【単体・結合・システムテスト】システム開発のテスト工程を易しく解説!

【単体・結合・システムテスト】システム開発のテスト工程を易しく解説!

システム開発の過程でテストは必須です。ないがしろにされてしまうことがありますが、テストなしに、システムの品質を保つことは不可能でしょう。それほど、テストは重要視されるべき工程なのです。

とはいえ、システム開発のテストには複数の工程があり、それぞれに意味があります。細かく理解できていない人も多いと思われるため、今回はテスト工程をやさしく解説します。

システム開発のテストは4つに分類される

システム開発のテストは大きく分けて4つに分類されます。

まず、単体テストは個々のコンポーネントやモジュールが正しく機能していることを確認するプロセスで、早期にエラーや不具合を検出する目的があります。次に、結合テストは異なるコンポーネントやモジュールが正しく連携して動作することを検証するためのテストで、機能間の相互作用やデータの受け渡しなどが評価対象です。

また、システムテストはソフトウェアやハードウェアを含むシステム全体が要件を満たしていることを確認するためのテストで、性能、セキュリティ、互換性などの様々な要素を検証します。最後に、受入れテストはエンドユーザーの視点でシステムが実際の業務で適切に機能するかどうかを検証します。

単体テスト

システム開発において、最初に実施されるテスト工程が単体テストです。

単体テストの役割

単体テストの役割は、システム開発の初期段階で個々のコンポーネントやモジュールが正しく機能しているかを確認することです。このテストによって、コードに存在するエラーやバグを早期に特定し、修正まで対応できます。また、単体テストによって各コンポーネントが予定通りの動作をすることが保証され、後続の結合テストやシステムテストをスムーズに進められるのです。

また、単体テストは開発プロセス全体の効率性や品質を向上させる重要な役割を果たします。例えば、単体テストが適切に実施されると、後続のテスト段階で発生する問題の数が減少するでしょう。これにより、開発サイクル全体のコストや時間を削減できます。

他にも、単体テストは開発者が自分のコードの品質を向上させるための良い機会です。何かしらの不具合が見つかると、横並びで問題をチェックできるため、全体としての品質向上に繋がります。

単体テストの進め方

単体テストは、まずテストケースの準備から始めなければなりません。各コンポーネントやモジュールが要件を満たすかどうかを検証するために、正常系(正しい入力値に対する期待される出力)異常系(不正な入力値や境界条件に対する適切なエラー処理)の両方について、テストを用意します。また、効率的な単体テストを実施するために、自動化ツールやテストフレームワークを使用することも可能です。

一般的に単体テストは開発したエンジニア本人が実施することが多く、プログラムが実装された後、すぐに実施されます。テストを実行し、何かしら問題が検出された場合は、エンジニア本人が問題を解決し、再度テストを実行するのです。このプロセスを繰り返すことで、各コンポーネントやモジュールの品質を高められます。エンジニア個人の作業にはなりますが、念入りに進めることが重要です。

結合テスト


単体テストが完了したならば、結合テストを実施します。時には、単体テストと並行して、進められる部分から結合テストに着手可能です。

結合テストの役割

結合テストは、システム開発の中間段階で実施されるテストで、異なるコンポーネントやモジュールが正しく連携して動作するかを確認します。単体テストで確認された各コンポーネントが、相互にデータを受け渡しや機能を連携して動作するかどうか評価しなければなりません。結合テストによって、コンポーネント間のインターフェースやデータの流れに関する問題を発見可能です。

また、結合テストは、異なる開発者が作成したコンポーネントが互換性を持っていることを証明する工程でもあります。結果、全体としてシステムが問題なく動作すると保証できるのです。これにより、システム全体の品質が向上し、システムテストや受入れテストなどの実務に即したテストにも対応しやすくなります。

結合テストの進め方

結合テストでは、異なるコンポーネントやモジュールが接続される順序を決定しなければなりません。

結合テストにはいくつかのアプローチが存在し、「インクリメンタル結合テスト」「ビッグバン結合テスト」が挙げられます。インクリメンタル結合テストは、段階的にコンポーネントを結合し、ビッグバン結合テストは、すべてのコンポーネントが一度に結合されるのです。

また、テストケースは、システムの結合要件に基づいて作成されることが重要です。コンポーネント間のデータの受け渡しや機能連携が適切におこなわれることを確認できる内容を意識しましょう。また、正常系のシナリオを中心に異常系のシナリオも網羅するようにします。

システムテスト(総合テスト)


結合テストまで問題なく完了すれば、より実務に即したシステムテストへと進みます。

システムテストの役割

システムテストは、システム全体が要件を満たし、正常に動作することを確認するためのテストです。この段階では、単体テストや結合テストで検証されたコンポーネントやモジュールが、システムとして問題なく動作するかを評価します。また、システムテストは、機能性だけでなく、性能、セキュリティ、互換性、および利用可能性など、システムの様々な側面から評価することが特徴です。

加えて、システムテストでは、エンドユーザーの視点からシステムが適切に動作するかどうかを検証しなければなりません。例えば、ユーザーが遭遇する可能性のある問題やシステムの制約を事前に特定するシナリオが、これに該当します。異常系のテストを中心に、システムにトラブルが発生した際の動きを適切に評価しておきます。

