DX検定とは?資格取得のメリットと難易度・勉強方法を解説!
近年は「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というキーワードをよく耳にするのではないでしょうか。国を上げてDXを推進していることから、メディアなどでも取り上げられることの多いキーワードです。エンジニアとしてDXに関わっていなくとも、ある程度のイメージはつかめていると考えられます。
このDXについての理解を示すために、「DX検定」と呼ばれる検定試験が用意されています。今回は、DXに関わる人材ならば取得しておきたい、DX検定とはどのようなものであり、取得するとどのようなメリットがあるのか解説します。
DX検定とはなにか
最初にDX検定とはどのようなものであるのかを解説します。
DX検定の概要
DX検定とは、日本イノベーション融合学会が提供する、DXに関するスキルを証明するための資格です。
これからの時代、社会の発展やビジネス全般においてデジタル技術は必要不可欠です。現時点でit化されていない部分については、積極的にIT化を進めていかなければなりません。このような場面において、DXのスキルがなければ誤った方向に進んでしまう可能性があります。そのような状況に陥らないためにも、DXに関するスキルを証明するものとしてDX検定が設けられました。
2023年9月現在では第11回まで実施されていて、2024年1月に第12回が実施されます。回数を重ねている資格であり、知名度や信ぴょう度合いも高まってきている状況です。新設されたばかりの資格ではなく、ある程度の期間が経過している資格であることを認識しておきましょう。
なお、DXのスキルは独立したものであるため、受験の前提条件となるものはありません。実務経験や必要となる資格も存在せず、単純にDXについての深いスキルがあれば、チャレンジできる内容となっています。
DX検定の試験方式
DX検定はオンラインで受験するタイプの資格です。Web環境があれば試験を受けられるようになっているため、自宅からでも受験できます。情報処理試験のように、テストセンターに出向いて試験を受ける必要はなく、自宅や職場などネット環境さえ整っていれば受験に差し支えありません。
上記で触れたとおり受験資格はなく、誰でも60分の試験を受けられます。基本的には多肢選択式の知識問題が120問出題され、全体のうちどの程度、正答したかによって評価が変化する仕組みです。制限時間に対して質問数が多いため、短時間で効率よく回答しなければ間に合わなくなってしまいます。DXのスキルはもちろん、理解してきた内容をいち早く思い出すスキルも求められると言えるでしょう。
なお、受験料は6,600円(税込)となっていて、情報処理試験や他のit資格と同様の価格帯です。極端に高額な受験料ではないため、DX検定は比較的受験しやすいと考えて良いでしょう。
ただ、DX検定はいつでも受験できる資格ではなく、基本的に1月と7月の年2回しか試験が開催されていません。オンライン受験はいつでも受験できるようなイメージがあるかもしれませんが、期間の制限が設けられていることには注意が必要です。
DX検定の認定
一般的な資格とは異なり、DX検定はスコアに応じてレベルが認定される仕組みです。大半の資格は「合格」と「不合格」のどちらかに分類される仕組みですが、DX検定にはこれがありません。そもそも、合格という考え方が設けられている資格ではないため、その点は注意しておきましょう。
DX検定の場合、成績優秀者にはレベル認定書が発行されます。この認定者が発行された場合に限って、DXに関するスキルが証明されていると考えるべきです。具体的には以下のとおりの得点に応じて証明書が発行されます。
- スコア800以上:「DXプロフェッショナルレベル」
- スコア700以上:「DXエキスパートレベル」
- スコア600以上:「DXスタンダードレベル」
1,000点満点であるため、6割以上の点数を取得していないと、DXに関するスキルが証明されません。また、プロフェッショナルレベルまでしか設けられていないため、800点でも満点でも証明されるスキルは同じであることを理解しておきましょう。
