フリーランス(個人事業主)が法人化するメリットデメリットは?設立の手続きも解説!

フリーランス(個人事業主)が法人化するメリットデメリットは?設立の手続きも解説!

フリーランスとして一定の収入を得られるようになると、株式会社などの法人になるべきかどうか考えるでしょう。一般的には法人の方が信用力がありますので、法人化を考えるのは当たり前と言えます。

ただ、そのように考えていても「法人になるメリットとデメリットはどのようなものか」が正しく理解できていない人が多いことでしょう。今回はフリーランスや個人事業主が法人化するメリットとデメリットをご説明し、法人化する具体的な手順を解説します。

フリーランス(個人事業主)が法人化するメリット


最初に法人化するメリットを解説します。

節税効果が見込める

フリーランスや個人事業主と法人では売上に対する税金の仕組みが異なります。前者は個人に対して税金がかかるのに対し、後者は法人に対して税金がかかります。法人化すると個人が税金を支払うのではなく、会社として税金を支払うようになるのです。

ここで注目したいのは、個人に発生する所得税は累進課税であるのに対して法人に発生する法人税は固定税率であることです。つまり、フリーランスや個人事業主は課税対象が多くなるにつれて税金の割合が大きくなりますが、法人にはこれがないのです。法人では多く稼げば稼いだぶんだけ手元に残るのです。

フリーランスや個人事業主の悩みとして多いのは、「稼いだわりには税金で手取りがあまり増えない」というものです。これの原因は所得税の累進課税にありますので、法人化して自分自身の収入をコントロールすれば、実際に手元に残るお金を増やせます。

社会保険に加入できる

法人は社会保険に加入できます。フリーランスや個人事業主は国民保険に加入しますが、法人であれば本人や従業員は社会保険に加入できるようになるのです。

社会保険に加入できるようになると、健康保険や年金の支払い金額を小さくできるメリットがあります。国民保険は支払金額の全額を自分で負担しなければなりませんが、社会保険であれば会社と個人で折半になるからです。出費を抑えられることで、手取り金額を増やせるメリットを生み出すのです。

また、社会保険を完備しておくことは、会社の社会的信用度合いを高める意味があります。最近は会社選びの際に「社会保険が完備されているかどうか」を重要視する人も増えていますので、社会的な信用度を高め採用にプラスの効果を生み出すメリットもあります。

人材を集めやすい

法人化することで人材を集めやすくなります。フリーランスが個人で人材を集める場合と比較すると、その差は歴然であると考えてよいでしょう。

働く側からすると、契約先が法人かフリーランスかでは印象に大きな差があります。言うまでもなく法人の方が安心して契約できるのです。従業員として働くのであれば、なおさら法人の方が印象が良くなります。

フリーランスでは、思うように人材を集められず苦労した人もいるでしょう。しかし、法人化すれば大手の求人サイトに求人を出せるようになるなど、人材を集める手段が広がり応募者からの印象も良くなります。フリーランス時代のような苦労をあまりしなくてよくなるのです。

社会的な信用度が高まる

一般的にフリーランスよりも法人の方が社会的信用力が高まります。様々な手続きを経て登記されていますので、フリーランスよりも信頼度が高いのです。

実際、大手企業と取引する際は「法人格を持っていること」が条件となる場合があります。スキルが高いフリーランスであっても、社会的な信用が比較的低い個人は契約できないのです。「法人ならば契約できるのに」と言われる場合があるぐらいです。

皆さんの感覚では、「フリーランスも法人も大きな差がない」と考えるかもしれません。しかし、世の中的には大きな差があり、特に社会的な信用力という面では法人に軍配が上がります。社会的な信用力を高め取引の幅を広げるという観点で、法人化は非常に効果的な手段です。

フリーランス(個人事業主)が法人化するデメリット

続いて法人化するデメリットについてご説明します。

法人化の手続きに時間とお金を要する

個人事業主の登録とは異なり、法人の登録手続きには時間とお金が必要です。個人事業主は開業届を出すだけで良いものでしたが、法人はそういうわけにはいきません。様々な書類を作成して提出が必要なのです。

