JavaフレームワークのSpring Bootについて解説

JavaフレームワークのSpring Bootについて解説

Spring BootはJavaで開発されたフレームワークです。Javaのフレームワークは数多く存在していますが、それらの中でもSpring Bootは需要が高く安定した支持を得ているものです。すでに利用しているエンジニアも多いのではないでしょうか。

人気の高まり続けるJavaフレームワークですが、まだすべてのエンジニアに理解されているわけではありません。今回は人気の高まるSpring BootとはJavaフレームワークの中でもどのようなものであるのか解説します。

Spring Bootとは?

Spring Bootは先に開発された「Spring Framework」の機能を使い分けるために開発されたJavaフレームワークです。既存のSpring Frameworkは機能数が非常に多いものであり、高性能である反面で使いづらいものでした。学習コストが高く、簡単には採用できないJavaフレームワークだったのです。

そこで、Spring Frameworkの一部の機能を取り出して、Spring Bootと呼ばれるJavaフレームワークが開発されました。ゼロから開発されたJavaフレームワークではないため、基本的な部分はSpring Frameworkを踏襲していると考えて差し支えありません。

ただ、Spring Bootは機能が抜粋されているため、Spring Frameworkほど初期設定が複雑ではないなどのメリットがあります。詳細については後ほどご説明しますが、一部だけが取り出されたことで、さまざまな部分が簡略化できるようになったのです。学習コストだけではなく、Javaフレームワークとしての導入コストも下がったJavaフレームワークだと考えておきましょう。

また、Spring BootではテンプレートエンジンとしてThymeleafを採用しています。記述方法に特徴があるため学習コストは発生してしまいますが、理解すれば効率よくWebアプリケーションの画面を開発可能です。

SpringとSpring Bootの違い


そもそも、Spring FrameworkはWebアプリケーションの開発だけを想定したものではなく、クラウドアプリケーションやモバイルアプリケーションなど幅広い開発に対応しています。非常に高機能なフレームワークではありますが、機能数が増えすぎたことで肥大化している状態です。動作面でも学習コスト面でも使い勝手良いとはいえません

それに対して、Spring Bootは上記のSpring Frameworkから最低限、Javaアプリケーションを開発する部分だけを抽出したJavaフレームワークです。複雑な機能や設定に関連するソースコードは取り除き、Webアプリケーションを効率よく開発することに特化しています。これはSpring FrameworkとSpring Bootの大きな違いです。

一般的に高機能なフルスタックフレームワークは好まれる傾向にあります。習得しておくことで幅広い開発に対応できるようになるからです。ただ、Spring Frameworkは機能数が増えすぎたことで、もはや全貌を把握することが難しくなってしまいました。そのため、その状況を改善するためにSpring Bootが提供されるようになったのです。

Spring Bootの特徴

Spring BootはSpring Frameworkとして提供されているソースコードを利用しやすくするために、汎用性を高めパッケージ化したものです。今まで「Springプロジェクトは複雑すぎて使いこなせない」などと考えていた人でも、使いこなしやすい内容となっています。そのようSpring Bootの特徴を踏まえて、どのようなメリットやデメリットがあるのか解説します。

Spring Bootのメリット

Spring Bootのメリットはいくつもありますが、例えば以下が挙げられます。

  • Spring Frameworkよりも導入しやすい
  • 導入している案件数が多い
  • Gradleでプロジェクトをビルドできる
  • REST APIでAPIを実装できる

Spring Bootの大きなメリットは繰り返しですがSpring Frameworkよりも導入のハードルが低いことです。導入に必要な設定が限られていて、Javaについてある程度のスキルがあれば導入できます。また、Javaを開発する際に多用される「Eclipse」にはEclipse Spring Tool Suite (STS) と呼ばれるツールがあり、これを利用することで開発環境を簡単に構築可能です。

また、Spring Frameworkよりも導入しやすいことから、Spring Bootを導入している案件が多数あります。Spring Bootを習得しておくことで幅広い案件に参画可能となり、活躍の幅を広げられる<点もメリットです。 他にも、オープンソース自動ビルドシステムであるGradleを利用できるため、ビルド管理を効率化できるメリットがあります。REST APIの実装にも対応<しているため、REST APIでGradleを起動するような仕組みを実装しておけば、自動的に必要なアプリケーションをビルド可能です。

Spring Bootのデメリット

Spring Bootにはデメリットがあり、例えば以下が挙げられます。

  • DI(Dependency Injection)の概念が難しい
  • Spring Bootを採用してもなお学習コストは高い

Javaフレームワークの中にはDIと呼ばれる概念を採用しているものがあります。依存性の注入と呼ばれるもので、Spring Bootを使いこなすためには理解しておきたい概念です。ただ、これは非常に難しい考え方であり、完璧に理解しようとするとSpring Bootの理解を妨げてしまいます。

また、Spring BootはSpring Frameworkよりは機能数の少ないものではありますが、それでも高機能なフレームワークです。全体を理解するためには多くの時間を要してしまい、学習コストの高いフレームワークに分類されてしまいます。

