下請法とは|フリーランスなら知っておくべき!概要をわかりやすく解説

下請法とは|フリーランスなら知っておくべき!概要をわかりやすく解説

フリーランスと関わりが深い法律に下請法があります。あまり重要な関係があると認識されていませんが、実は非常に重要な法律です。

下請法について理解できていなければ、クライアントとトラブルになった際にフリーランス側が不利になってしまいます。フリーランスなど小規模な事業者が契約で不利にならないように下請法が存在しますので、どのような法律であるのか理解していきましょう。

下請法とはなにか

冒頭でも説明したとおり下請法はフリーランスにも関係する重要な法律です。ただ、どのような法律なのか理解されていない人は多いと思われますので、以下で詳しくご説明します。

下請法の概要

下請法は正式名称を下請代金支払遅延等防止法と呼びます。フリーランスや中小企業など下請けは不利な立場に置かれやすいため、このような状況から守るために定められた法律です。今となってはエンジニアの世界で注目されるケースが多いですが、実は1956年に制定された法律です。

下請法は歴史の長い法律ではありますが、時代に沿うようにその都度改定されています。現在のように個人事業主やフリーランスとして働く人が増えている状況では、このような人たちを守りやすい法律に変化しているのです。

また、下請法の考えをベースとしたガイドラインなども指定されています。こちらは法律ではないため法的拘束力はありませんが、フリーランスが下請法の適用可否など自分で判断できるような取り組みが行われています。

フリーランスと下請法の関係

下請法の概要でご説明したとおり、フリーランスはクライアントとの取引が下請法の適用となる可能性があります。ただ、下請法の対象となる取引は定められていて、以下の4種類に限られています。

  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託

それぞれがどのような委託契約であるのかについては、下請法第2条で定められています。エンジニア系のフリーランスであれば、情報成果物作成委託に該当するケースが多いでしょう。

もしフリーランスとして働いている皆さんの委託内容がこれらに該当しない場合は下請法の適用となりません。念のために自分の仕事内容と下請法の関係は把握するようにしておきましょう。

また、注意点があり、下請法は上記に該当する委託ならば必ず適用されるものではありません。クライアントとフリーランスの資本金の関係によって適用されるかどうかが変化します。

まず、取引の内容が「製造委託」「修理委託」「政令で定める情報成果物又は役務に係るもの」に該当する場合は、以下の条件を満たさなければなりません。

親事業者 下請事業者
資本金3億円を超える法人 資本金3,000万円以下
資本金1,000万円を超えて3億円以下の法人 資本金1,000万円以下

また、取引の内容が「法令で定めない情報成果物又は役務に係るもの」に該当する場合は、以下の条件を満たさなければなりません。

親事業者 下請事業者
資本金5,000万円を超える法人 資本金5,000万円以下
資本金1,000万円を超えて5,000万円以下の法人 資本金1,000万円以下

フリーランスが下請事業者となる場合、個人事業主であり資本金の概念がありません。資本金は法人化している場合のみですので、ほぼフリーランスでは該当しないでしょう。そのため、親事業者が資本金1,000万円を超えている場合のみ下請法が適用されます。

フリーランスが意識したい下請法違反の例


フリーランスが日頃、取引している中には下請法違反に該当する取引が存在しています。特に意識していない人も多いかもしれませんが、以下の例は下請法違反に該当しますので心当たりが無いか確認していきましょう。

違反例1:納品物を受け取り拒否される

クライアント側に納品物の受け取りを拒否されるのは下請法違反です。フリーランス側の納品物に問題がある場合は別ですが、正当な理由なく納品物の受け取りを拒否してはなりません。

下請法第4条第1項第1号では「受領拒否」について定められています。こちらでクライアントは、契約して作成してもらった納品物について受け取りが拒否できないとされているのです。そのためクライアントが一方的に納品物の受け取りを拒否すれば、こちらの法律に抵触してしまいます。

また、法律では一度受け取ったものを一方的に返品する行為も禁止されています。こちらは下請法第4条第1項4号で定められていて、正当な理由なく返品をすれば法律に抵触してしまいます。

フリーランスならば何かしら理由をつけられ、納品物の受け取りを拒否される可能性があります。ただ、これは下請法で禁止されている行為ですので、そのような場面に出くわしてしまった際も毅然とした態度で対応する必要があります。

違反例2:契約書の発行をしてもらえない

クライアントには契約書の発行義務があります。口約束で仕事を受注しているフリーランスは多いと思いますが、意図的に契約書が発行されない状況は下請法違反です。

下請法第3条では「親事業者の書面交付義務」が定められています。これはクライアントが下請け先に対して、仕事の内容や報酬、納期や支払い期限など取引に必要な条件を示した書面の発行義務を明記したものです。フリーランスに対してこれらの取引条件を示した書類の発行をしなければ、この法律に抵触してしまいます。

なお、書面とは記載されていますが、実際に印刷物である必要はありません。最近はPDF形式でやり取りする企業は多いですし、クラウドサービスなどで契約書を発行する企業もあります。下請法で定められている条件を満たしている書面であれば、デジタル形式のものであっても何ら問題はありません。

そのため口約束の多いフリーランスは、後からメールでも良いのでその内容を送ってもらうようにしましょう。そうすれば、そのメールが実質的には契約書としての意味を持ちます。

違反例3:支払い期日を過ぎても支払いが無い

クライアントは契約した支払い期日までに必ず報酬を支払わなければなりません。クライアントの一方的な都合で支払いが遅れてしまうと、下請法違反になります。

フリーランスの作業に対する報酬は、専門用語で下請代金に該当します。この下請代金については、下請法第4条第1項第2号で「下請代金の支払い」との内容が定められています。ここで滞りなく支払うことが求められていますので、遅れてしまうと下請法に抵触します。

