フリーランスエンジニアの実態|正社員との年収の差は?
フリーランスエンジニアになるにあたり意識したいのは年収です。特に会社員からフリーランスエンジニアになる場合は、正社員との違いについて理解しておきたいはずです。
言うまでもありませんが、フリーランスエンジニアと正社員の年収には大きな違いが見られます。いくつかの観点から年収には差が見られますので、どのような差があるのか順番にご説明していきます。
フリーランスエンジニアと正社員の額面年収
まずはフリーランスエンジニアと正社員の年収を、額面金額で比較してみます。特に額面金額はフリーランスエンジニアと正社員で差が出やすいですので、以下の観点から比較します。
- プログラミング言語別の平均年収
- 年齢別の平均年収
- 地域別の平均年収
- 工程別の平均年収
具体的にどのような差があるのかご説明していきます。
プログラミング言語別の平均年収
取り扱うプログラミング言語によって年収は大きな差が出ます。これはフリーランスエンジニアと正社員の差だけではなく、フリーランスエンジニアだけで比較しても正社員だけで比較しても差が出ます。需要の高いプログラミング言語ほど年収は高まる傾向があるのです。具体的に年収の差を確認してみると以下のとおりです。
プログラミング言語 | 正社員 | フリーランス |
C | 470万円 | 520万円 |
Go | 550万円 | 560万円 |
Java | 510万円 | 515万円 |
R | 545万円 | 570万円 |
Python | 510万円 | 545万円 |
PHP | 475万円 | 470万円 |
プログラミング言語での平均年収には大きな差が見られません。全体的にフリーランスの方が年収は高くなっていますが、これは正社員とフリーランスを比較した場合の全体に言えることです。プログラミング言語によって顕著に差が出ているわけではありません。
ただ、年収の平均については正社員もフリーランスも同じ傾向が見られます。Pythonなど需要が高いプログラミング言語は正社員もフリーランスも平均が高いですし、PHPなど他のプログラミング言語に移り変わりつつあるものは、やや年収が下がっています。
年齢別の平均年収
一般的にエンジニアも年齢によって年収に差が出ます。特に日本は年齢を重要視する傾向がありますので、年齢が年収に影響する部分は大きいと考えて良いでしょう。ただ、フリーランスになるとこの傾向にも変化があります。具体的に年収の差を確認してみると以下のとおりです。
年齢 | 正社員 | フリーランス |
20代 | 405万円 | 650万円 |
30代 | 540万円 | 720万円 |
40代 | 610万円 | 795万円 |
50代 | 720万円 | 690万円 |
年齢別の平均年収は、正社員ほど大きな差があり、フリーランスにはあまり差が見られません。一般的に正社員は年功序列で年収が決まるのに対し、フリーランスは概ね実力だけで年収が決まるからです。一部フリーランスでも年齢が年収に影響する場合はありますが、正社員ほどの影響ではありません。
フリーランスは年齢よりも実力で年収が決まりますので、年齢が若いうちは正社員との差が付きやすくなります。正社員は30代や40代になってから年収が上がる傾向にありますので、早々にフリーランスで活躍すると正社員よりも多く稼ぎやすくなります。
また、40代になると管理職となり、年収が高まっている正社員が含まれます。フリーランスエンジニアはこのような役職手当がなく高い年収となっていますので、純粋にエンジニアとして高い評価を受けていると考えられます。
地域別の平均年収
年収は地域によって大きく変化するものです。年収が比較的低い地域もあれば、高い地域もあるのは皆さんも理解されているでしょう。この傾向はエンジニアにも当てはまり、特に正社員は強く影響を受けます。どのような差があるのか具体的に示すと以下のとおりです。
地域 | 正社員 | フリーランス |
北海道 | 380万円 | 690万円 |
関東 | 480万円 | |
東海 | 460万円 | |
関西 | 465万円 | |
九州 | 420万円 |
情報量の都合から一部の情報は近隣の地域に含めています。地域別の平均年収は、首都圏や関西圏の年収が高くそれ以外の地域はやや下がる結果です。ただ、このような年収のバランス関係になるのはエンジニアに限らず、正社員全体に言えることです。
基本的に正社員の年収は、その地域の物価などによって左右されてしまいます。例えば同じ仕事をしている正社員でも、東京都で働くのと北海道や沖縄県で働くのとでは異なるのです。生活するのに必要なお金の違いが、そのまま年収の違いを生み出してしまうのです。
それに対してフリーランスの場合は、あまり勤務地の概念が存在しません。そのためどこに居住していようとも、平均年収にはあまり影響を与えないのです。今回は影響を与えないものとして、正社員との年収差を記載しています。
フリーランスは居住地があまり年収に影響しませんので、正社員の平均年収が低いほど相対的に年収が高くなります。逆に東京都など年収が高い地域は、相対的に差が小さくなってしまいます。
フリーランスエンジニアと正社員の手取り年収
上記ではフリーランスエンジニアと正社員の支給金額で年収を比較してみました。ただ、重要なのは支給金額ではなく手取り年収だと考える人は多いでしょう。生活に影響する部分ですので、こちらを重要視しても不思議ではありません。
以下では手取り年収でフリーランスエンジニアと正社員の差を確認します。なお、計算を簡略化するために実際はありえないですが、フリーランスエンジニアは経費がほぼ発生していない体とします。
年収300万円
まずは駆け出しのフリーランスエンジニアを想定して年収300万円でフリーランスエンジニアと正社員を比較します。手取り金額を大雑把に計算すると以下のとおりです。
- フリーランス:230万円
- 正社員:250万円
少しですが正社員のほうが手取り金額は多くなる計算です。このように正社員の年収が高くなる理由は、社会保険料を会社が負担してくれているからです。フリーランスは社会保険料の支払いがありますので、どうしても手取り年収が少なくなってしまいます。
