テックリードとは?役割・必要スキル・キャリアパスを徹底解説

テックリードとは?役割・必要スキル・キャリアパスを徹底解説

近年、システム開発において「テックリード」と呼ばれる役割が注目されるようになりました。まだまだ浸透しきっているポジションではありませんが、耳にしたことがある人は増えているでしょう。実際にテックリードとともに仕事をしたことがある人もいるはずです。

少しずつ認知が広がってきているポジションとはいえ、「テックリードは具体的に何をしているのか」と疑問に思っている人も多いでしょう。今回は、テックリードとはどのようなポジションであり、具体的な役割や必要なスキルにはどのようなものがあるのかについて解説します。

テックリードとはどのような役割か

テックリードは、ソフトウェア開発プロジェクトにおいて技術面のリーダーを担うポジションです。主に設計や技術選定、品質管理など、エンジニアリングの観点からチームを牽引し、開発の方向性を決定します。単なるエンジニアとしての役割にとどまらず、プロジェクトを成功に導くために、さまざまな付随業務も担当することが特徴です。

また、テックリードは現場で発生する問題に対して、技術的な判断を下さなければなりません。メンバーが技術面で悩んだ際には、判断をサポートし、開発がスムーズに進むように調整します。コードレビューやアーキテクチャ設計、開発環境の整備などを指導し、品質を高めながら生産性の向上にも貢献するポジションです。

テックリードと似たポジションとの違い

テックリード以外にも、近年はさまざまなポジションが登場しています。中でも、テックリードと似たポジションは混同されやすいため、それぞれの違いを正しく理解しておきましょう。

CTOとの違い

CTOは、企業全体の技術戦略や技術文化の構築を担う役職です。CEOなどと並び、経営層として任命されるポジションに該当します。一方、テックリードは開発チームを現場でリードする実務担当者です。経営層としてプロジェクトに参画するポジションではありません。

つまり、CTOは長期的な技術方針や経営判断に関与するポジションであるといえます。対して、テックリードはCTOなどが決定した方針をもとに、現場で具体的な開発を指示・推進するポジションであることが違いです。

エンジニアリングマネージャーとの違い

エンジニアリングマネージャーは、チームメンバーの育成や評価、リソース管理などを担当します。対してテックリードは、高度な設計や技術選定など、技術面での意思決定が中心です。つまり、「人と組織のマネジメント」に重点を置くか、「技術面の意思決定」に重点を置くかという違いがあります。

ただ、両者には明確な役割の違いがあるものの、連携しながら活動するポジションには違いがありません。チームの成果と成長を促進するという共通の目的を持って業務を推進します。

プロジェクトマネージャーとの違い

プロジェクトマネージャーは、特定のプロジェクトにおいて予算や納期、進捗などの全体管理を担うポジションです。一方、テックリードは技術的な観点からプロジェクトに貢献し、基本的には進捗管理などには関与しません。

プロジェクトマネージャーは「いつ、何をこなすか」という計画や進行管理を重視することがポイントです。しかし、テックリードは「どのように作るか」という技術的手段の決定に重きを置く、という点で違いがあります。

ITアーキテクトとの違い

ITアーキテクトは、システム全体の設計や技術基盤の最適化を専門とするポジションです。テックリードと似た役割を持ちますが、アーキテクトはプロジェクトを横断して全体設計に注力する傾向があります。個々の実装に直接関わるのではなく、大きな視点でシステム全体を設計する立場だと考えてよいでしょう。

一方、テックリードは設計だけでなく、実際の開発実務にも関与します。そのため、両者の違いは、技術的な関与の範囲や業務の深さと考えられるでしょう。ITアーキテクトは「全体最適」に焦点を当てるのに対し、テックリードは「現場最適」にも携わるという点で役割が異なるのです。

テックリードの仕事内容


続いては、具体的にテックリードの仕事内容について解説していきます。なお、活躍する環境によってテックリードに与えられる役割は多少異なる場合がある点に注意してください。

リーダーとして全体を取りまとめる

テックリードは、技術面のリーダーとして開発チーム全体を取りまとめる役割を担います。プロジェクトの技術的な方向性を明確にし、メンバーが迷わず進められるようガイドラインを提示しなければなりません。

また、開発における優先順位の決定や、技術的な課題の解決もサポートします。全体として、開発メンバーの作業が円滑に進行するよう支援することが、テックリードの重要な仕事です。

設計方針や業務フローを確定する

設計方針や業務フローの確定も、テックリードの重要な仕事です。要件を踏まえ、システム全体のアーキテクチャやモジュール構成を決定します。また、それらを実現するための技術選定も担当しなければなりません。

さらに、業務フローを作成する際には、業務要件と技術的制約のバランスを取ることが求められます。場合によっては、業務要件がそのままでは技術的に実現できません。そのような状況でも、無理のない仕様へ落とし込む判断力が必要です。

品質を担保する

品質の確保も、テックリードが担当すべき重要な仕事の一つです。開発ガイドラインの整備やコードレビューの実施によって、一定の品質基準を維持します。また、各種テストやCI/CDの導入を主導し、不具合の早期発見や発生の防止に取り組みます。

さらに、自身が品質を担保するだけでなく、品質向上に向けた取り組みをチーム内に浸透させる役割も担います。品質に関するルール作りやそれらの展開、徹底までを任せられるのです。