なお、600点以上のスコアを取得している場合には、オープンバッジが進呈されるようになっています。こちらを保有していれば、名刺やプロフィールなどへDX検定のレベルを掲載することが可能です。もし、DX検定の結果について掲載したいならば、まずはスコア600以上を目指さなければなりません。
DX検定を取得する2つのメリット
DX検定を取得すると、どのようなメリットがあるのか紹介します。
DXのスキルを証明できる
DX検定を受験して認定を受けることによって、DXのスキルを証明できるようになります。明確な定義がなく曖昧なキーワードであるため、認定資格を取得することによって、客観的にスキルの高さを示せるのです。プロジェクトの都合などで実務経験が少なくとも、有資格者であればそれだけで評価してもらえるでしょう。
また、客観的な証明を持っていれば、案件を受注する際にクライアントへアピールできます。近年はDXに関する案件が増えてきているため、資格を保有していることをアピールできるかどうかは重要なポイントです。積極的なアピールで案件を受注したいと考えている際に、自分の武器となることは大きなメリットと言えます。
活用事例が学べる
DX検定では、どのような場面でDXが必要とされるかが問われます。実例を踏まえて回答するスキルが求められるため、必然的にDXの事例を学ばなければなりません。このような学習の機会を得られることも、DX検定を取得するメリットだと考えられます。
近年は幅広い分野でDXが進められている状況です。新しい技術や分野などが増えているため、最新情報をキャッチしなければなりません。古い情報に基づいたDXでは、取り組みが無駄になってしまう可能性があります。
なお、DX検定で紹介されるサンプルは、ごく最近の事例というわけではありません。そのため、より幅広い知見を得るためにも、経済産業省が発表する、DXの導入事例も参考にしてみましょう。
DX検定の試験内容と難易度
DX検定のシラバスを参照してみると、試験内容は大きく分けて「ビジネス」と「技術」に分類されています。それぞれについて、どのような内容でどの程度の難易度であるのかをまとめると以下のとおりです。
ビジネス
分類 | 説明 |
次世代ビジネストレンド | 社会イノベーションや科学技術イノベーションに関する重要なキーワードが出題対象 |
戦略・理論 (経営革新としての IT) |
ビジネスイノベーションや理論・方法論について、それぞれの概念や実現方法が対象
デザイン思考や社会的・経済学的な理論についても出題対象 |
業務 (仕組みとしての IT) |
プロセス・イノベーションについて大手企業の事例からAIやIoTの活用、新しいテクノロジーが出題対象 |
商品 (商品としての IT) |
プロダクト・イノベーションについて、ロボットの活用やAIによる機器の操作、開発の効率化技術や事例などが出題対象 |
サービス (サービスとしての IT) |
ビジネスモデル・イノベーションについて、大手企業の事例や新しく普及したビジネスモデル、これから普及するであろうビジネスが出題対象 |
IT機器 (道具としての IT) |
IT機器・サービスのイノベーションについて、主要なサービスを問われるだけではなく、量子コンピュータなど最先端の技術も出題対象 |
技術
分類 | 説明 |
ロボットとスマートマシーン | ロボットとドローンなどのスマートマシンが出題対象 |
AI とソフトウェア | AIやソフトウェアなど、各種プログラミング言語や仮想化技術などが出題対象 |
IoT とハードウェア | IoTプラットフォームやAI・量子を活用したコンピュータが主な出題対象 |
ビッグデータとデータサイエンス | ビックデータの種類や解析手法、クレンジングしょりなどのデータサイエンスやアナリティクスが主な出題対象 |
クラウドと IT 開発/運用 | シンクライアントやコンテナなどの仮想化やOSSやAIによる自動化などが主な出題対象 |
サイバーセキュリティとネットワーク | 最新のサイバー攻撃やそれへの対応、セキュリティを踏まえた先端のネットワーク技術が主な出題対象 |
試験の難易度
DX検定について公表されているデータを参照してみると、受験者の平均点は1000点満点で510点程度です。約半分の点数しか取得できない試験内容となっています。何かしらの認定を得るためには600点以上が必要となるため、最低限の認定を取得することを目標とするならば、難易度の高い試験に分類されるといえます。
