キャッシュ・クッキー・セッション|概要とそれぞれの違いを徹底解説!
Webブラウジングにおいて、キャッシュ、クッキー、セッションは非常に重要な役割を果たします。どれもWebの世界で多用されているもので、これら無しに今の利便性を担保することは不可能で、当たり前のように利用される技術となっています。
重要なものではありますが、似ているため正しく理解できていない人は多いようです。今回は、改めてキャッシュ・クッキー・セッションの概要から違いを学んでいきましょう。
キャッシュの概要
最初にキャッシュに関する基本知識について解説します。
キャッシュとは何か
キャッシュとは、一度アクセスしたデータを一時的に保存しておく仕組みです。データを保存しておくことによって、改めてアクセスする際に素早く表示するなどの実装ができます。特に、データの再取得に時間がかかる場合は、保存した内容を活用することで短時間でデータへとアクセスするのです。
例えばWebページの画像やスタイルシート、JavaScriptなどをキャッシュすることで、改めてこれらを読み取る必要がなくなります。その結果、同じページにアクセスする際の読み込み速度を向上したり表示までのラグを短縮したりできるのです。総じて、キャッシュはシステム全体のパフォーマンスを向上させるために利用されます。
キャッシュの仕組みと役割
キャッシュの仕組みは、リクエストされたデータをローカルストレージに保存するというものです。また同じリクエストの際に、実際にアクセスするのではなく、保存されているデータを使用します。これにより、アクセスにかかる時間や読み込み処理にかかる時間などを大幅に短縮できるという流れです。
Webブラウザの場合、基本的には利用者のローカルストレージにキャッシュを保存して、必要に応じてこれを表示するか実際のWebサイトにアクセスするかを判断します。多くの場合、どちらにアクセスしているかは利用者からは判断できず、Webブラウザが臨機応変に処理するようになっているのです。
なお、キャッシュといえばWebサイトにアクセスする側が利用しがちですが、実際にはサーバー側も利用します。これはサーバーキャッシュと呼ばれるもので、リクエストに対する処理結果を保存しておくものです。例えば、ユーザーが利用した検索結果を保持しておくことで、同じ条件で検索された際に改めて処理する手間を削減します。負荷のかかりやすい処理結果をキャッシュしておくことによって、サーバー側のリソースを効率よく利用できるのです。
キャッシュの種類
まとめてキャッシュと表現されることは多いですが細分化すると「ブラウザキャッシュ」「サーバーキャッシュ」「CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)キャッシュ」に分類が可能です。
まず、ブラウザキャッシュは、ユーザーのデバイスに保存されるキャッシュで、ページの読み込み速度を向上させます。続いて、サーバーキャッシュは、ウェブサーバー上に保存されるキャッシュで、データベースクエリの結果や動的コンテンツの生成を高速化するものです。これらは上記で解説したため、詳細は割愛します。
最後に、CDNキャッシュと呼ばれるものもあり、これはCDNと呼ばれる負荷分散の機能を支援するものです。地理的に分散されたサーバーにコンテンツをキャッシュし、ユーザーに近いサーバーからコンテンツを提供することで配信速度を短縮します。メインとなるサーバーは1台だけで、そこから世界中にキャッシュを展開する仕組みなのです。
クッキーの概要
続いて、クッキーの基本知識について解説します。
クッキーとは何か
クッキーとは、Webサイトがユーザーのブラウザに保存するテキスト形式のファイルやデータです。ユーザーに関する情報やサイトの設定などが保存され、例えばユーザーIDとパスワードをクッキーに保存したり利用したりできます。
一般的に、クッキーはユーザーエクスペリエンスを向上させるために活用され、知らず知らずのうちに利用していることも多いでしょう。例えば、ログイン情報を保存して再訪問時に自動的にログインする機能やショッピングカートの内容を保持する機能などが該当します。
なお、クッキーは一度保存されると、継続的にその情報を利用することが可能です。ただ、情報の有効期限が設定できるため、その点も理解しておかなければなりません。
クッキーの仕組みと役割
クッキーの仕組みは単純で、ユーザーがWebサイトを訪問すると、そのサイトがブラウザに作成を指示するだけです。各ブラウザに保存されているものであるため、デバイスに依存していると考えましょう。例えば、同じアカウントでパソコンAとパソコンBにログインしても、クッキーの内容は共有されません。
一度クッキーが作成されたならば、Webサイトの訪問時には自動的に送信されます。ユーザーが意識的にクッキーの送信処理をおこなう必要はないという点で利便性の高いものといえるでしょう。Webサーバーは送られてきた内容を踏まえて、自動的に最適な処理を実施します。
ただ、先に解説したとおりクッキーには有効期限があるため、超過するとサーバー側で受理できません。Webブラウザは有効期限が切れたクッキーも保存できるため「保存されている=利用できる」という仕組みではないのです。
クッキーの種類
クッキーは有効期限と用途によって種類分けできます。主に「セッションクッキー」「パーシステントクッキー」と「サードパーティークッキー」に分類が可能です。
まず、セッションクッキーは、ユーザーがブラウザを閉じると削除される一時的なクッキーです。上記でセッションについて解説しましたが、似たような用途で一時的に情報を管理するために利用されます。それに対して、パーシステントクッキーは、特定の期限まで保存されるクッキーです。こちらは、ユーザーの設定やログイン情報を中長期的に管理したい場合に利用されます。
他に、サードパーティークッキーがあり、これは訪問しているサイト以外のドメインから設定されるクッキーです。主に、広告やトラッキングに使用されるもので、ユーザーのログイン情報などを管理するものではありません。どのWebサイトから別のサイトにアクセスしたかなどを把握して、適切な広告を表示するなどに利用されます。