タスクの振り分けやスケジュールを管理する

テックリードは、技術的な観点からタスクの振り分けやスケジュールを管理します。ただ、ここでの管理はプロジェクトマネージャーのような全体的なものではありません。あくまで技術的な視点から「誰にどのタスクを割り当てるべきか」を判断するのみです。

開発においては、チームメンバーのスキルや負荷状況を常に把握しておく必要があります。そのうえで、適切に役割分担を指示しなければなりません。また、開発スケジュールを守るために、技術的なリスクを洗い出し、早期に対応するというマネジメントも重要な役割となります。

窓口となり問い合わせなどに対応する

外部のステークホルダーや他部門との技術的な窓口として、テックリードが活躍することがあります。設計や仕様に関する問い合わせや、技術的な判断の一次対応を担当するのです。

もし個々のエンジニアが個別に対応してしまうと、情報が一元管理できなくなってしまいます。これを回避するため、テックリードが窓口となって取りまとめる役割を果たすのです。また、問い合わせの内容を踏まえ、どのエンジニアに作業を割り当てるべきかといった判断も下します。

テックリードに必要なスキル


テックリードには多くのスキルが求められます。ここでは、特に重要となるスキルをピックアップして解説します。

高度な技術力

テックリードには、幅広い分野において高度な技術力が必要です。たとえば、プログラミングやシステム設計、アーキテクチャ構築に関する深い知識と経験が求められます。技術選定や設計判断を下すためには、このような広範な技術領域に精通していることが必要不可欠です。

また、こうしたスキルは座学で得られるものだけではなく、実務経験に基づいて身につけていることが前提といえます。メンバーからの技術的な相談に応じる場面も多いため、現場ごとに適した技術知識を備えておくことが重要です。他にも、品質を担保する観点からも、コードレビューに関する基礎知識や技術も欠かせません。

リーダーシップ

チームを牽引する立場である以上、リーダーシップも不可欠なスキルです。単に技術を理解しているだけでなく、主体的に行動し、周囲を巻き込んで物事を前に進めるスキルが求められます。

特に開発プロジェクトでは、意見の対立や人間関係の摩擦など、チーム内での衝突が生じかねません。こうした場面で、テックリードは高い技術力とリーダーシップを発揮することが求められます。適切な方向性を提示し、信頼関係を築けるスキルが必要となってくるのです。

マネジメント力

プロジェクトマネージャーではないものの、一定のマネジメントスキルも求められます。開発の進捗状況やリソースの把握・管理を通じて、効率的にプロジェクトを推進する役割を担うためです。

具体的には、メンバーのタスク振り分けやスケジュールの調整、リスクの早期把握などが挙げられます。チームメンバー一人ひとりの特性や状況を把握し、無理のない計画を立てるとともに、開発リソースを最適に配分できる能力が必要です。

分析力・決断力

課題へ直面した際に、原因を分析し、解決策を見出す能力が強く求められます。たとえば設計や技術選定、運用の場面で、限られた情報から最適な判断を下すことなどが考えられるのです。

その際、必要な情報が不足していれば、何が足りていないのかを即座に察知することが求められます。また、それらの不足した知識を、迅速に補完するスキルも必要です。

加えて、自らが下した判断に責任を持ち、最後までやり抜く覚悟やスケール感も備わっていると良いでしょう。自分を信じつつ、状況の変化に応じて柔軟に方針を修正できる対応力も、テックリードに欠かせない資質です。

テックリードのキャリアパス

テックリードのキャリアパスは様々な選択肢が考えられます。ここでは、代表例を紹介していきます。

CTO

CTOは、企業全体の技術戦略を立案・遂行する経営層のポジションです。テックリードとして技術的な判断やチーム運営の経験を積むことで、将来的にCTO候補としての素質が養われるでしょう。

個別のプロジェクトにとどまらず、会社全体を見渡せれば、自身のキャリアを広げられます。特に、開発現場だけでなく経営や事業全体の視点を持てるようになると、CTOへキャリアアップできる可能性があるでしょう。

VP of Engineering(VPoE)

VPoEは、エンジニア組織全体の運営や成長戦略を担うポジションです。テックリードが技術寄りの役割であるのに対し、VPoEはマネジメント重視のポジションと位置づけられます。

VPoEを目指すならば、技術領域での経験を積むだけでは知識が不足しがちです。チームビルディングや評価制度の設計、組織文化の醸成などにも関心を持ち、スキルを伸ばす必要があります。技術だけでなく、組織運営や人材育成に軸足を置きたいなら、CTOではなくVPoEがおすすめです。

エンジニアリングマネージャー

エンジニアリングマネージャーは、現場のチームとメンバーをプロセスの観点から支える役割です。テックリードが技術を中心にチームを牽引するのに対し、エンジニアリングマネージャーは評価・育成・キャリア支援といった人的マネジメントを通じてチームを支えます。

ある程度の技術理解を前提としながらも、マネジメントの立場から効率的なチーム運営を実現するキャリアであり、より「人」と「仕組み」に関心を持つ人に適した役割です。

まとめ

新しいポジションともいえるテックリードについて解説しました。今までは「エンジニアリーダー」などと呼ばれていたポジションが独立したものです。自身が高いスキルを持ち、他のエンジニアを牽引することが求められます。

テックリードのような役割がいることで、複数人のエンジニアが関係するプロジェクトも円滑に進められます。必要となるスキルの種類は多くレベルも高いですが、キャリアの選択肢として考えてみてください。

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admin