ApacheとNginx|概要・それぞれの違いについて解説!

ApacheとNginx|概要・それぞれの違いについて解説!

世界中のWebサイトやWebアプリケーションを動かすために「Webサーバ」と呼ばれるものが利用されています。このWebサーバがなければ、WebサイトやWebアプリケーションは動作しません。

そして世界中で利用されているWebサーバは、大きく分けて「Apache」と「Nginx」の2種類があります。今回はもはやWebサーバの代名詞ともいえる、ApacheとNginxの概要やそれぞれの違いについて解説します。

ApacheとNginxのメリット・デメリット

ApacheとNginxにはどのような違いがあるのか、まずはざっくりとApacheとNginxのメリットとデメリットについてご紹介します。

メリット デメリット
Apache
  • 動作が安定
  • 比較的機能拡張が容易
  • ゲストサーバの個別設定が可能
  • メモリの消費が激しい
Nginx
  • 高い処理速度
  • 大量の同時接続に対応
  • 重たい処理が苦手
  • 拡張機能が少ない

ApacheとNginxのメリット・デメリットについての大枠がおさえられたところで、ApacheとNginxそれぞれの概要と違いに関して以下で詳しく解説します。

Apacheとは


最初にApacheとはどのようなWebサーバであるのかについて解説します。

Apacheの概要

Apacheは正式名称を「ApacheHTMLServer」とする、オープンソースで開発されたWebサーバです。オープンソースで開発されていますので、誰でも無料で利用できる特徴があります。無料で利用できるWebサーバであることから、世界中で利用が広がったとの背景もあります。

そもそもあまり知られていませんが、Apacheは1995年にリリースされたソフトウェアです。この時代はまだまだインターネット黎明期と言える時代ですが、その段階ですでにApacheが開発され、リリースされていました。このように歴史の長いWebサーバであることが、世界中で利用されるWebサーバになった要因の一つでもあります。

瞬く間に世界中にApacheの魅力は知れ渡り、一時期はWebサーバの圧倒的なシェアを占めていました。今でこそ後ほどご説明するNginxが急激にシェアを伸ばしていますが、それ以前はApacheの一人勝ちと言える状況でした。それだけ歴史は長く信頼度の高いアプリケーションなのです。

なお、Apacheは「ApacheFoundation」と呼ばれる団体によって開発や保守が続けられています。現在は新規に開発されていると言える状況ではありませんが、管理・開発している団体がいる点は知っておいて良いでしょう。

Apacheのメリット

Apacheのメリットを解説します。

動作が安定

ApacheはWebサーバの中でも動作が安定しているメリットがあります。Apacheは古くから開発が続けられていますので、アプリケーションのバグなどがほぼ解決され、安定した動作が期待できるアプリケーションとなっているのです。

実際、Apacheの利用数を見てみると、Nginxにシェアを奪われつつあるものの全体の50%程度を占めています。つまり、それだけ動作が安定し信頼性の高いアプリケーションということです。完全に安定しているアプリケーションに対して冷ややかな視線を送る人もいますが、アプリケーションを利用する側としては安定した動作をしてくれるのはメリットに違いありません。

また、万が一何かしらのトラブルが起こっても、Web上で必要な情報が集めやすくなっています。多くの人が情報を公開していますので、それらの情報を確認すれば簡単に解決できるケースが大半です。基本的に動作が安定していますし、万が一の時も解決しやすいというメリットがあります。

比較的機能拡張が容易

ApacheはWebサーバの中でも比較的機能拡張が容易であるメリットがあります。Webサーバなどミドルウェアの機能拡張は手間がかかるケースが多いのですが、Apacheであれば比較的簡単な手順で拡張可能です。

また、Apacheは歴史の長いWebサーバですので、機能拡張に必要なモジュールが既に開発されているケースが多々あります。このようなモジュールが既に開発されていれば、利用者はこのモジュールをWebサーバに導入するだけで機能拡張が可能です。自分で何かしらの開発をする必要はなく、与えられた手順書に従って作業すれば機能拡張できるのです。

