フリーランスなら知っておきたい国民健康保険の概要と軽減制度について
フリーランスも健康保険に加入しなければなりません。健康保険への加入は国民の義務となっていますので、基本的に国民は何かしらの公的医療保険に加入しなければなりません。
基本的にフリーランスが加入する公的医療保険といえば、国民健康保険となります。ただ、フリーランスでも国民健康保険がどのようなものかよく理解できていない人は多いようです。今回国民健康保険の概要と支払いができない場合の軽減制度についてご説明します。
フリーランスが加入する国民健康保険とは
基本的にフリーランスは国民健康保険に加入します。条件次第では国民健康保険以外に加入する可能性はありますが、概ね国民健康保険に加入すると理解しておいて間違いありません。
とはいえ国民健康保険が、どのような仕組みであるのか理解できていない人が多いでしょう。まずは国民健康保険の概要についてご説明します。
フリーランスが加入する健康保険
そもそも公的医療保険とは、加入者や扶養家族などが医療を受けなければならなくなった際に医療費を一部負担してくれる制度です。日本では国民全員が健康保険に加入する義務がありますので、何かしらの公的医療保険に加入します。
それらの中でも国民健康保険とは、都道府県や市町村が保険者となって運営するものです。地方自治体が運営している公的医療保険制度を国民健康保険と呼ぶと理解しておいて良いでしょう。
国民健康保険は都道府県や市町村が運営していますので、保険料の他に国や都道府県、市町村などの税金が利用されています。公的医療保険にはいくつかの種類がありますが、それらの中でも特に公的度合いが高いものだと理解しておいて良いでしょう。
なお、国民健康保険には加入条件があります。フリーランスが国民健康保険に加入する場合は、この加入条件を確認しなければなりません。
具体的な加入条件については、加入する地方自治体によって少々異なります。一般的には他の公的医療保険に加入していないことや、公的医療保険に加入している家族の扶養に入っていないことが条件となっています。フリーランスが国民健康保険に加入する場合は、加入を予定している国民健康保険の加入条件について確認しておきましょう。
フリーランスと会社員の健康保険の違い
フリーランスではなく会社員も健康保険に加入します。ただ、こちらの健康保険はフリーランスが加入するものと少々状況が異なっています。重要な違いをピックアップしてまとめると以下のとおりです。
フリーランス | 会社員 | |
加入する保険の種類 | 国民健康保険 | 社会保険 |
保険料 | 全額自己負担 | 会社と個人で折半 |
保険料の算出方法 | 前年度の所得に応じる | 所定期間の給与等を平均して算出 |
扶養家族の保険料 | 個別に保険料が発生する | 個別の保険料は発生しない |
どちらも公的医療保険には違いがありません。ただ、フリーランスと会社員では医療保険の内容が異なっています。会社員からフリーランスになる場合は医療保険に大きな変化が出ますので、どのような違いがあるのかについても理解しておいたほうが良いでしょう。
フリーランスが健康保険に加入する方法
続いて具体的にフリーランスが国民健康保険に加入する方法についてご説明します。フリーランスが国民健康保険に加入する場合は、どのような国民健康保険に加入するかによって手続きが少々異なります。それぞれどのような手続きが必要となるのかご説明します。
市区町村の国民健康保険に加入
基本的にフリーランスが加入するのは市区町村の窓口で加入できる国民健康保険です。市区町村で国民健康保険に加入するのは、多くの場合会社を退職してフリーランスになるケースです。そのため会社を退職する前提でフリーランスが国民健康保険に加入する手続きについてご説明します。
会社を退職してから国民健康保険に加入する場合、原則として退職日の翌日から14日以内に国民健康保険への加入手続きをします。手続きが遅れてしまうと後ほどトラブルになる可能性がありますので、会社を辞めてフリーランスになった場合は、できるだけ早く手続きをしましょう。
手続きは市区町村の役場で行います。市役所などに手続きをするための窓口がありますので、そこに出向いて手続きをしましょう。