ただ、年収300万円では支払いが必要な社会保険料の金額は小さくなっています。そのため、フリーランスと正社員では年収に大きな差が生まれていません。
年収500万円
続いてはある程度軌道に乗り出したフリーランスエンジニアを想定して年収500万円です。この場合の手取り金額を大雑把に計算すると以下のとおりです。
- フリーランス:330万円
- 正社員:390万円
年収が増えたことにより税率が高まり、フリーランスのほうが社会保険料の支払額が多くなってしまいます。そのため、フリーランスエンジニアと正社員を比較すると正社員のほうが手取り金額は多くなっています。
ただ、今回はフリーランスの経費が発生していない前提となっています。実際は年収500万円を稼ぐとなるとある程度の経費が発生していますので、それを差し引いて計算する必要があります。それを加味した場合は、フリーランスエンジニアと正社員の手取り年収の差は小さくなるはずです。
年収1,000万円
最後にフリーランスエンジニアとして波に乗り、大台の1,000万円となった場合を想定してみます。正社員で1,000万円の大台に乗るのはやや難しいですが、これも正社員と比較して計算してみます。
- フリーランス:550万円
- 正社員:760万円
実はフリーランスが年収1,000万円になってしまうと、税金や社会保険料の支払金額が一気に増えてしまいます。厳密には900万円程度が境目ですが、支払金額が高額になり手取り金額を大きく減らしてしまいます。
それに対して会社員はやはり社会保険料の負担金額が少ないなどの理由から、ある程度の年収が保てる状態となります。とはいえ、フリーランスの年収が大きく下がるのは「課税対象が900万円を超えた場合」です。実際には年収1,000万円でも経費を差し引くと課税対象が900万円以下になる可能性は高く、手取り金額はもう少し多くなると予想されます。
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フリーランスエンジニアと正社員に差が出る理由
フリーランスエンジニアと正社員に差が出る理由はどこにあるのでしょうか。その理由について2つ考察していきます。
案件単価に差があるから
案件の単価に差があるため、それがフリーランスエンジニアと正社員の年収の差を生み出します。エンジニアとしての単価だけで評価すると、フリーランスエンジニアの方が単価は高くなる傾向があります。
ただ、実際に働く単価を確認してみると、正社員の方がフリーランスエンジニアよりも高い価格が設定されているケースが多いです。例えばフリーランスエンジニアが月60万円で受注する仕事を、正社員は100万円で受注しているケースがあるのです。しかし、正社員の年収はこれに比例して高まるわけではありません。
この理由として一般的に会社は、リスクや間接費など単価に上乗せしていることが挙げられます。プロジェクトが遅延してしまった場合の費用や間接部門の費用を入れ込んでいるのです。そのため見かけ上の金額としては高額になっています。
ただ、実際にエンジニアの仕事として請求している金額は、フリーランスエンジニアと同等かそれより低いのが実情です。そのためエンジニアの実質的な単価で見ると差が生まれてしまい、それが年収の差につながっているのです。
間接費が発生するから
間接費が発生していることで年収の差が生まれています。逆に正社員として働いていると、エンジニアは総務部門など間接部門に属する人の給与についても稼ぎ出さなければなりません。そのため、エンジニアとしての単価に対して本人が受け取る年収は少なくなってしまいます。
フリーランスエンジニアの場合は、このように間接費用が発生しません。そのため案件単価として売り上げた金額は、そのまま自分の年収に直結します。会社員のように「案件単価は上昇したものの、自分の年収には影響がない」との状況はほとんど起こりません。単価アップすれば年収アップに直結するのです。
ただ、その反面でフリーランスは、正社員ならば間接部門がやってくれることも全て自分で対応が必要です。エンジニアとしての業務だけではなく、フリーランスエンジニアとしてフリーランスに関する作業をしなければなりません。例えば契約に関することなど、事務的な作業が求められます。
正社員の場合は役割分担をしますので、そのぶんだけ年収が下がってしまいます。逆にフリーランスは役割分担をせず負荷はかかりますが、高い年収が期待できます。
福利厚生が含まれるから
一般的に正社員の年収には福利厚生の一環で支払われるお金が含まれています。例えば交通費が含まれていたり、家賃補助が含まれていたりするのです。
これに対してフリーランスエンジニアは、基本的に福利厚生がありません。契約次第では交通費などの実費部分については単価に反映ができますが、家賃補助などを反映させることは不可能です。つまりフリーランスは、基本的には純粋に仕事に対してのみお金を支払ってもらえるのです。
福利厚生の内容は会社によって様々です。同じく正社員で働いていても、福利厚生が充実している会社とそうではない会社もあります。ただ、仮に月3万円の福利厚生が支給されていると、それだけで年収は36万円増加します。家賃補助などで5万円が支給されていると、年収は60万円も増加します。
このような福利厚生の有無は、フリーランスエンジニアと正社員の年収差を生み出す理由となっています。逆に福利厚生が充実している正社員と比較すると、年収に大きな差があるように感じるかもしれません。
まとめ
フリーランスエンジニアと正社員の年収を比較すると、フリーランスエンジニアの年収が高い傾向にあります。「年収が下がるのではないか」と心配している人は、必要以上に気にしなくても良いでしょう。
ただ、フリーランスエンジニアは実際に単価が高いのもありますが、業務量が多いことで年収が高まっています。例えば正社員でエンジニアをしていると、契約作業などは専門の部署が担当してくれます。それに対してフリーランスエンジニアは、全ての作業を自分でしなければなりません。
平均年収ではフリーランスエンジニアの方が高いですが、労働時間は正社員よりも長い可能性があります。その点は十分考慮しておきましょう。