なお、モジュールに関しては公式から展開されているものもあれば、有志が開発して公開しているものもあります。Apache自体がオープンソースで開発されているアプリケーションということもあり、機能拡張のためのモジュールも無料で公開されているケースが多々あります。

ゲストサーバの個別設定が可能

Apacheには「.htaccess」と呼ばれるファイルが必ず存在します。こちらのファイルはWebサーバの設定を記述するもので、Webサーバがどのように動作するかを指定できるようになっています。

そして、Apacheの中でも大きなメリットと言えるのが、この「.htaccess」をゲストサーバにも自由に設定できるという点です。一つのサーバに一つの設定しかできないのではなく、ディレクトリの中にこちらのファイルを作成すれば、その配下にだけ独自の設定を与えられるようになるのです。

一般的な考えではWebサーバ全体に与える設定は設定箇所が1ヶ所しかなく、管理者しか設定できないものでした。しかし、Apacheは「.htaccess」を導入したことで、グローバルサーバ上に構築されているゲストサーバの設定も自由に実現したのです。

この機能が公開されたことで、共有ホスティングサーバなどの性能は一気に充実しました。1つのサーバで、異なる設定を持ったWebサーバを何十台も管理できるようになったのです。

Apacheのデメリット

続いてはApacheのデメリットを解説します。

メモリの消費が激しい

ApacheはWebサーバの中でもメモリを多く消費するアプリケーションです。サーバはそもそもメモリを消費しやすいものですが、その中でもApacheは特に消費するものに分類されます。

その理由として、Apacheはマルチプロセスで処理をする時にプロセスごとにコピーが発生します。プロセスの数が次々に増えてしまい、メモリを際限なく消費してしまうのです。メモリの制限をかけてしまうと処理に影響が出てしまいますので、この点は改善しづらいデメリットです。

また、メモリをどんどん消費するようなマルチプロセスの処理が続くと、Webサーバがダウンしてしまう可能性があります。メモリがパンクするとサーバ自体が停止してしまう可能性があり、理論的なスペックよりも物理的なスペックが先に限界を迎えてしまうケースが多くあります。

Nginxとは


続いてはNginxがどのようなWebサーバであるのか解説します。

Nginxの概要

NginxはNginx,IncのCTOによって開発されたWebサーバです。企業が開発したWebサーバではありますが、Apacheと同様にオープンソースで公開されています。そのため特に利用料などは支払う必要がなく、誰でも無料で利用できるWebサーバです。

上記でもご説明したとおり、Nginxが公開される前の時代はWebサーバといえばApacheが利用されていました。多くのメリットがありますので、Webサーバのデファクトスタンダードのような状況であったのです。

ただ、Apacheにはマルチスレッドの仕組みからアクセス数が多くなると処理に耐え切れなくなる問題がありました。そこで、問題を解決するためにNginxの開発がスタートし、リリースへとつながっています。基本的な部分で見ると、NginxはApacheの性能を改善したものにもなっています。ただ、実装されている仕組みの都合から、それ以外の部分でもさまざまな違いが生まれています。

Nginxのメリット

Nginxのメリットを解説します。

高い処理速度

Nginxを利用する最大のメリットは、処理速度が高速になることです。Apacheよりも性能面の課題が解決されていますので、それが影響して高速な処理ができるようになっています。状況に応じてどの程度処理速度が変化するかは異なりますが、Apacheと比較すると1.5倍程度の処理速度だと言われています。

ただ、注意してもらいたいのはどのような時もNginxの処理速度が勝るとは限らない点です。ApacheにもNginxにも得意と不得意がありますので、状況によってはNginxよりもApacheのほうが早くなる可能性はあります。あくまでも平均的に見るとNginxのほうが高い処理速度であると考えておくと良いでしょう。

