IoTの次はIoB?次世代トレンドを解説
2019年頃から「IoB」と呼ばれる言葉がトレンドになっています。これまでは「IoT」がトレンドになっていましたが、現在は進化してIoBが次世代トレンドになってきています。
トレンドになるほど注目されている言葉ではありますが、まだまだIoBは幅広く普及している状況ではありません。皆さんの中にも意味を理解できていない人は多いでしょう。今回は次世代トレンドであるIoBとはどういったものであるのかについて解説します。
IoBとは!?状況に応じた2つの意味
まずはIoBの意味について解説していきます。ただ、不思議なことかもしれませんが「IoB」は状況に応じて2つの意味があります。
- Internet of Bodies
- Internet of Behavior
今回は最初にそれぞれの意味についてご説明しておきます。
Internet of Bodiesとは
Internet of Bodiesは直訳すると「身体のインターネット」となります。これだけでは意味が理解しにくいですが、人間の身体とインターネットを接続する技術を総称していると考えください。
これが目指しているのは「インターネットを経由して身体の情報を把握すること」です。本来、身体の様子は本人のみが把握できるもので、他人が客観的に把握できるものではありません。しかし、Internet of Bodiesではインターネットに接続し、身体の情報を確認することで行動や状態などを外部から把握することを目的とします。
Internet of Behaviorとは
Internet of Behaviorは直訳すると「行動のインターネット」です。ここでの行動とは人間がどのように動いたかを指しています。行動に関する情報をインターネットで接続し、把握できるようにする技術だと考えてください。
先程のInternet of Bodiesでは、 身体の情報をインターネットに共有しているだけです。そのため具体的にどのような行動をしたのかは把握できません。つまり、Internet of BehaviorはInternet of Bodiesからさらに進んだテクノロジーだと言えます。
なお、一般的にIoBといえばInternet of Behaviorを指し、「行動の情報を活用して生活の質を向上する技術」だと理解されます。この記事でもInternet of Behaviorの意味合いで利用していきますので、その点は間違えないようにしてください。
IoBの事例
IoBがどのような意味合いの言葉であるのかは理解してもらえたでしょう。続いてはIoBの具体的な事例をご紹介します。様々な種類が存在しますが具体例を挙げると以下のとおりです。
- 顔認識
- GPSの活用
- ペースメーカー
- スマートウォッチによる心拍数などの取得
皆さんが理解した内容と事例は一致していたでしょうか。IoBの適用範囲は非常に広いものですので、皆さんがイメージした事例とは少々異なるかもしれません。イメージよりも幅広い事例が含まれていても不思議ではない状況です。
後ほどご説明しますが、IoBには3つの段階があります。この段階のどれに当てはまるかによって、IoBといえども利用するデバイスや機能などが大きく異なります。今は身近なものの中で、どれがIoBに該当する事例であるのか把握するようにしておいてください。
IoTとIoBの関連や違い
IoBに似た言葉にIoTがあります。実は似ているだけではなくこれらの言葉には関連性と違いがあります。具体的にどのような内容であるのかをご説明します。
関係性
IoTはそもそも「Internet of Things」を省略したもので、直訳すると「モノのインターネット」です。様々なものをインターネットに接続し、利便性の向上を図る技術全般を指します。例えば家電製品をインターネットに接続して、新機能を利用する行為などがIoTに該当します。
IoTもIoBもインターネットを利用して情報を取得したり送信したりします。つまり技術的な側面から考えると、IoTとIoBは似た部分が多く、関連性の高いものとなっています。
違い
IoTとIoBの大きな違いは「何をインターネットに接続するか」です。IoTは「モノ」であるのに対してIoBは「人」ですので、ここが違いと言えます。
解釈の仕方によっては、人も「モノ」の一種であると考えられるかもしれません。ただ、「Things」は一般的に人間など生物を含みません。そのため、明示的に人間など生物を含むかどうかがIoTとIoBの違いだと捉えるようにししてください。
IoBが次世代トレンドとなる3つの段階
IoBはIoTに次ぐ次世代トレンドであるとご説明しました。ただ、いきなりIoTに取って代わるトレンドではなく、IoBにはトレンド化に向けた段階があります。
この段階についてはノースイースタン大学のアンドレア・マトウィーシン教授が以下のとおり3つの段階に分類しています。
- ウェアラブル
- 体内内蔵型
- ウェットウェア
続いてはIoBがトレンドになるにあたり、どのような段階を踏んでいく必要があるのかについてご紹介します。
ウェアラブル
ウェアラブルは「定量化」の段階です。現在でも幅広く実現されているIoBで、身体に触れるデバイスを利用して身体の状態を定量的に示します。
具体的なウェアラブルには「スマートウォッチ」が挙げられます。例えば「Apple Watch」は装着するだけで心拍数などを取得してくれる機能があります。専用のデバイスではありませんが、IoBを身近なものとしてくれるデバイスは存在します。
なお、現在は機械ではなく衣料品においても「ウェアラブル」を実現する動きがあります。海外では微弱な電気を発する糸が開発されているなど、IoBの第1段階とはいえどもウェアラブルはさらに進化を遂げると考えられます。
体内内臓型