詳細については後ほど説明しますが、法人化する場合は法務局に設立登記申請が必要です。この申請にはお金が必要であり、株式会社の場合は登記代や印紙代で24万円が必要です。無料の書類を1枚出せば良いものとは大きく異なるのです。

また、提出する書類は素人には作成が難しいものがあります。それは専門家に頼む必要があり、専門家への依頼費用が発生します。勉強して自分でやりきることも可能ですが、現実的ではないため専門家にお金を払い解決してもらいます。作成はお金を払えば対応してもらえますが、作成の協力をする必要もあり、お金だけではなく時間も取られます。

従業員が増えると社会保険料が増える

法人化することで社会保険に加入できることがメリットだと説明しました。これの裏返しではありますが、法人としては社会保険料の支払いが増えるデメリットがあります。

社会保険の場合、法人は支払い金額の半分を負担しなければなりません。従業員、又、従業員の扶養家族が増えれば、それだけ負担金額は大きくなります。つまり、会社に残せるお金が少なくなってしまうのです。

しかも、社会保険は法人として加入する義務のあるものです。加入していなければさかのぼって請求されますので、デメリットであるからといって支払いは免れません。

毎月の収入が固定される

フリーランスや個人事業主とは異なり、法人の役員は収入が「役員報酬」となります。この役員報酬は毎月受け取れるものですが、その受け取り金額は年度初めに決めなければなりません。変更してしまうと役員報酬が損金として使えなくなり、税金が高くなってしまいます。

毎月の収入が固定されるのは、役員は会社の運営に大きな影響を与えるからです。毎月収入を変更できる場合、自分の収入を増やすために不正な行為をする可能性もあります。そのような事態にならないために、年度内では変更できない制度となっているのです。

なお、売上が上がった時に役員報酬をアップできないのはもちろんのこと、売上が下がった時に役員報酬をダウンさせることもできません。どのような場合でも役員報酬を変更できない点がデメリットなのです。

法人税の均等割が発生する

法人化すると法人税の支払いをしなければなりません。この法人税には罠があり、赤字でも支払わなければならない均等割と呼ばれるものがあります。

均等割とは全ての法人に対して課される税金です。毎年7万円の支払いが求められていて、法人の収益が赤字か黒字かにかかわらず支払う義務があります。つまり、法人化した結果赤字になってしまっても、均等割の法人税は支払わなければなりません。

フリーランスや個人事業主の場合、事業で赤字が出ていると税金を免除されたり減額されたりします。しかし、法人の場合は均等割がありますので、どんなに赤字でも完全免除とはならないのです。

フリーランス(個人事業主)が法人化する手順


フリーランスや個人事業主から法人へとなるために、必要な手続きについて解説します。一部は専門家のサポートが必要となりますので、その点も含めて理解を深めていきましょう。なお、今回は法人の中でも株式会社の設立を想定しています。

法人の設立手続き

法人を設立するにあたり必要な事項の決定をします。様々な事項を決定しなければなりませんが、具体例を挙げると以下のとおりです。

  • 会社発起人
  • 会社名
  • 事業内容
  • 資本金
  • 定款内容

会社名は既存の法人に同じ名前のものがないか確認しておくべきです。同じ名前の法人が存在していると、間違い電話が多くなったり会社の存在になかなか気づいてもらえなかったりします。奇抜な名前である必要はありませんが、他の法人と被らないのが理想的です。

事業内容は既に行なっていたものを踏まえると良いでしょう。フリーランスエンジニアであれば、システム開発やそれに関連する事業が中心のはずです。実態を踏まえて事業内容を決定しておきましょう。

資本金や定款の内容は、どのような法人を立ち上げるかによって左右されます。資本金が多すぎると登記の税金が高くなったり法人税が高くなったりしますので、最低限の金額としておきましょう。なお、決定した資本金に合わせて出資金振込が必要ですので、必要な現金を用意しておきましょう。

