情報処理安全確保支援士とは?資格の難易度・年収・将来性をチェック!
情報処理安全確保支援士と呼ばれる国家資格があります。情報処理技術者試験の一つであり、セキュリティに関して多くの知識を有していると証明できるものです。
2017年から開始された試験ですので、情報処理技術者試験の中では新しいものに分類されます。そのため、どのような資格であり合格するとどのような効果があるのか理解できていない人も多いようです。今回は情報処理安全確保支援士の概要から年収への影響や将来性の変化について解説していきます。
情報処理安全確保支援士とは?資格の概要
情報処理安全確保支援士の難易度や年収などをご説明する前に、資格の概要について理解しておきましょう。重要なポイントを中心に解説します。
「情報セキュリティスペシャリスト」の後続資格
情報処理安全確保支援士は2017年4月から開始された、「情報セキュリティスペシャリスト試験」の後続にあたる資格です。新設の資格とはなっていますが、試験内容は情報セキュリティスペシャリスト試験の内容を中心に作られています。
新設された背景には「日本のセキュリティ人材不足」が挙げられています。諸外国と比較すると日本はセキュリティ対策で遅れていると言われる場合があり、それに対応できるように情報処理安全確保支援士という資格が設けられました。東京オリンピックの開催に伴い、日本全体がサイバー攻撃の対象になる可能があり、これに対応できる人材育成も背景として挙げられます。
情報処理技術者試験のレベルは「レベル4」に分類されていて、最も難易度が高い資格のひとつです。他にも様々なスペシャリスト資格がレベル4に分類されていますので、それらと肩を並べるほど難易度の高い資格といえます。
情報処理技術者試験のひとつですので、資格受験の基本内容は以下のとおりです。
- 試験日:4月と10月の第3日曜日
- 受験料:5700円(非課税)
- 試験会場:全国各地の指定会場
情報処理技術者試験は春と秋に開催されていて、情報処理安全確保支援士試験はどちらの回でも受験できます。1年に1回しか受験できない資格もありますので、年に2回受験機会があるのは嬉しい部分です。
資格の受験条件はなし
情報処理安全確保支援士試験は情報処理試験のひとつですので、受験制限が設けられていません。出願して受験料の支払いさえすれば、誰でも資格取得のために試験を受験できます。
情報系の資格はものによって前提となる資格が存在します。特に情報処理安全確保支援士試験のような難易度の高い資格は、段階的に取得しなければならないケースがあるのです。例えば同じセキュリティ系の資格でもCISCOが提供しているものは、段階的に資格を取らなければなりません。
しかし、情報処理安全確保支援士試験はそのような段階を考慮する必要がありません。また、資格を受験するために実務経験が問われていません。こちらも資格によっては実務経験の証明をしなければなりませんが、その必要はなく資格取得のハードルを下げています。
情報系初の登録制「士業」になれる
情報処理安全確保支援士試験に合格していると「情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)」の登録ができます。情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)とは情報系初の登録制「士業」で、登録者として国のデータベースに登録されるものです。データベースに登録されれば、案件を受注しやすくなったり指名で案件の引き合いが届いたりといったメリットを受けられます。
士業として登録するためには、登録手数料10,700円の支払いや登録免許税9,000円の支払いが必要です。また、仮に情報処理安全確保支援士試験に合格していても暴力団関係者など特定の「欠格事由」に該当してしまう場合は登録ができません。基本的には問題ないはずですが、そのような条件がある点は理解しておいてよいでしょう。
また、士業として情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)の登録をした場合は年1回のオンライン講習受講料20,000円や3年ごとの集合講習受講料80,000円が必要です。登録するだけはなく、維持するために勉強したり費用がかかったりします。
情報処理安全確保支援士の難易度
情報処理安全確保支援士試験を受験するにあたり、難易度は特に気になる情報でしょう。公開されている情報から、難易度について考察しました。