ただ、ここで重要となるのは支払い期日が明確に確認できなければならないことです。期日を過ぎているかどうかが重要ですので、基準となる日付がなければ判断ができなくなってしまいます。そのような意味でも、支払い期日を明記した契約書は必ず発行してもらわなければなりません。

報酬の支払いについてはフリーランスがトラブルになりやすい部分です。下請法で報酬は守られていますので、支払いがない場合は権利を主張していきましょう。

違反例4:納品後に契約額を減額される

納品後に報酬が減額されるケースがあります。フリーランスの納品物には問題ないにも関わらず、クライアントの意向で減額されてしまうのです。

納品物の品質に問題がない場合は、下請法第4条第1項第3条で禁止されている「下請代金」の取り扱いに抵触します。明らかにフリーランスに瑕疵担保責任が発生している場合は別ですが、そうではない場合は一方的に契約金額を変更してはならないのです。

クライアントによっては、一方的に理由をつけて契約金額の値下げを通告してくる場合があります。フリーランスからするとどうしようもない状況に思えるものです。しかし、これは下請法で禁止されていますので、必ず契約書に定められた金額の支払いを受けるようにしましょう。

また、クライアントによっては最初から値下げさせた金額での契約を求めてくる場合があります。これも下請法違反ですので、やむを得ない状況を除いて相場よりも極端に低い金額での契約は避けましょう。

違反例5:クライアントの都合で発注を取り消される

クライアントの都合で一方的に発注を取り消される場合があります。すでに仕事が開始されている場合でも、何かしらの理由をつけて取り消そうとしてくるのです。また、ある程度プロジェクトが進んだ段階で契約を取り消し、途中の成果物だけを得ようとする悪徳クライアントもいます。

このようなクライアント都合の発注取り消しは、フリーランスへの不当な要求だと考えられます。そのため下請法第4条第2項第4号の「不当な要求で契約内容を変更させること」に抵触してしまいます。

フリーランスによっては一方的に発注を取り消されてもやむを得ないと考えるかもしれません。確かにプロジェクトが始まってすぐであれば傷は浅くて済むかもしれませんが、根本的にはそのような問題ではありません。

下請法ではクライアントの都合によって、契約を一方的に取り消ししたり、変更したりすることが禁止されています。一方的に取り消されるようなことがあれば下請法違反ですので、取り消しても支払いの義務が生じていることを主張しなければなりません。

フリーランスが下請法に関する疑問を持つ際の対処法


フリーランスとして活動していると、先程ご説明した下請法違反の疑いを持つ場面があるでしょう。そのような場面では以下3つの対処法で解決するのがおすすめです。

下請かけこみ寺

下請かけこみ寺は、中小企業庁が主体となって実施している「下請かけこみ寺事業」で設置されているものです。フリーランスを含めた中小企業が、親事業者などとトラブルになった際に相談できる窓口です。

下請かけこみ寺の窓口は全国中小企業振興機関協会や各都道府県の中小企業振興機関などに設置されています。それぞれの窓口に下請法に詳しい担当者の方がいますので、トラブルが起きている際はそのような方々に相談ができます。フリーランス個人では法律の理解に限界がありますので、早々に相談して対応策を教えてもらうべきです。

公式サイトには全国の下請かけこみ寺が一覧で紹介されています。また、フリーダイヤルに電話をすれば、自動的に近くの下請かけこみ寺に繋がるようにもなっています。

参照:下請かけこみ寺事業 | 公益財団法人 全国中小企業振興機関協会

フリーランス・トラブル110番に相談する

フリーランス・トラブル110番は第二東京弁護士会が運営する、フリーランスのトラブルを受付する窓口です。弁護士だけではなく関係省庁と連携していますので、下請法など法律関連のトラブルも安心して相談できます。

フリーランス・トラブル110番では基本的にフリーランスに関するトラブルを幅広く相談できます。弁護士に無料で相談できますし、匿名での相談も可能となっています。また、相談していく過程で具体的なアドバイスを受けたい場合は、対面やビデオ通話での相談も可能です。

しかも、必要に応じて和解に向けてあっせん手続きをしてくれます。裁判で争っても負担だけがかかるケースが大半ですので、和解あっせんまでしてもらえるのは大きなメリットです。

契約弁護士に相談する

フリーランスとして何かしら弁護士と契約しているならば、そちらに相談しましょう。フリーランスの場合はあまり契約していないかもしれませんが、弁護士と契約があるならば活用するべきです。

特に最近はフリーランス向けサービスの中で、弁護士などによる法律サポートが含まれている場合があります。フリーランス向けのクラウドサービスを契約すると、法律サポートが含まれているようなケースが該当します。

直接弁護士に相談できる契約があるならば、可能な限りそちらを利用するべきです。問い合わせ先は固定することによって、トラブルが長引いた際も対応してもらいやすくなるからです。

ただ、フリーランスが直接弁護士に相談する場合は、料金が発生してしまう可能性があります。クラウドサービスなどで提供されている場合も、実際に利用すると費用が発生する可能性があり注意が必要です。

まとめ

下請法はフリーランスにも影響がある法律です。むしろフリーランスなど立場の弱い事業者を守る法律ですので、正しい理解が必要です。すでに下請法に抵触するような取引が発生している可能性もあり、実際に不利な取引をしていないか思い返してみることも重要です。

ただ、下請法はフリーランスの取引すべてに適用される仕組みではありません。親事業者の資本金によって適用の可否が決まってしまいます。親事業者が資本金1,000万円以下の場合は適用ができず、不利益を被っても法律では守ってもらえない場合もあります。

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