CDNとは?仕組みやメリット・デメリットを解説!

CDNとは?仕組みやメリット・デメリットを解説!

コンテンツを配信するネットワークの仕組みにCDNと呼ばれるものがあります。世界中で利用されている主要なネットワークの仕組みですが、皆さんはご存知でしょうか。

ネットワークの世界では当たり前になってきていますが、まだ広く浸透していないのが事実だと思われます。今回は、現在のような「大量コンテンツの時代」を支えている、CDNとはどのような仕組みであり、メリット・デメリットには何があるのかを解説します。

CDNの概要

CDNはContent Delivery Network(コンテンツ デリバリー ネットワーク)の頭文字を取ったものです。Webコンテンツを効率的に配信するための、分散型ネットワークが該当します。主に、Webサイトやストリーミングメディア、ソフトウェアのダウンロード等のコンテンツをスムーズに提供することを目的としたものです。

インターネットに接続されているすべてのデバイスは、物理的に離れた場所に位置しているサーバーから情報を取得しなければなりません。CDNは、これらのデバイスがサーバーから情報を取得する距離を短縮し、データ送受信の速度と効率を向上させるための技術です。

まず、CDNは、さまざまな場所に分散された「サーバーネットワーク」で構成されています。これらのサーバーは、エッジサーバーと呼ばれるものであり、通常はユーザーがアクセスする位置に最も近いサーバーです。このエッジサーバーがオリジナルのコンテンツをキャッシュしているため、それをユーザーに配信します。

一般的にCDNを採用することで、サーバーへの負荷が分散され、Webサイトのパフォーマンスを改善することが可能です。また、コンテンツをキャッシュしているため、必要最小限のトラフィックだけで通信を実現できます。結果として、ネットワークコストの低減などの実現が可能です。他にも、複数のサーバーから構築することが可能なため、一部のサーバーがダウンしても、コンテンツの配信を続けられます。

CDNの仕組み


上記で解説したとおり、CDNはキャッシュを活用した技術ですが、その詳細な仕組みをは以下のとおりです。これにより世界中のどこにいるユーザへも、必要なコンテンツを高速かつ安定した品質で提供できます。

コンテンツのキャッシュ

CDNはコンテンツをキャッシュすることから始まります。ここでの「キャッシュ」とは、情報を一時的に保存することです。ユーザに最も近い「エッジサーバー」と呼ばれるものは、元のサーバーである「オリジンサーバー」からコンテンツを取得し、そのコピーを保存します。これにより、ユーザーが特定のコンテンツにアクセスしたとき、そのリクエストはオリジンサーバーではなく、最も近いエッジサーバーで処理できるようになるのです。

エッジサーバーまでのアクセスが良くなるため、Webページのロード時間を大幅に短縮できます。キャッシュ可能なコンテンツにはテキスト、画像、動画、CSS、JavaScriptファイルなどがあり、これらの大量のコンテンツを短時間で読み込むことが可能です。

ユーザーのリクエストとルーティング

次に、ユーザーがWebサイトを訪問したり、オンラインゲームをプレイしたり、動画を視聴したりすると、それらのアクセスがサーバーへの「リクエスト」として発生します。ブラウザは必要なコンテンツをロードするためにリクエストを送信し、このリクエストは通常、ユーザーのデバイスから最も近いエッジサーバーに送られます。

そして、CDNではユーザーのリクエストを最適なエッジサーバーにリダイレクトします。これは一般にDNSリクエストによって実施され、リダイレクトの決定は地理的な近さ、サーバーの負荷、接続の品質などに基づいて決定される仕組みです。これにより、ユーザーは最短時間でコンテンツにアクセスできます。

コンテンツの配信

適切なエッジサーバーが選択されると、ユーザーに対するコンテンツの配信が始まります。このサーバーは既に必要なコンテンツをキャッシュしているため、それを素早くユーザーに提供する仕組みです。これにより、データが物理的に長距離を移動することがなくなり、Webサイトのロード時間が大幅に短縮されます。

キャッシュの更新

エッジサーバーは、定期的にオリジンサーバーと通信し、新しいまたは更新されたコンテンツがあるかを確認します。新しいコンテンツがオリジンサーバーに存在する場合、エッジサーバーはそのコンテンツをダウンロードし、自身のキャッシュを更新しなければなりません。これにより、ユーザーが最新のコンテンツに常にアクセスできるようになるのです。キャッシュの更新頻度は、CDNの設定やコンテンツの種類によります。

CDNを採用する4つのメリット


続いてはCDNを採用するメリットを5つ解説します。

パフォーマンス改善

CDNを採用する最大のメリットは、パフォーマンスの改善です。ユーザーがコンテンツにアクセスしようとすると、そのリクエストは最も近いエッジサーバーに転送されます。エッジサーバーはキャッシュされたコンテンツを提供するため、ユーザーがデータにアクセスするための待ち時間が大幅に短縮されるのです。

特に大容量のファイル、例えば動画や高解像度の画像を提供するサイトにおいては、このパフォーマンスの向上はユーザーエクスペリエンスに大きな影響をもたらします。また、パフォーマンスの改善など快適なブラウジング体験はユーザーの滞在時間を増やすことにも繋がるはずです。結果、二次的な効果としてコンバージョン率の向上にも役立つかもしれません。

可用性・信頼性

地理的に分散したサーバー群を活用する仕組みが、CDNネットワークの基本的な考え方です。そのため、一部のサーバーに問題が発生したとしても、他のサーバーがその役割を引き継ぎ、ユーザーへのサービスを続行できます。つまり、Webサイトやアプリケーションの可用性と信頼性を向上させることが可能です。