大量の同時接続に対応

もう一つNginxを利用する大きなメリットに、大量の同時接続に対応できる点があります。Apacheは大量の同時接続があるとメモリを消費してしまいましたが、Nginxではこの問題が改善できるように設計されているのです。

大量の同時接続に対応できるようになった背景には、Nginxがシングルスレッドの処理を取り入れたことが挙げられます。Apacheはマルチプロセスを利用した処理となっていましたが、Nginxではシングルスレッドにしたことでこの問題が解決されています。

同時接続の処理についても状況に応じてApacheとNginxの差は異なります。ただ、NginxはApacheよりも10倍~100倍良いとされていますので、どのような状況でも基本的にはNginxが優位です。

Nginxのデメリット

Nginxのデメリットを解説します。

重たい処理が苦手

Nginxはシングルスレッドで高速な処理をするものですが、これは比較的軽量なコンテンツに適しています。上記に示したとおり軽量なコンテンツを利用すれば、NginxはApacheよりも数十倍速い処理を実現できるのです。つまりNginxのメリットを最大限活かせるわけです。

しかし、動画再生などの重い処理を中心にしてしまうと、シングルスレッドの魅力をあまり活かせなくなります。場合によってはシングルスレッドであることがネックになってしまい、処理が遅くなってしまう可能性があるのです。

基本的にはメリットでご説明したとおりNginxはApacheよりも高速です。ただ、重たい処理が含まれるWebサーバサイトは苦手ですので、その点はデメリットとして頭の中に留めておきましょう。

拡張機能が少ない

Nginxはオープンソースではあるものの、まだまだ拡張機能が少ない状況です。何かしらの機能拡張をしたい場合は自分で拡張する必要があり、Webサーバに関する技術力が求められます。

ただ、こちらのデメリットに関しては今後Nginxの利用が広がるにつれて改善していくと考えられます。現時点では比較的拡張機能が少なく、自分で対応しなければならないのです。

ApacheとNginxの違い

上記でApacheとNginxについてご説明しました。続いては概要やメリット・デメリットを踏まえ、これらがどのように異なるのかを簡単にまとめます。

同時アクセスの処理が違う

Apacheは上記で説明したとおりマルチスレッドを利用しています。そのため同時接続数が多くなるとスレッドのコピーが大量発生し、サーバのメモリを消費してしまいます。ただ、同時に大量のデータを処理できるようになりますので、多くのデータを処理するWebアプリケーションでは高速化が期待できます。

それに対してNginxはシングルスレッドを利用しているとの違いがあります。シングルスレッドですので同時アクセス数が増えてもメモリの消費量は変化しません。同時接続数が多くなっても安定したレスポンスを実現できます。

ただ、シングルスレッドは重い処理に適している処理方法ではありません。そのため、重い処理が大量にリクエストされてしまうと動作が遅くなる可能性があります。

機能拡張が違う

Apacheは昔から開発されているWebサーバということもあり、機能拡張に必要な多くのモジュールが公開されています。これらのモジュールを利用すれば簡単に機能拡張ができますので、Webサーバを特別な用途で利用したい場合でもあまり不安はありません。

それに対してNginxは公開されている拡張機能が少ない状況です。つまり、何かしら機能を拡張したい場合は自分で手を加えるしかありません。一部に関しては拡張機能が公開されているものの、残念ながらあまり期待はできないとの違いがあります。

まとめ

ApacheはWebサーバの中でも王道と言えるもので、古くから世界中で利用されてきました。追加機能を実装するための様々なモジュールも公開されていて、Webサーバに必要な機能はApacheさえあれば良いぐらいです。

ただ、Apacheは大量の同時接続を苦手とするなど問題を抱えています。そのため、この問題を解決するためNginxと呼ばれるWebサーバが開発されました。性能面で優れているため、Nginxはシェアを急激に拡大しています。

とはいえ、一概にApacheが良いともNginxが良いとも言い切れないのが事実です。Webサーバをどのような用途に利用するのかを踏まえ、適切な方を選択しなければなりません。

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admin