Oracle Databaseとは|初心者向けにわかりやすく解説

Oracle Databaseは、アメリカのオラクル社が発売する、世界初のリレーショナルデータベースマネジメントシステムです。非常に堅牢なデータベースであり、企業など、データベースの信頼性が求められる環境で採用されています。世界中で利用されているデータベースであり、IT業界にはなくてはならない存在です。
非常に重要な存在ではありますが、「どのようなデータベースなのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。今回は、Oracle Databaseがどのような特徴を持つのか、エンジニアが知っておくべき知識について解説します。
この記事の目次
Oracle Database(Oracleデータベース)とは
Oracle Databaseは、Oracle社が開発・提供するリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)です。日本のみならず世界的に利用されていて、世界3位のシェアを誇り、企業からの人気を集めています。
RDBMSの中でも、トランザクション処理の信頼性やセキュリティ、スケーラビリティなどに優れていて、特にミッションクリティカルな企業のシステムから評価されている状況です。また、PL/SQLを用いた柔軟な開発や、自動化されたバックアップ・リカバリ機能など多機能さも高い注目を集める理由となっています。
Oracle Databaseの特徴
ここでは、Oracle Databaseが持つ特徴について解説します。
高い堅牢性
Oracle Databaseの大きな特徴は高い堅牢性です。さまざまな観点からデータを保護する仕組みが導入されており、これが多くの企業でOracle Databaseが採用される理由となっています。
例えば、外部からの攻撃に耐えられるよう、頻繁にセキュリティパッチが公開されます。ユーザー側が適切にアップデートを行っていれば、多くの攻撃からデータを守り、流出や紛失に備えられるのです。
また、複数のデータベースを組み合わせて、障害発生時に備える機能も搭載されています。一般的なシステムトラブルだけでなく、地震などの災害によってデータベースが停止する場合にも備えやすいことが特徴です。
複数のプログラミング言語に対応
多くのプログラミング言語に対応していることがポイントです。それぞれのプログラミング言語に、データベースへアクセスする仕組みが用意されていたり、追加のライブラリが既に開発されていたりします。これらを用いることで、簡単にデータベースへアクセスできるのです。
例えば、JavaやPHP、Python、C++など、現在利用されている多くのプログラミング言語からOracle Databaseにアクセスできます。そのため、Oracle Databaseを使うために、特定のプログラミング言語に縛られる状況は、ほとんど発生しないでしょう。
大量のデータ処理に対応
データベースエンジンの中でも、大量のデータ処理を得意としていることが特徴です。独自に最適化されたアルゴリズムが搭載されており、複雑なクエリでも素早く実行し、結果を返してくれます。データベースの処理速度は、システム全体のパフォーマンスに影響するため、非常に重要なポイントです。
また、処理できるデータの上限件数も大きく設定されています。例えば、他の製品では数百万件の処理が限界でも、Oracle Databaseならばさらに多くの件数を処理できます。大量のデータを扱う場合でも、Oracle Databaseならば「仕様面で実装できない」という状況には陥りません。
高い可用性
データベースの停止を最小限に抑えるため、高可用性を実現する機能が充実しています。たとえば、クラスタ構成で冗長化するReal Application Clusters(RAC)や、災害対策に対応したData Guardなどです。これらの機能によって、ハードウェア障害や災害発生時でも迅速に状況を改善できます。
また、構成次第ではゼロダウンタイムのシステムも構築可能であることもポイントです。24時間365日稼働が求められるシステムでも、Oracle Databaseを用いれば柔軟に構築できます。
充実したサポート体制
有償のデータベースということもあり、世界中で安定したサポート体制が提供されています。技術的な問い合わせはもちろん、アップデート情報、脆弱性の通知、トラブル対応ガイドなど、Oracle社の公式サポートが幅広い点がポイントです。
さらに、LTS(長期サポート)ポリシーを採用しているため、システムを安定かつ長期間維持できます。また、個別の要件に合わせた「プレミアムサポート」も存在するため、ミッションクリティカルなシステムにも採用しやすいデータベースです。
Oracle Databaseと他データベースとの違い
Oracle Databaseと他データベースとの違いをまとめ、それぞれ解説します。
比較項目 | Oracle Database | MySQL | PostgreSQL | SQL Server |
開発元 | Oracle Corporation | Oracle Corporation(MySQL AB買収) | PostgreSQL Global Development Group | Microsoft |
ライセンス | 商用 | オープンソース(GPL)+商用版 | オープンソース(PostgreSQL License) | 商用 |
主な用途 | 基幹システム、大規模業務 | Webアプリ、小規模サービス | 分析・研究・カスタムシステム | Windows基幹業務、BI連携 |
対象ユーザー層 | 大企業、官公庁、金融機関 | 中小企業、スタートアップ | 技術志向の開発者、教育機関 | Windowsインフラ中心の企業 |
SQL準拠度 | 高(PL/SQL独自拡張あり) | 標準SQLだが独自仕様多め | 非常に高い(標準準拠) | 高(T-SQLという独自拡張あり) |
OS対応 | Linux、UNIX、Windows | クロスプラットフォーム | クロスプラットフォーム | 主にWindows |
スケーラビリティ | 非常に高い | 限定的 | 柔軟 | 高い |
