IPv6とIPv4|概要とそれぞれの違いについて詳しく解説!
コンピュータやサーバーを接続する通信規格として、IPv4やIPv6が利用されています。今まではIPv4が利用されていましたが、アドレスの枯渇が近づいたことで、IPv6が利用されるようになってきました。ただ、現在はどちらも利用されている状況で、むしろIPv4が安定して利用されている状況です。
そのため、実際のところIPv6とはどのような仕組みであるのか理解できていない人もいるでしょう。また、この先どのようにIPアドレスが利用されていくのかイメージできない人もいるはずです。今回は、IPv4とIPv6についてそれぞれ解説していきます。
IP(インターネットプロトコル)とは
IPv4やIPv6を理解するためには、インターネットプロトコルを理解することが重要です。コンピュータの世界には「プロトコル」と呼ばれるものが準備されていて、コンピュータ同士がスムーズに通信できるようになっています。これはコンピューター間のルールであり、すべてがこれに沿って通信することで問題なくやり取りができるのです。
プロトコルには様々な種類がありますが、インターネット通信に関連するものがIPです。厳密にはIPだけでインターネット通信が実現されているわけではありませんが、中核になるものだと理解すれば良いでしょう。なお、IPと合わせて組み合わせられるプロトコルにTCPと呼ばれるものがあるため、これらを合わせて、TCP/IPと称されることもあります。今回はTCPについて詳しく解説しませんが、IPv4もIPv6もどちらも単体で利用されるのではありません。TCPと関係が深いことは理解しておくと良いでしょう。
IPアドレスとは何か
IPアドレスは、インターネットの世界でサーバーやコンピュータなどの場所を示す「住所」のような役割を持ちます。事前にIPアドレスが割り当てられ「どこから通信が始まったか」「どこに向かって通信しているのか」が明確になる仕組みです。言い換えると、IPアドレスがなければ、インターネットの世界で通信はできません。確実に相手先へと通信する必要があるため、基本的にIPアドレスは、ユニークな値が割り当てられます。
ただ、厳密にはIPアドレスにはグローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスの2種類があり、それぞれ以下のような違いがあります。
- グローバルIPアドレス:世界規模でユニークなアドレス
- プライベートIPアドレス:一定の組織などでユニークなアドレス
まずグローバルIPアドレスは、ICANNと呼ばれる、非営利法人が世界規模で管理しています。厳密にはこれらの株組織が存在して、それぞれがエリアごとのIPアドレスを管理しているのです。日本であれば「JPNIC」という組織がIPアドレスを管理して、必要に応じて割り当てをしています。日本でサーバーなどを運営している事業者は、こちらと契約してIPアドレスの割り当てを受け、それをさらにユーザーへ提供しているのです。
それに対して、プライベートIPアドレスはインターネットへと公開しているものではなく、組織の内部など狭い範囲で利用するIPアドレスとなっています。例えば、会社の中だけで利用するアドレスがIPアドレスです。一般的な電話番号は、社外から直接繋げられますが、内線番号は社外から繋げられないことをイメージするとわかりやすいでしょう。
プライベートIPアドレスは、事前に利用しても良い範囲が定められています。ユーザーはその中であれば、重複しないようにIPアドレスを自由に利用できるのです。同じIPアドレスでも、グローバルIPアドレスとプライベートIPアドレスは大きく異なったものであるため、その点は注意しなければなりません。
IPv6とIPv4とは
上記では、IPアドレスの基本について解説しました。続いてはそれを踏まえて、IPv6とIPv4について解説していきます。
IPv4とは
IPv4(Internet Protocol version 4)は、インターネット上のデータ通信を可能にするためのプロトコルで、1981年に初めて導入されました。32ビットのアドレス空間を持ち、最大で約43億個(2の32乗)の一意なIPアドレスを提供します。
このIPアドレスは、4つの10進数で表され、各セクションは0から255の範囲で構成されるルールです。例えば「192.168.1.1」などと表現します。当初は十分な数と考えられていたアドレス数ですが、インターネットの爆発的な普及に伴い、利用可能なアドレスが急速に枯渇しました。
そのため、この問題を緩和するために、ネットワークアドレス変換(NAT)やクラスレスドメイン間ルーティング(CIDR)などの技術が開発されています。しかし、IPv4のアドレス数が不足するという根本的な問題は解消されていません。また、IPv4では、セキュリティ面やアドレス管理の複雑さなど別の課題も残されています。
IPv6とは
IPv6(Internet Protocol version 6)は、IPv4の限界を解決するために、1998年に策定された次世代のインターネットプロトコルです。128ビットのアドレス空間を持ち、理論上340澗個(2の128乗)のIPアドレスを提供できます。つまり、実質的には世界中のあらゆるデバイスに一意なIPアドレスを割り当てることが可能となるのです。
IPv6アドレスは、IPv4アドレスとは異なり8つの16進数で表され、コロンで区切られるルールです。例えば「2001:0db8:85a3:0000:0000:8a2e:0370:7334」などと表現します。なお、このアドレスは「ドキュメント用のIPv6アドレス」として予約されているものであり、接続には利用できません。
