圧倒的少数派?Linuxデスクトップの現在地

圧倒的少数派?Linuxデスクトップの現在地

Linuxは世界的に利用されているOSで、主にサーバーで採用されています。エンジニアとして活躍している人ならば、Linuxサーバーを扱うことが多いでしょう。

サーバー向けのOSというイメージが強いですが、実際にはデスクトップでも利用されています。ただ、その数は圧倒的に少数で、WindowsやMacには遠く及びません。今回はサーバーOSとして注目されがちなLinuxをデスクトップで利用する前提で解説します。

Linuxデスクトップは圧倒的少数派

冒頭でも解説したとおり、Linuxデスクトップは圧倒的に少数派です。WindowsやMacとは比べものにならないと考えましょう。まずはどのような状況であるのか確認してみましょう。

Linuxデスクトップのシェアは1%程度

デスクトップパソコンに採用されているOSのシェアを確認してみると、概ね1%前後です。参照するデータや調査の時期によって多少異なりますが、非常に少ないと考えられます。それに対して、Windowsは75%程度のシェアがあるため、比較するといかにLinuxデスクトップが少数派であるのか理解してもらえるでしょう。

また、LinuxデスクトップはWindowsと比較すると、その詳細が多岐にわたっています。WindowsはWindows10とWindows11が中心ですが、Linuxには非常に多くのOSとディストリビューションが存在するのです。それぞれのLinuxデスクトップについて調査するとさらにシェアは少なくなり、ごく少数派といわれる所以となっています。

Linuxの中ではUbuntuのシェアが高い

LinuxにはいくつものOSがありますが、その中でも特にシェアが高いものはUbuntuです。Ubuntuにもディストリビューションがありますが、それらを合算すると半数以上のシェアを誇っています。Linuxデスクトップには多くの種類があるため、その中の割合で考えると大きな数値です。

なお、Debianなどサーバーでも利用されやすいLinux系OSが後ろに続きます。実質的にはLinuxデスクトップで言えばUbuntuが使われている時代だと表現しても過言ではないでしょう。

Linuxデスクトップのシェアが現在でも高まらない理由


LinuxはUbuntuをはじめとしてデスクトップパソコンとしても利用されるようになっています。ただ、実際にはそこまでシェアが高まっていない状況です。続いては、その理由についてご説明します。

コマンド入力のイメージが強い

Linuxデスクトップが普及しない背景には、コマンドラインで操作するイメージが強いからというものがあります。確かに一昔前のLinuxはコマンドラインから操作するものが中心であり、サーバーOSとして採用されているLinuxもコマンドで操作するものが多くある状況です。そのためLinuxデスクトップにおいても、コマンドでの操作が必要になるとイメージされることがやむを得ません。

ただ、Linuxを取り巻く状況は変化していて、今ではユーザーインターフェースで操作可能です。例えば、Linuxデスクトップとして利用されているUbuntuは標準でユーザーインターフェースが実装されています。コマンドライン操作がまったく分からない人でも、Linuxデスクトップを利用できる仕組みです。

とはいえ、このようなOSの存在はLinuxに詳しくない人には知られていません。結果としてLinuxデスクトップが普及しない原因となっています。

インストールされたパソコンがほぼ販売されていない

標準でLinuxがインストールされているパソコンがほとんど販売されていないことが問題です。まったく販売されていないわけではありませんが、家電量販店ではほぼ取り扱いがありません。気軽に手に入れられないことにより、少数派のパソコンになっています。

基本的にLinuxデスクトップを利用するためには、自分自身でインストールしなければなりません。パソコン本体を用意して、そこにLinuxをインストールするのです。大半の人は自分でOSをインストールすることがないため、Linuxデスクトップが普及しません。

個人経営の電気屋さんなどではLinuxデスクトップが販売されていることもあります。ただ、そのような事例も限られていて、Linuxデスクトップが今でも普及しない原因となっているのです。

サポートが少ない

パソコン全体のサポートが少ないこともLinuxデスクトップが普及しない要因です。特に法人で利用する際は手厚いサポートが重要視されるため、Linuxデスクトップは積極的に採用されないのです。

基本的にLinuxはコミュニティが主体となって開発されています。法人が開発している製品もありますが、そうではないものが中心だと考えてよいでしょう。そのような体制で開発されているため、公式による手厚いサポートというものがないのです。

近年はコミュニティが活発になっていて、利用者を支える体制も整っています。ただ、まだまだ初心者に優しいとはいえず、Linuxが少数派である原因となっています。

対応しているアプリケーションが少ない

WindowsやMacと比較すると対応しているアプリケーションが少ないという問題があります。近年はLinux向けにもアプリケーションが開発されていますが、少ない状況には変わりありません。業務で使用するアプリケーションがLinux向けに提供されていなければ、Linuxデスクトップの導入は不可能です。

Linuxデスクトップの中でもUbuntuは利用者が多いことから、比較的多くのアプリケーションが開発されています。また、ユーザーインターフェースを前提としたLinuxデスクトップであるため、WindowsやMacと遜色ないものです。例えば、Webブラウザはほぼ同じものが開発されています。