セキュリティ・監査 | 企業向けの堅牢な機能完備 | 標準的。Enterprise版で拡張可 | 比較的軽量。プラグイン拡張あり | ADとの統合 |
サポート | 有償で手厚い商用サポート | コミュニティサポート+商用サポート | コミュニティサポート | Microsoft公式の充実したサポート |
Oracle Database VS MySQL
Oracle Databaseは、トランザクションの整合性や高可用性機能(RAC、Data Guardなど)を備えた、大企業向けの高機能RDBMSです。一方、MySQLは軽量で導入が容易なため、小〜中規模のWebアプリケーション開発に適しています。
MySQLはオープンソースでコストを抑えられますが、機能は限定的であるため、複雑な要件には対応できません。小規模開発であれば差し支えありませんが、エンタープライズ用途ではOracle Databaseが選択されがちです。
Oracle Database VS PostgreSQL
PostgreSQLは、標準SQLへの準拠度が高く、拡張性と柔軟性に優れたオープンソースDBです。カスタム関数や拡張モジュールによる機能追加が可能で、学術・研究や分析向きとされています。
対してOracle Databaseは、信頼性・高性能・商用サポートが強みで、大規模かつミッションクリティカルな業務に適したものです。自由度とコスト重視ならPostgreSQL、安定運用とサポート重視ならOracleが選ばれます。
Oracle Database VS Microsoft SQL Server
SQL ServerはMicrosoft製で、Windows環境との親和性が非常に高い点が特徴です。Active Directory連携やPower BIなどMS製品との統合運用が可能で、社内システム構築に向いています。
対して、OracleはOSに依存せずクロスプラットフォームで動作するデータベースです。そのため、大規模分散環境やクラスタ構成に強い点が違いであり特徴です。どちらを選ぶべきかは、運用に利用するOSと他製品との連携が必要かに左右されます。
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)の概要
Oracle Databaseに関係が深いものとして「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」が挙げられます。初心者であれば、こちらも同時に理解しておきましょう。
OCIとは
Oracle Cloud Infrastructure(OCI)は、Oracleが提供するエンタープライズ向けのクラウドサービス基盤です。高性能な仮想マシンやブロックストレージ・オブジェクトストレージ、データベースサービスなどを備えています。一般的なデータベースよりも可用性が高いことから、ミッションクリティカルな業務にも採用できます。
表向きはクラウドサービスでありOracle Database専用の環境ではありません。ただ、Oracle Databaseとの親和性が高く、ExadataやAutonomous DatabaseといったDB機能をクラウド上で実装するために利用されがちです。
OCIの特徴
OCIには、どのような特徴があるか、それぞれ簡単に解説します。
高度なインフラ・ネットワーク設計
OCIは、従来のクラウドよりも高性能かつ低レイテンシのアーキテクチャを提供しています。仮想マシンだけでなく、ベアメタルサーバやGPUインスタンスも利用できるため、AI/機械学習やHPCを含めた実装にも対応できることが特徴です。
また、仮想ネットワーク(VCN)やFastConnectによる専用線接続も実現できます。そのため、大企業の本番環境など、十分なスループットが求められる状況でも利用しやすい環境です。
Oracle Databaseに最適化された環境
Oracle社のクラウドサービスであり、Oracle Databaseと組み合わせやすいことがポイントです。Autonomous Databaseをはじめ、Exadata Cloud Service、RAC対応、Data Guardなど、さまざまな機能がクラウドでも利用できます。
オンプレミスでOracle Databaseを使用している場合「クラウドでもパフォーマンスを発揮できるのか」などと不安を持ちがちです。しかし、OCIならば移行時の互換性やパフォーマンス低下の懸念が少なく、スムーズにコスト最適化や運用の見直しを実現できます。
セキュリティと可用性
OCIはゼロトラスト原則に基づくセキュリティ設計を採用しています。そのため、テナント分離、暗号化、IAM、Cloud Guardなどの多層防御機能を標準で提供していることが特徴です。
また、セキュリティを高めるだけではなく、冗長構成のリージョンやアベイラビリティドメインも採用しています。これらは高可用性や障害耐性を高める仕組みであるため、多角的に評価して、安心して利用できるクラウド環境であるといえるでしょう。
ハイブリッドクラウド
OCIは、オンプレミス環境との連携を重視しているため「Oracle Cloud@Customer」などのハイブリッドクラウドをサポートしています。これを用いることで自社や契約しているデータセンター内にOCIを含んだインフラの構築が可能です。つまり、ネットワークやデータの物理的な管理を維持しつつ、クラウドの柔軟性を享受できます。また、マルチクラウド環境との連携も強化されており、Microsoft Azureとの高速接続「Oracle Interconnect for Azure」なども提供されるようになりました。
まとめ
Oracle社のOracle Database(Oracleデータベース)について、初心者向けに解説しました。リレーショナルデータベース管理システムの中でも、商用で特に機能が多いことが特徴です。有償製品の中でも特に高額になりがちですが、それだけの価値があると考えて良いでしょう。
ただ、高機能であるがゆえに、適切に運用するスキルが求められます。十分にOracle Databaseの知識がないと、高額なライセンス費用を支払うだけになるでしょう。魅力的な製品ではありますが、それ相応のスキルも必須です。