ABAPとは?需要と将来性を解説

ABAPとは?需要と将来性を解説

ABAPはSAPを開発するために利用されるプログラミング言語です。特定の用途に利用されるプログラミング言語ですので、ABAPの知名度は高いものではありません。

しかし、最近は状況が変わりABAPが注目されたり、需要が高まったりしてきています。ABAPはマイナーなプログラミング言語でしたが、知名度は上がってきているのです。今回は現在注目されているABAPがどのようなプログラミング言語で、取得すると将来性がどうなるかについて解説します。

ABAPはSAP向けプログラミング言語


冒頭でもご説明しましたが、ABAPはSAPを開発するためのプログラミング言語です。ただ、このような説明をしてもそもそもSAPをご存知ではない人もいるでしょう。まずはABAPを理解するためにSAPを含めた基本知識について解説します。

SAPとは

SAPはドイツのSAP社が開発するERPシステム全般を指しています。多くのモジュールから構成されるシステムの総称となっていて、SAPと言っても機能は多岐にわたります。

なお、ERPシステム自体はSAP社に限らず多くのベンダーが開発しています。そのため、競合する製品は数多く存在しています。皆さんが知っているような多くのベンダーでもERPシステムは開発されている状況です。

ただ、そのような状況にも関わらず、SAPは世界中でERPシステムの高いシェアを誇っています。 多くの企業がSAPを採用していて、ERPシステムのデファクトスタンダードと言えるような状況です。そのため、後ほどご説明するABAPも非常に重要なプログラミング言語となっているのです。

ABAPとは

ABAPはSAPの開発を主な目的として開発されたプログラミング言語です。特定の用途を想定して開発されたプログラミング言語ですので、ABAPはSAPを扱わない人にはほとんど知名度がありません。

ただ、SAPでアドオンを開発するためには、ABAPのスキルが必ず求められます。メジャーなプログラミング言語ではないからと言って、需要が少ないプログラミング言語というわけではないのです。特にSAPは先ほどもご説明したとおり世界中で利用されているソフトウェアですので、必然的にABAPの需要が高くなります。

なお、プログラミング言語としてはCOBOLなど基礎的なプログラミング言語に近いとされています。ただ、文法や構造としては似ている部分がありますが、現在はプログラミング言語自体が改修され、オブジェクト指向の概念も取り入れられています。Javaほど型が厳密で難しいものではありませんが、こちらにも似ているプログラミング言語との印象を持っても差し支えはありません。

ABAPで実装できる具体的な機能

ABAPで実現できるものは大きく3つに分類できます。それぞれについて簡単にご説明します。

レポート

レポートは情報を収集し、ひとまとめにして出力するABAPのプログラムです。 「帳票」などの名前で呼ばれることもあり、会社にとって必要な情報を出力したり公的機関に提出する書類を出力したりします。

例えばABAPで作成するレポートのプログラムに製品の在庫情報があります。毎日レポートで在庫の情報を取得し、倉庫の担当者が棚卸をするのです。システムに登録されている情報と、実際の在庫に差異がないかなどのレポートをABAPで実装できます。

また、財務諸表など会計に関するレポートの出力もできます。ERPシステムは会計に関する情報も多く取り扱いますので、ABAPでレポートを実装すればこれらの情報を出力できるようになるのです。

なお、 レポートにはユーザーが条件を指定するものとそうではないものなど、3種類に分類ができます。どれもABAPでプログラミングして作成するものではありますが、厳密には違いがありますので簡単にでも理解できているとよいでしょう。

バッチインプット

バッチインプットとは「バッチ」と呼ばれる機能を利用して、多くのデータを一気に処理するABAPのプログラムです。ERPシステムは多くのデータを取扱いますので、バッチインプットを利用して必要な情報を一気に登録するなどの処理をします。

例えば製品が製造されると、その情報をSAPに登録しなければなりません。ただ、製品の種類が多くなってくると手動での登録は現実的ではなくなります。様々な入力ミスが発生してしまうのは目に見えているのです。

そこでABAPでバッチインプットのプログラムを作成しておきます。そうすると、別のシステムで出力した情報などをもとに、SAPに自動的に在庫情報を登録できるようになります。手動でデータを登録しなくても、大量のデータを高速かつ正確に処理できるようになるのです。

なお、バッチインプットのプログラムは時間を指定して動作させられます。人間がSAPを操作する必要はなく、「スケジューリング」と呼ばれる機能を利用して時間を指定した起動ができるのです。この機能を利用すれば、ABAPで作ったプログラムを夜中など利用者がいない時間帯に動作させて、システムへの負荷を軽減できるなどのメリットを生み出せます。

Dynpro

DynproはSAPのGUIを利用して対話的に操作する画面全般を指します。一般的にSAPの操作にはGUIを利用しますので、ABAPで開発するプログラムも多くはDynproとなります。

基本的にERPシステムを利用する場合、利用者は様々な操作をします。業務のために特定のボタンをクリックしたり、ボックスに情報を入力したりするのです。これらの操作内容に応じて処理を変更するケースが大半ですので、ABAPで開発するプログラムも必然的にDynproが多くなります。

なお、Dynproは複雑な処理の実装が求められます。そのため、ABAPを扱えるエンジニアの中でも、ある程度高いスキルを保有している人だけが対応可能です。

ABAPを扱えるエンジニアの需要

上記でABAPがどのようなプログラミング言語であるのかを説明しました。具体的に利用する用途や必要とされる場面については理解してもらえたでしょう。続いてはそれらを踏まえ、実際の現場ではABAPや、ABAPを扱えるエンジニアはどのような需要があるのかについて解説します。

