アクティブディレクトリとは|概要と導入のメリットをわかりやすく解説

アクティブディレクトリとは|概要と導入のメリットをわかりやすく解説

Windows関連のシステムや環境を構築するならば、アクティブディレクトリというキーワードを耳にする機会が多いでしょう。Windowsのサーバーに搭載されている機能で、接続されているネットワーク上でユーザー情報やデバイスなどを管理するものです。

今や当たり前のように利用されていますが、Windows関連のシステムを扱った経験がないと、詳しく理解できていないでしょう。今回は、アクティブディレクトリとはどのような製品であり、機能はどうなっているか、導入するとどのようなメリットがあるのかなどを解説します。

アクティブディレクトリとは

アクティブディレクトリは耳にする機会の多いキーワードですが、概要や必要性について理解できていない人も多いでしょう。まずは、アクティブディレクトリの基本知識について解説します。

アクティブディレクトリの概要

アクティブディレクトリは、Windowsサーバーに搭載されている機能です。接続されているネットワーク上のパソコンやサーバー、プリンターなどデバイスの情報を収集したり管理したりできます。また、ユーザー情報を一元管理して、認証機関として利用することも可能です。

Windowsにおける「ディレクトリ」とは、情報を一元管理できる仕組みのことを指していて、必要に応じて問い合わせに回答することも含みます。管理対象となる情報の種類は非常に多く、この中にユーザー情報やアクセス権限、サーバーから提供されたログなどが該当するのです。そのため、以下で細かく解説しますが、ユーザー情報やアクセス管理、ログを収集するなどの機能が搭載されています。

なお、アクティブディレクトリは専用のサーバーで構築されることが多く「ディレクトリサーバー」と呼ばれます。厳密にはWindows環境とは限りませんが、アクティブディレクトリのサーバーを、このように呼ぶと理解して概ね良いでしょう。

アクティブディレクトリの必要性

アクティブディレクトリが必要とされる背景には、管理すべき情報が増えたことが挙げられます。以前は「NTドメイン」と呼ばれるものを利用して情報を管理していましたが、これでは対応できなくなったのです。例えば、ドメインの階層構造に対応していなかったり、保存できるデータ容量に限界がありました。

このような状況は、Windowsを普及させるにおいて足かせになりかねないものです。そのため、この状況を早々に解消するために、「Windows Server 2020」からアクティブディレクトリが導入されました。新しい機能が導入されたことで、今までと状況は大きく変化したのです。

なお、開発の背景は機能面の課題ですが、現在でも新機能の開発は続けられています。より利便性の高いツールとなるように、OSのバージョンアップ時などに改良されているため、その点も認識できていると良いでしょう。

アクティブディレクトリの主な機能


アクティブディレクトリは、複数の機能が実装されている製品です。具体的に、どのような機能があるか理解を深めておきましょう。

ユーザー情報の一元管理

代表的な機能は、ユーザー情報の一元管理です。これを利用するために、アクティブディレクトリを導入すると表現しても過言ではありません。非常に重要な機能であり、Windows製品を利用するユーザーに対して、利便性を高めるものです。

具体的には、ユーザーIDとパスワードの組み合わせを、アクティブディレクトリで一元管理できます。本来、これらの情報はパソコンやサーバーの内部に記録させなければなりません。しかし、アクティブディレクトリを利用すれば、個別には登録せず一元的に管理できるようになるのです。

一元管理されていれば、複数のパソコンやサーバーに同じ情報を利用してログインできます。言い換えると、とあるパソコンでパスワードを変更すると、別のサーバーには新しいパスワードでログインしなければなりません。

認証とアクセス制御

同じくアクティブディレクトリの重要な機能に、認証とアクセス制御があります。上記で解説した、ユーザーIDやパスワードの管理と組み合わせて利用されるものです。

まず、認証とは、ユーザーIDとパスワードの組み合わせが正しいものであるか評価する機能です。アクティブディレクトリは、これらの情報を保存しているだけではなく、問い合わせがあった際に整合性の評価ができます。

また、アクセス制御は、認証されたユーザーがどこにアクセスできるか管理する機能です。例えば「サーバーAにはアクセスできるがサーバーBにはアクセスできない」「サーバーAは管理者権限でありサーバーBは一般ユーザー権限」などと定めておきます。本来は、それぞれのパソコンやサーバーで設定する必要がありますが、アクティブディレクトリならばまとめて管理できるのです。

接続デバイスとソフトウェアの管理

アクティブディレクトリには、どのような機器が接続されているか管理する機能があります。例えば、パソコンやサーバーが何台接続されているのか把握できるようになっているのです。接続状況を把握することで、それぞれのデバイスが正常に動作しているかどうかなどの評価ができます。

また、接続されているデバイスについて、ソフトウェアの状況を把握することが可能です。例えば、Windowsが最新バージョンにアップデートされているか、アクティブディレクトリから確認できます。また、事前に設定しておけば、Microsoft製品以外のソフトウェアについても状況の把握が可能です。

他にも、不要なソフトウェアがインストールされていないかなども確認できます。例えば、社内ルールでソフトウェアのインストール制限がある場合、ルール違反がないかアクティブディレクトリで検知できるのです。接続しておくと、それぞれのデバイスを効率よく管理できます。