資格の合格率
情報処理安全確保支援士の難易度の指標としてまずは情報処理安全確保支援士試験の合格率を確認しましょう。情報処理推進機構に受験者数と合格者数などが公開されていますので、2020年10月実施の情報を引用すると以下のとおりです。
応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
情報処理安全確保支援士試験 | 16,597人 | 11,597人 | 2,253人 | 19.4% |
参照:情報処理推進機構|情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験
2020年10月実施の合格率は約20%と国家資格の中では比較的難易度の高いものになっています。2020年4月実施はこれよりも低い合格率でしたが、概ね合格率は20%弱で推移しています。
また、同じく情報処理技術者試験のレベル4に分類される「プロジェクトマネージャー」「データベーススペシャリスト」「エンベデッドシステムスペシャリスト」などの合格率を確認してみると、これらは16%程度で推移しています。多少は情報処理安全確保支援士試験の方が、合格率が高いものの、概ね他の情報処理技術者試験のレベル4と肩を並べる難易度だと考えられます。
内容は情報セキュリティスペシャリストと同レベル
旧試験である「情報セキュリティスペシャリスト」と比較した場合の難易度についてもご紹介します。
出題されている内容は、旧試験である「情報セキュリティスペシャリスト」と同じようなものです。情報セキュリティスペシャリストは2016年に終了しましたので、時代の変化と共に出題内容は変化していますが、根本的に問われているものは似ています。
実際、それぞれの対象者は情報処理推進機構のWebサイトで以下のように書かれています。
資格名 | 対象者 |
情報処理安全確保支援士試験 | サイバーセキュリティに関する専門的な知識・技能を活用して企業や組織における安全な情報システムの企画・設計・開発・運用を支援し、また、サイバーセキュリティ対策の調査・分析・評価を行い、その結果に基づき必要な指導・助言を行う者 |
情報セキュリティスペシャリスト試験 | 高度IT人材として確立した専門分野をもち、情報システムの企画・要件定義・開発・運用・保守において、情報セキュリティポリシに準拠してセキュリティ機能の実現を支援し、又は情報システム基盤を整備し、情報セキュリティ技術の専門家として情報セキュリティ管理を支援する者 |
参照:情報処理推進機構|情報処理安全確保支援士試験(SC) – 1.対象者像
参照:情報処理推進機構|情報セキュリティスペシャリスト試験(SC) – 1.対象者像
情報処理安全確保支援士試験に切り替わったことで対象者にはやや変更があります。ただ、内容を確認してみると大きな変化はありません。時代の変化に伴い、求められる知識が増えたとの印象を受けます。
対象者に大きな変化がありませんので、情報処理安全確保支援士試験と情報セキュリティスペシャリスト試験とで求められる知識にも大きな差はありません。求められる情報が常に最新化されるのはどの試験でも同じですので、情報処理安全確保支援士試験だけが極端に難しくなっているとは言えないでしょう。
ただ、他の情報処理技術者試験と比較すると、情報処理安全確保支援士試験はシラバスの更新が速い傾向にはあります。セキュリティの世界は猛スピードで進化していますので、求められる内容は常にアップデートされているのです。
とはいえ、知識的な部分での進化が中心であり、根底にある概念は大きな差がありません。あくまでも情報セキュリティスペシャリストの後継資格であると考えて良いでしょう。
今後難易度が上がる可能性はあり
情報処理安全確保支援士試験の合格率は20%弱と高難易度ではあるものの極端に低い値ではありません。世の中には合格率が10%未満の資格もありますし、それらと比較すると現実的に合格できそうな情報系の資格です。
ただ、現在はこの程度の難易度でも、今後難易度が上がる可能性があります。先ほども述べたとおりセキュリティの世界は進化が早いですので、それに伴い求められる情報が増えるのです。幅広く情報を収集したり深い理解を持っていたりしなければ、合格しにくくなる可能性があります。
これからセキュリティの需要が高まる点を考慮すると、情報処理安全確保支援士試験でもさらにハイレベルな知識が求められてもおかしくはありません。
情報処理安全確保支援士保有者の年収
