3大クラウドサービス(Azure・GCP・AWS)の違いとそれぞれの特徴について解説
世界にはいくつものクラウドサービスが存在し、その中でも主要なAzure・GCP・AWSを3大クラウドサービスと呼んでいます。これからクラウドサービスの導入を検討している皆さんは、この名称を目にしたことがあるのではないでしょうか。
それぞれ主要なクラウドサービスではあるものの、具体的な特徴や違いについて理解できていない人は多いはずです。今回は、これからクラウドサービスを利用したい人に向けて、それぞれクラウドサービスの特徴や違いについて解説します。
この記事の目次
3大クラウドサービス(Azure・GCP・AWS)の概要
3大クラウドサービスについて、それぞれの概要を解説します。
Azure
Microsoft Azureは、クラウドインフラストラクチャはもちろん、プラットフォームサービス(PaaS)やソフトウェアサービス(SaaS)も幅広く提供するクラウドプロバイダです。特に自社製品である「Microsoft製品」との親和性が高いクラウドサービスで、Office 365やDynamics 365など、既存のMicrosoft環境とシームレスに連携できます。
また、同様に自社の製品を主軸としたサービスである、Azure Active Directoryによる認証やアクセス管理、Azure DevOpsによる開発者向けツールも評価されている状況です。すでに企業で利用している仕組みを、クラウドに置き換えやすくなっていると表現できるでしょう。
事実、Azureは企業向けに特化したサービスも多く提供していて、Windows ServerやSQL Serverなどのオンプレミス環境をクラウドに移行する企業に人気があります。加えて、グローバルに展開されているデータセンターがあるため、信頼性とセキュリティの観点からも企業に評価されているのです。
GCP
Google Cloud Platformは、Googleのインフラをベースにして構築されたクラウドサービスです。3大クラウドサービスの中でも、特にビッグデータと機械学習の分野で強みを持っていると考えられます。具体的には、Googleの独自技術を活用したビッグデータ分析ツール「BigQuery」や、機械学習モデルを簡単に開発できる「TensorFlow」などのAI/MLソリューションです。
また、コンテナ技術の分野では「Kubernetes」を先駆けて導入したクラウドサービスであることに注目しましょう。3大クラウドサービスはどこも導入していますが、現在でもその運用や管理が得意であることは魅力です。
他にも、Googleのネットワークインフラを利用するため、データ転送の速度や信頼性が非常に高いことは他社には無い利点と考えられます。通信速度重視や大量のデータをやり取りする企業や、AIを活用したい企業は積極的に検討すると良いでしょう。
AWS
AWSは、クラウド市場で最も早く登場し、現在も世界で最大のシェアを誇るサービスです。提供するサービス数は200種類を超え、用途に応じて幅広い選択ができます。例えば、ストレージやネットワーク、データベースなど基本的なインフラだけでなく、AI/MLやIoTなども提供されているのです。多岐にわたる分野でソリューションを提供することに強みを持つとも言い換えられます。
中でも、インフラストラクチャサービス(IaaS)としての柔軟性が高い点は注目しておきましょう。個人から企業まで幅広いニーズに対応し、誰もが個々のニーズに合わせたカスタマイズを実現できます。また、AWSはグローバルに24のリージョンと80以上のアベイラビリティゾーンを持っている点も重要です。これにより、インフラとして重要な広範囲な可用性と低遅延を提供してくれます。
他にも、コスト面は基本的に従量課金制ですが、部分的に前払い制も導入されていることが注目ポイントです。今まではコストがネックになることが多くありましたが、前払いによる割引でこれを解決できることが増えています。
3大クラウドサービス(Azure・GCP・AWS)の主な違い
3大クラウドサービス(Azure・GCP・AWS)にはいくつもの違いがあり、これらを単純に比較することはできません。重要な観点について、可能な限り同じレベル感に落とし込んでから比較していきます。
価格やコスト管理
料金体系がやや異なるため、単純な比較によって違いを説明することはできません。今回はインスタンス(仮想サーバ)を利用する際のコストを比較すると以下のとおりです。
クラウドサービス | 一般的な仮想マシン(t3.medium程度)の1時間あたりのコスト | 特徴 |
AWS | 約$0.0416 | 柔軟な従量課金制 リザーブドインスタンスで割引 |
Azure | 約$0.0464 | リザーブドインスタンスやハイブリッド割引 |
GCP | 約$0.0423 | 継続利用割引と事前利用割引によるコスト削減 |
それぞれのクラウドサービスには、従量課金制やリザーブドインスタンスなどの割引があります。その結果、料金には違いが生まれるものの、価格には大きな違いがありません。
ただ、AzureはWindows ServerやSQL Serverのライセンスを既に保有している企業向けに「ハイブリッド特典」を提供しているため、適用される場合はライセンスコストの大幅な削減が可能です。また、GCPは持続利用割引があり、使用時間が増えるほど自動的に割引が適用されます。
サービス数
クラウドサービスによって、サービスの数え方には違いがありますが、公式のドキュメントで公表されている値を参考にすると以下のとおりです。
クラウドサービス | 提供サービス数 | 特徴 |
AWS | 約320種類 | インフラ、AI、IoT、サーバーレスなど幅広い |
Azure | 約200種類 | Microsoft製品との統合やエンタープライズ向けが特に強い |
GCP | 約165種類 | データ分析、機械学習、コンテナ技術で他の2社を圧倒 |
