コンテナと仮想マシンの違いとは?概要とそれぞれのメリット・デメリットを解説

コンテナと仮想マシンの違いとは?概要とそれぞれのメリット・デメリットを解説

仮想化の技術が活用される機会は増加していて、コンテナと仮想マシンが主に利用されています。実際、エンジニアとして現場で活躍していると、これらのテクノロジーを利用する機会は多いでしょう。

耳にする機会が増えたキーワードではありますが、これらにどのような違いがあるのか理解できていない人も見受けられます。今回は、それぞれの概要やメリット・デメリット、違いまでそれぞれまとめて解説します。

コンテナと仮想マシン

最初に、コンテナと仮想マシンの概要について理解を深めましょう。

コンテナとは

コンテナは軽量な仮想化技術で「OSレベル」での仮想化を実現します。結果、アプリケーションとその依存関係をカプセル化したものが、包括的なユニットとして実行されるようになるのです。このユニットを「コンテナ」と呼びます。OSのカーネルは共有されていますが、プロセス空間、ファイルシステム、ネットワークインターフェースなどは隔離される仕組みです。

コンテナの利点として注目したいものは、軽量性効率性です。例えば、コンテナは迅速に起動し、OSのオーバーヘッドなしに実行できるため、多くのコンテナをひとつのホストで実行できます。そのため、小規模なシステムやDevOps、マイクロサービスなどの開発パラダイムと相性が良いと考えられます。

仮想マシン (Virtual Machine)とは

仮想マシン(VM)は物理的なコンピュータのリソースを仮想化し、独立したコンピュータのように動作するソフトウェアベースのコンピュータです。「ホストOS型」「ハイパーバイザ型」と呼ばれる種類があり、専用のソフトウェアを使用して実現されます。物理的なコンピュータは1台でも、複数のコンピュータを構築できるのです。

それぞれのVMは独自のOSを持っているため、そのOS上でアプリケーションを動作させられます。物理的なハードウェアに依存しないため、柔軟な環境の構築やテストができるのです。ただ、各VMは独自にOSを持つため、リソースを多く消費するという欠点に注意が必要です。

コンテナと仮想マシンの5つの違い


コンテナと仮想マシンには多くの違いがあるため、それらの中でも注目したい違いをピックアップして解説します。

仮想化のレベル

仮想マシンはハードウェアレベルの仮想化を提供するテクノロジーです。具体的には、物理的なコンピュータ上で動作するソフトウェアを使用して、複数の仮想的なマシンを生成します。この仮想マシンは、ハードウェア上で動作する独立したコンピュータであり、それぞれのVMは独自のOSを持つことが特徴です。

一方、コンテナはOSレベルの仮想化を実現するテクノロジーを指します。同一のOSカーネルを複数のインスタンスで共有しつつ、それぞれのコンテナが独自のファイルシステム、ライブラリ、依存関係を持てるのです。その結果、同じホストOS上で異なる環境を効率的に実行することが可能となります。

消費リソース

仮想マシンは、それぞれのマシンがOSを持っているため、リソースの消費が大きくなりがちです。また、CPU、メモリ、ストレージなど、物理的コンピュータのリソースを直接利用します。そのため、オーバーヘッドが大きくなってしまい、全体の効率が低下する可能性に注意しなければなりません。

それに対して、コンテナはOSカーネルを共有するため、オーバーヘッドが非常に少なくなります。コンテナは必要なライブラリや実行環境のみをカプセル化するため、物理的なリソースへのアクセスがより効率的なのです。そのため、同じホスト上で多くのコンテナを同時に動作させることも難しくありません。

起動時間

仮想マシンの起動には、物理的なハードウェア上での完全なOSの起動が必要となるため、時間がかかることが一般的です。このため、VMを使用した環境では、即時のスケーリングや迅速なデプロイが難しくなることがあります。

コンテナは、既に動作しているOSカーネル上で実行環境を立ち上げるだけなので、起動は非常に迅速です。この特性により、コンテナは動的なスケーリングや短時間でのデプロイメントに適しています。特に、クラウド環境やDevOpsの文脈での利用価値が高まっています。

管理ツール

仮想マシンは、一般的にハイパーバイザなどのツールを利用して構築されます。物理的なハードウェアの上にゲストOSが構築され、その上にアプリケーションが展開される仕組みです。特別な管理ツールで、仮想的に独自のOSを立ち上げます。

しかし、コンテナはコンテナエンジンと呼ばれるツールを使用した管理が基本です。物理的なハードウェアにインストールされたアプリケーションであり、コンテナがカーネルなしにリソースへアクセスする手助けをします。

移植性

仮想マシンの場合は、使用するハイパーバイザやそのバージョンに依存することが多いため、異なる環境への移植が困難な場合があります。使用するハイパーバイザやそのバージョンに依存することが多いため、この依存性により、クラウドプロバイダやインフラストラクチャ間での移動が制約されることがあります。

一方、コンテナ技術は環境やインフラストラクチャに依存することなく、容易に移植することができます。アプリケーションとその依存関係を一つの包括的なユニットにカプセル化するためです。これにより、開発環境から本番環境、または一つのクラウドプロバイダから別のプロバイダへの移行がスムーズに行えます。

仮想マシンのメリット・デメリット


仮想マシンを導入するメリットやデメリットについて解説します。

完全な環境の分離

仮想マシンは、物理的なコンピューター上で独立したオペレーションシステムを動作させられます。結果、完全な環境の分離を実現できることがメリットです。これにより、異なるOSやバージョンを物理的に同じコンピューター上で並行して動作させられるようになります。

例えば、WindowsとLinuxの2種類を、同じコンピューター上で同時に起動させることが可能です。アプリケーションの互換性などを意識する必要がなくなるため、 同時に異なる環境でテストしたり、複数のOSを組み合わせた環境を構築したりできるようになります。

