ニューラルネットワークとは?仕組みと特徴についてわかりやすく解説

ニューラルネットワークとは?仕組みと特徴についてわかりやすく解説

ニューラルネットワークとは、人間の脳内に存在する神経細胞である「ニューロン」とそのつながりを模した数式的なモデルを指します。脳内には神経回路網と呼ばれるものが存在するため、これを数学的に示し、コンピュータなどで処理できるようにするのです。

世の中にはいくつものモデルがありますが、ニューラルネットワークを活用することで、音声や画像など複雑なデータを学習・認識できるようになります。現在、さまざまな技術を支えている概念であるため、ニューラルネットワークについて特徴や仕組みなど基本知識を解説します。

ニューラルネットワークの特徴とは

最初に、ニューラルネットワークとはどのような数学的なモデルであるか、基本知識について解説します。

ニューラルネットワークの概要

ニューラルネットワーク(NN)とは、人間の脳内にある無数の神経細胞(ニューロン)の結合構造を数理的なモデルとして模倣した情報処理の手法です。入力データは層状に並ぶ多数の「ニューロン」を通過し、それぞれのニューロンがさまざまな処理を進めます。例えば、前段階から得た出力に重みを付け、活性化関数を用いて非線形な変換を施すなどです。

なお、この「重み」は学習過程で自動的に更新されます。そのため、複雑なデータ構造やパターンを捉えることが可能です。結果、画像識別や音声認識、自然言語処理など、人手による特徴の設計が困難な分野でも利用できるようになりました。現状、高精度な予測や分類を実現できる手段として、幅広い場面で利用されています。

機械学習や深層学習との違い

一般的な機械学習では、有用な特徴を人間が考えて抽出し、それをモデルに適用しなければなりません。つまり、学習データを人間が生成する手間が発生してしまいます。一方、ニューラルネットワークはデータから直接特徴を学習し、自動的に適切な表現を獲得できることが特徴です。

さらに、このネットワークを多層化した深層学習(ディープラーニング)では、より抽象的な特徴を捉えられます。しかも、階層的に捉えることが可能であるため、従来のように階層の浅いモデルや単純な機械学習手法よりも表現力が高まるのです。これにより、ビッグデータ処理や難易度の高いタスクへの対応力が増し、AI開発をより支えやすくなっています。

ニューラルネットワークの仕組み


続いては、ニューラルネットワークの仕組みについて詳しく解説します。

入力層・隠れ層・出力層から構成

ニューラルネットワークは、主に「入力層」「隠れ層」「出力層」という3つの層で構成されます。

まず、入力層は、画像やテキストなどの「生データ」をネットワーク内部に受け渡す入り口です。続く隠れ層は、入力層から受け取った情報を複数回にわたって変換・加工し、より抽象的な特徴を抽出します。この隠れ層が多層にわたる場合、より複雑なパターンを理解できるようになるのです。最後に出力層が、隠れ層で抽出・変換された特徴をもとに、予測結果や分類結果など、実際に用いるための最終的な出力を与えます。

ニューラルネットワークはこうした層構造によって構成されているため、複雑なタスクに対応できるようになりました。この点が、今までの機械学習などと大きく違う部分と考えても良いでしょう。

「重み」を利用した結果の出力

ニューラルネットワーク内の各ニューロンは、前段階の出力値に「重み」と呼ばれる数値を掛け合わせることで情報を伝えます。重みは、入力データがどれほど重要であるかを示す指標で、大きな重みを持つ入力は、次の層へと与える影響が大きくなるのです。

さらに、各ニューロンは重み付けの合計値に活性化関数を適用し、非線形な関係性をモデル化できます。多角的に重み付けを実現した結果、出力層から回答が得られるという仕組みです。

なお、重みは学習によって自動的に更新されるように設計されています。入力されたデータに最も適した表現を学習し続けることで、高精度な予測や分類にも対応できるようになるのです。

学習結果を利用した学習

初期状態では、ニューラルネットワークが「どの程度の重み付けを付与すればよいか」という部分を確定できません。そのため、ニューラルネットワークを利用しても、意図する結果が得られないということが多々あります。そこで、学習結果を利用した学習を続けることが重要です。

具体的には、入力データを通して得た出力結果と、理想的な正解との誤差を計算します。そして、算出された誤差をもとに、重みを少しずつ調整するのです。この仕組みは「誤差逆伝播法」と呼ばれ、可能な限り誤差が小さくなるように重み付けを変化させていきます。

この仕組みを何度も繰り返すことで、ニューラルネットワークは徐々に正確な判断を下せるようになります。モデルが自ら改善する仕組みがあることによって、より信頼性の高い予測能力を獲得できるのです。

ニューラルネットワークの代表的な学習方法

ニューラルネットワークと集約された表現になりがちですが、実際にはいくつもの学習方法があります。どれを選択するかによって結果などが変化するため、代表的なものを紹介します。

Dropout法

Dropout法とは、ニューラルネットワークの学習過程において、隠れ層や入力層の一部のニューロンを一定の確率で「無効化」する手法です。学習中にのみ無効化される仕組みで、モデルを利用する「推論」のタイミングでは、すべてのニューロンが有効化されます。

これの大きなメリットは、特定のニューロンに依存することを防げるという点です。標準的なニューラルネットワークでは、一部のニューロンに処理が偏ってしまい、得られる結果も偏るリスクがあります。しかし、Dropout法ならば、汎用性の高い学習結果を得られるのです。

加えて、異なる組み合わせのニューロンがモデルの学習に関わるため、ネットワークはアンサンブル学習のような効果を得やすくなります。結果、過学習の発生を抑制できるようになり、より高い汎用性の高いモデルを構築しやすくなるのです。

