.NETの資格とは?資格の種類、それぞれの難易度・勉強方法を解説
.NETとは?
21世紀を目前にした2000年、マイクロソフトは「Microsoft .NET」なるものを発表します。
2000年といえば、あれだけ騒がれた2000年問題が、大山鳴動して鼠一匹で済んだ年でした。さらに、Windows2000とMeがリリースされ、Googleが日本で検索サービスを開始しました。プレステ2が発売されたのも、イチローがマリナーズに入団したのもこの年でした。
インターネットという言葉も市民権を得、携帯電話もインターネットによるサービスに移行しつつある年でした(i-modeの登場は1999年)。しかしながら、ネットの回線はようやく常時接続やブロードバンドという言葉が使われ始めたころで、その主役はADSLでした。動画のストリーミング配信はまだ先のことです。
閑話休題。
さて、「Microsoft .NET」です。マイクロソフトが何を言い出したかというと、コンピュータだけでなくあらゆる情報機器をインターネットに接続して、誰もがいつでもどこからでもあらゆるデータを利用できるようにするということでした。
これを実現するために、特定のCPU、特定のOS、特定のプログラミング言語などから独立した共通言語基盤やソフトウェアの開発・実行環境、さらには、データ交換形式、そして通信方式までを提唱したのが「Microsoft .NET」でした。
その後は、マイクロソフトの思惑通りに「Microsoft .NET」の全てが標準の技術基盤にはなりませんでしたが、現在ではJavaと並んで、アプリケーション開発・実行プラットフォームの双璧となっています。呼び名も2010年ころからは単に「.NET」と呼ばれるようになりました。
ときどき、「.NET」は言語だと思っている人がいるようですが、前述の通り、「.NET」は大きな枠組みのことです。そのなかにいくつかのプログラミング言語(C#やVB.NETなど)が含まれていますが、「.NET」自体が言語ではありません。
もともとの「Microsoft .NET」には、データ表現形式のXMLや通信方式のSOAPなども含まれていましたが、なかでも最も重要なのが「.NET Framework」と呼ばれるアプリケーションの開発・実行環境です。
そして、実際にアプリケーションを開発するための統合環境(ツール)が「Visual Studio .NET」であり(現在のバージョンでは「.NET」が省略されています)、その中核ともいえる言語にC#やVB.NETがあるのです。
なお、「.NET Framework」のもとで開発されたアプリケーションは基本的にWindowsで動作します。JavaのようにLinuxでもWindowsでも動くというものではないということには注意が必要です。
.NETの資格一覧と難易度
.NETはマイクロソフトが提唱しているものなので、関連する資格もマイクロソフトが認証しています。しかし、単純に.NETの資格があるというわけではありません。はじめに、マイクロソフトの認定資格の概要を見ておきましょう。なお、下記の情報は2019年2月22日現在のものです。
マイクロソフトの資格試験は、「マイクロソフト認定プロフェッショナル(MCP)試験」と呼ばれています。IT関連の各種プロ向けには、下記3つのMicrosoftテクニカル認証があります。
マイクロソフト認定ソリューションエキスパート(MCSE)、マイクロソフト認定ソリューションデベロッパー(MCSD)、マイクロソフト認定ソリューションアソシエイト(MCSA)。
さらに、より入門者向けのレベルに、マイクロソフト テクノロジー アソシエイト(MTA)があります。
そして3つの資格それぞれに、さらにいくつかの認証が含まれています。例えば、MCSE認証の場合は、ビジネスアプリケーション、クラウドプラットフォームとインフラストラクチャー、コアインフラストラクチャー、データ管理と分析などというようにです。
各種資格の難易度を紹介したサイトによれば、マイクロソフトの認証試験の難易度は、試験によって「やや易しい」から「やや難しい」とレベルに開きがあるようです。それもそのはずで、本コラムを書いている時点で140近い試験があるのです。
数多いMicrosoft テクニカル認証のなかでソフトウェア開発者に最も関係があると思われるのは、マイクロソフト認定ソリューションデベロッパー(MCSD)です。そしてこのなかにあるのは「アプリビルダー」だけです。
他に「.NET」関連の試験としては、70-483: Programming in C#や、70-486: Developing ASP.NET MVC Web Applicationsなどがあります。これらを単品で受験するという方法もあります。
以下はMCSDアプリビルダーに関して詳しく見ていきましょう。
MCSDアプリビルダー
MCSDアプリビルダーに含まれるキーテクノロジーは、Azure、
C#、SharePoint、オフラインクライアント、Visual Studio、.NET、HTML5です。
MCSDアプリビルダーの受験資格を得るには、基礎となるスキル保有の証しとして、前述のマイクロソフト認定ソリューションエキスパート(MCSE)のうち、「MCSA:ウエッブアプリケーション」または「MCSA:ユニバーサルWindowsアプリケーション」どちらかの資格を保有していなければなりません。
そのうえで、指定されたいくつかの試験のなかから、いずれか一つに合格することが認証の条件です。
ただし、マイクロソフトの公式サイトにおいても、指定された試験が既に実施されていなかったりするので、受験の際はどの試験が受験可能であるか、よく調べて申し込みをすることが重要です。
MCSDアプリビルダーの難易度・合格率
前述のように、Microsoftテクニカル認証には4つの資格がありますが、MCSEとMCSDが上位資格、MCSAとMTAが下位(つまりエントリーレベル)の資格です。
各種資格の難易度はMCSEとMCSDが普通、MCSAとMTAがやや易です。合格率は公表されていないようです。
MCSDアプリビルダーの勉強時間
合格するためにどれくらい勉強すればよいかは、スタート時のスキルレベルに大きく左右されます。合格体験談によれば、ある程度の実務経験があれば1日30分程の独学で1か月程度が相場のようです。
学習の密度を上げれば半月、じっくりやるなら2~3か月というところでしょうか。
.NET資格のメリット
医師や弁護士などと違ってIT系の仕事に資格は必須ではありません。仕事を得るに当たって重要視されるのは実務経験と業務知識です。資格保有者が圧倒的に有利になることはあまりないようです。
しかしながら、実務経験も業務知識も十分でない若い人にとっては、資格保有は、その分野のスキルを第三者が認定してくれることになるので、無資格者より有利になるといえるでしょう。
.NET資格の試験スケジュール
試験は、ピアソンVUEのサイトから申し込みます。パソコンを用いた試験なので、試験会場、日時は受験者が選ぶことができます。受験料は、各試験21,000円(税抜き)ほどでした。
試験勉強におすすめの入門書・教科書
MCP試験には、それぞれ「70-483」(Programming in C#)などのように試験番号があります。いくつかの出版社から、この試験番号に対応した書籍が出ています。自分が受ける試験対応の参考書が出ていれば、それが一番のおすすめといえるでしょう。
なお、参考書ではありませんが、マイクロソフトの「認定ラーニングパートナー」というのが全国にあり、マイクロソフト公認のトレーニングを実施しています。試験対策にはこれらのトレーニングを受講するのが近道といえますが、高額(10万円以上)なのが難点です。
まとめ
ITパスポート試験などでよく知られる、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)がまとめた「IPAソフトウェア開発データ白書(2016-2017)」によれば、開発に使用されいる言語で、VB.NETが第6位、C#が第7位にランキングされています。
ちなみに、最上位から5位までは、Java、COBOL、VB、C、C++の順です。これらの言語は、主にサーバー系や基幹業務系ソフトウェアに用いられていると考えられます。
Windows用アプリケーションの開発に携わりたいというフリーランスエンジニアなら、マイクロソフトの.NET系資格を取っておいて損はないでしょう。