フリーランスエンジニアのお金事情 ~NISA、iDeCoの活用は?~

フリーランスエンジニアのお金事情 ~NISA、iDeCoの活用は?~

一般的に、フリーランスは収入が安定しづらい働き方とされています。会社員は、業績にかかわらず給料が支給されますが、フリーランスは案件がないと収入がないからです。収入の安定性について、日頃から心配しているフリーランスは多いでしょう。

また、短期的なお金の確保だけではなく、中長期的なお金の確保も必要です。今回は、将来的に安定した資産を形成するために、フリーランスエンジニアのお金事情やNISAやiDeCoなどの資産運用について解説します。

フリーランスエンジニアは収入に波が生じやすい

説明するまでもないかもしれませんが、フリーランスエンジニアは収入に波が生じやすい働き方です。まずはその点について、理解を改めておきましょう。

継続的な収入が保証されない

フリーランスエンジニアの特徴として、収入が安定しないことが挙げられます。会社員ならば、法律などに基づいて安定した収入が保証されていますが、フリーランスエンジニアはそうではありません。自分自身で、収入源を確保する必要があり、その観点ではお金事情が良くないのです。

例えば、会社員として働いていると、自分自身に割り当てられる案件が少なくても収入は確保できます。日本の法律では、簡単に給料を下げたり解雇したりできないため、会社員であることは非常に大きなメリットなのです。会社員でありながら、収入が不安定になるケースは、歩合の大きい会社など一部に限られます。

逆に、フリーランスエンジニアは、このような収入の仕組みではありません。案件を獲得して、働いた分だけ収入を得られます。つまり、案件がなければ収入は途絶えてしまい、非常に不安定なお金事情となるのです。

社会保険料の負担が大きい

フリーランスエンジニアとして働く場合、社会保険料を全額自分で負担しなければなりません。会社員の場合は、会社と折半して支払っていますが、フリーランスエンジニアは完全な自己負担です。収入が今までと同じならば、純粋に2倍の社会保険料を納めなければなりません。

社会保険料を納める額が多くなると、それだけ手元に残るお金が少なくなってしまいます。つまり、収入金額が同じなのであれば、フリーランスエンジニアの方がお金事情は悪くなるでしょう。会社員時代と同じようにお金を利用すると、思ったよりも手元にお金がない状況に陥るかもしれません。

なお、社会保険料は分割で支払う方法とまとめて支払う方法があります。フリーランスエンジニアは、案件期間の都合などで収入のタイミングがまちまちでしょう。毎月、安定して収入が入る仕組みではないならば、支払いのタイミングや金額を調節することで最小限の負担に抑えられます。

フリーランスエンジニアの資産形成ならNISAやiDeCo


フリーランスエンジニアとして、資産形成したいと考えるならば、NISAやiDeCoなどの制度を活用すべきです。それぞれの概要と、フリーランスエンジニアがどのように活用すれば良いのか解説します。

フリーランスは自身での資産形成が重要

フリーランスは、会社員とは異なり、財形貯蓄などの制度を利用して資産形成することができません。そのため、金融商品などを活用して、意図的に資産形成を続けていくことが求められます。税金の支払いなどにだけ目を向ける人が多いですが、資産形成も意識するようにしましょう。

なお、資産形成にあたっては、証券会社で口座を開設するなどの事前準備が必要です。どのような準備が必要となるかは、利用する金融商品によって変化するため、適切なものを選択するようにしましょう。

基本的にはNISAとiDeCoがおすすめ

フリーランスが将来に備えてお金を残したいならば、NISAiDeCoなどの制度を活用することが大切です。これらは、中長期的に資産形成するための制度で、フリーランスはもちろん、会社員でも利用している人が多くいます。証券会社や銀行も積極的におすすめしているため、ぜひ活用してもらいたいものです。

これらの制度を活用すると、一般的な金融商品への投資より税金面で優遇措置を受けられます。例えば、NISAを利用すると、投資の利益について課税されません。手元に残るお金を左右する部分であるため、このような制度を積極的に利用すべきです。

NISAとは何か

NISAとは、株式や投資信託などの金融商品に投資した際、事前に手続きしておくことで利益が非課税になる制度です。2014年に始まった「少額投資非課税制度」で、年間の投資枠は120万円に制限されるものの、5年間は非課税保有期間として課税されません。本来は、課税所得であるため、非課税で金融商品へと投資できることは、利回りを大きく高められます。

年間120万円と余裕を持った金額

NISAの年間投資枠は120万円に設定されていて、これを高いとみるか低いとみるかは人によりけりです。ただ、フリーランスの資産形成という観点では、十分な金額なのではないでしょうか。月間で10万円まで投資できることになり、フリーランスの平均的な売り上げや利益を加味すると、これを超えられる人は少ないでしょう。

仮に、年間120万円の上限まで5年間投資を続けるならば、合計で600万円を投資することになります。必ずしも利益が出るとは限りませんが、非課税であるため、利益はプラスアルファですべて手元に残すことが可能です。

なお、120万円は年間の投資額合計であるため、厳密には資産の合計とは限りません。例えば、80万円の株式を購入し売却、その後40万円の投資信託を購入するとNISAとしての資産は40万円だけです。

利益は全額非課税

NISAとして投資することで、利益は全額非課税になります。本来ならば、利益に対して20.315%の税金が課されますが、NISAの場合は特例的に納める必要がありません。そのため、より利益を出すことにフォーカスした資産運用にチャレンジできることが特徴です。

また、NISAのように金融商品での資産運用では、利益をそのまま再投資することがあります。この時、利益に対して課税されていると、再投資できる金額が少なくなり、利回りが下がってしまうのです。複利で資産を増やしていくため、大きな損失になりかねません。