法人の登記手続き

法人設立の準備が完了すれば、実際に法人の登記手続きをします。登記手続きは本店の所在する地域を所轄する法務局で行います。

手続きをする際には上記で準備したものが必要です。例えば「申請書」「定款」「資本金振込の結果がわかるもの」などです。他にも申請にあたり印鑑証明書が必要とされます。

加えて、申請にあたり税金や手数料が発生します。具体的には登録免許税(出資金の0.7%、最低15万円)、収入印紙代(4万円)、定款承認手数料などが該当します。これらの支払いについても事前に把握しておきましょう。

法人口座の開設

登記が完了すれば法人口座の開設が可能となります。取引をするにあたり必ず必要なものですので、できるだけ早く開設手続きをしましょう。

法人口座の開設に必要なものは、法人口座を開設したい金融機関によって異なります。各金融機関の公式サイトなどを確認すると必要なものが案内されていますので、事前に確認をして二度手間にならないよう注意しましょう。

なお、近年は法人口座の開設に際して厳しい審査が実施される傾向があります。架空の法人が銀行口座を開設しないように、金融機関は目を光らせているのです。そのため、法人口座の開設には時間がかかるケースが多々あります。

役員報酬の確定

会社の設立に関する基本的な手続きが完了すれば、続いては役員報酬の決定をします。役員は事前に定められた金額しか受け取れませんので、役員となる自分の報酬を決定しなければなりません。なお、新規に設立された法人は、設立から3ヶ月以内に役員報酬を決定して届ける必要があります。

基本的に役員報酬は、年間の売上金額などの見込みを利用して計算します。売上が上がり利益が多くなるのであれば高額に設定しますし、利益が少ない場合や赤字の場合は低額に設定します。様々な観点から決定する必要がありますので、慎重に報酬を計算しましょう。

なお、あまりに高い報酬を設定すると、個人にかかる所得税によって結果的に損をする可能性があります。自分の収入も重要ですが、「会社にお金を残す」という観点も重要ですので、両方に上手くお金を残せる金額が理想的です。

会社設立の届け出

会社を設立した後は、関係する官庁へ届け出が必要です。

例えば必ずやらなければならないことに、税務署への届け出があります。法人を設立した後は税務署で国税に関する届け出をし、税務事務所で地方税に関する届け出をします。税金の支払いは法人の義務ですので、後になって指摘されないように正しく届け出を済ませましょう。

また、個人事業主として届け出をしていた場合は、こちらの廃業手続きも必要です。個人事業主から法人に転換したことを申請する書類がありますので、そちらを提出しておきましょう。

なお、青色申告をした場合や消費税を支払っていた場合は、これらの取りやめに関する書類の提出が必要です。税務署のWebサイトなどで説明されていますので、内容を確認し必要書類をダウンロードして提出を済ませておきましょう。

社会保険の手続き

従業員1人以上の法人は、社会保険への加入が義務づけられています。そのため、厚生年金と健康保険への加入手続きをします。

手続きは年金事務所へ出向けばすぐに対応してもらえます。法人設立後速やかに対応する必要がありますので、どの年金事務所で手続きをするのかは事前に確認しておくことがおすすめです。こちらも公式サイトで案内がありますので、調べてみると簡単に把握できます。

まとめ

フリーランスや個人事業主から法人化すると社会的な信用力が高まる、節税できるなどのメリットを生み出します。年商が1,000万円前後のフリーランスや個人事業主は、法人化するのを視野に入れて良いでしょう。

ただ、法人化するとフリーランスや個人事業主には無かったデメリットを生み出します。また、法人化するためには様々な手続きがあり、お金と時間が必要になる課題があります。

とはいえ、法人化するメリットは非常に大きなものです。思い切ってフリーランスや個人事業主から法人となり、「社長」を名乗れるようになるのも良いでしょう。

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