AIX(Advanced Interactive Executive)とは|需要と将来性を解説

AIX(Advanced Interactive Executive)とは|需要と将来性を解説

AIXはIBMが開発したコンピュータ向けのOSです。一部のエンジニアにのみ利用されているOSであるため、名前を耳にしたことがない人がいても不思議ではありません。ただ、現在でも利用されているOSとなっています。

このページをご覧の方は、何かしらの理由でAIXを利用する機会がある人でしょう。今回はそのような方に向けて、AIXとはどのようなもので需要や将来性はどうなっているのかについてご説明します。

AIXとはどのような製品か

まずはAIXがどのような製品であるのかについてご説明します。

Advanced Interactive Executiveとは

AIXは「Advanced Interactive Executive」を省略した言葉です。IBMが開発したコンピュータ向けのOSで、初回のリリースは1986年です。少々昔のOSとの印象を受けるかもしれませんが、現代でも利用されているOSのひとつです。

また、大きな特徴としてAIXはIBMの自社製品向けに開発されているということが挙げられます。コンピュータの多くは大手のメーカーが開発しているOSかフリーのOSを搭載していますが、IBMは一部の製品に自社で開発したAIXと呼ばれるOSを搭載しています。

AIXが開発された背景には、「ハードウェアとソフトウェアの関係を最大限最適化したい」との考えがあります。ソフトウェアはどのハードウェアでも適切に動作すると思われがちですが、実際にはソフトウェアとハードウェアの組み合わせは非常に重要です。特にOSのようにコンピュータを操作する基盤になる部分は、ハードウェアとの組み合わせによって能力を発揮できるかどうかが左右されます。

それだけ重要なソフトウェアとなっているため、IBMはハードウェアだけではなくOSの開発にも取り組んでいます。全てのコンピュータにAIXが導入されているわけではありませんが、IBMがこだわったコンピュータに導入されていると考えてよいでしょう。

UNIX系のOS

世の中で利用されているOSにはいくつかの系統があり、AIXはUNIX系のOSに分類されます。UNIX系のOSは非常に多くの種類があり、世の中で幅広く利用されているものです。一般の方々が利用する機会が少ないOSですが、エンジニアならばUNIX系OSを利用する機会が多くあるでしょう。

AIXはIBMが開発したOSであるため「全てが独自のOSなのではないか」と考える人は多くいます。しかし、あくまでもUNIX系のOSとして開発されているため、基本的なUNIXの知識があればその知識をそのまま利用できます。「AIXという新しいOSを扱えるようになるのは負担だ」と感じている人でも、UNIX系の利用経験があるならばあまり心配しなくてよいでしょう。

なお、厳密にはUNIX系のOSにも2種類あり、どちらの系統であるのかによってコマンドなどが少々異なります。ただ、AIXはこれらの違いをあまり意識せずに利用できるように作られているため、UNIX系のOSに詳しい人にもそうではない人にも使いやすいものです。

独立の管理ツールを備える

UNIXの多くはコマンドラインでコンピュータを操作します。エンジニアならばコマンドラインでの操作には慣れているはずですが、コマンドラインで操作するためにはコマンドを習得しなければなりません。そのため、慣れるまではどうしても負担がかかってしまいます。

しかし、AIXには「SMIT(System Management Interface Tool)」と呼ばれる管理ツールが搭載されています。こちらはコマンドについて詳しくなくともコンピュータの設定を操作できるものです。こちらのツールが用意されていることで、AIXの利用者はコマンドや設定ファイルの配置に詳しくなくとも詳細な設定ができるようになっています。

皆さんがUNIX系のOSについて詳しいならば、このようなツールを利用しなくともコマンドと設定ファイルの配置をしたほうが早いでしょう。逆にあまりUNIX系のOSに詳しくない場合でも、このようなツールが存在しているため安心してOSの操作ができます。

AIXで注目したい特徴


AIXにはOSとしていくつもの特徴があります。それらの特徴のなかでも特筆すべき部分についてご説明します。

柔軟性の高さ

IBMが独自に開発したOSではありますが、柔軟性の高さが魅力的です。独自に開発したOSなど縛りが多く使いにくいと考えるかもしれませんが、実はIBMらしく柔軟性を兼ね備えています。

そもそも、AIXはUNIX系のOSとして開発されています。UNIX系のOSは柔軟性が高いものが多く、AIXについても柔軟性の高いOSに分類されています。自分で様々な設定を変更できるため、開発するシステムに応じて適切な設定を利用可能です。

また、IBMとしてはハードウェア面の拡張性も持たせています。独自のハードウェアを利用したコンピュータではありますが、提供している製品の範囲内で拡張できるようになっているのです。

仮想化への対応

仮想化に対応したOSであるため、AIXを利用してコンピュータの仮想化が実現できます。近年は仮想化技術が多数利用されているため、AIXは時代に取り残されないような機能を提供しているのです。専用のソフトウェアを利用することなく、AIXの機能として仮想化を利用できます。

OSが仮想化に対応していれば、調達するハードウェアの量を最小限に抑えられます。ハードウェアの調達にはお金と場所が必要となるため、可能な限り保有するハードウェアの数を少なくしたいものです。AIXはそのような要望にも応えられるように設計されています。

仮想化によるコストの低減は、現在のシステムに必須のキーワードとも言えます。AIXは独自の進化を遂げるだけではなく、時代の変化にも添えるようになっているのです。

幅広いアプリケーション対応

独自のOSを利用するにあたって心配になるのは「UNIX系のソフトウェアを利用できるのかどうか」です。利用できるソフトウェアの種類が少ないと、コンピュータとしての利便性が下がってしまいます。

