本当に必要?メリットだけじゃないクラウド化で注意すること6選

本当に必要?メリットだけじゃないクラウド化で注意すること6選

近年はシステムのクラウド化が進んでいて「とにかくクラウド化すれば良い」と評価されがちです。皆さんの中にも、同様の認識を持っている人が多いのではないでしょうか。システムのクラウド化には多くのメリットがあるため、これに注目してクラウド化を重視するのです。

確かにクラウド化はメリットが多いですが、必ずしも最適な選択とは言えません。クラウド化にも様々な注意点があるため、それらを正しく理解して、本当にクラウド化すべきかどうか評価できるようになりましょう。

システムのクラウド化とは

一般的にシステムのクラウド化とは、AWSやAzureなどのパブリッククラウドにシステムを移行することを指します。クラウドにはいくつもの種類があり、パブリッククラウドとは限りません。ただ、一般的にクラウド化といえばパブリッククラウドを移行していると理解して良いでしょう。

クラウド化の流れはいくつかあり、例えばオンプレミスで運用しているシステムをクラウドに置き換えるケースがあります。導入するアプリケーションはオンプレミスと同じであり、実行する環境だけが変化するものです。オンプレミスの維持は負担が大きいため、これを軽減するためにシステムをクラウド化します。

また、クラウドサービスが提供している独自機能を利用して、システムのアーキテクチャを組み替えるケースもあります。例えば、クラウドサービス上のストレージサービスを活用して、新しいバックアップの仕組みを作るのです。実現したい内容は同じでも、クラウド化することでアーキテクチャが変更になるケースは多々あります。

他にも、自社でアプリケーションを保有するのではなくSaaSの利用へと切り替えるケースもあるでしょう。これも広義にはクラウド化といえますが、今回は説明の対象外とします。

クラウド化の代表的なメリット3つ


システムのクラウド化には多くのメリットがありますが、今回はそれらの中でも代表的なものを3つ解説します。

コスト削減しやすい

システムをクラウド化することで、コストを削減しやすいメリットがあります。イニシャルコストもランニングコストも削減しやすいため、今まで以上にシステムを導入したり維持したりできるようになるでしょう。近年はITインフラのコストを抑える企業が増えているため、そのようなトレンドにクラウド化は合致します。

まず、システムをクラウド化することで、オンプレミスのようにサーバなどを購入する必要がありません。自社で高額な資産を保有する必要がなくなるため、イニシャルコストを大きく下げられるのです。必要なサーバーの数が増えれば増えるほど、イニシャルコスト面でのメリットは大きくなるでしょう。

また、一般的にオンプレミスよりもクラウドの方がランニングコストが低いと考えられています。オンプレミスではデータセンターへの支払いやサーバーの補修費などが発生しますが、クラウドならば利用料だけです。契約内容には左右されるものの、クラウドの方が安くなりがちである点がメリットです。

物理的な維持保守から解放される

上記でも少し触れた通り、クラウド化することで物理的な維持保守から解放されます。物理的なサーバーを保有していると、どうしても故障などの問題は避けられません。部品が故障してしまうとシステムの動作に影響するだけではなく、修理費用で予期せぬ出費が発生しかねません。しかし、クラウド化していればこのようなことを意識する必要はないのです。

また、物理的にサーバーを管理する必要がなくなることから、これに関連する担当者の人件費を削減できます。社内でサーバーを管理しているならば運用担当者のコストが軽減でき、データセンターに依頼しているならば管理コストが軽減できるのです。物理的な維持保守から解放されることは、上記のようなコストの削減にも通じる部分があります。

様々な機能・サービスを提供してもらえる

クラウドサービスと契約していれば、様々な機能やサービスを提供してもらえます。例えば基本的な「サーバー」のサービスだけではなく、ストレージやサーバーレスプログラミング環境、人工知能まで提供してもらえる時代です。多くのサービスが利用できるようになることで、ビジネスの幅を広げやすくなるでしょう。

もちろん、全てを利用することはないため、どの程度のメリットを得られるかは状況によりけりです。既存のシステムの大半をクラウドサービスに置き換えることもあれば、サーバーサービスなど基本的なものしか利用しないこともあるでしょう。

とはいえ、クラウドサービスを契約してそれを軸としたアーキテクチャを設計すれば、将来的に拡張できる可能性があります。パブリッククラウドは新機能を次々とリリースしているため、自分たちに適したものがリリースされるかもしれないのです。そのような将来性も含めて、様々な機能やサービスを提供してもらえることはメリットだと考えられます。

システムをクラウド化する注意点6選


システムのクラウド化には魅力的なメリットがあります。ただ、以下の通り注意点があるため意識しておきましょう。

今まで以上のコスト管理が求められる

一般的にパブリッククラウドは従量課金制が採用されています。つまり、利用した分だけ課金される仕組みで、使い方を工夫すれば料金を最小限に抑えられるのです。この点に魅力を感じて、クラウド化を推進しているケースは多く見られます。

ただ、このメリットを享受したいと考えるならば、今まで以上のコスト管理が必要です。例えば、システムの開発環境や検証環境など、日頃利用する機会の少ないサーバーは停止しておかなければなりません。起動したままにしていると、無駄に料金が発生することになってしまいます。

オンプレミスのサーバーであれば、従量課金制ではなく月額制が大半でしょう。どれだけ利用しても料金は変わらないはずです。しかし、クラウドサービスはそうではないため、徹底したコスト管理が求められます。

