フリーランスは再就職手当をもらえる?受給の条件・手順を解説!

会社員からフリーランスになる際に気になるのは「再就職手当がもらえるかどうか」でしょう。再就職手当がもらえると、まとまったお金が手に入りますので、フリーランスの活動に役立てられます。
結論的にはフリーランスでも再就職手当は受け取れます。ただ、段取りを間違えてしまうと、全く受け取れなくなってしまいます。今回は再就職手当の概要とフリーランスが受け取る場合の手順について解説します。
そもそも再就職手当とはなにか
再就職手当について詳しくない人も多いでしょう。まずはこちらの概要からご説明します。
再就職手当の概要
再就職手当とは、失業保険の受給資格を目指している人が、早期に再就職を決められた場合に支払われる手当です。具体的には失業保険の支払日数が、定められた日数の1/3以上残っている状況で再就職が決まった場合に支給されます。
このような手当が存在しているのは、ハローワークが「なるべく早く安定した職に就いてもらいたい」と考えているからです。失業手当を満額受給しなくても早期に再就職をすれば手当がもらえますので「失業保険を満額受給しなければ損をする」との考えを小さくできます。
また、再就職してからの物品購入などにお金を充てる意味合いもあります。例えば再就職先によっては、新しくスーツの購入が必要となる可能性があります。そのような仕事で必要な物を購入するために、まとまったお金を提供しているのです。
失業保険との違い
再就職手当と間違えられやすいものに失業保険があります。ひとつのまとまった制度だと考えられる場合がありますが、これらは別々の制度です。そのため、これらの違いについては正しく理解をしておかなければなりません。
再就職手当は上記で説明したとおり、離職した後の再就職を促す制度です。早期に安定した就職先を決定してもらうために設けられていますので、再就職が確定しなければ受給はできません。
それに対して失業保険は、あくまでも失業した人向けの保険です。再就職の意思表明のためにハローワークへ通う必要はありますが、再就職が決定していなくとも受給はできます。なお、失業保険の受給期間はその人の状況によって決定されますので、延々と保険が受け取れるわけではありません。
再就職手当と失業保険は、どちらも失業した際に手続きを経て受け取れるものです。ただ、目的の異なった制度ですので、どのような目的でどのように受け取るのかはよく考える必要があります。
フリーランスでも再就職手当はもらえる
会社員を退職しフリーランスになる場合でも再就職手当は受給できます。ただ、受給するためにはいくつもの条件があります。これらの条件について以下では確認をしていきましょう。
再就職手当の受給条件
再就職手当の受給条件は厚生労働省のWebサイトに掲載されています。記載内容を引用すると以下のとおりです。
- 就職日の前日までの失業の認定を受けた後の基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上あること。
- 1年を超えて勤務することが確実であると認められること
- 待期満了後の就職であること
- 離職理由による給付制限を受けた場合は、待期満了後1か月間については、ハローワークまたは許可・届け出のある職業紹介事業者の紹介により就職したものであること
- 離職前の事業主に再び雇用されたものでないこと(資本・資金・人事・取引等の状況からみて、離職前の事業主と密接な関係にある事業主も含みます。)
- 就職日前3年以内の就職について、再就職手当または常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 受給資格決定(求職申し込み)前から採用が内定していた事業主に雇用されたものでないこと
- 原則、雇用保険の被保険者資格を取得する要件を満たす条件での雇用であること
上記のとおり支給条件がありますので、フリーランスで再就職手当をもらいたい場合は意識しなければなりません。細かな部分については後ほど解説しますが、まずはこのような条件が定められていると理解しておきましょう。
再就職手当の受給金額
再就職手当の受給金額は開業までの期間と失業保険の支給内容によって異なります。まず、開業までの期間は可能な範囲で早いに越したことはありません。多くの受給期間を残しておくと、それだけ再就職手当が高額になる可能性があります。
また、そもそもどの程度の金額を得られるのかは、失業保険で算出されている金額に準じます。失業保険の金額は過去6ヶ月分の給料から算出されますので、これが再就職手当にも影響するのです。
フリーランスが再就職手当をもらうまでの手順
フリーランスが再就職手当をもらうまでの手順はある程度固定されています。あまり人によらない部分ですので、以下の手順を理解しておきましょう。
退職し離職届を用意
フリーランスになるにあたり、会社を退職するはずです。退職後に失業保険を受け取る流れとなりますので、まずは会社所定の手続きを済ませておきましょう。
一般的に会社を退職するためには、1ヶ月や2ヶ月前の連絡が必要です。いきなり連絡をして退職できるわけではありません。引き継ぎ作業などが必要となりますので、なるべく早く退職の旨は伝えておきましょう。
手続きが完了し退職する際には、離職票を受け取る必要があります。こちらがなければ失業保険の手続きが出来ませんので、必ず受け取りをしましょう。ただ、離職票をいつ受け取れるのかは、会社によって異なります。受け取りタイミングによってハローワークでの手続きタイミングが異なりますので、事前に確認しておきましょう。
ハローワークでの求職手続き
離職票を受け取った後は、ハローワークでの求職手続きが必要です。こちらの手続きをしなければ失業保険は受け取りできません。再就職手当に関わる部分ですので、できるだけ早く手続きをしましょう。
手続きは最寄りのハローワークでしなければなりません。ハローワークは日本各地にありますので、管轄のハローワークを確認しておきましょう。
