【確定申告】インボイス制度での変更点を解説!

【確定申告】インボイス制度での変更点を解説!

インボイス制度が開始され、ある程度の期間が経過しました。初めての年末を迎えたことで、確定申告に影響が出た人もいるでしょう。初めて、消費税の算出などにチャレンジした人もいるはずです。

少しずつ普及している制度ではありますが、フリーランスにとってはまだまだ「よくわからない」との印象を持つものではないでしょうか。実際、インボイス制度に登録していない人も見受けられます。今回は、少しずつ浸透し始めたインボイス制度について解説します。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、どのような内容であるのか、概要や目的について解説します。

インボイス制度の概要

インボイス制度は「適格請求書等保存方式」と呼ばれるもので、消費税の取扱いについて新しいルールを定めたものです。皆さんが日頃から消費税を支払っているように、消費税のルールは昔から大きく変化していませんが、インボイス制度によって取扱いが変化しています。

特にインボイス制度の要は「所定の形式でなければ消費税の仕入れ税控除が適用できない」という部分です。詳細については後ほど解説しますが、適切な書式で請求書や領収書を作成しなければ、消費税を控除できなくなりました。簡単にまとめると、消費税の控除に関する条件が厳しくなったのです。

細かな部分では、インボイス制度によって応じている部分があります。これらについては、後ほど解説するため、そちらを参照してください。

インボイス制度の目的

インボイス制度の目的は、消費税を適切に納めてもらうためです。基本的に、課税取引を行うならば消費税を納めなければなりませんが、売上1,000万円未満など例外的に納めなくても良いケースがあります。ただ、この制度を悪用して消費税を納めない人が見受けられるため、全体的に条件が厳しくなったのです。

また、そもそも論として、消費税の納税額を増やしたいという考えもあるでしょう。例外として非課税事業者が認められているものの、これでは納められる消費税の額が少なくなってしまいます。国としては、可能な限り納税してほしいと考えられるため、条件を厳しくして納税を促しているのです。

インボイス制度によって生じた変更点


インボイス制度によって、いくつかの変更点が生じています。それらの中でも、特に重要なポイントを以下に解説します。

仕入税額控除制度の要件

インボイス制度による最大の変更点は、仕入税額控除の条件が変わったことです。今までは、すべての課税取引について仕入税控除が認められましたが、これからはインボイスに基づいた取引だけが認められるようになります。自由に消費税を差し引きできるルールではなくなったのです。

例えば、今までは5万円の消費税を預かり4万円の消費税を支払うならば、差額の1万円だけを納めれば良い仕組みでした。しかし、現在は4万円の消費税について、インボイス制度に基づいているかが重要視されます。もし、4万円のうち1万円がインボイス制度に基づいていないと、3万円しか控除できなくなるのです。つまり、2万円の消費税を納めなければなりません。

これは一例ですが、仕入税額控除の要件が変更になったことで「消費税を支払ったが控除はできない」という状況が発生するようになりました。今まではこのような状況になり得なかったため、これは大きな変化です。

インボイスの発行可否

ルールに沿ったインボイスを発行できる事業者であるかどうか確認する必要があることも変化のひとつです。インボイス制度では、消費税の課税事業者しかインボイスを発行できません。インボイスに必要な事業者番号は、消費税の課税事業者のみに対して発行されるからです。つまり、消費税の課税事業者を選択していないと、番号が発行されずインボイスの発行もできません。

ただ、インボイス制度が開始されたからといって、すべての事業者がインボイス制度に登録しているわけではない状況です。フリーランスなどBtoBの仕事が中心の場合は登録するケースが多いですが、小規模な小売業などBtoCの仕事が中心ならば登録していないことがあるでしょう。そのため、インボイス制度が開始された今の時代においては、インボイスの発行可否を必要に応じて確認する必要があります。

今までは、このような発行可否を確認する作業がありませんでした。しかし、インボイス制度の適用を求めるならば、事前に確認する手間が生じるようになったのです。

請求書の書式

請求書の様式が今までとは変化しました。インボイス制度に基づいて発行する場合、以下の項目が記載されていなければなりません。

  • インボイス発行事業者の氏名・名称および登録番号
  • 取引年月日
  • 取引内容
  • 税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率
  • 税率ごとに区分した消費税額等
  • 書類を受領する事業者の氏名・名称

事業者番号や税率ごとの消費税額など、今まで指定がなかった項目が追加されています。仮にインボイス制度に登録していても、条件を満たしたフォーマットでなければ仕入税額控除に利用できないため、発行する側は注意が必要です。

なお、フリーランスがこのような請求書を、独自に作成することは難しいと考えられます。そのため、クラウドサービスやテンプレートなどを利用して、請求書を作成するようにしましょう。内容に不備があると、クライアントも自分もトラブルを起こすことになりかねないため、フォーマットは注意すべきです。

フリーランスはインボイス制度の変更に対応すべきか

続いては、フリーランスはインボイス制度に登録すべきであるかどうか考えていきます。

実質的には対応が求められる

一般的な考え方として、フリーランスはインボイス制度に登録するしかないでしょう。フリーランスへと発注する企業の多くは、インボイス制度に登録し、消費税を納める義務を負っているはずです。このような企業は、フリーランスへ支払った消費税について控除したいと考えます。