また、IPv6はIPsecによるセキュリティの強化やルーティングの効率化、ネットワーク自動設定(SLAAC)など、新しい技術が採用されています。現時点では発展の過程ですが、これからさらに利便性が高まり、IPv4との差は大きくなるでしょう。
IPv6とIPv4の5つの違い
IPv6とIPv4にはいくつもの違いがあるため、それらの中でも特に重要な5つについて解説します。
IPアドレスの表記
同じIPアドレスではありますが、アドレスの表記方法に違いがあります。IPv6は8つの16進数で表され、コロンで区切られるのに対して、IPv4は4つの10進数で表され、ドットで区切られるのです。16進数であるかどうかと区切り文字に違いがあります。
言い換えると、IPv6とIPv4には明らかな表記の違いがあるため、どちらで記載されているかを容易に判断できます。IPv6で記載されているIPアドレスをIPv4と間違えることはほぼないでしょう。
割り当てられるIPアドレス数
IPアドレスによって利用する桁数が異なるため、割り当てられるIPアドレスにも大きな違いがあります。IPv6は340澗個という途方もない数を生成できるのに対して、IPv4は43億個だけです。IPv4も相当な数があるような印象を受けますが、近年はパソコンやスマートフォンに加えて、数多くのデバイスが登場しているため不足してきています。
もちろん、IPv6も有限個ではありますが、これだけ多くのデバイスが登場することはほぼないでしょう。それだけのデバイスが登場する前に、新しい規格が発明されるなどするはずです。
通信方式・通信速度
IPv6とIPv4を比較する際には、通信方式を考慮することが大切です。IPv6はPPPoEとIPoEの2種類に対応していますが、IPv4はPPPoEにしか対応していません。
まず、PPPoEは「PPP over Ethernet」の略で、電話回線やISDN回線を利用してインターネットへとアクセスするためのプロトコルです。Ethernetと呼ばれる家庭やオフィス内のネットワークと外部のインターネット(PPP)を接続するために開発されたものと考えましょう。この場合、インターネットへ接続するために「網終端装置」と呼ばれる、プロバイダーが提供する装置を利用しなければなりません。
対して、IPoEは「IP over Ethernet」の略で、Ethernetから直接インターネットへと接続するためのプロトコルです。この場合、電話回線などを経由する必要がなくなるため、網終端装置を利用せずとも通信できます。網終端装置は、通信速度の悪化を招く原因となりかねないため、経由しないIPv4は通信速度が高速になりやすいのです。
セキュリティ強度
IPv6はIPv4とは異なり、データを暗号化するための「IPsec」と呼ばれるセキュリティ技術が標準で採用されています。IPv4にも搭載されていますが、オプションで利用するかどうかを選択する仕組みであり、相対的にIPv6の方がセキュリティが高いといえるでしょう。
IPsecは通信の内容を暗号化するものであり、パケットの秘匿や改ざんの検知に対応できます。万が一、通信内容を盗聴されたとしても、暗号化によってその内容を理解することは不可能です。
IPv4の場合、セキュリティを強化するためにはSSL通信などを採用しなければなりません。別途、セキュリティに関する設定が求められ、運用も複雑になってしまうのです。IPv6はセキュリティ強度が高いだけでなく、運用負荷が軽減できる点でも違いがあります。
対応デバイス
IPv4とIPv6は独立した通信プロトコルであるため、対応しているデバイスに違いがあります。例えば、IPv4には対応しているものの、IPv6には対応していないデバイスが存在するのです。パソコンやスマートフォンは、どちらにも対応しているものが大半ですが、IoT家電などはIPv4にしか対応していないことがあります。
現状、IPv4がネットワークの中心であるため、IPv4に対応しているデバイスを採用していれば大きな問題にはなりません。しかし、IPv6が広がる際には、どちらのプロトコルに対応しているか確認することが求められるでしょう。
IPv6とIPv4は基本的に互換性がない
IPv6とIPv4は、基本的に互換性がありません。そのため、実装にあたっては、どちらの通信方式を採用するか考えることが重要です。現時点では、両方の通信規格に対応しているデバイスが多いため、どちらでも通信できるようにすることが望ましいでしょう。
また、IPv6とIPv4が共存できるように、「IPv4 over IPv6」と呼ばれる技術が登場しています。これは、IPv6のIPoE接続でありながら、IPv4で公開されているWebサイトなどへとアクセスできるようにしたものです。つまり、IPoE接続の特徴を活かしながらPPPoE通信も実現できます。
なお、事前に設定しておくことによって、自動的に振り分けたりIPv4 over IPv6を利用したりするケースが大半です。そのため、利用者が意識することはほぼなく、提供者も概ね初期設定のみになるでしょう。
まとめ
通信の中でも特に理解しておきたいIPv6とIPv4について解説しました。現時点では、大半の通信がIPv4で実施されていますが、将来的にはIPアドレスが枯渇すると予想されています。そのため、IPv6が当たり前に使われる時代が来るでしょう。
ただ、そのような状況下でネットワークプロトコルについての知識がないと、まったく対応できなくなってしまいます。現状、IPv6は進化を遂げていて情報は少ないですが、できるだけキャッチアップを続けておくことが重要です。