確定申告に必要な書類は?フリーランスがはじめての申告で知っておくべきこと

確定申告に必要な書類は?フリーランスがはじめての申告で知っておくべきこと

初めて確定申告を行う人の多くが、「確定申告は複雑で面倒」と思っているのではないでしょうか。たしかに、「簿記」や「帳簿」などという言葉を聞くと腰が引けてしまうかもしれません。しかし、実は確定申告はそれほど難しいものではないのです。手順に沿って必要な資料をそろえていけば、初めてでもスムーズに手続きが行えます。この記事では、初めての確定申告で提出に必要な資料が知りたいフリーランスの人に向けて、準備すべきものや帳簿付けを効率化する方法について解説します。

確定申告書はどこで入手するのがベストか

確定申告書を入手する方法はいくつもあります。まず、全国にある税務署に出向いて受け取る方法です。最寄りの税務署を調べておきましょう。税務署が遠い場合は、管轄の税務署に連絡して申告書を郵送してもらうことも可能です。このほか、国税庁のウェブサイトの「確定申告特集」からダウンロードして出力する、あるいは「確定申告書等作成コーナー」の画面上で申告書を作成することもできます。「確定申告書等作成コーナー」上で作成した場合は、「e-Tax」と連動させることで電子申告することもできるので便利です。

パソコンが使える人であれば、「確定申告書等作成コーナー」を使うことで税務署に行かなくて済みますのでその分の手間が省けます。加えて、確定申告は様式に記入する方法だと手書きになってしまい、万が一間違えてしまった場合は、二重線で消して書き直したうえに訂正印も必要です。その点、国税庁ウェブサイトの「確定申告書等作成コーナー」画面で直接入力する方法であれば、間違った場合にも簡単に修正できますので安心です。

確定申告書の様式はどれを選べばよいのか

初めて確定申告を行う場合は、どの様式を選べば良いのか迷ってしまうこともありますよね。確定申告書には、「A様式」と「B様式」の2種類があります。A様式は、申告する所得が給与所得や公的年金、雑所得、配当所得、一時所得のみの人が使います。たとえば、会社に勤めている社員が医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合などに提出するものです。

B様式は、所得の種類にかかわらず誰でも利用できるものですので、フリーランスの確定申告ではB様式を使うのが一般的です。事業所得を申告する場合は、第一表と第二表だけの基本的な様式を使います。ただし、分離課税を申告する場合は第三表があるもの、損失申告がある場合には、第四表があるものが必要です。それぞれについてもう少し詳しく説明すると、第三表は譲渡所得や配当所得などを分離課税で申告するときに使います。

たとえば、土地や建物、株式などの譲渡所得がある人、申告分離課税の上場株式などの配当所得等がある人、申告分離課税の先物取引の雑所得等がある人などが対象です。ほかにも、山林を所有しており山林の譲渡などによる山林所得や退職所得がある人も含まれます。フリーランスでも、事業所得のほかに株や不動産を持っている人は第三表と併用する場合もあります。

第四表が必要になるのは、所得金額が赤字の人です。たとえば、所得金額から雑損控除額を控除すると赤字になる人や所得金額から繰越損失額を控除すると赤字になる人などが対象となります。フリーランスとして起業した場合も、努力が実らず決算の結果、しばらくは赤字が続く可能性も想定されますので、第四表の存在は頭に入れておきましょう。

確定申告する人全員が用意するべきもの

確定申告の際に、すべての人に共通して必要となるものは次のとおりです。まず、マイナンバーなどの本人確認書類、印鑑、申告書、通帳やカードなど口座番号がわかるもの、所得の内容を明らかにできる書類、控除を受けるための証明書類です。控除の証明書は複数枚になることもありますので、確定申告の前にきちんと手元にそろえて抜け漏れがないかチェックしておきましょう。

フリーランスの確定申告で必要な書類一覧

フリーランスの確定申告には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があり、確定申告を行う事業主自身がどちらにするかを選択できます。確定申告のために準備する書類の難易度は青色申告のほうが高くなりますが、節税効果が期待できるのは青色申告のほうです。それぞれについて、具体的に必要となる書類は次の通りです。

