NASとDAS、SAN|概要・それぞれの違いについて解説!
ストレージをサーバに接続する方法として、NAS・DAS・SANの3種類が一般的には利用されます。どれも幅広く利用されている方式ですので、ネットワークを取り扱う人であればこれらについて正しい知識を持っておかなければなりません。
重要な知識ではあるのですが、NAS・DAS・SANの概要や違いについて理解できていない人がいるようです。今回はそれぞれの概要と違いについて解説していきます。
この記事の目次
NASとDAS、SANそれぞれのメリット・デメリット
初めに、NASとDAS、SANのメリット・デメリットをまとめて紹介します。
メリット | デメリット | |
NAS |
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DAS |
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SAN |
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NASとDAS、SANのメリット・デメリットに関しては、以下でさらに詳しく解説するので、まずは概要だけ押さえられるようにしてください。続いて、NASとDAS、SANそれぞれの概要を説明していきます。
NAS(NetworkAttachedStorage)とはなにか
NASはネットワークを介してストレージに接続する接続方式です。まずはNASの概要と利用する上でのメリットやデメリットについて解説します。
NASの概要
NASは既存のサーバ構成に影響を与えずに、ネットワークに直接接続できるストレージとして開発された考え方です。サーバは複雑なネットワーク構成上に構築されているケースが多いですので、それらのネットワークに影響を与えず利用できるように考えられています。
基本的にNASを導入する場合、ファイルストレージ用に特化したOS、他のサーバと接続するためのネットワークインターフェースやストレージ本体を用意します。なお専用のOSが存在しますが、環境によってはWindowsOSなどを利用して、クライアントとなる端末のOSを揃えるようなケースもあります。
なお、インターフェースにはEthernetが利用され、プロトコルにはNFSやCIFSが利用されます。これらのキーワードはNASを利用するにあたり必ず出てきますので、覚えておくようにしましょう。
NASのメリット
既存のLANが利用可能
NASの大きなメリットに、既存のLANをそのまま利用可能であることが挙げられます。ストレージを導入するために新しくネットワークの構築をする必要はなく、既存のネットワークにNASの環境を接続するだけです。ネットワーク関連の準備があまり必要ないことから、導入までの費用や期間を抑えられます。
ストレージの接続方式によっては、接続のために新たなネットワークを導入しなければなりません。そのような方式を利用していると、導入までに時間を要してしまいますし、新しい機器の導入で費用がかかる可能性もあります。NASではこのような心配が基本的にはありません。
メンテナンス性が高い
NASはストレージに特化したOSなどを利用しますので、 メンテナンス性が高いメリットがあります。基本的なNASはファイル共有に関する限られた機能だけを搭載していますので、メンテナンスにあたり複雑な機能が必要とされないのです。Windows などを利用している場合はやや異なりますが、それでもメンテナンス性は高いと考えてよいでしょう。
また、NASは専用のネットワークを必要としませんので、ネットワークのメンテナンス性も高まります。今までのネットワークメンテナンス以上の手間がかからず、同じように運用ができるのです。物理的に新たな運用が必要となると担当者の教育などが必要となりますが、そのような作業も必要ないという点でメリットがあります。
NASのデメリット
速度がネットワーク負荷に左右されやすい
ネットワーク経由でストレージに接続しますので、ネットワーク負荷に速度が左右されやすくなります。ストレージの性能に問題がない場合でも、同じネットワークで大量の通信が行われていると速度が遅くなってしまいます。予想外に通信速度が遅くなってしまう場合があり、注意しておかなければなりません。
特にNASのデータ通信速度はセグメントの負荷ではなく、物理的な回線速度に左右されます。物理的に同じ回線を利用して複数のネットワークを構築しているならば、相互に影響が出てしまう可能性があります。
このデメリットを解消するために、NASに割り当てる回線はネットワークの影響をできるだけ受けないようにするべきです。論理的に同じネットワーク内の負荷はやむを得ないと考えられますが、異なるネットワークの負荷は影響が無いように設計しましょう。
DAS(DirectAttachedStorage)とはなにか
