分散データベースとは?特徴とメリット・デメリットを解説

分散データベースとは?特徴とメリット・デメリットを解説

現在は、分散データベースと呼ばれる考え方が活用されるようになりました。データベースは、多くのシステムに必要不可欠なものであり、これを分散するようになったのです。複数のコンピューターに分散することで、トラブルなどに備えるようになりました。

すでに活用されている技術ではありますが、専門的な内容であり、理解できていない人は多く見られます。今回は、分散データベースとは、どのような技術であるのか解説します。

分散データベースとは

分散データベースとは、複数のコンピューターにデータベースを用意し、分散した状態で保存する仕組みを指します。今までは、中央集権型のデータベースが中心でしたが、分散データベースにすることで並列処理などの実現が可能です。水平型分散システムと呼ばれるもので、多数のデータベースから構築されているものの、実際には1つのデータベースであるかのように処理できます。

複数から構成されていれば分散データベースと呼ぶため、その詳細に細かな縛りはありません。システムやアプリケーションの要件、担当者の考え方などによって分散の仕方は変化するのです。例えば、営業所ごとにデータベースを作成することもあれば、機能ごとにデータベースをつくることもあります。

なお、データベースが物理的に分散されていることは重要ではありません。例えば、1台の物理サーバに複数の仮想サーバを立て、それぞれにデータベースを配置することが可能です。1つのデータベースに全てのテーブルが存在していなければ、分散データベースといえます。

分散データベースのメリット


分散データベースの採用には、以下のようなメリットがあります。

高い負荷の処理に対応しやすい

複数のデータベースサーバで処理するため、高い負荷に対応しやすいことがメリットです。1台のデータベースサーバでは、処理の限界を迎えることがありますが、分散データベースならばこれを回避できる可能性があります。例えば、データベースサーバを2台にすれば、単純計算で2倍の負荷に対応できるのです。

ビッグデータ解析など大量のデータを扱う場合は、処理に高い負荷がかかりがちです。1台のデータベースサーバでは、必要な処理を実行できないことがあります。しかし、分散データベースを採用すれば、このような問題を解決できるのです。

ただ、負荷分散を意識して処理するためには、それに適した設計が求められます。設計の仕方によって、実現できる負荷分散は異なるため、専門家による設計が必要です。

データの可用性を高められる

複数のデータベースから構成することで、データの可用性を高められることがメリットです。例えば、2台のデータベースサーバから構築されていれば、1台が故障してもデータの可用性を保てます。

近年は、多くのシステムやアプリケーションでデータベースが利用されています。データベースが故障すると、システムやアプリケーションが利用できなくなることも多いでしょう。これは非常に大きなリスクですが、分散データベースとして複数のサーバでデータを管理すれば、リスクヘッジが可能です。

コストを削減しやすい

ハイスペックなデータベースサーバを導入するよりも、分散データベースを導入した方がコストを抑えられます。一概に言い切れるわけではありませんが、コスト面でメリットがあると考えましょう。

現在はCPUやメモリなどが進化しているものの、処理できるデータ量には限界があります。物理的な限界を迎えているため、大きく進化しないのです。結果、大きくスペックを伸ばそうと考えるならば、非常に高いコストが生じてしまいます。

しかし、分散データベースを採用すれば、ハイスペックサーバを用意する必要はありません。ミドルスペックサーバでも、複数台を用意することによって、ハイスペックサーバと同じような処理速度を実現できるのです。ミドルスペックサーバはハードウェアが安定して流通しているため、コスト面を抑えて構築しやすくなっています。

分散データベースのデメリット

分散データベースの採用には、以下のようなデメリットがあります。

複雑な設計が求められる

分散データベースの実装にあたっては、複雑な設計が求められます。特に、台数が多くなればなるほど、細かく考えて設計しなければなりません。基本的な概念を理解し実装方法のセオリーを習得していなければ、設計で失敗してしまうでしょう。設計に失敗すると、運用で課題を抱えてしまうことは言うまでもありません。

データベースエンジニアでも、分散データベースを扱った経験のない人が見受けられます。データベースについて基本的な知識はあると思われますが、設計に際しては、経験したことのあるエンジニアなど有識者を交えた方が良いでしょう。中途半端に知識があることで、誤解したまま進めてしまうと、失敗の原因となりかねません。

運用の難易度が高まる

データベースを分散させることで、運用の難易度が高まってしまいます。複数のデータベースサーバを連携させながら運用するため、専門的な知識が必要です。一般的なデータベースの運用よりも、高いスキルが必要だと考えれば良いでしょう。

例えば、トラブルが発生した際には、原因の究明やそれに対する対処である「トラブルシューティング」をしなければなりません。ただ、分散データベースの場合は、トラブルシューティングにも専門的な知識が求められます。専門的な知識を持つエンジニアが必要という点で、運用の難易度は高まるのです。

なお、可能であれば設計を担当したエンジニアが、運用にも関われると良いでしょう。設計内容や設計の背景を把握している方が、難易度の高い運用にも対応しやすくなります。

データの一貫性に問題が生じることがある

分散データベースの大きなデメリットとして、データの一貫性が挙げられます。複数のデータベースサーバを組み合わせる仕組みであるため、一時的にデータの一貫性を保てなくなる場合があるのです。一般的なデータベースではこのような事象が起きないため、分散データベースならではの問題と考えましょう。