Spring Bootで作られたサービス3選


Spring Bootで開発されたサービスは多数ありますが、具体的に公開されている例は限られています。今回は一部をピックアップしてご紹介します。

学内ポータルサイト

Spring BootはWebアプリケーションの開発に多用されるため、大学のポータルサイト作成に活用されています。ポータルサイトは情報を表示するだけではなく、学部などに応じて表示を変更しなければなりません。ログインから表示内容の変更まで、幅広くSpring Bootの機能で実装されています。

なお、シラバスに関するWebアプリケーションなど、Spring Bootを採用することで学内のシステムを一括して開発可能です。今回の事例でも最終的には単純に情報を発信するポータルサイトだけではなく、学生と双方向にやりとりできるアプリケーションを実装しています。

ECサイト

Webアプリケーションの代表格であるECサイトもSpring Bootを活用した実装が可能です。ECサイトには高いセキュリティ性能が求められますが、Spring Bootを利用すればその要件に対応できます。

基本的には上記と同様にWebアプリケーションとしてECサイトも開発可能です。ただ、ユーザログインなどの機能に加え、決済関連の機能を実装しなければなりません。Springにはセキュリティに関するプロジェクトが存在していて、このようなセキュリティ性能が求められるアプリケーションも実装しやすくなっています

また、メリットでも解説したとおり、Spring BootはAPIを実装しやすいJavaフレームワークです。そのため、ECサイトのように大量のデータをやり取りするアプリケーションに適しています

業務効率化に向けた管理ツール

WebブラウザをUIとした業務アプリケーション開発にも利用できます。近年は業務アプリケーションについてもWebアプリケーション化することが増えてきているため、Spring Bootを採用すれば多くの業務効率化ツールが開発可能です。

具体例としては「ExcelとVBAで実装していたツールのWebアプリケーション化」や「Accessで利用していたツールのWebアプリケーション化」などがあります。Spring Bootはデータベースとのやり取りを得意としたフレームワークであるため、データ処理や細かな表示を伴う業務アプリケーションの実装におすすめです。

Spring Bootでできないこと、不得意なこと

Spring Bootは高機能なJavaフレームワークではありますが、どのような実装にも適しているわけではありません。続いてはSpring Bootではできないことや不得意なことについても解説します。

人工知能の実装

Spring BootはJavaフレームワークであるため、人工知能の実装には適していません。Javaはそもそも処理速度が高速なプログラミング言語ではなく、人工知能のような高速な数値計算には不向きなのです。

また、Spring Bootは多機能なJavaフレームワークとはいえども、人工知能の実装を想定したものではありません。Spring Frameworkはいくつものプロジェクトから構成されていますが、それらの中に人工知能は含まれていないのです。想定されていない用途での利用は望ましくなく、人工知能の開発は諦めるようにしましょう。

なお、人工知能はJavaではなくPythonでプログラミングするケースが大半です。プログラミング言語によっても向き・不向きがあるため、どのようなものでもSpring Bootで実装しようとすることはおすすめできません。

ゲーム開発

Javaは各種ゲーム開発に利用されるプログラミング言語ですが、Spring Bootはゲーム開発には適していません。ゲーム開発には適したフレームワークが存在していて、積極的にSpring Bootを利用して開発する必要はないのです。

また、Androidアプリ開発にはJavaが利用されますが、Spring Bootを利用してアプリ開発やゲーム開発をする必要はありません。フレームワークを利用することで状況が悪化する可能性も高く、ゲームの開発には利用しないようにすべきです。

Spring Bootの将来性


Spring Frameworkは現在でも開発が続けられていて、同時にSpring Bootも開発が続けられています。フレームワーク自体が進化していることから、継続的にSpring Bootは利用されているため、将来性は明るいでしょう。現在の需要がなくなるとは考えにくく、将来的にも利用されるJavaフレームワークです。

もちろん、Spring Frameworkの方針変更などによって、提供される機能が変化する可能性はあります。そのような変化があると、Spring Bootの需要も変化するでしょう。ただ、需要が少し変化しても、安定して利用されているSpring Bootの将来性には大きく影響しないと思われます。

とはいえ、Spring Bootの上位互換にあたるJavaフレームワークが公開されないとは言い切れません。現時点では将来性の明るいフレームワークですが、トレンドは常にキャッチして大きな変化がないか確認するようにはすべきです。

Spring Bootエンジニアの需要

Javaフレームワークの中でも人気が高く需要が高まり続けている状況です。このような状況はこれからも続くと予想されるため、Spring Bootエンジニアが活用できる場面も増えるでしょう。需要は高まり将来性は明るいと考えて差し支えありません。

また、Spring Bootで注目しておきたいことは、すでに開発されているアプリケーションが多数あることです。一度開発されたアプリケーションは数年から10年程度は利用するため、そのようなアプリケーションが使われている限りはSpring Bootエンジニアの需要があります。

まとめ

Javaフレームワークの中でも代表的なSpring Bootについて解説しました。Spring Frameworkの機能を抜粋したフレームワークで、Spring Frameworkよりも導入のハードルが下がっています。Springプロジェクトのフレームワークを使いこなせない人はSpring Bootからチャレンジしてみると良いでしょう。

機能は抜粋されていますが、それでも機能数の多いフレームワークです。そのため、全体を理解するにはある程度の学習コストが必要になってしまいます。ただ、理解しておくと活躍の場が広がるため、Javaエンジニアであれば習得したいフレームワークです。

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admin