体内内蔵型は「体内のデバイスにより内蔵などの情報を取得して体調管理を行う」段階です。外部から身体に触れるデバイスを利用するのではなく、身体の内側に装着して情報を取得するものです。ウェアラブルデバイスを利用するよりも、より詳細な情報が取得できると期待できます。
具体的に体内内蔵型のデバイスには、ペースメーカーが挙げられます。体内にペースメーカーを装着することによって、身体の内側から内臓の状態を把握し、把握した情報に応じて適切な行動が取れます。今まではペースメーカー内に情報が保存されていましたが、現在はIoBの普及でインターネットを経由して遠隔でも情報が取得できるようになりつつあります。
現在、体内内蔵型は医療分野での利用が中心です。ウェアラブルは医療分野ではなく健康促進のために利用されるケースも多いですが、体内内臓型はデバイス装着のハードルの高さなどから、医療分野での利用に留まっています。今後新しいデバイスが開発されれば、体内内臓型のIoBは医療分野以外にも広がっていくかもしれません。
ウェットウェア
ウェットウェアは「脳にデバイスを接続して情報のやりとりができる」段階です。内臓から情報を取得するのではなく、脳から直接情報を取得する方法です。内臓から情報を取得するためには、臓器の数だけ対応するデバイスを用意する必要がありますが、ウェットウェアになると脳にだけ装着すれば良くなります。
ただ、現状としてウェットウェアはまだ実用化されているものではありません。実現に向けたイメージは持たれている状況ではありますが、技術的な側面などからまだ具体的なデバイスは完成していないのです。IoBの最終段階ではあるものの、まだ最終段階を実現した例はありません。
とはいえ、IoBを中心に研究や開発している企業では、すでにウェットウェアのデバイス開発が進められています。まだインターネットに接続できる状況ではありませんが、脳にデバイスを装着して、外部から情報を取得したり送ったりできるような実験が行われているのです。
IoBの中でもウェットウェアが実現されれば、世の中に大きな変化をもたらすのは間違いありません。ただ、ウェットウェアには技術的にも倫理的にも課題が残されている状況です。実現するまでには時間がかかると考えた方が良いでしょう。
IoBのトレンド化を阻む3つの課題
IoBは次世代トレンドではあるのですが、トレンド化を阻む3つの課題があります。これらについても今回はご説明しておきます。
プライバシーやセキュリティの担保
IoBが普及するにあたり、大きなポイントになるのはプライバシーやセキュリティの担保です。個人情報を多く取り扱いますので、これが担保されなければIoBのトレンド化は難しくなってしまいます。
現在は世界的に様々な情報が個人情報として扱われています。健康に関わる情報はまさに個人情報で、IoBで集める情報は厳重に管理しなければなりません。
現状、多くのデバイスでプライバシーやセキュリティの向上が進められています。例えばAppleWatchと連携するiPhoneには様々なセキュリティ機能が設けられています。これらを利用することで、健康にかかわる情報などは保護できるようになっているのです。
とはいえ、IoB全体の状況を踏まえると、まだまだプライバシーやセキュリティの保護には不安を感じる部分があります。これが払拭されるまでは、トレンドの足かせとなってしまいかねません。
機器のメンテナンス
必要とされるデバイスのメンテナンスについて検討の余地があります。ウェアラブルなデバイスについては交換などの融通が利きますが、それ以外のデバイスについてはまだまだ検討が必要な部分があります。
例えば体内内臓型の場合、デバイスが故障すると一度取り出してメンテナンスする必要があります。ものによっては取り出さずともメンテナンスできるかもしれませんが、ここでは取り出す必要があると仮定します。
そのように仮定すると、メンテナンスの際には身体に負荷がかかってしまいます。デバイスの装着だけではなく、デバイスの取り出しに関する負担があるのです。純粋にIoBを促進することはできますが、メンテナンスにあたり課題が残ることでトレンド化がやや遅れてしまうかもしれません。
サイバー攻撃への対応
IoBはデバイスをインターネットに接続するものです。インターネットに接続されている以上、サイバー攻撃への対応をしなければなりません。
現状、セキュリティ対策の専門会社などが数多く存在し、サイバー攻撃への対応を日々行なっています。ただ、そのような環境でもサイバー攻撃はゼロにならず、対策会社と攻撃者のイタチごっこが続いている状況です。これは今後も続くと考えられますので、IoB普及の障壁となってしまう可能性があります。
IoBのように身体に大きく影響を与えるものは、可能な限りサイバー攻撃への対応をしなくてはなりません。個人情報が抜き取られることがないようにする必要がありますし、意図せぬ動作をしないような対応もしなければなりません。IoBのデバイスを開発する企業には、多くの対応が求められてしまいます。
ただ、現状として様々な観点からサイバー攻撃への対応が行われています。可能な限り攻撃されないようなデバイスの開発も進められている状況です。そのため、IoBのトレンド化にあたり懸念点はありますが、いずれは払拭されて安心して利用できるデバイスが提供されるでしょう。
まとめ
IoBは現在注目されている技術です。人の行動をデジタル化して、その内容を活用していく技術全般を指します。身体をインターネットに接続すると表現されるケースも多々あります。
今の時代は様々なものがインターネットに接続されています。その次の段階として、人がインターネットに接続されるのです。このような技術的進化が起こるのは必然と言えるでしょう。
注目されてトレンドとなっている技術ではありますが、まだトレンド化を阻害する問題点があるのも事実です。IoBに関する特徴や注意点を理解し、今後の動向を注視しておかなければなりません。