2025年問題とは?IT業界への影響とエンジニアが備えるべきポイントを徹底解説!

2025年問題とは?IT業界への影響とエンジニアが備えるべきポイントを徹底解説!

日本では2025年に超高齢化社会がやってくるといわれています。これは人口比率の中でも高齢者の割合が増えるもので、2025年問題と呼ばれるものです。

この問題と同時に、経済産業省からは2025年の壁が提示されています。2025年問題とは異なる観点ですが、2025年問題と本質的には同じ内容です。今回はこれらの問題と業界に与える影響、どのような対応が必要であるのか解説します。

2025年問題や2025年の壁とは

最初に2025年問題や2025年の壁について理解を深めておきましょう。これを理解していなければ、本質的な部分を理解できません。

2025年問題とは

2025年問題とは、2025年を境に日本の人口比率が大きく変化し、「超高齢化社会」がやってくると予想されるものです。労働人口の減少や高齢者の増加によって、私たちの生活は大きく変化すると考えられます。特に、労働や医療、福祉の分野などで大きな影響があるでしょう。

そもそも、日本の人口は2010年から減少が続いて、2025年には国民の4人に1人が後期高齢者になると予想されています。この状況を超高齢化社会と呼び、社会保障の担い手がどんどん減ってしまうのです。IT業界に限らず、様々な業界へ影響を与えると予想されていて、私たちは今からでもこの問題に備えなければなりません。

2025年の壁とは

2025年の壁は、経済産業省が2018年に発表した、『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』の中で提起されている、2025年に起こりうる課題を指した言葉です。特にIT業界を指した言葉となっていて、以下のような問題が提起されています。

  • 基幹システムのうち、60%が導入より20年以上となる
  • IT人材の不足が43万人にまで拡大する
  • 先端IT人材が不足する
  • 従来のITシステムがDX推進の足かせとなる

まとめると、エンジニアの高齢化によって、システム改修に対応する人材が不足すると考えられています。2025年問題を踏まえると、現在現役のエンジニアも定年退職が間近です。現在でもエンジニア不足が問題視されていますが、2025年にはさらに不足すると考えられています。

また、エンジニアが不足することによって、先端IT人材の不足が顕著になりかねません。先端IT人材とは、世界中でトレンドとなっている、最新の技術を扱う人材だとイメージしましょう。つまり、このような人材が不足することで、日本がテクノロジー面で取り残されることが危惧されるのです。

他にも、現在のシステムが陳腐化することで、DXの足かせになるとも考えられています。特に、基幹システムのような大規模なシステムの陳腐化が迫っているため、これが悪影響を与えてDXが推進できないとされるのです。

参考:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)

2025年問題がIT業界に与える影響


上記で解説したとおり、IT業界にも2025年が影響を与えると考えられています。エンジニアが不足してしまい、思うようにシステムの開発や運用・保守ができなくなるのです。具体的にどのような影響を業界に与えるのか理解しておきましょう。

システムの管理コストが増加

システムの老朽化が進んでしまうことで、システムの管理コストが増加すると考えられます。現時点でも、システムの管理コストは負担になりやすいですが、これがさらに増加するでしょう。老朽化したシステムは、システムの改修に無駄な労力がかかってしまうなど、コストを高める原因となるのです。

また、2025年問題によって対応できるエンジニアの数が減ると、これもコストを高める要因となります。さまざまな現場や案件でエンジニアの奪い合いが発生すれば、需要と供給の関係から、必然的にコストが高まってしまうのです。

2025年問題によるエンジニアの不足は、直接的にも間接的にもIT業界へ影響を与えます。深刻な問題であると認識しなければなりません。

セキュリティが低下

エンジニアの不足によって、システムのリプレースや適切な運用を実現できないと、セキュリティが低下します。例えば、適切な最新パッチを適用できないと、サイバー攻撃の標的になりかねません。今でも素早い適応が求められているため、2025年以降も重要な要素となるでしょう。

もし、このようなセキュリティの向上に対応できるエンジニアが減ると、海外からの攻撃を受けかねません。いわゆる「サイバーテロ」と呼ばれるもので、大打撃に繋がる可能性があります。最悪の場合、しばらく業務ができないでしょう。

しかも、トラブル対応に貴重なリソースを取られてしまうと、ITエンジニアは他の業務に従事できなくなります。これによってさらなるトラブルを生み出してしまい、負のループに陥ってしまうのです。

技術の遅延

使いこなせるエンジニアが不足することで、技術の遅延が考えられます。例えば、海外では活用されている技術でも、日本では活用できないかもしれません。習得できるエンジニアや使いこなせるエンジニアが不足してしまうのです。

IT業界はテクノロジーの進化が激しいため、いち早く対応しなければ取り残されてしまいます。海外では当たり前に利用されているテクノロジーでも、日本では導入できない状況になるでしょう。2025年問題の影響が少ない現時点では考えられないですが、今後エンジニアが減少することで、このような問題が起きかねません。