データ移行が必要となる

クラウドに限った話ではありませんが、システムの移行に際してはデータ移行が求められます。既存のシステムに保存されているデータを移行しないと、業務の継続はできないでしょう。基本的には必須の作業であると考えられます。

ただ、データ移行は難易度が高くなるケースが多く、十分に注意しなければならない作業です。例えば、データを適切に出力する仕組みがなく、その部分から設計しなければならないケースがあります。また、データ量が莫大であり、移行に非常に長い期間が必要となるケースもあります。

データ移行は簡単だとイメージされがちですが、実際には非常に複雑で注意が必要な作業です。クラウド化にあたってはデータ移行が必要となるため、本当に実施できるのかどうか評価しましょう。

クラウドに適したセキュリティを施す

クラウド環境では、利用者がセキュリティを担保しなければなりません。サービスとして提供してくれる部分はありますが、責任境界点が存在します。例えば、仮想サーバーのセキュリティは、利用者の責任で担保しなければなりません。

このようなクラウドならではの考え方があるため、それを理解してセキュリティ対策をすることが求められます。誤った理解でセキュリティ上の問題が発生しても、それは自己責任になってしまうからです。クラウド化の前に、セキュリティについて理解して行動に移せる担当者を探したりする必要があるでしょう。

ただ、クラウド環境に適したセキュリティには注意が必要ですが、セキュリティに対する根本的な考え方が変化するわけではありません。社内にセキュリティを理解した人材がいれば、スキルアップによって十分対応できるはずです。

適切なクラウドサービスを見つけ出す

クラウドサービスはどの会社も同じではなく、それぞれに様々な特徴があります。それらを理解および比較して、適切なサービスを見つけ出さなければなりません。「とにかくクラウドサービスへ移行すれば」と考えていると失敗するため注意しましょう。

適切なクラウドサービスを見つけ出すためには「なぜクラウドへ移行するのか」という理由を明確にすることが大切です。例えば「ランニングコストを抑えたい」「◯◯サービスを利用したアーキテクチャに変更したい」などが考えられます。複数の理由がある場合は、それぞれを順位付けしておき、優先順位の高い理由から適合しているか評価します。

一度クラウドサービスに移行してしまうと、別のクラウドサービスへ移行する作業は非常に大きな手間です。「クラウドサービスの選択ミス」によって、このような状況に陥らないためにも、適切なクラウドサービスを吟味しなければなりません。

法的な規制をクリアする

法的な要件があるならば、それをクリアできるクラウドサービスを選択するようにすべきです。例えば、中国の製薬業界のように法律で「データの保管先は国内」と定められているケースがあります。法律面の規制がある場合は、事前に必ず確認しなければなりません。

ただ、日本に限った観点で評価すると、国内にサーバーを設置しているクラウドサービスは多数あります。そのため、規制で日本国内にデータを保管する必要がある場合でも、特に気にすることなくクラウド化できるでしょう。

逆に、海外に子会社があるなどグローバルなシステムを構築する際は、サーバーの設置先に注意が必要です。時には、サーバーの設置場所が影響して、システムを想定通り構築できない可能性があります。

運用できる担当者が必要となる

クラウドサービスの運用にあたっては、専用の担当者が必要です。様々なサービスが提供されているため、それらを理解して操作もできる人材を確保しましょう。新しく人材を採用したり、既存の人材を教育で成長させたりする選択肢があります。

ただ、このような人材の確保は、人件費などの観点から現実的ではないかもしれません。そのため、自力でのクラウドサービス運用が難しいならば、アウトソーシングする選択肢も考えてみましょう。構築から運用まで一括で請け負ってくれるベンダーも存在するため、そのような会社の活用も悪くありません。

注意点を踏まえてもクラウドがおすすめのケース

システムのクラウド化には、上記のような注意点があります。ただ、それを踏まえてもクラウドをおすすめするケースがあるため、そちらについても解説します。

スケーラビリティを重視する

システムのスケーラビリティを重視するならば、クラウドサービスの活用が良いでしょう。例えば、急激な負荷に耐えうるように、臨機応変にサーバーのスペックや台数を変化させるなどです。

このようなスケーラビリティは、オンプレミスではなくクラウドを利用するメリットと考えられます。オンプレミスは簡単に台数を増やしたりスペックを変更したりできません。しかし、クラウドならばこれらが簡単であり、設定次第では自動的に処理してくれます。大きな違いと言えるため、これを目的としているならばクラウド化がおすすめです。

グローバルインフラを構築する

日本のみならずグローバルなインフラ基盤を構築するなら、クラウドサービスを活用しましょう。特にパブリッククラウドは、日本のみならず世界中で提供されています。それぞれの地域にデータセンターが設置されているため、物理的に離れたグローバルなインフラ基盤を構築できるのです。

自前でグローバルなインフラ基盤を構築しようとすると、莫大なコストが発生することは言うまでもありません。また、構築できたとしても、これらの管理にも莫大なコストが生じると考えられます。いくつもの問題を考慮すると、グローバルインフラはオンプレミスよりもクラウドサービスが適しているのです。

まとめ

システムをクラウド化する際の注意点を中心に解説しました。冒頭で触れた通り、クラウド化にはメリットがありますが、同時に注意点がいくつもあります。メリットだけではなく注意点に注目して、メリットが大きい場合にクラウド化した方が良いでしょう。

ただ、メリットと注意点のバランスを鑑み、クラウド化した方が総合的にメリットが大きくなるケースは十分考えられます。「メリットだけ」「注意点だけ」と片方に寄った考えを持つのではなく、両方を理解して判断を下すようにしてください。

SHAREこの記事をシェアする

admin