例えば、複数のデータベースサーバのうち、1台にのみ書き込む処理があるとします。基本的に、このデータはすぐさま反映されますが、ほぼ同じタイミングで別の処理があると反映されないデータが利用される可能性があるのです。料金を更新したはずが、更新される前の情報で処理が進んでしまうかもしれません。

一般的なデータベースは、このような問題が起きないように内部で制御します。分散データベースも同様に制御しますが、物理的に離れている場合などは、通信に時間がかかるため制御しきれないことがあるのです。必ず生じるものではありませんが、デメリットとして認識しておきたい部分です。

分散データベースの導入方法


分散データベースの導入は、専門的な知識が必要となり、難易度の高いものです。どのような導入方法があるか、選択肢を紹介します。

データベースエンジンを用いた自力構築

基本的に、分散データベースを構築するといえば、データベースエンジンを用いて自力で構築します。例えば「MongoDB」「MySQL」などの製品は、分散型データベースのアーキテクチャに対応したものです。そのため、これらの製品をインストールして分散型データベースとしての設定を実施し、スムーズに運用していきます。

ただ、分散型データベースは、デメリットで触れた通り設計が難しいものです。専門知識なしにデータベースエンジンを設定しても、スムーズな運用は難しいでしょう。データの整合性が取れないなど、何かしらの問題が起きることになりかねません。

とはいえ、分散データベースを構築できるだけのスキルがあるならば、自力で構築し運用することが一番です。状況に応じて複雑な設定などを実施しなければならないため、自分自身での管理が理想的といえます。

ベンダーによるマネージドサービス

自力での設計や運用が難しいならば、データベースベンダーのマネージドサービスを利用しましょう。ベンダーのデータベースエンジニアが、設計や運用を全面的に支援してくれます。不明点については説明してもらうことも可能であり、少ない知識でも分散データベースの運用ができるのです。

ただ、注意点としてはベンダー任せになるため社内にナレッジが残りません。また、何かしら修正が必要となった際に、時間を要してしまう可能性があります。多少は妥協しなければならない部分ですが、時には大きなデメリットとなりかねないのです。

なお、ベンダーによっては、自社のデータベースエンジニアをサポートするサービスを提供していることがあります。自社にナレッジを残したいと考えているならば、このようなサービスがないか確認してみることも重要です。

クラウドサービス

分散データベースとは少々異なりますが、パブリッククラウドのデータベースサービスを利用する選択肢があります。このようなデータベースは、複数のデータベースサーバから構築されていて、負荷分散などを実現できる仕組みです。そのため、自分自身でデータベースを設計などしなくとも、分散データベースのようなものを利用できます。

具体的に、どのようなサービスが提供されているかは、契約するクラウドサービスによって変化します。例えば、AWSが提供する「Amazon RDS」は特定のインスタンスを契約することで、分散データベースとして利用できるのです。自動的にビルドされ、通常のデータベースのように使えるにもかかわらず、内部的には分散データベースとして構築されます。

注意点として、クラウドサービスが提供するデータベースは、何かしらの理由で仕様が変更になってしまう場合があります。事前に告知されるものの、アプリケーションやシステムの設計にクリティカルな影響を与えるかもしれません。

分散データベースを導入すべきタイミング

分散データベースのアーキテクチャは非常に複雑なものです。そのため、どのような場面で導入すべきか、タイミングを理解しておくことが求められます。

高い拡張性が求められる

コストを重視しながらも高い拡張性が求められる場合は、分散データベースを採用すると良いでしょう。メリットでも解説したとおり、分散データベースならば性能を高める構成に切り替えても、コストを最小限に抑えられます。ハイスペックなハードウェアの導入を避けたいならば、分散データベースを軸に考えるべきです。

また、利用者数が頻繁に変化するなど、拡張と縮小を繰り返す場合にも分散データベースが良いでしょう。例えば、繁忙期のみ高いスペックが求められ、それ以外はミドルスペックで十分な場合などです。このような状況において、1台のデータベースサーバで要件を満たすことは難しくなってしまいます。しかし、分散データベースならば、問題なく要望を叶えられるでしょう。

耐障害性を重視する

高い可用性が求められ、耐障害性を重視しなければならない場合は、分散データベースが最適です。複数のデータベースサーバを組み合わせることで、どこかに問題が生じてもシステムやアプリケーション全体の稼働を維持できます。

例えば、決済系のサービスは、停止してしまうとユーザーへ大きな影響を与えてしまいます。そのため、分散データベースを利用して、トラブルが生じても停止しないような設計とするのです。一例ではありますが、データベースのトラブルによる障害を避ける必要があるならば、分散データベースが適しています。

まとめ

データベースの中でも、分散データベースについて解説しました。複数のデータベースサーバから構築されるデータベースのことであり、不可分散を実現したり可用性を高めたりできます。1台のデータベースサーバでは、いくつものリスクを抱えるため、これを分散データベースで解決するのです。

ただ、魅力的な仕組みではありますが、複数のデータベースサーバを組み合わせるため、専門的な知識が求められます。特に設計は知識なしで進めると失敗の原因となるため、有識者を含めるようにしましょう。

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admin