また、得点の大まかな分布について確認してみると、400点以上600点未満は約3割程度です。平均点が500点ほどであることを踏まえると「半分程度は理解できるが高得点を取得することは難しい試験」であると推測できます。なお、プロフェッショナル認定に該当する800点以上は、3%から5%程度しか該当者がいません。
実際、DX検定の参考問題を参照してみると、十分な知識が伴わなければ難しいキーワードや状況設定について問われていました。公式のオンラインコンテンツを中心に、DXの重要キーワードやトレンドについて理解し、それらの応用的な部分や実践的な活用方法まで理解することが求められています。
なお、AIやセキュリティなどの最新トレンドについて出題されるケースが多く見られます。これらはDXの要となるものであり、これからも積極的な活用が期待されるテクノロジーです。出題内容について評価する際は、これらの分野に重点を置くと良いでしょう。
DX検定の2つの学習方法
DX検定の学習方法は大きく分けて2つあるためそれぞれについて解説します。
オンライン学習
DX検定に関するスキルを効率よく習得したいならば、オンライン学習の活用をおすすめします。DX検定の公式Webサイトでも、オンラインでの学習が推奨されているため、基本的にはこれに倣って学習すべきです。
学習コンテンツはいくつかありますが、DX検定の公式教材として「DXStudy」と呼ばれるものが提供されています。DXに関連する基本的な知識から応用的な知識、実践的な内容まで網羅されている教材です。DX検定のシラバスも踏まえた内容となっているため、こちらの教材で学習しておけば抜け漏れなく知識が習得できます。
ただ、公式のオンライン学習教材ということもあり、個人で利用する場合は10,780円(税別)の受講料金が必要です。無料で学習できるオンラインコンテンツではないため、その点は理解するようにしておきましょう。また、こちらのオンラインコンテンツで学習する場合は、契約してから3ヶ月間のみ内容を閲覧できます。長期にわたっての学習には対応していないため、こちらで学習する際は、計画的に進めることが重要です。
なお、DX検定の内容に準拠していないものならば、無料で学習できる動画コンテンツも世の中には存在します。オンライン学習にこだわるのであれば、シラバスの内容を読み解いて、それについて解説しているオンラインコンテンツを見つけるようにしてみましょう。
参考:DX Study™ 2023 eラーニング<DX検定™ 準拠教材>
書籍
DXについて解説されている書籍を利用する方法もあります。書籍はどうしても販売までに時間がかかるため、最新の情報を取り入れづらいというデメリットがありますが、購入してしまえば自由に体系的な学習が可能です。
また、DXに関する書籍は非常に多く発売されているため、自分のレベルに適したものを見つけやすいというメリットがあります。例えば、DXがほとんどわからない人向けの書籍もあれば、知識は習得していて実践的な内容を理解したい人向けの書籍もあるのです。複数の書籍を組み合わせることも可能であり、自分のペースで学びを深められるとイメージすると良いでしょう。
なお、書籍の種類は非常に多いですが、DX検定の推薦図書がDX検定のWebサイトで紹介されています。基本的な内容から、応用的な内容まで書籍が紹介されているため、悩んだ際はこちらから選択すると良いでしょう。これらの本だけで、高いスコアが取得できるとは言い切れませんが、学習に役立つことは間違いありません。
参考:学習方法 | DX検定™(日本イノベーション融合学会*ITBT(R)検定)
まとめ
DX検定の概要から取得によるメリットまで順番に解説しました。近年はDXの需要が高まっているため、スキルを証明できるDX検定が注目されています。
本来、DXには明確な対象や範囲がなく、スキルの証明は実務経験に依存するものしかありません。しかし、紹介したように資格を取得すると、クライアントに対してスキルの証明がしやすくなります。今までに参画していない分野のDXでも、資格があればアピールして案件への参画へとつなげられるでしょう。