COBOLのスキルと資格、そして今からCOBOLを学ぶ意味は?

COBOLのスキルと資格、そして今からCOBOLを学ぶ意味は?

COBOLとは?

唐突ですが、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」はご覧になりましたでしょうか。堤真一と薬師丸ひろ子が演じる自動車修理工場の社長夫妻と、向かいに住む、吉岡秀隆演じる作家を軸に、東京の下町を舞台にした人情味あふれる物語です。

1作目の年代設定は昭和33年(1958年)。ミニチュアとCGで再現された建設中の東京タワーや当時の東京の町並みが映像の見どころでした。

そして続編は翌年の昭和34年(1959年)です。この作品でも、完成後の東京タワーや羽田空港を飛び立つDC-6が再現されていました(ちなみに、映画で響くDC-6の爆音は、この映画のためにわざわざアラスカで録音された本物のDC-6の音です)。

なぜこんな映画の話を持ち出したかというと、COBOLが誕生した頃の日本はどのような時代だったかを具体的にイメージしてほしかったからです。

COBOL。Common Business Oriented Languageの略称です。「ALWAYS 続・三丁目の夕日」で設定されている年(1959年)はまさに、COBOLが誕生した年なのです。

1946年のENIACで実用が始まったコンピュータはその後どんどんと応用範囲を広げ、1950年代に入ると事務処理にも使われるようになりました。

当時、コンピュータのメーカーごとに異なっていた事務処理用のプログラミング言語を共通化するため、アメリカ国防総省の主導によって誕生したのがCOBOLでした。開発を率いたのはアメリカ海軍軍人であり計算機科学者のグレース・ホッパーという女性でした。

その後、アメリカ政府向けの事務処理システムはCOBOLで記述されることになり、その結果、COBOLは事務処理用言語として世界に広まっていくことになったのです。

COBOLは今年(2019年)還暦を迎えます。さすがに最新ソフトウエアの開発言語として用いられることはないようですが、IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)による「ソフトウエア開発データ白書(2016-2017)」によれば、プログラム開発業務ではいまだに使用頻度第2位の言語なのです(1位はJava)。

COBOLのスキルと資格

COBOLに長けたエンジニア、いわゆるCOBOL使いはコボラーと呼ばれます。畏敬の念ではなく、古臭いプログラミング言語を扱っていることを揶揄するニュアンスが伴う呼称です。

COBOLのスキルを示す指標として「COBOLプログラミング能力認定試験」というのがありました。過去形を用いたのは、今は実施されていないからです。

前述のIPAはIT技術者向けの資格試験を多数実施していますが、そのひとつに、基本情報処理技術者試験というのがあります。この試験で出題範囲に含まれていたCOBOLが2020年4月の試験から廃止になり、代わりにPythonが追加されることになりました。よって日本においてはCOBOLのスキルを客観的に示してくれる資格がなくなってしまいました。

このように、COBOLのスキルが高くてもあまり良い印象はなく、資格もなくなってしまいました。ハードにしろソフトにしろコンピュータ関連分野で仕事をしたいと考える若い人達はほぼ例外なく最新テクノロジーに向かうのが自然というものです。

COBOLはある意味、失われつつある伝統技術のように見えます。若い人は新しいものにばかり群がり、古臭いものには目を向けようともしない。いつの時代も同じです。

COBOLを使いこなせることのメリットはなくなってしまったのでしょうか。

COBOLが存在し続ける理由

COBOLは誕生から60年という古い言語です。30年くらい前から「COBOLはなくなる」といわれていたにもかかわらず、先に述べたように、Javaについで多く用いられており、いまだに金融機関を中心に社会を支える重要なシステムの記述言語として脈々と使われ続けています。

この事実と、先に述べたCOBOLが置かれている現状をどう考えればよいでしょう。

COBOLは、メインフレームOSとコンパイラなどの組み合わせにおいて、メモリ内の命令実行やI/Oが最適化され、大量のトランザクションを高速に処理します。特にバッチ処理の能力ではUNIXとJavaVMによる処理系を上回るといわれています。

さらにCOBOLは、内部のデータ表現形式によって、数百兆円という大きな金額から、小数点以下何桁まで複利計算しても1円たりとも誤差が出ないことが特長です。このあたりも金融機関のシステムで根強い支持を得ている理由のひとつです。

長年安定稼働しているCOBOLで書かれたシステムを、言語が古いからといっておいそれと別の言語(例えばJava)で書き換えることはできません。不可能とは言い切れませんが、ものすごいリスクがあり、そもそもコストが見合わないでしょう。

リスクもなくコストもかからずにプログラムを書き換えることができるようになるか、あえてリスクを取り、莫大なコストをかけてもプログラムを別言語で書き換えるメリットが生じるまでは、COBOLで記述されたプログラムは使われ続けていくのでしょう。

今からCOBOLを学ぶ意味

COBOLの現状を概観してみましたが、これらからいえることは次のふたつです。COBOLで書かれたプログラムは今後も(しばらくは)使われ続ける。そして、現役COBOLエンジニアは高齢化に伴って減っていき、後継者が育たない。

つまり、COBOLの世界では、少子高齢化で就業人口(COBOLエンジニア)の減少が起こります。COBOLが稼働している現場では既に危機感が漂っているそうですが、話題性に乏しいのか、メディアではかつての2000年問題ほど大きく取り上げられることはないようです。

社会を支える巨大システムを扱えるエンジニアがゆっくりと、しかし確実に減っていく。冷静に考えると空恐ろしいことです。しかしながら、COBOLエンジニアを急ぎ育成しなければならないということが話題になったことはないようです。

今後、COBOLエンジニアの確保が難しくなるに従って、案件の単価は上がっていくであろうことは想像に難くありません。今からCOBOLを学習することの意味はこのあたりにありそうです。

COBOLの学習はどうすればいいの?

では、今からCOBOLを学ぼうとすると、どうすればよいのでしょう。COBOLの書き方の教科書となるような書籍はまだふんだんにあります。古書のほうが多いので、お手軽価格で入手できるのはメリットといえます。

数ある書籍の中から、COBOLを学ぶのにおすすめの本をいくつかご紹介いたしましょう。

標準COBOLプログラミング第2版
細島 一司著、カットシステム発行、4,104円(税込み)。

[改訂新版]実践COBOLプログラミング入門
結城 圭介著、技術評論社発行、3,672円(税込み)。

開発現場で役立つCOBOLプログラミング入門第2版
細島 一司著、秀和システム発行、3,456円(税込み)。

書籍以外では、セミナーも多く開催されているようです。COBOLを扱う現場でのニーズによるものでしょう。

まとめ

一般的には、消えゆく言語とみなされているCOBOL。しかしいまだに稼働中のソフトウエアがたくさんあることと、扱えるエンジニアが確実に減っていくという事実。

ITの世界では脚光を浴びることがなくなったCOBOLですが、そのスキルは今後重宝されることになる可能性が少なくないようです。


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admin