具体的に手続きできる場所や受付時間については市区町村の公式サイトに記載されているはずですので、事前に確認をして出向くようにするべきです。特に現在は新型コロナウイルスの影響で窓口の受付ルールなどが変更となっている可能性があり、二度手間にならないようにしましょう。
国民健康保険への加入手続きをする際には、いくつか必要なものがあります。市区町村によって微妙に異なる可能性もありますが、以下を用意するようにしておきましょう。
- 加入していた健康保険の資格喪失日がわかる書類
- 身分証明書
- マイナンバー
- 印鑑
健康保険の資格喪失日がわかる書類とは、離職票や退職証明書が該当します。これらがなければ国民健康保険への加入手続きができませんので、退職する際に必ず書類を受け取らなければなりません。また、マイナンバーについてはマイナンバーカードだけではなくマイナンバーの通知書などでも差し支えありません。
ここで必要な手続きが完了すれば、フリーランスの国民健康保険への加入は完了します。後は健康保険料の支払い用紙が届きますので、その用紙を利用して保険料の支払いをするようにしましょう。
なお、国民健康保険では配偶者などが扶養に入りません。そのため個別に加入する必要があり、それぞれに対して国民健康保険料が発生してしまいます。会社で健康保険に加入している場合は扶養家族の保険料は発生していなかったはずですが、国民健康保険になると状況が変わりますので注意が必要です。
国民健康保険組合に加入
フリーランスで国民健康保険組合に加入する選択肢もあります。厳密には国民健康保険とは異なりますが、後から国民健康保険の一種としてご説明します。
国民健康保険組合とは、特定の業種の従事者で組織される保険組合を指します。保険組合といえば同じ会社かグループ会社をイメージする人が多いかもしれませんが、特定の業種の従事者だけで組織されたものもあるのです。
例えば国民健康保険組合が存在する業者には以下のものがあります。
- 医師
- 歯科医師
- 美容師
- 弁護士
- IT業界
- 建築業界
これらは一例ですが、ここでご紹介したような資格を利用して働いていたり、業界で働いていたりするならば国民健康保険組合への加入が可能です。
なお、国民健康保険組合は国民健康保険とは異なり保険料が収入によって左右されません。国民健康保険は前年度の収入が影響しますが、国民健康保険組合に入るとその点を考慮する必要はなくなるのです。
ただ、国民健康保険組合は加入に条件が設けられている場合があります。特に注意してもらいたいのは特定の団体に加入する必要がある場合で、加入が必要となるとそこに費用が発生してしまいます。保険料を抑えられるようになりますが、団体の加入費などが発生すると相殺されてしまいますので考慮が必要です。
会社の任意継続を利用
ひとまず健康保険に加入するだけであれば、国民健康保険ではなく会社員時代の健康保険を任意継続する選択肢があります。任意継続をすれば会社員時代と同様の保険サービスを受けられるようになります。
特に任意継続では条件を満たすと、扶養家族の保険料を納めなくてよくなる可能性があります。国民健康保険に切り替えてしまうと扶養家族の保険料も発生してしまいますので、これを抑えられるというのは大きなメリットです。
ただ、任意継続を利用するためには手続きに条件があります。例えば退職後20日以内に継続の手続きをしなければ、国民健康保険に加入するしか選択肢がなくなってしまいます。任意継続の内容を理解してひとまず国民健康保険ではなく任意継続を利用したい場合は、手続きの期限について特に意識しておかなければなりません。
フリーランスが適用される国民健康保険の軽減制度
新型コロナウイルスの影響によって売上や収入が下がっている場合は、国民健康保険料の減免が適用されます。条件を満たすと支払う保険料が軽減されるような制度が実施されているのです。続いてはこちらの制度についてご説明します。
国民健康保険には軽減制度がある
上記でご説明したとおり、国民健康保険料は軽減制度が設けられています。最初から設けられていた制度ではなく、新型コロナウイルスの影響が様々な所に飛び火していることで軽減措置が取られるようになったのです。