利益について課税されない点は、元本割れのリスクを軽減する非常に魅力的な特徴です。フリーランスの資産形成は、NISAを積極的に活用してみましょう。

2024年から新制度へ移行

現在のNISAは、上記で解説した通りのルールですが、2024年からルールが変更されます。今まで以上に、資産形成しやすい仕組みとなるため、具体的な違いを抑えておきましょう。

まず、現在は非課税保有期間が5年間ですが、これが無期限に変更されます。つまり、NISAで投資した範囲内については、中長期的な運用でまとまった利益が出ても、一切課税対象となりません。小さい利益をコツコツと積み上げるような金融商品が、今まで以上に選択しやすくなるでしょう。

また、年間投資枠は最大120万円から最大360万円まで拡大されます。フリーランスで、最大限活かせる人は限られるかもしれませんが、より大きな資産形成を目指す制度に切り替わるのです。

iDeCoとは何か

iDeCoとは、個人型確定拠出年金と呼ばれるもので、個人が任意で加入できる私的な年金制度です。自分自身で申し込みして、掛け金を支払ったり運用方法を選択したりしなければなりません。一般的な年金とは異なり、自分自身の責任で加入することが特徴です。ただ、国民年金基金連合会が運営しているものであり、この点では一般的な年金と大差ありません。

老後資金の積立が目的である

金融商品の中でも、iDeCoは老後の資産形成を目的としています。原則として、60歳までは解約できない制度であるため、加入すると実質的には強制的に積立しなければなりません。

また、中途解約できない仕組みというだけではなく、60歳まで引き出せないことも重要です。中長期的に資産を準備するものであるため、緊急で現金が必要な時には利用できません。フリーランスエンジニアが加入する場合は、毎月の収入を踏まえて、余裕を持った金額に設定することが重要です。

なお、iDeCoは解約できるケースが紹介されることがありますが、認めてもらうことは至難の技です。フリーランスエンジニアとして働き収入があるならば、不可能だと考えておきましょう。

節税効果に役立つ

iDeCoに加入する場合、掛金は全額所得控除の対象となります。課税所得が減少するため、当該年度の所得税と翌年度の住民税が減少する仕組みです。節税目的で加入するフリーランスエンジニアは多いですが、60歳まで解約できないこととのバランスを理解して加入しなければなりません。

また、iDeCoで掛金を運用している場合、仮に運用益が発生しても非課税として扱われます。一般的な資産運用では、利益に対して税金が課されますが、iDeCoでは例外的に税金が課されません。この点は、一般的な個人年金と異なるため、注目しておいた方が良いでしょう。

加えて、老齢給付金として受け取れるお金であるため、退職金や一般的な年金として扱われます。これらも特別な優遇措置が用意されているため、フリーランスエンジニアを辞めている場合でも、少ない税金負担で受け取りできるのです。

元本保証の商品があり

iDeCoは金融商品でありますが、元本保証の商品が存在しています。これは、ローリスク・ローリターンの金融商品で掛金が100%保証されるものです。もし、元本割れ、つまり手元に残るお金が減ってしまうリスクを許容できないならば、このような商品が候補に上がります。

NISAのような資産運用や資産形成を目指すものは、どちらからというとミドルリスク・ミドルリターンが多くなっています。リターンは小さくなりますが、将来へ地道に備えられる商品としては良い選択肢です。

フリーランスは小規模企業共済もおすすめ


フリーランスが活用できる制度として「小規模企業共済制度」と呼ばれるものがあります。国の機関である中小機構が運営する制度で、中小企業やフリーランスなど、小規模な事業主が加入できるものです。加入しておくことで、フリーランスをやめる際に、退職金という形で共済金を受け取れます。

掛け金を幅広く選択できる

掛金は、毎月1,000円から70,000円の範囲で選択できるようになっていて、これら以外に手数料は発生しません。短期間で解約すると元本割れが生じますが、途中解約にも対応しているため、急にまとまったお金が必要な場合にも役立ちます。基本的には、将来的な資産形成のために利用しますが、有事に備えて資産を分割しておくという意味合いもあるのです。

掛金は全額所得控除の対象となる

小規模企業共済の大きなメリットとして、掛金が全額所得控除の対象になることが挙げられます。つまり、小規模企業共済に支払ったお金は、資産でありながら、フリーランスの経費として計上できるのです。経費が増えるため、所得税や住民税を下げられます。

なお、掛金の所得控除に注目することが多いですが、受け取り時にも効果があることを追加で理解しましょう。一括受け取りの場合は退職所得、分割受け取りの場合は公的年金等の雑所得扱いとなります。どちらも、税制上の優遇があるため、一般的な所得よりも少ない税金で済むのです。

まとめ

フリーランスエンジニアが認識しておきたい、資産形成について解説しました。会社員とは異なり、案件の受注がなくなると収入が途絶えてしまいます。雇われている限り、収入を得られる働き方とは大きく異なるため、将来や万が一を見据えた準備が大切です。

将来的な資産形成を意識するならば、フリーランスエンジニアでも加入しやすいNISAやiDeCoの活用をおすすめします。どちらも税制などの優遇措置が設けられているため、資産を残すという観点では非常に役立つものです。金融機関に預けるよりも、金融商品を活用したほうが良いでしょう。

また、中長期的に現金を残しておきたいならば、中小企業共済へ加入する選択肢もあります。フリーランスエンジニアが自分自身で退職金を用意できる制度であるため、こちらも必要に応じて利用することが重要です。

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