情報処理安全確保支援士を保有している場合の年収はいくらぐらいになるのでしょうか。今回は大手求人サイトの情報を集約し、どの程度の年収が見込まれるのかを解説します。
資格保有者としての年収は400万円~1,000万円
情報処理安全確保支援士試験に合格しているだけの「資格保有者」の場合は、年収400万円~1,000万円程度の求人が中心です。一概に高い年収の求人ばかりではなく、比較的年収の低いものも存在しています。
このような年収が設定されている背景を考察すると、「中小企業での需要の高まり」「登録してこその価値」が見えてきます。
まず、比較的年収の低い求人は、中小企業の求人となっています。これが意味するところは、中小企業でもセキュリティに力を入れたいが、専門職にあまりお金をかけられない現状でしょう。セキュリティ人材の相場の高さは理解しているかもしれませんが、会社として現実的な求人はこの程度の年収しか提示できないのだと考えられます。
資格に合格するだけではなく、情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)に登録しているかどうかを重要視する企業があります。登録してやっと士業になれるものですので、登録しているかどうかを重要視するのは不思議ではありません。資格としての価値は認めているものの、登録していないことで評価が下がってしまいます。
比較的年収の低い求人もありますが、全体を通してみると年収は高めの印象を受けます。500万円以上や600万円以上の求人も多数出ていることから、一般的なシステムエンジニアの年収よりは高い相場だと言えます。
登録セキスぺとしての年収は600万円~1,300万円
情報処理安全確保支援士試験に合格し、士業に登録している「登録セキスぺ」の場合は、年収600万円~1,300万円と高額になります。年収の低い求人は存在せず「資格の登録者」である点が大きく評価されていると考えられます。
登録しているかどうかを問うのは、大手企業に多い傾向があります。大手としてスキルの高い人材を集めるために、「合格」ではなく「登録」を条件としているのでしょう。
登録や維持にはお金がかかりますが、その支払いを上回る年収の増加も見込めます。可能な限り資格合格者は登録をして、高い年収相場で働くようにするのがおすすめです。
情報処理安全確保支援士の合格による将来性
情報処理安全確保支援士試験に合格すると将来性はどのように変化するのでしょうか。先を見据えて資格合格を目指す人向けに、今後についても考えていきます。
セキュリティ意識の高まりと共に需要が高まる
現在は多くの企業がセキュリティの重要性を認識しています。大企業だけではなく中小企業でも、様々なセキュリティ対策を施している状況です。
そのような状況にありますので、セキュリティ人材は需要が高まるでしょう。つまり、資格を保有し高いスキルを持っている人が活躍しやすい環境になるのです。資格を持っていない人よりも、持っている人のほうが評価されるのは言うまでもありません。
セキュリティ人材は需要が高ければ、それだけ安定して働けます。そのように考えると、情報処理安全確保支援士試験に合格することは、将来性を明るくするために大きな意味を持ちます。
エンジニア数が増えてもまだ飽和しない
セキュリティを専門に扱うエンジニアも増えています。ただ、情報処理推進機構の発表ではセキュリティ人材が2万人から3万人必要とされている現在で、情報処理安全確保支援士(登録セキスぺ)の登録者は1万人に満たない状況です。つまり、どんどんと需要が高まっているにも関わらず、セキュリティ人材は大きく増加していない状況なのです。
このような状況を鑑みると、セキュリティ人材が市場に飽和することはしばらくないでしょう。まだまだ人材不足が続き、求人や案件が多く将来性のある状況だと考えられます。
まとめ
情報処理安全確保支援士資格はセキュリティ人材を示すための国家資格です。情報処理推進機構が提供している資格であり、信頼度の高い資格に分類されます。
また、情報系の資格としては初めて登録することで士業になれるものです。単純に資格保有者となるのではなく、国に認められた登録者として働けるのです。
今でまだ情報処理安全確保支援士資格の登録者専用求人や案件の数は限られています。しかし、セキュリティに関連する求人や案件は日々増えています。そのような状況で活躍できるようになるためにも、セキュリティ人材の最高峰として情報処理安全確保支援士試験は合格しておきたい資格です。