もし、フリーランスがインボイス制度に対応していないと、支払った消費税を控除できなくなります。結果、利益が減少するなどの問題が生じるのです。これは発注する側にとって大きな問題となりかねません。その結果、インボイス制度に対応しているフリーランスへと依頼するしかなくなってしまいます。

そのような現状を踏まえると、実質的には対応が求められるでしょう。現時点ではインボイス制度に対応していなくても、事業拡大などには必須だと考えられます。インボイス制度の導入に際して、フリーランスは対応するしかないのです。

資金繰りの改善を意識する

インボイス制度への対応にあたっては、資金繰りの改善を意識しなければなりません。確定申告の際に、消費税を納める必要があるため、現金の確保が必要です。場合によっては、まとまった金額を納めることになり、手元の現金が一気に減ってしまいます。

今までと同じような資金繰りで考えていると、手元のお金が不足することになりかねません。税金の滞納は信用力の低下につながるため、優先して納める必要があり、他の支払いに影響することも考えられるのです。

ただ、確定申告に必要な帳簿を作成するクラウドサービスなどを利用すると、大まかな納税額は常に把握できます。そのため、状況を把握しながら資金繰りの改善に努めていくべきです。

インボイス制度の変更点に対応する際のポイント


インボイス制度の変更点に対応するにあたって、以下のポイントを意識してください。

デジタルインボイスを採用する

インボイス制度に対応するため、デジタルインボイスの採用を検討しましょう。デジタルインボイスとは、請求側が支払い側に対して、人の手を介さずにインボイスを送付する仕組みを指します。例えば、フリーランス側がクラウドサービスでインボイス制度に対応した請求データを作成し、支払い側のシステムにそのまま送信するのです。

デジタルインボイスを利用すると、データ処理の効率化や人的ミスの防止につながります。フリーランス側は、請求するだけが多いと思われますが、クライアント側から支払いミスがあるとトラブルになりかねません。場合によっては、入金額が予定よりも少なく支払いに困ってしまうこともありえます。そのような状況を避けるために、より確実に支払いしてもらえるデジタルインボイスを採用すると良いのです。

また、デジタルインボイスを利用することによって、保管の手間を最小限に抑えられます。インボイスを発行した場合は、請求側も支払い側も控えを7年間保存しておかなければなりません。デジタルインボイスを利用しデータとして管理しておけば、より効率よく管理できるようになるのです。

電子帳簿保存法を踏まえる

インボイス制度と電子帳簿保存法はそれぞれ別の制度・法令です。ただ、これらは取引の書類に関するものであり、どちらも意識しておかなければなりません。

例えば、インボイスをデジタルインボイスではなくPDF形式で受け取った場合、電子帳簿保存法が定める取引関係書類に該当します。そのため、インボイスは「電子取引データの保存」という事項に則った方法で保存する必要があるのです。誤ってデータを削除などしてしまうと、法令違反として指摘されかねません。

なお、電子帳簿保存法では、インボイス以外にも国税関係の帳簿や決算関係書類、取引内容を示す書類なども電子保存の対象となっています。インボイス制度と同時にこれらについても理解して、フリーランスとしての活動で必要な書類を削除しないように注意すべきです。

制度の詳細について改めて理解する

インボイス制度が開始されたため、制度の内容について改めて理解することが重要です。今回、インボイス制度の内容を解説しているため、その部分を中心に理解するようにしてください。基本的な部分を理解できていないと、クライアントから問い合わせがあった際や税務署で手続きする際にトラブルが生じるかもしれません。

なお、税金面での複雑な部分については、説明を割愛しています。非常にややこしい部分もあるため、フリーランスでインボイス制度の不明点があるならば、税務署の無料相談や税理士の相談サービスなどを活用しましょう。正しく納税できないと、税務署から指摘されることになりかねないため、不明点は早々に解決しておくことが大切です。

インボイス制度に向けた補助金を活用する

フリーランスを含めた個人事業主向けの補助金や助成金が存在しています。その中には、インボイス制度への対応に利用できるものがあるため、積極的に利用してみると良いでしょう。

例えば「IT導入補助金」を活用することで、請求書のシステムなどを低価格で導入できます。単なる請求書の発行だけではなく、売上の向上に向けて分析機能を有するシステムを導入すれば、補助金を利用して多くの効果を得られるでしょう。必ずしも、インボイス制度の対応に限ったシステムではなくても良いのです。

また「小規模事業者持続化補助金」には、インボイス特例が設けられています。これはインボイス制度への対応に向けて、特定の投資を行った際に、通常よりも最大で50万円を補助金を受け取れるものです。このような補助金を利用する機会があるならば、インボイス特例を活用することで、金銭的な負担を軽減できるでしょう。

参考:IT導入補助金2024

まとめ

フリーランスを含め、幅広い事業者に影響が出るインボイス制度について解説しました。実際に開始されるまでは、どのようなものか適切に理解されていませんでしたが、今では理解が必須です。特に、インボイス制度に登録していないと取引に制限がかかる可能性があるため、必要ならば登録しなければなりません。

また、インボイス制度に登録すると、最終的には消費税を確定申告する必要があります。多くの場合は、消費税を納めることになるため、資金繰りなども意識しなければなりません。今までよりも手元に残るお金が少なくなると考えられ、場合によっては価格の見直しなども必要となるのです。

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admin