まず、青色申告に必要となる書類は、確定申告書B、青色申告決算書、確定申告書に添付する各種控除関係の書類、源泉徴収票(給与所得などがあった場合)です。青色申告をするためには、毎日の取引を仕訳帳や総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿に記帳していく必要があります。そして、それらの帳簿を元に、年明けに青色申告決算書を作成します。青色申告決算書が完成したら、確定申告書で納税額を算出し、期日までに税務署に提出しましょう。

その際、青色申告の場合は、計14種類の「所得控除」が受けられます。対象となるのは、その年に支払った医療費や社会保険料、ふるさと納税などの寄付金などです。所得控除の対象となる証明書や明細書なども合わせて用意しましょう。また、1年の途中で会社を退職して独立・開業した場合には、源泉徴収票も必要です。紛失などで手元にない場合は、前もって退職した会社に連絡して、源泉徴収票の発行を依頼しておきましょう。

白色申告の場合、申告に必要となるのは、確定申告書B、収支内訳書、確定申告書に添付する各種控除関係の書類、源泉徴収票です。白色申告の場合も毎日の取引を帳簿に記帳していく必要がありますが、青色申告よりも簡単なものでかまいません。それを元に年明けに収支内訳書と確定申告書を作成します。収支内訳書も、青色申告決算書よりもシンプルな内容となっています。白色申告の場合は青色申告のような所得控除はありませんが、医療費控除や社会保険料控除は受けられますので証明書や明細書を用意しておきましょう。また、青色申告と同様に、その年に給与所得がある場合は源泉徴収票も必要です。

どちらの申告においても、税務署に申告する書類とは別に、申告書の控えや会計帳簿、領収書などの保存が義務付けられています。帳簿は7年間、その他の関係書類などは5年間の保存が必要になります。確定申告用のファイルを作って、きれいに整理しておくと良いでしょう。

青色申告と白色申告は何が違う?

青色申告と白色申告の最大の違いは、「青色申告特別控除」があるかないかです。青色申告の場合は、細かい帳簿付けが求められますが、「青色申告特別控除」によって最大65万円の控除が認められています。65万円分の節税効果が期待でき、その分手元に残るお金が増えるのは大きなメリットですよね。加えて、家族が事業に専従した場合にその給与を経費にできる「青色事業専従者給与」、赤字を繰り越せる「純損失の繰越控除」などの特典があります。

「純損失の繰越控除」については、前の段落で述べた確定申告書の第四表を使って損失申告ができます。損失申告により、赤字を翌年以降3年間の黒字と相殺することができますので、赤字であっても確定申告をするほうが有利です。経営者の視点で考えると、こうした特典を活用してコスト削減を行うことも必要ではないでしょうか。会計ソフトを活用することで帳簿付けの手間は大幅に削減できます。

一方の白色申告では、青色申告のような複雑な帳簿は必要ありませんが、「青色申告特別控除」などの特典は受けられません。しかも、2014年1月以降の取引については、事業所得のある白色申告者も帳簿への記帳と保存義務が課せられるようになりました。手間の面では白色申告のメリットは小さくなっており、どのみち帳簿が必要なのであれば、節税効果の高い青色申告を選ぶべきといえるのではないでしょうか。

青色申告者となるには事前に届け出をしておく

メリットの多い青色申告を行おうと思っても勝手に青色申告にすることはできません。まずは、税務署への届け出が必要です。青色申告を始める場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を、開業日から2カ月以内、またはその年の3月15日までに税務署に提出する必要があります。白色申告から青色申告に切り替える場合も、3月15日が締め切りになります。1日でも提出が遅れると、青色申告できるのが1年先になるので注意しましょう。ただし、締め切りについてはその年の土日の関係で数日程度ずれる場合もあります。