操作ログの収集や閲覧

操作ログの収集や閲覧にも対応しています。ここでログの収集対象となるのは、上記で説明したアクティブディレクトリに接続されているデバイスです。全ての操作について収集できるわけではありませんが、アクティブディレクトリへと連携できるようになっているのです。

例えば、Windowsサーバーでシステムを運用していると「アプリケーションログ」「システムログ」などの情報を収集しなければならない場合があります。このような状況において、本来はサーバーで情報を収集する仕組みを構築しなければなりませんが、アクティブディレクトリなら簡単に実現できるのです。

また、情報の収集だけではなく、収集されたデータを閲覧できる仕組みもあります。それぞれの操作ログを素早く確認できるため、運用効率を高めることが可能です。

アクティブディレクトリを導入するメリット

アクティブディレクトリによってどのようなメリットを受けられるかは、それぞれの立場によって変化します。今回は、3つの立場からどのようなメリットを受けられるのか解説します。

エンドユーザー視点

エンドユーザーのメリットは、同じログイン情報を利用して複数のパソコンやサーバーにログインできることです。アクティブディレクトリを活用すると、シングルサインオンの仕組みを簡単に構築でき、ユーザーの利便性を高められます。パソコンやサーバーごとにアカウントを作成し、それらの情報を全て記憶する必要がなくなるのです。

また、パソコンを自動的にバージョンアップしてもらえるなどのメリットもあります。本来、自分でパソコンやサーバーのバージョンアップやパッチの適用などが必要ですが、アクティブディレクトリを利用していれば管理者側で適用などの操作が可能です。自分自身で対応する範囲が少なくなり、日々の業務に集中できるようになります。

マネージャー視点

マネージャーとしては、アカウントやデバイスなどを管理する手間を軽減できることがメリットです。例えば、作成するアカウントの数が少なくなることで、情報漏洩などの問題が起きる可能性を減らせます。絶対数が増えるとリスクも増えてしまうため、これを避けられるようになることはメリットです。

また、アクティブディレクトリには、グループ単位で権限を付与するなどの仕組みがあります。そのため、事前にグループさえ作成しておけば、後は簡単にユーザーと権限が付与できるのです。新しいメンバーがアサインされた場合などに、アクティブディレクトリを利用していれば権限の付与漏れなどを防ぎやすくなります。

企業視点

企業のメリットは、アクティブディレクトリを利用することで、業務が正確かつ効率化できることです。本来は個別に対応する必要がある内容でも、アクティブディレクトリがあることで繰り返す必要がなくなります。

例えば、アクティブディレクトリで権限グループを作成しておくと、そのグループに追加されたユーザーは同じ権限を得ます。事前にグループを作成しておけば、ユーザーを追加するだけで良くなるのです。操作が簡単になり、なおかつグループが作成されていることで権限の設定ミスもなくなります

業務の効率化は、働き方改革などにもつながり、企業として大きなメリットです。また、正確に業務をこなせるようになると、トラブルを未然に防げることから、これもメリットだと考えられます。

アクティブディレクトリを導入する際のポイント


アクティブディレクトリを導入する際はポイントがあるため、それらについて解説していきます。

OSバージョンの混在を避ける

アクティブディレクトリを利用する際、OSバージョンの混在は避けるようにしましょう。例えば、Windows Serverの導入にあたって、2019と2022を同時に管理することは望ましくありません。

OSの存在を避けるべき理由は、バージョンによって設定値が異なるからです。それぞれのOSについてアクティブディレクトリで管理することはできますが、設定時に違いがあるとミスが生じやすくなります。例えば、最新バージョンにしかない設定値を前提にアクティブディレクトリを設定すると、古いバージョンに対してエラーが出続けてしまうのです。

もちろん、様々な都合でOSを揃えられないことはあります。ただ、可能な限り混在は避けるようにしておきましょう。

OUを適切に設定する

アクティブディレクトリでは「OU(OrganizationalUnit)」と呼ばれる単位を作成して、アクセス制限などの設定をします。そのため、OUについては時間をかけて設計し、後から修正する必要が生じないようにすべきです。

例えば、組織階層が複雑な会社で現実と同じようにOUを作成すると、組織変更の際に大きな問題が生じる可能性があります。アクティブディレクトリを根本的に設計し直すことになりかねないため、このような設計は望ましくありません。ビジネス的には組織変更が発生しても、アクティブディレクトリ的には影響は出ないようにすべきです。

また、OUを現実世界の階層と一致させる必要はありません。これを意識しておくだけで、適切なOU設計を実現できるはずです。

まとめ

アクティブディレクトリがどのような製品であり、どのような背景で利用されているのかなどについて解説しました。根本的な考え方としては「情報を収集するツール」ですが、現実的にはユーザー情報や権限情報を管理するものとして利用されています。また、サーバーのログを収集してトラブルを素早く検知するなどの利用もあるのです。

情報を集約できるツールであり、これを活用することによって今までのような運用負荷を大きく軽減できます。アクティブディレクトリなしでは成立しないシステムやIT環境が存在するぐらいであるため、この機会に十分な知識を持つようにしてください。

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admin