しかし、特定の業務で利用するようなアプリケーションは、ほとんどLinuxデスクトップ向けに開発されていません。業務の遂行に支障があり、Linuxデスクトップは採用されなくなってしまうのです。

2015年頃にはLinuxデスクトップも普及した


Linuxデスクトップがまったく使われなかったのかと問われるとそうではありません。Ubuntuの登場などによって、活用の兆しが見えたこともありました。現在では積極的に利用されるOSではありませんが、Linuxデスクトップの歴史についても解説しておきます。

Googleなどの大手企業での採用

あまり知られていませんが、2015年頃にはGoogleなど大手IT系企業でLinuxデスクトップが導入されました。元々Linuxは有志によって開発されているオープンソースのOSであるため、これをカスタマイズして導入したのです。一般公開されているものではなく、Googleが独自にLinuxデスクトップを導入しました。

このようなLinuxデスクトップが導入されたことで、世の中的にもある程度はLinuxが注目されました。Googleのような大手企業が導入したため、それに追従するような形で別の企業も導入を検討したのです。また、実際に導入する企業も見受けられました。

ただ、上記で解説したとおり、Linuxデスクトップは現場でも普及しないだけの理由があります。そのような背景から、Googleなども積極的な活用については公言しなくなり、他の企業も積極的には導入しなくなってしまいました。

日本でも「無料」のOSとして活用

基本的にLinuxは無料で利用できるため、無料という利点に惹かれて自治体で導入されたケースがあります。「自治体ではLinuxなど採用されないであろう」と考えられがちですが、実際には導入されていたのです。日本においても無料のOSであることは大きなメリットとして注目されました。

ただ、Linuxが無料であることの背景には、公式のサポートが無いなどの条件が隠れています。こちらも上記で解説したとおりで、自治体では使いこなせないのです。Linuxデスクトップが導入された頃には今ほどIT人材が採用されておらず、Linuxの活用には限界がありました。そのため、結局は浸透しないまま終わってしまったのです。

なお、現在はIT人材が増えているため、状況が異なるかもしれません。現時点でLinuxデスクトップを導入する話はほとんど聞きませんが、活用できる人材が主体となれば企業や自治体でも使いこなせるでしょう。

これからLinuxデスクトップは普及するのか


これまでLinuxデスクトップの現状や現在地について解説しました。具体的にどのような問題があり、どのような歴史を辿ってきたのか理解してもらえたでしょう。最後に、これらを踏まえてLinuxデスクトップはこれから普及する可能性があるのかを考察してみます。

「無料で多機能」が評価されるか

UbuntuをはじめとするLinuxデスクトップ向けのOSは無料で多機能なものが増えています。対応しているアプリケーションこそ少ないものの、OSとして必要な機能はWindowsやMacに引けを取らないものです。根本的に異なったOSであるため一概には比較できませんが、無料であることを踏まえると十分すぎる機能でしょう。

そのような価格と機能面を踏まえると、Linuxデスクトップが評価される可能性は十分にあります。特に上記でも触れたように最近はIT人材を確保する企業が増えてきました。そのような企業において「できるだけ低価格でパソコンを導入したい」と考えたときに、Linuxデスクトップが役立つのです。

ただ、Linuxについて理解してもらうことは「至難の業」という考え方もあります。世の中にはOSを理解していない人も多数いるからです。Linuxは無料で多くの機能が利用できますが、それを提案するまでにいくつかのハードルがあるでしょう。

アプリケーションの追従も重要となる

どのようなアプリケーションがLinuxデスクトップで利用できるかも重要です。OSとしてはUbuntuなど高機能なものが増えていますが、それだけでは業務には対応できません。市販のアプリケーションやスクラッチ開発がLinuxに対応することが求められます。

ただ、LinuxはサーバーOSとして多用されているため、Linux向けのアプリケーションを開発すること自体は負担ではありません。要望があればベンダーはLinuxサーバーで動作するアプリケーションを開発しています。それを鑑みると、Linuxデスクトップ向けのアプリケーションを開発することは容易です。

ただ、ベンダーがアプリケーションを開発するためには、需要と供給のバランスが重要となります。需要が少ないとどうしても尻すぼみしてしまい、Linuxデスクトップ向けのアプリケーションは開発されません。現状、Linuxデスクトップが普及したとしても、アプリケーションはスクラッチしてもらうことが前提となってしまいます。

まとめ

Linuxデスクトップの現在地について解説しました。基本的にパソコンはWindowsやMacのOSが採用されていて、Linuxはサーバーが中心です。エンジニアの中でもLinuxデスクトップを使用している人は限られているでしょう。

どうしてもLinuxは扱い方が難しい印象があり、また家電量販店などで発売されていません。そのような背景から、導入に至る人が少なく必要以上に普及していない状況です。

ただ、Ubuntuのようにユーザーインターフェースで操作できるOSも増えています。また、一部のアプリケーションはLinuxデスクトップ版も公開されています。WindowsやMacには届きませんが、一度Linuxデスクトップも使ってみると良いでしょう。

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