サービスの豊富さではAWSが圧倒的ですが、各クラウドサービスは特定の分野で強みを持っています。例えば、AWSはサーバーレスアーキテクチャ(Lambda)やデータベース(Aurora、DynamoDB)で他社よりも魅力的なクラウドサービスです。また、AzureはMicrosoftの製品で構築されたサービスとの連携や移行に強く、GCPはBigQueryやTensorFlowを代表とするデータ駆動型ビジネスやAIに注力しています。
リージョンやアベイラビリティゾーン
グローバルに展開されたインフラであるかどうかは、パフォーマンスやDR対策などに影響します。クラウドサービスによって非公開の部分もありますが、比較すると以下のとおりです。
クラウドサービス | リージョン数 | アベイラビリティゾーン(AZ)数 | 特徴 |
AWS | 34 | 108 | 最も広範囲にデータセンターを持つ |
Azure | 60 | 非公開 | リージョン数では最多 |
GCP | 39 | 118 | パフォーマンスに優れたネットワークが強み |
Azureは60以上のリージョンを持ち、リージョン数では最も多いですがアベイラビリティゾーンがいくつ存在するかは公開されていません。対して、AWSやGCPはリージョンこそ少ないものの、どちらも100を超えるアベイラビリティゾーンを保有していることが特徴です。
セキュリティ基準や認証
企業としてクラウドサービスを導入する際は、セキュリティ基準を満たしているか・関連する認証を受けているかが重要です。3大クラウドサービスは、それぞれ独自の方針で以下の認証などを受けています。
クラウドサービス | 主なコンプライアンス認証 | 特徴 |
AWS | ISO 27001, HIPAA, GDPRなど | 強力な暗号化、アクセス管理、セキュリティ監視 |
Azure | ISO 27001, SOC 1/2/3, GDPRなど | Microsoft製品に関連する包括的なセキュリティサービス |
GCP | ISO 27001, PCI DSS, GDPRなど | セキュアなGoogleのネットワークとデータ管理 |
AWSはさまざまな認証を受けていることが特徴で、特に金融業や医療業界など規制が厳しい業界にも標準で対応できるようになっています。対して、AzureやGCPは外部からの厳しい認証をいくつも取得しているわけではありませんが、独自のセキュリティ技術を適用したクラウドサービスです。ホワイトペーパーも公開されているため、セキュリティ面で特段の心配は必要ないでしょう。
3大クラウドサービス(Azure・GCP・AWS)を導入する際の比較ポイント
Azure・GCP・AWSにはそれぞれ特徴があるため、どれを導入すれば良いか悩んでしまうことが多いでしょう。続いては、それぞれの違いを踏まえて、どのように比較して採用するクラウドサービスを決定すればよいのか解説します。
サービスの種類やニーズとの一致
クラウドサービスを比較する際には「自社の求めるサービスがどれだけ提供されているか」という点を最初に確認すべきです。3大クラウドサービスはそれぞれ提供しているサービスの方向性が異なるため、自社が求めるものが提供されているかに注目しましょう。
どんなに種類が多くとも、ニーズと一致していなければ意味はありません。純粋な数で比較するとAWSが最も魅力的ですが、求めるサービスの方向性などを踏まえることが重要です。
コスト
一般的に、クラウドサービスは導入コストを最小限に抑えられます。そのため、運用コストを中心に比較するようにしましょう。特に、中長期的にクラウドサービスを利用するならば、料金体系を考慮した試算が重要です。
例えば、AWSは基本的に従量課金制ですが、リザーブドインスタンスのように割引される仕組みが用意されています。また、GCPも継続利用割引を提供しているなど、割引サービスが各社あるのです。これらを踏まえて、コスト面で比較するようにしましょう。
他にも、Azureは保有しているMicrosoftのライセンスを利用できるなどの特徴があります。これも運用コストに影響するため、もし利用するならば考慮すべきです。
既存のシステムとの親和性
もし、既存のシステムを3大クラウドサービスに置き換えたいならば、それらとの親和性も考えるべきです。特に、専門性の高いサービスが提供されているかどうかを比較しましょう。
例えば、データ分析や解析に適したクラウドサービスを求めるならば、GCPを軸に考えるべきです。3大クラウドサービスの中でも分析やAIに強いため、既存のシステムとの親和性が高まると考えられます。また、Microsoftライセンスのサーバ類が多いならば、Azureとの親和性が高いでしょう。
サポート体制
クラウドサービスの運用が必要となる場合は、サポート体制が充実しているかどうかにも注目です。3大クラウドサービスはどこもビジネス向けやエンジニア向けのサポートが提供されているため、それらの詳細を比較してみましょう。
また、3大クラウドサービスのサポートを契約するのではなく、認定を受けたベンダーと契約することも可能です。例えば、AWSであれば「クラスメソッド株式会社」が幅広いサポートを提供しているため、これを活用することで安定した運用を実現できます。クラウドサービスとの契約はもちろん、ベンダーとの契約も視野に入れて比較してください。
リージョンとアベイラビリティゾーン
グローバルに展開するシステムやDR対策が必要なサービスならば、リージョンとアベイラビリティゾーンも比較すべきポイントです。選択肢が多いほど、理想的なクラウドの運用を実現しやすくなります。
例えば、日本を中心にアメリカやヨーロッパにも提供するサービスの場合、AWSやAzureのように各地にリージョンがあると利便性が高まります。逆に、日本でしか利用せずDR対策も必要が無いならば、どのクラウドサービスでも大きな差を感じないはずです。
まとめ
3大クラウドサービスの概要と違いについて解説しました。それぞれ特徴にはいくつもの違いがあり、どのような目的でクラウドサービスを利用したいかによって、採用すべきサービスを選択しなければなりません。例えば、いくつものサービスを利用する予定があるならば、AWSにするなどの検討が必要なのです。
導入するクラウドサービスを間違えると、効果を最大限に発揮できません。事前に検討してから進めるようにしましょう。