マルチドメインとは?特徴やメリット・デメリットを徹底解説!

Webサイトの構築において重要な考え方に、マルチドメインがあります。ひとつのサーバを用いて複数のWebサイトを運営する技術です。近年は複数のWebサイトを運営する企業が増え、マルチドメインの重要性が高まってきました。
しかし、マルチドメインがどのような技術であるか理解できていない人も多い状況です。今回は、マルチドメインの概要からメリットやデメリットまで、徹底的に解説します。
マルチドメインとは
マルチドメインは、ひとつのサーバで複数のドメインを扱う技術を指します。多くの場合、ひとつのドメインに対してひとつのWebサイトが割り当てられるため、マルチドメインは「ひとつのサーバで複数のWebサイトを運営する技術」と理解して差し支えありません。
マルチドメインを用いることで、ひとつのサーバを用意するだけで複数のWebサイトを公開・運営できるのです。
近年はマルチドメインが当たり前のように利用されるようになりました。そのため、レンタルサーバの大半がマルチドメイン機能を提供しています。技術の仕組みさえ理解できていれば、今すぐにでも利用できると考えてよいでしょう。
マルチドメインとシングルドメインやサブドメインとの違い
マルチドメイン以外にも、シングルドメインやサブドメインと呼ばれるキーワードが登場します。これらを混同してしまう人も多いため、違いについても解説していきます。
シングルドメインとは
シングルドメインとは、ひとつのサーバに対してひとつのドメインだけを割り当てることを指します。従来は、ドメインとサーバを「1対1」で紐付けることが多く、古くからの考え方と理解してよいでしょう。今でもマルチドメインを利用していないサーバは、シングルドメインのサーバといえます。
シングルドメインは、マルチドメインとは異なり、ひとつのドメインでコンテンツを充実させたい場合に利用されます。同じドメイン配下に複数のディレクトリを含む構成とすることで、利用しているドメインの価値を高める効果が期待できるのです。
サブドメインとは
サブドメインとは、既存のドメイン名の前に別の文字列を付加できる機能を指します。シングルドメインやマルチドメインとは異なり、ドメインネームサービス(DNS)の機能と理解しましょう。
たとえば、「example.com」という独自ドメインを取得していた場合「info.example.com」や「shop.example.com」などを作成することができます。このように、独自ドメインをさらに拡張したようなものがサブドメインです。
Webサイトを運営していると、ひとつのドメイン名だけでは対応できないケースが出てきます。しかし、新しくドメインを取得するとコストや工数がかかりかねません。また、ドメイン名が変わることでユーザビリティが下がる場合もあるのです。これらを避けるため、サブドメインを利用し、より柔軟なWebサイト運営を実現します。
マルチドメインを採用するメリット
Webサイトの運営にマルチドメインを採用することで得られるメリットを紹介します。
サーバコストを削減できる
マルチドメインを採用することで、管理すべきサーバの台数を減らせます。その結果、サーバ関連のコストを削減できることが大きなメリットです。たとえば、レンタルサーバ契約件数を減らし、コストを削減できます。また、それぞれのサーバを運用するための人件費も抑えられるのです。
近年は低価格なサーバも増えていますが、台数が増えてくると、どうしてもトータルコストは増加してしまいます。そのような状況下でも、マルチドメインを利用すれば、多少なりとも運用コストを抑えられるのです。
サーバリソースを有効活用できる
コスト削減にも通じる部分ですが、サーバリソースを有効活用できることも、マルチドメインの大きなメリットです。たとえば、大手のレンタルサーバであれば、ストレージ、CPU、メモリーなども十分な容量が割り当てられています。そのため、リソース面で不足するWebサイトは少ないはずです。このような状況で、新たにサーバを契約することは、リソースの無駄遣いといえます。
しかし、マルチドメインを採用すれば、ひとつのサーバに複数のWebサイトを配置し、リソースを共有できます。つまり、それぞれのサーバでリソースを持て余すことなく、1台のサーバリソースを有効活用できるのです。
SEO対策に繋がりやすい
マルチドメインは、一つのサーバに複数のWebサイトを配置する仕組みです。ただ、検索エンジンはそれぞれ別々のWebサイトとして認識します。そのため、それぞれのサイトにSEO対策を施し、相互に効果を高めることができることもメリットです。
たとえば、コーポレートサイトとECサイトをそれぞれ最適化すると、同じキーワードで複数の自社サイトを検索結果に表示できるかもしれません。検索結果で上位を独占できれば、競合他社に顧客を取られるリスクを減らせるのです。
ブランドを保護できる
複数のドメインを取得し、同じサーバに転送することで、ブランドを保護できることもメリットです。メインとなるドメインへリダイレクトする仕組みにしておくと、よりブランドを保護しやすくなります。
近年は、有名ブランドのドメインを第三者が取得し、悪質なWebサイトへ誘導するケースが増えてきました。
たとえば、「ブランド名.com」のようなドメインを第三者が取得し、あたかも公式サイトのように見せかける手口です。そこで個人情報などを入力させ、第三者が情報を抜き取る被害が発生しています。
こうした状況を防ぐためにも、使用しないドメインもあらかじめ取得しておくことが重要視されてきました。ドメインを取得するだけでは無駄なコストになるため、マルチドメインを用いて、本来の自社サイトへ誘導できるようにするのです。
