フリーランスの直接契約とは|結び方・メリットやデメリットを解説
フリーランスが仕事を受注する方法に「直接契約」が挙げられます。フリーランスはクラウドソーシングやエージェントなどの仲介サービスを利用してクライアントと契約を結ぶ人が多く見られますが、直接契約の選択肢ももちろんあります。
しかし、今まで仲介サービスを利用していた人は「直接契約はどうすれば良いのか」と疑問を持つでしょう。今回はフリーランスとしてさらに活躍するためにも、直接契約の内容や契約の方法、メリットやデメリットまで幅広く解説します。
フリーランスの直接契約とは
フリーランスが結ぶ直接契約と言われても、具体的なイメージが持てない人もいるでしょう。まずは直接契約とはどのような契約を指しているのかをご説明します。
直接契約の概要
直接契約とは一般的に仲介サービスを介さずに結ぶ契約を指します。フリーランスとクライアントの間でのやり取りをして、契約書を交わすことで成立する契約です。
フリーランスの場合、クラウドソーシングサービスやフリーランスエージェントを利用して契約を結ぶことが多々あります。このような第三者を仲介するものに対して、介さないものを直接契約と認識すれば良いでしょう。
なお、仲介サービスの中にはクライアントとフリーランスを直接契約させ、契約とは別にクライアントから手数料をもらうタイプがあります。これもフリーランスとクライアント間は直接契約ですが、今回は案件の仲介をするサービスが関与しないものに限って直接契約と定義します。
(準)委任契約と請負契約の違い
フリーランスが案件を受注する際は、準委任契約か請負契約のどちらかを結びます。これらの契約には大きな違いがあるため、具体的な違いについて理解が必要です。
これらの契約についてフリーランスが気にすべきポイントをまとめると、以下の通りとなります。
観点 | (準)委任契約 | 請負契約 |
報酬の支払い | 成果の達成もしくは委任事務の完了で支払われる | 定められた仕事を完成することで支払われる |
債務不履行責任 | 善管注意義務に違反した場合のみ | 仕事が完成しなかった場合全般 |
クライアントによる契約解除 | 履行した割合に応じて支払いを請求可能 | 完成している部分の割合に応じて支払いを請求可能 |
これらの違いがすべてではないものの、最低限これらの違いについては理解しておきましょう。違いについて理解しないまま直接契約を結ぶと、大きなトラブルを避けられなくなります。
特に押さえてもらいたいのは「仕事を完成する義務があるかどうか」です。委任契約には仕事を完成させる義務がありませんが、請負契約は仕事を完成させる義務があります。この違いはフリーランスにとって非常に重要な部分であるため、契約を結ぶ際は正しい理解を持って選択しましょう。
フリーランスが直接契約を結ぶ方法
フリーランスが結ぶ直接契約とはどのようなものなのかイメージを持ってもらえたでしょう。続いては実際に自分が直接契約を結ぶ際、どのような手続きで結ぶことになるのかご説明します。
クライアントと直接契約書を取り交わす
フリーランスが直接契約を結ぶ方法は単純で、クライアントと直接契約書を取り交わすだけです。クラウドソーシングサービスではそのサービスが用意した契約書、フリーランスエージェントではエージェントが用意した契約書を利用しますが、直接契約ではクライアントもしくは自分が用意した契約書を直接取り交わすのです。
クライアントと自分のどちら側が主体となって契約書を作成するかは、案件の状況やクライアントの考え方により異なります。契約書を提示してもらえることもあれば、自分で作成することもあるため状況に応じて対応しましょう。フリーランスの業務内容は契約書に書かれていることが全てであるため、適切な契約書を取り交わすことが重要です。
なお、契約書の取り交わしは紙が利用されることもあれば、PDFなど電子的な署名が利用されることもあります。また、オンライン上で契約書を取り交わすクラウドサービスもあり、こちらが利用される場合もあります。基本的には契約書の内容に問題がなければ、契約を取り交わす手法が違っても差し支えはありません。
契約書を作成・確認する際の注意点
フリーランスが自分で契約書を作成したり、クライアントが作成した契約書を確認したりする際には注意点があります。誤った契約書で契約するとトラブルの元になりかねないため、必ず以下の観点からトラブルにならない契約書であるか評価しておきましょう。
業務の期間
いつからいつまで有効な契約書であるのか記載が必要です。業務の期間について記載がなければ、クライアントとトラブルになりかねません。必ず想定している期間について記載しましょう。
また、やむを得ない場合の延長条件や終了条件も記載しておくべきです。状況によってはスケジュール変更を避けられない可能性があるため、万が一に備えて条件を定めておくのが賢明です。
作業範囲
具体的にどのような作業を受注するのか明記しましょう。記載内容が曖昧であるとフリーランスとクライアントで解釈が異なり、トラブルの原因となってしまいます。
作業範囲が明確でなければ、クライアントが後から追加で作業を依頼してくる可能性があります。契約書にない作業は対応できないことを伝えるためにも、誰が見てもわかるような作業範囲にすべきです。
報酬
契約した業務が完了した後に報酬がいくらでどのように支払われるのか明記します。金額については明記する人が多いですが、支払い方法についても明記しておきましょう。
例えば支払い方法は「月末締め翌25日までに銀行振込」などと記載します。支払いの締切と支払い方法を明記しておけば、報酬の支払いについてトラブルが起きる可能性を少なくできます。
また、消費税や源泉徴収についても明確に記載すべきです。この部分も認識齟齬を生じやすい部分であるため、契約書に最初から記載しておきましょう。