特に、運用や保守に携わるエンジニアが定年退職し、その代わりとして若手がアサインされるようになると問題が顕著になるでしょう。新しいテクノロジーは、若いエンジニアが吸収する傾向にあるため、このような人材を割り当てできなければ技術の遅延が発生するのです。

アプリケーションのサポート終了

システムのリプレースに割り当てるエンジニアが不足すると、レガシーシステムの利用を続けるしかありません。そのような状況が続くうちに、アプリケーションのサポートが終了する可能性があります。一般的に、サポートが終了したアプリケーションを利用することは望ましくないため、重要な課題と認識すべきです。

皆さんの中には「サポートが終了しても利用できれば問題ない」と考える人がいるかもしれません。確かに、業務的には問題ないかもしれませんが、コンプライアンスなどの観点からは不適切な判断です。また、サポートが終了すると、セキュリティリスクが高まるなどの問題もあります。

2025年問題を迎えるにあたって、サポートの終了が近いアプリケーションはいち早くリプレースすべきです。経済産業省の資料では、例として、SAP ERPはサポートの終了が間近であり、バージョンアップが推奨されています。これは一例ですが、サポートの終了が近いならば、相応の対応が求められるのです。

2025年問題により毎年最大12兆円の損失

上記で解説したとおり、2025年にITエンジニアが不足すると、いくつもの問題が発生します。この問題による損失を経済産業省が試算し、最大で毎年12兆円と発表されました。IT業界の市場規模は12兆円程度のため、同じぐらいの金額が日本経済で失われてしまうのです。

この金額には、いくつもの観点が含まれていて、例えば「システムが発注されない」というものがあります。本来発注すべきシステムを、エンジニア不足などから発注されないことで、売上が下がってしまうのです。IT業界の損失だと考えましょう。

また、ITシステムが正常に動作しないことの損失も含まれています。例えば、サイバー攻撃によってシステムがダウンしてしまい、製造がストップしてしまうような状況です。セキュリティ対策やリカバリーに対応できる人が少なく、問題が長引いて、損失が大きくなってしまいます。

2025年問題に向けて業界が取り組むべきこととは


2025年問題を放置すると、解説したとおり大きな損失につながりかねません。そのため、業界としては、最悪の状況を避けるための取り組みが必要です。具体的に、どのようなことに取り組むべきであるのか、以下で解説します。

レガシーシステムのリプレース

現時点で最初に取り組めることは、レガシーシステムのリプレースです。2025年問題では、現在利用されているシステムが、レガシーシステムになってしまうことが問題視されています。言い換えると、レガシーシステムが減少すれば、2025年問題の影響は最小限に抑えられるのです。

そのように考えると、IT業界としては、レガシーシステムのリプレースに尽力することが求められます。2025年まで時間がないため、短期間で多くのシステムをリプレースしなければならないのです。この先に待ち受ける問題を鑑みると、今の時点で踏ん張るしかありません。

ただ、2023年時点でも、IT業界では人材が足りないとされています。新しくシステムを開発することはもちろん、リプレースに対応できる人もいないのです。そのため、レガシーシステムのリプレースに力を入れることは現実的ではありません。

また、そもそも論として、システムを入れ替えるためには時間とお金がかかります。これは、IT業界ではなく、システムを利用するユーザー側が負担するものです。このような費用は、簡単に捻出できる金額ではなく、これも2025年問題を解決しづらい原因となっています。

IT人材の育成

2025年には、エンジニアを含めた労働人口が減少することで、2025年問題が起きると考えられています。そのため、今からでもIT人材を育成し、人手不足を解消できればこの問題に対応できるでしょう。今でもエンジニアを目指す人は多いため、業界を挙げて積極的にこれを支援します。

各種スクールなども増え、今はIT人材を育成しやすい環境が整っている状況です。ただ、活躍できるエンジニアになるためには、実践的なスキルも求められます。この点を考慮すると、どうしても2025年には間に合わないでしょう。半人前のエンジニアは育てられるかもしれませんが、一人前のエンジニアを育てることは難しいのです。

とはいえ、長い視点で考えると、IT業界は新しいIT人材の育成に力を入れるしかありません。人手不足は産業にとって大きな問題であるため、これを解消することが何よりも重要です。現在のエンジニアが抱える負担を最小限に抑えるためにも、2025問題を視野に入れた人材育成が求められます。

まとめ

2025年問題とIT業界の関連性について解説しました。経済産業省の予想などを踏まえると、2025年を境に労働人口が大きく減少すると考えられています。この中にはITエンジニアも含まれていて、IT業界に大きな打撃を与える出来事です。

ITエンジニアの数が不足してしまうと、システムの開発や運用に支障が出ます。また、新しいテクノロジーを習得する余裕がなくなり、海外に遅れを取るかもしれません。ITエンジニアの不足は、業界全体に大きな影響があるでしょう。

ただ、ITエンジニアの絶対数が不足している問題は、簡単には解決できません。業界全体で人材育成に取り組むなど、別の観点から対処しなければなりません。

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admin