DASはサーバに直接ストレージを接続する形式の接続方法です。続いてはDASの概要とメリットやデメリットについて解説します。
DASの概要
DASはサーバに直接ストレージを接続するものです。ネットワークなど他の仕組みを介して接続するのではなく、専用のケーブルやコネクターなどを利用して直接サーバと接続するのです。サーバ自体もDASでの接続ができるように設計されているケースが多く、簡単に導入できるストレージの接続方法です。
サーバにストレージを直接接続しますので、接続できる台数や種類などはサーバの性能によって異なります。複数のストレージに対応しているものもありますし、1つのストレージしか対応していないものもあります。
DASのメリット
導入コストが安価
DASはサーバにストレージを直接接続しますので、導入にあたり準備がほとんど必要ありません。そのため導入費用を低減しやすいメリットがあります。ストレージの購入費用や接続ケーブルの準備費用などが発生すると考えておきましょう。
DAS以外の接続方式を利用すると、ストレージ以外の費用が発生する可能性があります。例えばネットワークの構築費用や増築費用が発生してしまい、予想外に導入費用が高まる可能性があるのです。しかし、DASではこれが起きません。
ただ、注意点としてサーバによって対応しているストレージの種類が固定されてしまいます。場合によっては対応しているストレージが高価なものばかりに限られてしまうかもしれません。
運用スキルがほぼ不要
DASはサーバにストレージを直接接続しますので、運用スキルがほとんど必要ありません。多くの人が運用しやすいという利便性の高さはメリットです。
運用に専用の知識が求められてしまうと、それに対応できる人を用意しなければなりません。専用のスキルを持つ人を採用したり、アウトソーシングして運用を依頼したりしなければなりません。つまり、導入時はあまり意識されていない部分で費用がかかるのです。
しかし、DASではこのような専門スキルがほぼ必要ありません。専用の人材を用意する必要はなく、既存の要員だけで十分に運用が可能です。
DASのデメリット
リソースの分配が不可
サーバに直接ストレージが接続されていますので、ストレージはサーバが占有している状態となります。結果、DASではストレージの容量を他のサーバに分配できないデメリットを生み出します。
ストレージの容量を分配できなければ、サーバの台数分だけストレージが必要となります。それぞれのサーバに余裕を持ったストレージを割り当てるとすると、全体では多くの余りを持ってしまいます。管理するサーバが何十台や何百台になると、無視できないような無駄を生み出してしまうのです。
とはいえ、DASはストレージの増設をしにくい接続方式でもあります。そのため最初から少ない容量を選択しにくく、デメリットは解消しにくいのです。
サーバ障害が起きるとアクセスできない
ストレージはサーバに直接接続されていますので、サーバに障害が起きるとストレージは利用できなくなります。サーバ経由でのアクセスが必須ですので、読み書きができなくなってしまうのです。
ストレージとサーバがセットであり、占有しているサーバでしか利用しない場合は影響範囲を抑えられます。しかし、別のサーバからストレージを参照している場合は、システムの動作が停止してしまうなど影響範囲が広がります。DASはこのデメリットを解決できません。
SAN(StorageAreaNetwork)とはなにか
SANはネットワーク経由で利用するストレージの接続方法です。専用のネットワークを用意し、これとサーバ環境を接続して利用します。最後にSANの概要とメリットやデメリットについて解説します。
SANの概要
SANはサーバとは別にストレージ専用のネットワークを構築し、そのネットワークを利用してストレージにアクセスするものです。既存のシステムが存在するネットワークとは別のネットワークを構築しますので、それぞれを個別に管理できます。
SANは新しいネットワークを構築しますので、ストレージに求める性能を踏まえて柔軟な設計が可能です。また、ストレージ設備には多くの選択肢があります。ただ、ネットワークを構築することから、導入にあたり負担がやや大きくなってしまいます。
SANのメリット
アクセスが高速
SANは専用の回線を利用してアクセスしますので、通信速度が高速です。ネットワークが他の用途に利用されませんので、常に設計した速度での通信を期待できます。
ストレージを利用する際の大きな課題に通信速度があげられます。通信速度が低下するとシステム全体に影響を及ぼしますので、可能な限り高速な設計としておきたいのです。
その点で、SANは通信速度に最大限のこだわりを持てます。通信速度が重要視されるようなシステムで、大きなメリットを生み出します。
ストレージの集中管理が可能
専用の環境を構築しますので、ストレージの管理が一元化できるメリットがあります。一括でストレージを管理できますので、トラブルなどにも対応しやすくなります。