マルチドメインを採用するデメリット
マルチドメインには多くのメリットがありますが、それと同時にデメリットも存在します。
サーバ障害時の影響が大きい
ひとつのサーバで複数のWebサイトを運営するため、サーバ障害時の影響が大きいことがデメリットです。
たとえば、障害でサーバが停止すると、マルチドメインで運用しているすべてのWebサイトが同時に停止してしまいます。場合によっては、大きなビジネスチャンスを逃してしまうことにもつながるでしょう。
マルチドメインには多くのメリットがある反面、障害時のリスクは無視できません。もし、すべてのWebサイトが同時停止するようなリスクを許容できないのであれば、マルチドメインは避けた方がよいでしょう。この場合は、マルチドメイン運用ではなく、複数のサーバ会社を組み合わせるなどの対策がおすすめです。
リソースが不足する可能性がある
メリットでも触れたとおり、マルチドメイン運用ではサーバリソースを有効活用できます。しかし、あまりに多くのWebサイトを登録すると、リソースが不足するリスクがあるため注意が必要です。
特に、データベースを利用している場合、想像以上にストレージ容量を消費していることもあります。サーバリソースが不足すると、ある日突然、すべてのWebサイトが停止するような事態に陥るかもしれません。リソースの有効活用は大きなメリットですが、リソース不足に備えて定期的な監視をおこなうことが重要です。
サイトの運用自体には手間がかかる
マルチドメインによってサーバの運用負担は軽減できますが、Webサイトそのものの運用は引き続き必要です。たとえば、ドメインを増やすと、その分だけSSL証明書を発行・紐付ける作業も増えます。証明書の更新を忘れるとSSL接続ができなくなり、セキュリティ上の問題を引き起こすリスクが生じるのです。
また、Webサイトを増やせば増やすほど、更新作業や運用管理にかかる手間も増えていきます。管理・運用体制を考慮せずにWebサイトを増やしてしまうと、思わぬトラブルに発展する可能性もあるため、注意が必要です。
マルチドメインの具体的な活用例
続いては、マルチドメインをどのようなケースで利用すればよいか、具体例を紹介します。
企業サイト
企業サイトの場合、複数のドメインを取得して、ひとつのサーバで運用することが考えられます。たとえば、多国籍展開に対応するために、それぞれの地域に合わせたドメインを取得し、以下のように運用するなどです。
- 日本では「.co.jp」
- ヨーロッパでは「.eu」
- アメリカでは「.com」など
国ごとにそれぞれ異なるドメインを取得して、これらをコーポレートサイトのURLに利用するようにします。本来は個別のサーバで運営することが求められますが、地域ごとのドメインをひとつのサーバへ紐づけ、マルチドメインでコーポレートサイト全体を運営するのです。
また、コーポレートサイトだけでなく、ECサイトやオウンドメディアを同時に運用することも考えられます。この場合、用途に応じて複数のドメインを取得しながらも、サーバはひとつにまとめる流れです。そうすることで、運用コストを最小限に抑えるなどの効果を発揮できます。
ブランドや事業部門別の展開
コーポレートサイトとして一括で運用するのではなく、ブランドや事業部門ごとに独自のドメインを取得することも考えられます。そして、これらのドメインでそれぞれ個別のWebサイトを公開する方法も有効です。
イメージしやすいように例を挙げると、トヨタ自動車はレクサスというブランドの自動車を展開しています。そして、レクサス専用のドメインを取得し、以下のようなコンテンツでWebサイトを運営しているのです。
- トヨタのコーポレートサイト:ブランドや自動車の概要について紹介のみ
- レクサス専用のWebサイト:自動車のより詳細な情報提供
※知名度の高いブランドを用いた例であり、上記のWebサイトがマルチドメインであるとは断言できません
このように、コーポレートサイトとは別にブランドサイトをマルチドメインで運営することが考えられます。専用のブランドサイトを立ち上げることで、より強力にブランドをアピールできるのです。また、マルチドメインとすることで、Webサイトを運営するコストを抑えやすくなります。
キャンペーンや特設サイトの公開
一時的なキャンペーンや特設サイトを設ける際にも、マルチドメインは有効です。専用のドメインを取得し、ドメイン名からキャンペーンの内容が分かりやすいようにします。たとえば、「○○キャンペーン2025.com」といった形で取得するのです。
このようなキャンペーンサイトは、一定期間のみ運用されることが大半でしょう。そのため、個別にサーバを準備するとコストが高くなりがちです。これを回避するため、マルチドメインを利用し既存のサーバに組み込むことで、コストを抑えるようにします。
まとめ
ひとつのサーバで複数のWebサイトを運営できるマルチドメインについて解説しました。従来はWebサイトに対してひとつのサーバが必要でした。しかしマルチドメインを活用することで、複数のサーバを1台に集約できるようになっています。これにより、さまざまなメリットを享受できる状況が整っているのです。
ただし、マルチドメインを用いても、各Webサイトの管理負担がなくなるわけではありません。また、サーバ障害時にすべてのサイトが停止するなど、特有のリスクもあります。基本的にはマルチドメインの活用をおすすめしますが、デメリットも踏まえたうえで採用を検討してください。