確率的勾配降下法(SGD)

確率的勾配降下法(Stochastic Gradient Descent、SGD)は、重みを更新する際に用いられる代表的な最適化手法です。学習の過程でこれを利用することによって、計算量を抑えられるため、多くの場面で利用されます。

通常の勾配降下法は、すべての訓練データを用いて損失関数の勾配を計算しなければなりません。対してSGDでは、訓練データからランダムに抽出したごく一部だけを用いて、近似的な勾配を算出するのです。結果、計算量を抑えつつ高速な学習を実現できます。

また、一部だけを抜き出していることで、抜き出すデータによって勾配のばらつきが生じがちです。これがプラスに働くことがあり、複数の勾配から学習することで、学習結果の偏りを回避することに繋げられます。

誤差逆伝播法

誤差逆伝播法(Backpropagation)は、ネットワークの出力と理想的な正解との誤差を活用した学習アルゴリズムです。誤差を細かく算出したのち重みを修正し、本来求めているモデルへと近づけていきます。

具体的には、出力層で生じた誤差を逆方向へと伝播させ、各層の重みがどれだけ誤差に影響しているかを明確にするのです。その後、影響度合いを踏まえて重みを微調整し、出力と正解との差異を小さくできるようにモデルを更新します。

誤差逆伝播法が登場したことで、ニューラルネットワークは複雑な構造を持つモデルにも適用しやすくなりました。効率的な学習を支える技術であり、現在の深層学習に大きく貢献しています。

ニューラルネットワークの種類


ニューラルネットワークにも実は種類があり、状況に応じて使い分けすることが重要です。どのような選択肢があるか、以下で確認していきましょう。

ディープニューラルネットワーク(DNN)

ディープニューラルネットワーク(DNN)は、多層構造を持つニューラルネットワークの総称です。多数の隠れ層を積み重ねることで、入力データからより抽象的かつ複雑な特徴を段階的に自動抽出できます。

複雑な特徴にも対応していることで、画像認識や音声処理、自然言語理解などにも対応が可能です。従来、これらは学習が難しいと考えられていましたが、高精度で対応できるようになりました。

DNNは、効率の良い計算方法などが編み出されたり大量の学習データを確保できたりすることで、進化を続けている分野です。深層学習の進化を支えていると表現しても過言ではなく、現在のAI分野には必須の存在といえます。

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)は、主に画像や動画など空間的な構造を持つデータの処理に特化したモデルです。畳み込み層を用いて、ピクセル間の局所的なパターンを効率良く抽出できます。また、その結果をプーリング層で圧縮したり要約したりする仕組みです。

この仕組みが登場したことで、従来は必要とされていた複雑な特徴量の設計を省略できるようになりました。そのため、画像分類や物体検出、顔認識などのタスクが、簡単に実装できるようになっています。また、位置ずれや拡大縮小などの変化にも対応できる仕組みであるため、実際のアプリケーションでも活用しやすいことが特徴です。

再帰的ニューラルネットワーク(RNN)

再帰的ニューラルネットワーク(RNN)は、時系列データや文章のような連続性・文脈性を持つデータ処理に適したモデルです。内部にメモリを持ち、過去の情報を次の入力処理に反映できます。これにより、文脈理解や時系列予測が可能であることが特徴です。

いくつもの分野で利用されていますが、RNNの代表的な活用には、自然言語処理や音声認識、株価予測などが挙げられます。これらに該当するアプリケーションは多く開発されていて、これらはほぼRNNで支えられていると考えて良いでしょう。

ただ、単純なRNNは長期的な依存関係の学習が苦手というデメリットを抱えています。そのため、RNNを改良したLSTMGRUなどのアーキテクチャが採用されがちです。実務で利用する際には、改良型を利用することが多いため、その点は理解しておきましょう。

敵対的生成ネットワーク(GAN)

敵対的生成ネットワーク(GAN)は、生成モデル(生成器)と識別モデル(識別器)を互いに競い合わせるニューラルネットワークです。イメージしづらいかもしれませんが、この行動によって、新しいデータを創り出せます。

まず、生成器は本物らしいデータを生み出す役割を持つ仕組みです。本来は、ユーザがデータを用意する必要がありますが、それを模倣したデータを機械的に準備できます。そして、識別器はそれを読み取り、本物か偽物かを判定するのです。

この対立関係による訓練を繰り返すことで、生成器はより自然な画像や音声、テキストを生成できるようになります。識別器では判断できないデータを生成できるようになれば、それは限りなく「本物」のデータに近いといえるのです。

オートエンコーダ(自己符号化器)

オートエンコーダは、入力データを低次元の潜在表現に圧縮(エンコード)し、再び元のデータへ復元(デコード)するニューラルネットワークの種類です。教師データとして正解ラベルを必要としないため、学習データの準備に関わる手間を削減できることが注目を集めています。

大きな特徴として、圧縮過程で得られる潜在表現を多角的に評価することが挙げられます。次元削減や異常検知、可視化などの観点からデータを評価し、それをニューラルネットワークの構築に活かすのです。

なお、オートエンコーダは基本的な概念であり、変分オートエンコーダ(VAE)などの拡張モデルが登場しています。詳細は割愛しますが、こちらも必要に応じて調べるなどしてみてください。

まとめ

人工知能の開発などを支えるニューラルネットワークについて解説しました。ひとつの技術を指していると理解されがちですが、解説したとおりいくつもの技術や仕組みに分けられます。それぞれに特徴があるため、正しく理解することを心がけましょう。

なお、ニューラルネットワークは進化を続けている技術であり、気付かないうちに新しいモデルや仕組みが登場していることがあります。研究途中の仕組みなども存在しますが、新しい情報をキャッチアップすることも心がけてください。

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admin