人の流れが良くなり運行に影響しないかを導き出せます。人間では判断が難しい内容ですが、CPSならばシステムによって論理的に判断できるのです。

商業施設

商業施設でも、各種センサーで人の流れや量を把握して、それを踏まえた最適化がおこなわれています。これにより、利用者は快適に買い物でき、施設は経費を最小限に抑えられるのです。

例えば「施設のどこに人がいるか」を把握できるようにすることで、空調の操作を自動化できます。人が多い部分は空調を強くして、人が少ない部分は弱くするのです。これにより、利用者は快適に過ごせるようになり、なおかつ無駄な経費が発生しません。

自動運転

自動運転を実現するために、CPSは多用されています。地図を把握するだけではなく、自動運転にあたっては、車の周辺に人が居るかどうかなどの情報を常に処理しなければなりません。状況によっては、車を停止させる必要があるなど、システムで処理した結果をリアルタイムに反映させることが求められます。

しかも、自動運転では処理の遅れが事故などに繋がりかねません。そのため、大量のセンサーを利用して多くの情報を収集し、それを高速で処理することが重要です。情報が不足していたり、処理が遅延したりすると、大事故が発生する可能性があります。

そのため、自動運転にあたってはCPS以外にも5Gなど別のテクノロジーが利用されています。複数のテクノロジーを組み合わせることで、CPSの良さが発揮されることもあるのです。単独で利用される事例が多いですが、自動運転のように組み合わせることがある点も抑えておきましょう。

まとめ

物理的な世界とデジタル的な世界を接続する、CPSについて解説しました。少しずつ普及している考え方であり、実際に活用されるケースも増えています。日常生活や工業など幅広い分野で活用されていて、これからはさらに導入が広がっていくはずです。

CPSは情報の収集だけではなく、物理的な世界とデジタル的な世界の相互作用が求められます。その点で、IoTやDXとは異なった概念だと理解しましょう。間違えられることもありますが、重要なポイントとして理解しておくことが大切です。

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admin