この点を心配される人は多いですが、AIXは幅広いUNIX系のソフトウェアを利用できます。具体的に利用できるソフトウェアについては割愛しますが、概ね利用できると考えておいて良いでしょう。独自のOSでありながら対応しているソフトウェアの種類が多いのは、AIXの特徴だと言えます。

AIXの需要は高い

皆さんの中には「IBMが開発した独自のOSなど需要があるのか」と考える人がいるでしょう。続いてはこのような疑問に答えるため、AIXの需要についてご説明します。

信頼性の求められるシステムでの需要が高い

AIXは主に高い信頼性が求められるシステムで利用されています。このようなシステムはハードウェアやOSソフトウェアの組合せを意識したシステム開発が行われるため、IBMが開発するAIXを搭載したコンピュータが適しているのです。

IBMがAIXのようなOSを開発しているのは、コンピュータの安定稼働を目指すためです。先ほどもご説明したとおりハードウェアとソフトウェアには相性があるため、自社で全てを開発した方が、都合が良いのです。そして、このような相性を重視したコンピュータを求めるクライアントも多くいます。

ただ、実際にどの程度の販売数があるのかについては明確な資料がありません。公式サイトを確認してみると「数千ものユーザーがAIXを利用している」と掲載されているだけです。AIXは販売価格なども公開されていないため、営業に関する数字はクローズド扱いだと推測されます。

とはいえ、AIXを搭載したコンピュータは動作面で安定感が高く、需要が高いのは間違いありません。公式サイトには利用者の声やパートナー企業のコメントなども紹介されていて、AIXの信頼感や需要の高さを示すものとなっています。

維持・保守での需要が高いと考えられる

一般的にシステムのOSは簡単に変更するものではありません。システムに合わせて適切なOSを選択しているため、基本的にはOSの変更はできないのです。OSを変更してしまうと、プログラム改修など様々な手間が生じてしまいます。

また、AIXは上記でも触れたとおり安定稼働が求められるシステムで利用されるケースが大半です。そのため、尚更他のOSに切り替えたりシステム開発をしなおしたりするのは難しいはずなのです。

そのようなシステムに利用されているため、AIXは今後も維持や保守での需要が高いと考えられます。一度AIXで開発したソフトウェアは簡単にOSの変更ができず、そのままAIXでの利用が続くわけです。また、特別な理由がない限りはあえてOSの変更をしないと考えられます。

導入数こそ公開されていないものの、AIXに関連する案件は求人サイトなどで募集されています。公式の情報から言い切れない部分はありますが、状況を鑑みると維持や保守での需要がまだまだ続くでしょう。

AIXの将来性は明るい


AIXがこの先どの様に展開されるかについては、IBMからホワイトペーパーが公開されています。こちらのホワイトペーパーの内容も踏まえながら、AIXの将来性についてご説明していきます。

2030年を見据えたロードマップが公開

IBMから2019年に公開されたロードマップによると、AIXは2030年を見据えた開発が続けられるとされています。IBMのコンピュータで利用されている独自のOSですが、その需要の高さに応えるようなロードマップが引かれているのです。そのため、将来性については今のところ特に心配する必要はないでしょう。

むしろ、IBMから公開されたロードマップによるとAIXはこれから更なる発展を続けるとされています。セキュリティ対策などOSに求められる基本的な部分だけではなく、新しい機能開発にも力を入れるようです。IBMは他の製品でもロードマップに沿って開発や機能提供を続けてきたため、AIXについてもロードマップに沿って開発などが行われると考えられます。

なお、新しいバージョンの公開に伴って古いバージョンのサポートが終了予定となっています。現時点でAIXを利用しているならば、新しいバージョンの切り替えについても検討しなければなりません。

クラウドに置き換わる部分もある

AIXの将来性は明るいものですが、これから先はクラウドに置き換わっていく可能性もあります。すべてのシステムがクラウドに置き換えられるわけではありませんが、時代の変化に伴って独自のコンピュータから汎用的なコンピュータに切り替わる可能性は十分にあります。

そのように考えられる理由は、独自のコンピュータは維持費が高額であるからです。AIXの購入費用や維持費用については公開されていないものの、一般的に利用されているWindowsやLinuxよりも高額であると予想されます。近年はシステムの維持費を低減する傾向にあるため、そのような観点からAIXは時代にミスマッチなのです。

そのため、安定した需要があり将来性が明るいといえども、一部のシステムについてはクラウドなどに置き換えていく可能性があります。時代の変化に伴いやむを得ない部分はあるため、そのような案件に携わった際はコスト面の問題だと認識しておくと良いかもしれません。

まとめ

IBMが開発する独自のOSであるAIXについてご説明しました。独自のOSなど需要がないと考えてしまうかもしれませんが、信頼性の高さから需要は高く将来性は明るいものです。

ハードウェアからOSまでIBMが一貫して開発しているため、安定した挙動を示してくれます。ただ、全てをIBMが開発しているため、維持費が高額になってしまう問題があります。そのため、コストカットの側面からAIXではなくクラウドサービスの利用なども増えてきているようです。

とはいえ、AIXで開発されているシステムは何かしらの理由でAIXが選択されています。そのようなシステムを簡単に別のOSへ載せ替えるのは難しく、これからも安定した需要が続くと考えられます。

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admin