完了の条件
どのような目的を達成すれば業務が完了したとみなすのかを明記します。例えばプログラムの提供やデザインの提供、一定期間のお問い合わせ対応などが挙げられます。
完了の条件が明確でなければ、クライアントはいつまでも契約を検収してくれない可能性があります。そのような状況ではいつまでも売上が手元に入らないため、完了の条件については認識齟齬が発生しないよう具体的に記述します。
フリーランスが直接契約を採用するメリット
続いてはフリーランスが直接契約を採用するメリットをご説明します。以下のメリットを踏まえて直接契約を採用するかどうか考えてみましょう。
単価交渉がしやすい
直接契約はクライアントと直接交渉するため、単価交渉がしやすいメリットがあります。エージェントもある程度の単価交渉はできますが、直接クライアントと掛け合った方が、単価交渉が成功する場合も多々あります。
フリーランスは毎月の単価が自分の収入に大きく影響します。会社員の場合は会社の利益が変化するだけですが、フリーランスの場合はそうではありません。単価が上がれば上がるほど収入が増えるため、できるだけ高い単価で仕事を依頼してもらえるように交渉すべきです。
もちろん、単価交渉はしやすいものの、スキルがなければ単価が上がる状況は期待できません。クライアントが自分をどのように評価してくれているのかを踏まえ、適切な評価でないと感じれば積極的に交渉してみると良いでしょう。
手数料が発生しない
クラウドソーシングやエージェントのように仲介するサービスがないため、各種手数料が発生しません。フリーランスは案件の獲得にあたって手数料の負担が発生しやすいですが、直接契約になればこれがなくなるのは大きなメリットです。
例えばクラウドソーシングサービスやエージェントが10%の手数料を取っていたとします。同じ単価で直接契約できると手元に入るお金が増えるため、単純計算で11%程度の売上増加につながります。税金などを差し引いても所得金額が増えるのは間違いありません。
ただ、メリットと共に考慮してもらいたいのは営業活動や契約に時間を必要とすることです。クラウドソーシングサービスやエージェントは営業活動や事務作業のサポートをしてくれているため、直接契約を採用すると実働時間が少し長くなってしまうかもしれません。
フリーランスが直接契約を採用するデメリット
フリーランスが直接契約を採用するとメリットだけではなくデメリットもあるため、こちらもご説明します。以下のデメリットも踏まえて直接契約が適しているかどうかを考えてみましょう。
営業に時間がかかる
自分で契約するクライアントを探し出す必要があるため、営業活動に時間がかかります。エージェントを利用すると自分での営業活動は必要なくなり、これと比較すると時間的なデメリットがあります。
また、人によっては自分を売り込むのが苦手で、営業活動にも苦手意識を持っている人がいるでしょう。そのようなフリーランスは営業に苦戦してしまい、思うように案件を獲得できない可能性があります。フリーランスで案件を獲得できない状況は収入に大きな影響を与えるため可能な限り避けなければなりません。
コミュニケーションが得意でも多少なりとも営業活動に時間はとられてしまいます。幅広く自分で対応しなければならないことは、フリーランスが直接契約を採用するデメリットです。
契約など事務手続きの対応が必要となる
直接契約では契約書の締結が必要となるため、契約に関わる事務手続きが必要となります。契約の方法によって手続きの負荷は異なりますが、何かしらの負荷がかかってしまう点はデメリットです。
例えばフリーランス側が契約書を作るならば、作成するためのまとまった時間が必要です。契約書の内容に不備があると受注してからトラブルの原因となるため、時間をかけてでも丁寧に作成する必要があります。また、契約書が提示された場合も丁寧に内容を確認しなければなりません。
他にも、印刷された契約書を利用する場合は、押印したり郵送のやり取りが発生したりするかもしれません。近年は電子的な契約書が主流となっていますが、クライアントに印刷物を求められると事務作業が増えてしまいます。
継続して案件を受注できるとは限らない
直接契約はクライアントと期間を決めて契約を結ぶため、案件の継続が保証されません。期間の終了後も案件を獲得したいならば、改めて契約を結んでもらうか別のクライアントを探す必要があります。収入が安定しなかったり、更新の度に手間がかかったりするのは直接契約のデメリットです。
フリーランスエージェントなどを利用すると、収入が途絶えないように案件を紹介してくれます。クライアントから既存の案件で更新がなければ、別の案件を紹介してくれる仕組みです。そのため、フリーランスでもエージェントに任せればある程度は安定した収入が期待できます。
しかし、直接契約をしていると上記のように案件の継続をサポートしてくれません。クライアントの都合によって案件が終了してしまうと、いきなり収入が減ってしまう可能性があります。案件が終了してしまうリスクが常に付きまとうのは、直接契約を採用するデメリットです。
まとめ
フリーランスの直接契約についてご説明しました。直接契約はクライアントと直接契約書を交わす契約方法で、クラウドソーシングやフリーランスエージェントを利用しない方法です。第三者の仲介がないため、手数料が発生せず収入を増やしやすいメリットがあります。
ただ、クライアントと直接契約書を交わすため、契約書の作成が必要になるなど事務手続きの負担があります。また、契約書の内容に不備があるとトラブルの原因となるため、契約書の作成について一定の知識が求められます。
メリットだけではなくデメリットはありますが、直接契約を利用できるとフリーランスとして活躍できる幅が広がるはずです。今すぐに直接契約を利用しない人でも、先を見越して基本知識を身につけておきましょう。