セッションの概要
最後に、セッションの基本知識について解説します。
セッションとは何か
そもそも「セッション」とは、「ユーザーがWebサイトにアクセスしてから離れるまでの一連の活動」を指します。ここからセッションと呼ばれる機能も生み出され、ユーザーがWebサイトを利用する際の一時的な情報を管理するために使用されるようになりました。
例えば、セッションを利用すると、ショッピングカートの内容やログイン状態などを一時的に保存できます。これらはクッキーを利用して管理することもできますが、短時間であればセッションを利用する選択肢もあるのです。
ただ、セッションで管理される情報は、一般的にユーザーがブラウザを閉じると削除されてしまいます。そのため、意図せずデータが消失するなどのリスクがある点には注意すべきです。誤操作でWebブラウザを閉じてしまうと、セッションに保存されていた内容がすべて消えてしまいます。
セッションの仕組みと役割
セッションは、ユーザーがWebサイトへアクセスするたびに、一意のセッションIDを生成することによって実現されます。複数回Webサイトへアクセスしたり画面を更新したりすると、セッションIDが更新される仕組みです。サーバーは最新のセッションIDを用いて、それに紐づく情報を管理します。
実装方法に左右されるものの、セッションIDはクッキーやURLのパラメータとしてユーザーのブラウザに送信されます。また、再度アクセスする際には、これらの情報がリクエストとしてサーバーに返送されるのです。セッションは独立した技術ではあるものの、その実装にはクッキーなど別の技術が利用されることがあります。
セッションの種類
一般的に「セッション」といえば「ユーザーセッション」「ブラウザセッション」のどちらかを指します。これらは概ね似た用途で利用されるもので、ユーザーがWebサイトを利用する際に情報を記録するものです。ログインなどの情報を管理したり、ユーザーがどのページから遷移してきたかなどを把握したりします。
また、これらとは別に「サーバーセッション」と呼ばれるものも存在して、これはサーバー側で管理されるものです。ユーザーの操作履歴やアクセス状況等をサーバー上で保持するために利用されます。例えば、同時アクセス数を把握するために利用することが考えられるのです。
キャッシュ・クッキー・セッションの違い
ここまでキャッシュ・クッキー・セッションのそれぞれについて解説しました。概ね、どのような仕組みであるのか理解してもらえたのではないでしょうか。続いては、これらの違いについて詳しく解説します。
保存期間の違い
保存期間は、キャッシュ、クッキー、セッションで明確な違いがあります。実装で誤ると大きなトラブルとなりかねないため、正しく理解しましょう。
まず、キャッシュは、ユーザーの利便性を向上させるために、中長期的に保存される傾向にあるものです。アクセスする度にデータを入力してもらったり取得したりすることは手間であるため、これを可能な限り減らせるように設計されます。保存期間はWebサイトの設計方針に左右されますが、数日から数週間、場合によってはそれ以上保存されることもあるでしょう。
続いて、クッキーは設定された有効期限に基づいて保存されます。400日が上限という仕様ではありますが、実態としては30日程度で設計されることが多いでしょう。これよりも短く7日程度で設計される事も考えられます。
最後に、セッションクッキーはブラウザを閉じるまで、パーシステントクッキーは指定された期間まで保存されます。パーシステントクッキーの場合、数年単位で保存することも可能であるため、この点はキャッシュやクッキーと大きく異なるのです。
保存場所の違い
キャッシュ、クッキー、セッションはそれぞれ異なる場所に保存されます。また、詳細は割愛しますが、保存時に利用される仕組みにも違いがあるため、実装する立場にあるならばその点も考慮しましょう。
まず、キャッシュは、ブラウザのローカルストレージやサーバー側のメモリなどに保存されます。どちらに保存される場合でも、短時間でアクセスできるデータとなるため、すべてのデータを再読み込みするより高速化が可能です。
続いて、クッキーはブラウザに紐付くテキストファイルやバイナリファイルとして個々のローカルストレージに保存されています。昔はテキスト形式のファイルであり、開くと内容を簡単に把握することができました。しかし、現在は内部的にデータベースのようなテーブル構造になっているため、そのままでは確認できません。
最後に、セッションは主にサーバー側に保存されるものの、一部はユーザーのブラウザに保持されます。この場合、ブラウザが利用しているメモリ空間に展開され、ストレージには記録されない仕組みが一般的です。
用途の違い
用途には大きな違いがあるため、適切な使い分けが必要です。保存期間の違いと相まって、誤って活用すると、予期せぬ問題が起きてしまう可能性があります。
まず、キャッシュは基本的にパフォーマンスを向上させるために利用します。画像やスタイルシートなどを事前に読み込んでおくことで、再アクセスによるロスを軽減するのです。時間の短縮はもちろん、通信量の削減などを意識して利用されることもあります。
続いて、クッキーは基本的に各種情報を中長期的に維持するために利用します。ログイン情報やWebサイトの設定など、ユーザーが手間を感じやすい部分をサポートする役割です。
最後に、セッションは一時的なデータの管理を目的としています。クッキーも情報の管理ができる仕組みですが、より短時間で簡単に管理するためと考えて良いでしょう。
まとめ
Webの世界で重要となるキャッシュ・クッキー・セッションについて解説しました。どれも似たような意味合いを持つものだと思われがちですが、詳細は大きく異なっています。これらの概要を理解して、使い分けできることが重要です。
特に、用途を間違えてしまうと、思わぬトラブルが発生するかもしれません。例えば、ログイン情報が頻繁に消えてしまうなどの問題が起きるのです。トラブルを起こさないためにも、正しい使い方を把握しておきましょう。