システムの規模が大きくなってくると、必然的に求められるストレージ量が多くなります。数が多くなってしまうと管理が煩雑になってしまい、管理ミスから障害が起きる場合もあります。そのような問題をあらかじめ防げるという点で、大きなメリットがあります。
SANのデメリット
導入や運用に専門知識が必要
ストレージ専用のネットワークを構築しますので、これに関する専門知識が必要です。通常のネットワークとは異なった構築ですので、ネットワークが理解できていれば良いというわけでもありません。
そのため基本的には、運用するために専用の要員を用意したり、アウトソーシングしたりしなければなりません。専門知識が必要となるために、コストが高くつきやすくなる点はデメリットなのです。
導入費用が高価
SANはネットワークなどを新たに用意しますので、初期費用が高額になってしまいます。既存のネットワーク環境を活用するものでもありませんので、物理的に多くの機器を用意しなければなりません。
機器の価格は利用するものによって大きく差があります。そのため一概に機器が高価だとは言い切れません。ただ、新規の機器を多く導入しなければなりませんので、どうしても初期費用は高額になってしまいます。
NASとDAS、SANそれぞれの違い
NASとDAS、SANそれぞれの違いを解説します。NASとDAS、SANには以下のような違いがあります。導入のハードルが一番低いのが「DAS」、通信速度が最も高速なのが「SAN」、バランスの良さを備えた接続方式が「NAS」であることがポイントです。
導入のハードル | 導入費用 | 通信速度 | 維持・運用の手間 | |
NAS | 比較的低い | 安い | 遅くなる可能性あり | 比較的簡単 |
DAS | 低い | 安い | 遅くなる可能性あり | 簡単 |
SAN | 高い | 高い | 高速・安定 | 難しい |
違い①:導入のハードル
NASとDAS、SANでは導入のハードルが大きく異なります。例えばDASはサーバにストレージを直接接続すれば良いのに対し、SANはネットワーク環境から整える必要があります。前者のDASは比較的簡単だと考えられますが、後者のSANは難易度の高いプロジェクトとなるでしょう。求められるスキルが異なるのです。
違い②:導入費用
NASとDAS、SANでは導入費用も大きく異なります。NAS・DASは安く、SANは高いです。既存のLANをそのまま利用可能であるNASや、サーバに直接ストレージを接続するDASは導入費用が比較的安く済みます。SANはサーバとストレージ間に専用のネットワークを用意する必要があったり、専用の機器を設置したりする必要があるため、導入にあたって大規模なインフラ整備が必要となります。そのため初期導入の人件費や、設備投資が高額になります。
既存のネットワークを利用できるものがあれば、機器を購入してネットワークを作り直さなければならないものもあります。購入するものが多くなるほど導入費用は高額になってしまいます。
違い③:通信速度
ストレージへの通信速度を重要視するかで、選択する接続方式が異なります。例えばSANは特に接続速度が高速で安定するものですので、速度を重視する環境ではこちらが選択肢となります。
それに対して特に速度にこだわりが無いのであれば、DASやNASも選択肢に挙がります。これらは利用するストレージの機器やネットワーク環境により速度が遅くなる可能性があり、SANの性能とは大きく違う場合も多々あります。
違い④:維持・運用の手間
ストレージを維持・運用する手間に違いがあります。基本的には直接ストレージを接続するDASが最も簡単で、専用のネットワークを用意するSANが最も手間です。
専用のネットワークを用意したり、専門知識が求められたりすると、社内の要員だけでは対応しきれない可能性があります。手間がかかるだけではなく、コストもかかるなどの問題を引き起こしてしまいます。
まとめ
サーバとストレージの接続方式について解説しました。大きく分けてNAS・DAS・SANの3種類がありますので、それぞれの接続方式について理解しておきましょう。
NAS・DAS・SANの接続方式ではインターフェースやプロトコルの違いがあります。また、メリットやデメリットも大きく異なっています。どれか一つを理解できたら良いのではなく、全てを理解して状況に応じて使い分けができなければなりません。
ストレージの良さを活かせるかどうかはストレージの接続方式を理解することから始まります。今回解説したNAS・SAN・DASのメリットとデメリット、導入のハードル、通信速度、運用コストを理解したうえで、状況に応じて適切な接続方式を利用する必要があります。
サーバとストレージの導入の検討が難航する場合は、導入のハードルが最も低いのが「DAS」、通信速度が最も高速なのが「SAN」、導入のハードル、通信速度、運用コストなどがバランスの良い接続方式が「NAS」であることを思い出してみるといいでしょう。