システムテストの進め方

システムテストでは、テストの目的、範囲、テストケース、テスト環境の設定、テストスケジュールなどを細かく決めた計画が必要です。複数の関係者が協力してテストすることもあり、スケジュールまで決定しなければなりません。

また、テストケースは、要件定義や設計書を参考にしながら作成することが求められます。システム全体の機能、性能、セキュリティ、互換性など、全体を網羅的に評価することを心がけましょう。なお、テスト環境は実際の運用環境にできるだけ近い状態で構築することが望ましいです。

テスト計画の準備が完了すれば、これに基づいてシステムテストを実施します。テスターや品質保証チームが、テストケースに沿ってシステム全体を検証しなければなりません。問題が発見された場合は、開発チームに報告して開発者による修正が実施されます。

受入れテスト(ユーザーテスト)


受け入れテストは、システムを開発する側ではなく、システムを発注した側が実施する最後のテストです。エンドユーザーを中心に、実際の業務を想定してテストを実施します。

受入れテストの役割

受入れテストは、システム開発プロセスの最終段階で実施されるテストです。エンドユーザーの視点から、システムが実際の業務環境で適切に機能するかを検証します。また、受入れテストを通じて、エンドユーザーはシステムの操作方法や機能を理解し、システムを効果的に活用するためのトレーニングを受けることが可能です。

一般的に受入れテストは、クライアントやエンドユーザーと開発チームが共同で実施します。実際の業務プロセスやシナリオを模倣してシステムが正確に動作するかを確認するため、クライアントやエンドユーザーの協力無しには実施できません。

なお、問題が見つかった場合、開発チームが修正や改善をおこないます。ただ、この場合はすぐに受入れテストを実施するのではなく、それまでのテストを再度実施することが一般的です。確実に問題が解決されていることを確認してから、改めて受入れテストを実施します。

受入れテストの進め方

受入れテストを進めるためには、事前にテスト計画を立てなければなりません。開発チームとクライアントやエンドユーザーが協力して、「テストの目的」「範囲」「テストケース」「環境」「スケジュール」「役割と責任」など、多くの要素を決定しなければなりません。

なお、受入れテストの実施時は、クライアントやエンドユーザーが主導するケースが大半です。テストは、エンドユーザーを中心に実施されるため、開発チームはこれをサポートします。

すべてのテストケースが成功し、システムが業務要件を満たすと判断された場合、受入れテストは完了です。これにより、システムはリリースの準備が整ったとみなされます。

テスト全体の進め方

上記では、システム開発のテストでどのような工程があるのか解説しました。また、これらとは別に「テスト全体の計画や設計」も必要とされます。

テスト計画

テスト全体を考えるにあたって「テスト計画」は重要な要素で、開発プロセスの初期段階で策定されます。例えば、以下の要素を明確に定義するのです。

  • システム開発におけるテスト活動の目的
  • 範囲
  • テストケースの作成方法
  • テスト環境の構築
  • スケジュール
  • 役割と責任
  • リソース管理

適切なテスト計画を立てることで、開発プロセス全体の効率性と品質の向上が期待できます。

テスト設計

テスト設計は、システム開発プロセスにおいて重要な役割を果たし、テスト全体を効果的に管理するための枠組みです。このステップでは、テストの目的、範囲、テストケース、テスト環境、リソース、スケジュールなどが具体的に定義されます。ただ上記のとおり、それぞれのテスト工程でこれらが決定されることもあり、臨機応変な対応が必要です。

テストの実施

テストの準備が完了すれば、実際にテストの実施へと進みます。この工程については、上記で解説しているため詳細は割愛します。それぞれの担当者が、自分の責任を果たし、問題を抜けもれなく発見しなければなりません。

バグ修正

バグ修正は、問題の発見と改善のサイクルを繰り返す過程です。開発チームは、各種テストで発見されたバグや問題点に対処し、適切な修正を施します。また、修正後に再度テストを実施して、問題が解決されたかを確認しなければなりません。テストの実施と修正を繰り返すことで、システムの品質を向上させ、ユーザーに安全で信頼性の高い製品を提供できます。

評価・報告

システム開発のテストでは「評価・報告」も重要な要素です。

まず、評価では、各テスト段階(単体テスト、結合テスト、システムテスト、受入れテスト)で実施されたテストケースの結果を分析します。これにより、システムが要件を満たしているかどうかを判断可能です。問題が検出された場合、修正や改善がおこなわれ、再度テストが実施されているかどうかも確認されます。

また、報告ではテストの進捗状況、達成された目標、検出された問題や改善点などを関係者に対して明確に伝えなければなりません。必要に応じて、定期的にテストの情報を報告する機会を設け、想定通り進められているかどうかを共有します。

まとめ

システム開発のテスト工程についてやさしく解説しました。テスト工程は大きく4つに分類されるため、それぞれの役割や進め方を理解することが重要です。これを理解できていないと、テストを実施しても品質が向上しない状況に陥ってしまいます。

なお、テストの実施にはテストの計画から評価まで長い時間が必要です。「テストはすぐに終了する」と考えられていることがありますが、実際にはそうではありません。テストの重要性を理解し、適切な時間を確保して作業しましょう。

SHAREこの記事をシェアする

admin