求職手続きをするにあたり、書類などを用意しなければなりません。以下のものを用意してハローワークへ出向きましょう。
- 離職票
- マイナンバーカード
- 身分証明証(※免許証など条件あり)
- 証明写真
- 印鑑
- 受け取りに利用する銀行口座の通帳やキャッシュカード
これらの書類を事前に用意しておきましょう。不足があるとハローワークへ出向いてもスムーズに手続きができません。場合によっては改めて出向かなければならなくなりますので、必ず確認しておきましょう。
なお、印鑑は認印で問題ありませんので、自分の手元にあるものを利用しましょう。印鑑を新調する必要はありませんが、シャチハタは利用できません。
他にも受け取り用の銀行口座は、メガバンクなど大手を利用するのがおすすめです。ネットバンクは利用できないケースがありますので、安心して利用できると分かっているメガバンクかゆうちょ銀行を選択しておきましょう。
7日間の待機期間を過ごす
ハローワークで手続きをした後は、7日間の待機期間があります。この待機期間は失業しているかどうかを判断するために設けられています。
本来は待機期間というものの、就職活動の準備をする時間です。ただ、フリーランスになることを目的としている場合は、開業の準備期間に充てることになります。
雇用保険受給説明会へ参加する
待機期間を過ごした後は、雇用保険受給説明会への参加が必要です。これは失業保険を受け取るために必ず参加しなければならない説明会です。日程を指示されますので、余程のことがない限りはその日に出向かなければなりません。
説明会ではその後の手続きや日程などについて解説をされます。指示された通りに手続きをしなければうまく保険が支給されませんので、必ず参加をして不明点はその場で確認しましょう。
説明会の後は、初回講習があります。こちらでも様々な資料を配布されますので、それらの資料の内容を確認し必要な手続きをしていきましょう。就職活動の案内に関するものなどが含まれています。
初回講習が終わってから2週間ほどすると、正式に失業が認められる「失業認定日」を迎えます。失業認定日までの間に就職活動をしていたかどうかなどが確認されます。収入があった場合は申告しなければなりませんので、忘れずに申告するようにしましょう。虚偽の申告があった場合は、その後の手当受給に支障が出る可能性があります。
自己都合退職の場合は1ヶ月間就職活動をする
自己都合退職の場合は、最低でも1ヶ月間就職活動をしなければなりません。フリーランスになる人は大半が自己都合のはずですので、就職活動はしなければならないと考えておきましょう。
本来は就職活動をする期間ですが、フリーランスの場合は実際に就職活動をするわけではありません。この期間で独立のための準備をします。
ただ、就職活動の一環として、ハローワークへ出向く必要があります。基本的にはフリーランスに向けた準備をしつつも、ハローワークでの求人探しをしておきましょう。
ハローワークへフリーランスとして開業届を出すと伝える
1ヶ月間の就職活動期間が終了すれば、ハローワークで開業届を出す旨を伝えましょう。しっかりと届出をすれば、フリーランスになる場合でも就職として認められます。逆に届出をしなければ、失業したままの状態です。手当の受給に影響が出ますので、必ず申請をしましょう。
申請をした後は実際に開業届を出して問題ありません。書類を提出するだけの簡単な作業ですので、待機期間の間に準備をしておくと良いでしょう。
また、開業届を出すためにはマイナンバーが必要となったり身分証明書や印鑑が必要となったりします。これらについても事前に準備をしておいた方が良いでしょう。
ハローワークで再就職手当の申請をする
開業届が受理されれば、ハローワークで就職の手続きをします。就職ではなく開業をした場合は、開業したことのわかる証明書の提出が必要です。開業届の原本かコピーを用意しておきましょう。他にもハローワーク向けの資料として「再就職手当支給申請書」「雇用保険受給資格者証」の提出が必要です。その場で記入ができますが、可能であれば事前に記入しておいたほうが良いでしょう。
なお、フリーランスが再就職を受けるためには「特定期間就職活動をしてから開業の準備をしたか」「自営業として1年以上事業継続ができるか」「失業保険の給付日数が1/3以上残っているか」など条件を満たしておく必要があります。誤って対象外にならないように注意しましょう。
条件を全て満たし問題なく受理されれば、再就職手当が支給されます。
フリーランスが再就職手当をもらう際の注意点
フリーランスが再就職手当を受け取るにあたり、いくつか気を付けるべき注意点があります。こちらについても理解しておきましょう。
給付制限期間中に開業しない
会社員からフリーランスになる場合、受給制限期間が設けられるケースが大半です。自己都合退職ですので、失業保険が給付されない期間があるのです。
この期間に開業をしてしまうと、受給制限期間中での開業となってしまいます。この期間中はハローワークの紹介など特定の求人のみが受給の対象となりますので、勝手に開業すると受給の対象外になってしまいます。
失業保険の残日数は足りるか
再就職手当を受け取るためには、最低でも失業保険の残り日数が1/3以上必要です。できるだけ早く雇用を見つけてもらう制度ですので、早く発動しない人には手当が支給されないのです。
失業保険の毎月の支給額と支給期間には個人差があります。誰でも同じように支給されるものではありません。自分の場合はどうなのかを確認し、再就職手当はどの程度もらえるのか確認が重要です。
まとめ
フリーランスでも再就職手当の受け取りは可能です。ハローワークで手続きをしてから開業届を出すことで、再就職手当が受け取れます。
ただ、再就職手当をもらうためには、いくつか注意点があります。決まった流れで手続きをしなければなりませんので、誤ってしまうと手当がゼロ円になってしまいます。
一部手間のかかる内容はありますが、手当の申請は難しいものではありません。会社員からフリーランスになる場合、再就職手当をもらえるように段取りをしておくと良いでしょう。