「所得税の青色申告承認申請書」は最寄りの税務署でも入手できますし、国税庁のウェブサイトからもダウンロードできます。インターネット上で直接入力して出力することも可能です。申請書には、氏名や生年月日のほか、事業所の住所や事業内容、簿記方式などを記載します。簿記方式については、65万円控除を受ける場合には「複式簿記」にチェックを入れます。提出については、税務署に直接持参するほか、郵送も可能です。申請書は必ず手元に控えを取っておき保管しておきましょう。郵送の場合は、手元に控えを残すために返信用封筒を同封します。

なお、独立・開業した際には、税務署に個人事業主として確定申告して税金を納めるという意思表示として、「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出することになっています。開業日から1カ月以内に提出するのが基本ですが、提出していなくてもペナルティはなく確定申告はできます。ただし、継続して事業を続ける予定があれば提出しておくほうが望ましいでしょう。白色申告から青色申告に切り替える場合で、この届け出が未提出であれば、「所得税の青色申告承認申請書」と一緒に提出すれば税務署で同時に受理してくれます。

書き方や必要書類が分からなくなったとき

確定申告にはさまざまな書類が必要です。特に青色申告となると複式簿記での帳簿付けが必須となり、申告用の決算書まで用意しなくてはいけません。そのため、初めての場合はさまざまな疑問が生じやすいものです。帳簿の付け方や用紙の種類、記入の仕方、所得の分類などがわからなくなったときには、自己判断せずに管轄の税務署に確認しましょう。税務署に出向いて直接担当者に確認することもできますし、各地の税務署では電話による税金相談を受け付けています。相談日時を予約すれば、直接相談できる場合もあります。税務署の所在地は国税庁のウェブサイトから調べられますので、最寄りの住所や電話番号を控えておきましょう。

このほか、各都道府県の税理士会が不定期で無料相談会を開催していることもあります。地域によっては、無料の常設相談コーナーを設置している場合もありますので、税理士会のウェブサイトもチェックしておくと良いでしょう。ただし、基本的に予約優先だったり、予約が必要だったりするほか、1人30分以内というように時間制限が設けられていることが多いので注意が必要です。予約した後、抜け漏れを防ぐために確認したいことをあらかじめリストアップしておくと良いでしょう。

はじめての申告でもカンタンに終わらせる方法

帳簿はもちろん手書きでもかまいませんが、簿記の知識がない人がいきなり複式簿記で間違えずに記入するのは難しいですよね。初心者の場合は、会計ソフトが便利です。帳簿付けの経験がない人でも、入力画面に従って売り上げや経費などを入力していくだけで、パソコンやスマートフォンなどから集計作業が簡単に行えます。また、取引先などよく使う項目はソフトに登録しておけば、次回からはクリックひとつで入力できます。取引の数が多い場合は、財布の中から古い領収書が見つかるということもありますよね。その場合も、入力して更新すれば日付順に並び替えてくれますし、過去の入力に間違いが見つかった場合もその部分を入力し直すだけで自動的に再計算してくれます。

このほか、事業用などの銀行口座やクレジットカードを同期しておくと自動的に入力が完了し、仕訳帳や総勘定元帳も自動的に作成されるので作業を大幅に効率化できます。会計ソフトは種類も豊富で、インターネットから簡単に無料体験版をダウンロードできる製品もありますので、試用して比較してみましょう。使いやすいか、値段はリーズナブルか、サポート体制はしっかりしているかなどの点を重視して、自分が使いやすいソフトを探してみることをおすすめします。会計ソフトで出力された内容を国税庁のサイトで入力し直して出力すると日時が印字されるので、より信頼性の高い書類として受理してもらえます。

まとめ

フリーランスが確定申告する場合は、節税効果の高い青色申告を選ぶほうが良いでしょう。初心者でも簡単に帳簿付けが行える会計ソフトの進歩により、従来と比べると複式簿記にかかる負担は大幅に軽減されています。一方で、青色申告によって得られるメリットは見逃せません。確定申告の際は、便利な会計ソフトを活用して手間を省きつつ、正確な申告書類を作成してはいかがでしょうか。

参考元URL
【いちばんやさしく丁寧に書いた青色申告の本’18年版】千代田パートナーズ税理士法人 成美堂出版 2017年


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admin