ここで重要なのは、国民健康保険の軽減制度は新型コロナウイルスの影響を踏まえた一時的なものであることです。今のところ継続して国民保険料の軽減制度が実施されていますが、新型コロナウイルスの影響が収まると軽減制度はなくなってしまうかもしれません。
とはいえ、すぐに新型コロナウイルスの影響がなくなるとは考えにくい状況です。また、このような軽減制度が廃止される場合は事前に告知されるケースが大半です。そのため、この先なくなる可能性はあるものの、情報をしっかりキャッチアップできていれば急に困るようなことにはならないはずです。
軽減制度が適用される条件
フリーランスの国民健康保険料が軽減される条件は、加入している市区町村によって異なります。市区町村ごとに軽減制度の条件が決められていますので、自分の自治体はどのような条件になっているのか確認するようにしましょう。
なお、詳細な条件については確認が必要ですが、概ねどこの市区町村でも以下の観点から条件が適用されるかどうか判断します。
- 新型コロナウイルスの影響で収入が前年度より3割以上減少するか
- 世帯主の低所得金額が1,000万円以下であるか
- 新型コロナウイルスにより世帯主が死亡や重篤な疾病を負ったかどうか
ここで注目しておきたいのは、収入については減少見込みでも軽減制度が適用されることです。他の公的支援では実際に減少していることの証明がなければ適用されないものがありました。しかし、国民健康保険の軽減制度については、現時点で明確に3割以上減少していなくとも減少する見込みであることだけで適用の申請ができるようになっています。
また、軽減される保険料の割合ですが、こちらについても市区町村によって内容が異なっています。概ね20%から100%の国民健康保険料が軽減されるようになっています。
国民健康保険の軽減制度を利用する際の注意点
国民健康保険の軽減制度を利用する際には注意点もあります。これから利用する可能性のあるフリーランスは、どこに注意するべきか把握しておきましょう。
軽減制度の内容は地方自治体によって異なる
上記でもご説明しましたが、国民健康保険の軽減制度は地方自治体によって異なります。そのためどのような内容となっているのかは、Webサイトなどを利用して必ず確認しなければなりません。ルールが異なりますので、一概にどのような軽減制度が適用されるとは言い切れないのです。
特に同じ収入状況でも、国民健康保険を提供する市区町村によって軽減割合が異なる可能性があります。例えばとある市区町村では20%の軽減割合で、違う市区町村では30%の軽減割合になる可能性があるのです。参照する市区町村を間違えてしまうと異なった情報を得る可能性がありますので、必ず注意して情報収集しなければなりません。
フリーランスの場合は確定申告書の控えなどが必要
収入の減少を証明しなければなりませんので、フリーランスは確定申告書の控えなどが必要です。これらがなければ収入が減少している事実が証明できませんので、国民健康保険の軽減制度が利用できなくなってしまいます。
ただ、実際は確定申告書の控えなどがなくとも申請はできるようです。受付する市区町村で情報を収集し、申請内容に齟齬がなければ軽減制度が適用できるような仕組みとなっているのです。
とはいえ、この場合は状況の確認をしてもらう必要がありますので、軽減制度が適用されるまでに時間が必要となる可能性があります。その他に収入状況が把握できる資料は事前に用意しておき、スムーズに軽減制度を適応してもらえるようにしたいものです。
まとめ
フリーランスに関係が深い国民健康保険についてご説明しました。会社員として加入する健康保険とは異なっていますので、どのようなものなのか概要を理解しておきましょう。また、これから国民健康保険に加入するのであれば、どのような手続きが必要となるのかについても理解しておきましょう。
現在は新型コロナウイルスの影響で、国民健康保険料の軽減制度が設けられています。市区町村によって適用される条件は異なりますが、収入の減少などで保険料の支払いが難しいと感じる場合は、軽減制度が利用できないか確認しておきましょう。