また、予期せぬトラフィックの増加やハードウェアの故障など、特定の地域に問題が発生した場合でも、その影響が全体に広がることを防げます。このように可用性や信頼性の高いシステムは、ユーザーからの信用を勝ち取りやすくなり、ビジネス面でのメリットも生み出すでしょう。

スケーラビリティ

設計の仕組みを踏まえると、大量のユーザーリクエストを効率的に処理する能力、つまりスケーラビリティを持っています。そのため急激なトラフィックやリクエストの増加が発生しても、CDNは迅速にスケールアップして対応可能です。すべてのリクエストを適切に処理できるため、ユーザーに迷惑を掛けることはありません。

スケーラビリティの高いシステムを構築すれば、ユーザーへ安定したサービスの提供が可能です。コンテンツには需要の波があるため、唐突に需要が高まることは十分に考えられます。そのような状態に備えるためにも、スケーラビリティにも役立つCDNは非常に有用なのです。

セキュリティ向上

CDNはWebサイトのセキュリティを強化することにも繋げられます。多くのCDNプロバイダーはDDoS(分散型サービス拒否)攻撃から保護する機能など、各種セキュリティサービスを提供しているからです。自社でこのようなセキュリティを構築すると、施策や運用にコストが生じますが、CDNならば意識する必要はありません。

また、外部からの攻撃に対応することはもちろん、サーバー間の通信にもセキュリティが施されています。例えば、キャッシュする際の通信は暗号化されていて、外部から読み解くことが不可能です。これにより、ログインが必要なコンテンツなど、外部への流出を防ぐべきものも安全にキャッシュできます。

CDNを採用する4つのデメリット

上記で解説したとおり、CDNにはいくつものメリットがあります。ただ、それと同時にデメリットもあるため、どのような問題があるのかどうかも理解しておきましょう。

サイト更新のタイムラグ

コンテンツへのアクセスを最適化する仕組みではありますが、サイト更新のタイムラグが大きなデメリットです。CDNの仕組みでも解説したとおり、Webコンテンツをキャッシュする仕組みであるため、このキャッシュが古いとコンテンツそのものが古くなってしまいます。ユーザーは、その事実に気づけない可能性もあり、古い情報を提供してしまう可能性があるのです。

仕組みでも述べましたが、CDNのキャッシュがどの程度の頻度で更新されるかは、設計に左右されます。高頻度で更新する設計もあれば、あまり更新しない設計もできるのです。更新の頻度が多いと、それだけ管理に負担が生じるため、とにかく増やせば良いというものでもありません。タイムラグというデメリットとの折衷案を選択することが求められます。

不要な情報のキャッシュ

適切にCDNを設定しなければ、不要な情報をキャッシュしてしまう可能性があります。本来は公開していない情報や古い情報がキャッシュされ、ユーザーに公開されてしまうかもしれません。キャッシュされた内容によっては、大きなトラブルを引き起こしてしまいます。

例えば、内部だけで確認するページがキャッシュされてしまうと、情報漏洩が起こるかもしれません。個人情報や企業秘密が含まれていると、社会的な問題になりかねません。キャッシュされた情報の削除にも時間を要するため、被害の拡大を防ぐことも難しくなってしまいます。

ログ取得の限界

CDNにはオリジンサーバーとキャッシュサーバーがあると解説しました。これらの中でも、キャッシュサーバーではログの取得に限界があることがデメリットです。例えば、キャッシュサーバーでは、ユーザーのアクセスログを適切に取得できません。

アクセスログなど各種ログは、セキュリティやマーケティングなど、いくつもの場面で活用されます。意外かもしれませんが「重要な情報源」だと考えられているのです。そのため、これを取得できないことは大きなデメリットといえます。

なお、ログの取得に限界があることは、CDNではオリジンサーバーへのアクセスが限られているからです。ここで必要なログは「オリジンサーバーへとアクセスしたときに取得できるもの」であるため、キャッシュサーバーへと転送されたリクエストについては、情報の把握ができなくなってしまいます。

障害の連鎖

地理的に離れたサーバー群を利用するため、可用性や信頼性を高められると解説しました。これはCDNを導入する大きなメリットだと考えて良いでしょう。キャッシュサーバーを分散することで、データセンターのトラブルなどに備えられます。

ただ、CDNそのものに障害が発生してしまうと、オリジンサーバーもキャッシュサーバーもすべてが利用できなくなる可能性があります。一般的な冗長構成ではなく、CDNのサービスありきの設計であるため、こちらに障害が起きると対処の仕様がありません。

実際、世界でも有数なCDNサービスが障害で停止してしまい、コンテンツの配信が世界的に停止した事例があります。CDNは非常に魅力的なサービスではありますが、ベンダーへの依存度が高く、障害が連鎖してしまうことはデメリットです。

まとめ

コンテンツを快適に配信するための仕組みであるCDNについて解説しました。コンテンツをキャッシュサーバーへとキャッシュする仕組みであり、事前にキャッシュしていることで短時間での配信を実現できます。一般的に、距離の遠いサーバーへの通信は時間を要しますが、CDNでキャッシュサーバーが近くにあると、この問題を解決できるのです。

ただ、コンテンツを快適に配信できるというメリットはありますが、キャッシュであるがゆえのデメリットもあります。例えば、キャッシュのタイミングが悪く、過去の情報がユーザーに提供されるかもしれません。適切な運用を考えなければ、余計なトラブルを生んでしまうため、CDNの仕組みからメリットとデメリットを理解して、導入するかどうかを決定しましょう。

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admin