SAP開発のプログラミング言語として需要が高い

繰り返しご説明しているとおり、ABAPはSAPの開発に利用するものです。基本的にはABAPがなければSAPの開発ができないと考えてよいでしょう。

そのように重要なプログラミング言語ですので、メジャーではありませんが需要は高いものです。特にSAPは世界中で利用されているソフトウェアですので、ABAPの需要も世界中で必然的に高まっています。

さらに注目したいのは、メジャーなプログラミング言語ではないためエンジニア数が限られていることです。ABAPの需要に対して扱えるエンジニア数はあまり多くないのが現状なのです。そのような状況も相まって、需要は特に高い状態が続いています。

新バージョンへの切り替えでさらに需要が高まる

現在SAPは新バージョンへの切り替えが進められています。今まで幅広く利用されていた製品のサポートが2025年に終了しますので、それを踏まえた対応がSAPを導入している企業に求められているからです。

バージョンの切り替えをするにあたり、ABAPのスキルが多く求められます。特にSAPに対してカスタマイズを施している場合、ABAPでプログラムが開発されています。これらプログラムのバージョンアップに対応するために、ABAPを扱えるエンジニアの需要が急増しているわけです。

なお、新バージョンのSAPではABAPだけではなくJavaやHTMLが利用できます。そのためバージョンアップのタイミングで、ABAPから別のプログラミング言語に切り替える企業は一定数あるはずです。そのような需要を見越して、ABAP以外のプログラミング言語も扱えるようになるとさらに需要に応えやすくなります。

ABAPを扱えるエンジニアの将来性


ABAPの需要について上記ではご説明しました。現状、需要が高い状況であることはご理解いただけたでしょう。続いては、現在の需要とは異なり今後の将来性についてご説明します。

2025年までの将来性は明るい

先ほども説明したとおり、SAPは2025年に向けてバージョンアップが待っています。導入している各社はこの対応をしなければなりませんので、ABAPエンジニアの需要は高まっています。この期間は将来性が明るい状況が続くと考えて良いでしょう。

ただ、2025年を近い将来と考えるか遠い将来と考えるかは人次第です。ABAPはあまり長く需要が続かないとの印象を持つ人が多くても不思議ではありません。区切りとなる2025年までの将来性は明るいですので、将来性については自分での判断が求められます。

なお、一般的にプログラミング言語は日々進化しています。それに対してABAPは完成されたプログラミング言語で、新しいスキルの習得はほとんど必要ありません。同じプログラミング言語のスキルで4年間の将来性が担保されるならば、価値は高いと考えて良いでしょう。

長い目で見るとABAPだけでの戦いは厳しい

ご説明したとおりABAPは2025年までは将来性の明るいプログラミング言語です。スキルを習得しておけば4年間は安定して仕事を受注できるようになります。

ただ、SAPでの需要が少なくなってしまうと、ABAPのスキルはあまり役立たなくなります。他の用途に利用できるプログラミング言語ではありませんので、新しいスキルが必要とされてしまいます。

その点を考慮すると、長い目で見るとABAPだけで将来性を明るくするのは難しい状況です。多少SAPのバージョンアップが遅れたとしても、10年後には需要の少ないプログラミング言語となっているはずなのです。

そのため、ABAPを扱うエンジニアは他のプログラミング言語も習得しておくべきです。自分のスキルや世の中の需要を踏まえて、他に1つか2つのプログラミング言語を習得しておくのがおすすめです。

プログラムの開発経験は活かせる

ABAPでのプログラム開発は特殊なものではありません。要件定義から始まり基本設計や詳細設計を経てプログラミング作業へと進みます。一般的な手法でABAPのプログラムは開発されるのです。

このような流れに沿って開発しますので、開発経験は将来的に無駄にはなりません。特にABAPはオブジェクト指向の概念が取り入れられていますので、Javaなどの開発にも経験を活かせます。特殊なプログラムの経験で、将来的にスキルを活かせないものではないのです。

プログラムの開発経験があれば、新しいプログラミング言語を習得するだけでそのまま現場で働けます。SAPでの利用が終了してしまっても、将来的に役立たないスキルでは全くありません。

これからABAPを学ぶ方法

2025年が境目ではありますが、ABAPのスキルを身に付けておくとSAP案件で活躍できます。そのためこの機会にABAPの習得を考える人がいるでしょう。続いてはこれから案件獲得を目指す人に向けて、ABAPの習得方法について解説します。

ABAPの教本を利用する

ABAPは古くから利用されているプログラミング言語です。そのため、スキル習得に役立つ本が多数発売されています。これらの本を利用した習得が特におすすめです。

一般的にこのような学習本は、最新の技術からは少々遅れてしまいます。そのため高いスキルを身に付けるためには、本だけでは不足してしまうケースが大半です。すでにエンジニアとして働いている人であれば、実体験から感じる部分は大きいでしょう。

しかし、ABAPはすでに完成されたプログラミング言語です。新しく開発されている機能はなく、既に発売されている本で必要な情報は網羅可能なのです。そのため本での学習でも心配はありません。

しかも本を利用すれば、必要な情報が体系的に学習できます。プロが情報を整理して本を出版していますので、個人が作ったWebサイトのような情報の抜け漏れやムラが発生しません。

まとめ

ABAPはSAPのプログラムを開発するためのプログラミング言語です。特定の用途のために利用されているものですので、マイナーなものとなっています。

ただ、SAPのプログラムを開発するためにはABAPが必須です。そのためSAPの案件が増加している現在は、ABAPの需要が高まっています。

しかし、SAPは2025年を目処に新バージョンへの切り替えが求められていて、新バージョンではABAPを利用しません。そのため需要や将来性は2025年を境に大きく変化しますので、その点はよく理解しておかなければなりません。

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