ハードウェアの効率化

仮想マシンを構築することによって、物理的なハードウェアを効率よく利用できるようになります。物理的には1つのコンピューターに複数のVMを配置することで、実質的には何倍ものハードウェアがあるように利用できるからです。

また、ハードウェアの効率化を実現できるだけではなく、リソースの再配置や調節も柔軟に実現できるようになります。仮想マシンは、簡単に物理的なハードウェアの割り当てを変更できるため、状況に応じてスムーズにリソースを変更可能です。物理的なハードではこのような変更はできないため、仮想マシンだからこそのメリットだといえるでしょう。

移植性・復元性

一般的に、仮想マシンは1つのファイルやイメージとして管理することが可能です。そのため、バックアップやリストア、クローニングなどを容易に実現できます。仮想マシンのバックアップを取得しておけば、そのイメージを別の物理的なマシンで実行したり、破損してしまった時に復元したりできるのです。

また、万が一に供えるだけではなく、開発や業務をスムーズに進めることにも役立ちます。例えば、テスト環境を複数構築する際に、仮想マシンを利用することで短時間で同じものを用意できるのです。全く同じものを短時間で用意できることが、仮想マシンの大きなメリットと理解すれば良いでしょう。

オーバーヘッド

仮想マシンを実行するにあたっては、オーバーヘッドが生じてしまうことがデメリットです。それぞれのマシンがOSを有しているため、どうしても仮想マシンと物理マシンの間で、リソースの処理に時間を必要としてしまいます。結果、全体的なパフォーマンスが下がってしまうことがあるため、その点には注意しなければなりません。

特に、多くの「I/Oリクエスト」があると、物理的なコンピューターで実行するよりも性能が落ちてしまう可能性があります。逆に、リソースへのアクセスが頻繁に発生しないならば、仮想マシンであることのデメリットは最小限に抑えられるのです。アプリケーションの内容によっては、クリティカルなデメリットとなるため、事前の検証が求められます。

セキュリティリスクの拡大

物理的なコンピューターを共有しているため、セキュリティ上の問題が発生すれば、全ての仮想マシンに影響する可能性があります。また、脆弱性が発見されると仮想マシンに影響する可能性もあり、全ての仮想マシンが停止してしまうリスクもあるぐらいです。これは、仮想マシンを利用するにあたっての大きなデメリットと考えましょう。

ただ、事前にセキュリティを管理していれば、影響は最小限に抑えられるはずです。近年はセキュリティ対策が非常に重要視されているため、十分に対策できていれば、セキュリティリスクを回避できるでしょう。

コンテナのメリット・デメリット


続いて、コンテナを導入するメリットやデメリットについて解説します。

軽量性と高速な起動

コンテナはOSの一部の機能しか利用しないため、非常に軽量であることがメリットです。従来の仮想マシンは起動に時間を要するのに対して、コンテナならば数秒で起動できます。頻繁に起動や停止、ビルドなどを繰り返さなければならない環境では、この差が積み重なって非常に大きなものとなるでしょう。

また、コンテナは軽量であるため、ストレージやネットワークのオーバーヘッドを最小限に抑えられます。結果、同じ物理的なハードウェア上で大量のコンテナを生成しても、それぞれを快適に動作させることが可能です。同じリソースでも、仮想マシンより多く配置可能であり、なおかつ高速に起動できます。

環境の担保

コンテナはアプリケーションだけではなく、関連する依存性などすべて「パッケージ」としてカプセル化します。そのため、一度作成されたコンテナは、どの環境で起動しても同じように動作することが特徴です。結果、大量の環境を作成してもそれぞれの正確性を担保でき、設定ミスなどに起因するトラブルを防げるメリットへと繋がります。

また、事前にコンテナを作成しておけば、どのような環境でも同じようにデプロイすることが可能です。現在は、マルチクラウドやハイブリッドクラウドなど複数の環境を利用するケースが増えています。そのような状況下において、非常に効率よく運用できることもメリットです。

リソースの最適化

コンテナはハードウェアリソースに直接アクセスするのではなく、ホストOSのカーネルを共有して動作します。そのため、リソースを効率よく操作することが可能となり、最適化を実現できることがメリットです。物理的なハードウェアや仮想マシンよりも、多くのインスタンスを起動したり管理したりできます。

また、リソースの最適化を実現できることは、アプリケーションのパフォーマンス向上にも役立ちます。例えば、メモリやCPUの割り当てを柔軟に調節できることで、リソースを無駄なく消費することが可能です。

セキュリティの不安

コンテナは比較的新しい技術ということもあり、セキュリティ対策が完璧に確立されているわけではありません。ベストプラクティスやツールが常に変化しているため、これらを活用して適切に運用することが求められます。何かしら不備があると、攻撃の対象になってしまう可能性があり、セキュリティの不安を抱えることはデメリットです。

また、外部からの攻撃などを受けてしまった場合、他のコンテナへ影響を与えてしまう可能性があります。仮想マシンと比較すると、セキュリティ面の隔離度合いが低くなっているため、侵入されることで甚大な影響があるかもしれません。新しい技術であるからこその不安に留意することが大切です。

まとめ

コンテナと仮想マシンの概要から違い、それぞれのメリット・デメリットについて解説しました。どちらも仮想的なマシンを扱う技術ではありますが、その特徴は大きく異なっています。どちらが良いとは一概に言い切れないため、違いを踏まえて利用すべきものを選択できるようになりましょう。

選択を誤ってしまうと、思うようにハードウェアを活用できない可能性があります。最大限、物理的なリソースを活用してアプリケーションを運用するためにも、基本的な知識から習得してみましょう。

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admin