デジタル庁とは|概要や役割、エンジニアへの影響を解説

デジタル庁とは|概要や役割、エンジニアへの影響を解説

2021年4月より、デジタル庁の発足に向けた法案の審議が始まり、実際にデジタル庁が発足されましたが、デジタル庁が発足されてから間もないため「聞いたことはあるものの理解はできていない」という人が多いのではないでしょうか。

今回はそのような人に向けて、まずデジタル庁とはどのようなもので何をしてくれるのかをご説明します。また、その状況を踏まえてエンジニアにはどのような影響があるのかもご説明します。

デジタル庁とはなにか

デジタル庁とはいったいどのようなものなのでしょうか。まずはデジタル庁の基本知識についてご説明します。

デジタル庁発足はなぜ必要なのか

そもそもデジタル庁はなぜ必要となっているのでしょうか。ここには新型コロナウイルスで浮き彫りとなった、官公庁のデジタル化の遅れが背景にあります。今までは大きな問題になっていなかった手続きなども、新型コロナウイルスによるオンライン化の波によって問題視されるようになったのです。

デジタル化の遅れが指摘されるようになったために、2020年12月に政府が主体となってデジタル庁の発足に向けた準備を開始しました。1年も過ぎないうちにデジタル庁は発足しているため、いかにスピード感を持って発足に向けて動いていたのかが分かるでしょう。

デジタル庁の発足は「デジタル化の遅れを取り戻す」という考えが根底にはあるものの、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」というミッションが掲げられています。一部の人だけが恩恵を受けられるデジタル化ではなく、全ての人が恩恵を受けられるデジタル化が求められているわけです。

デジタル庁の役割

デジタル庁の公式サイトには、概要として以下の記載があります。

デジタル庁は、デジタル社会形成の司令塔として、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を大胆に推進し、デジタル時代の官民のインフラを今後5年で一気呵成に作り上げることを目指します。

出典:デジタル庁公式サイト

噛み砕いて理解すると、デジタル庁の役割とは国としてデジタル化したインフラを率先して準備していくことだと考えられます。まだまだデジタル化されていない部分が多いため、全くデジタル化できていない部分から一気にデジタル化することが役割なのです。

実際に実装されているものはまだ少ないですが、これから5年間で多くの手続きがデジタルで実装されると考えられます。国の手続きはもちろん、地方公共団体や準公共部門などの手続きについても、国が主導してインフラの整備が進められるようになるのです。

デジタル庁の主要な5つの取り組み


デジタル庁は主要な取り組みとして、大きく5つの事業を挙げています。

  • 徹底したUI・UX/国民向けサービスの実現
  • マイナンバー・マイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及/PFとしての行政
  • データ戦略
  • 官民をあげた人材の育成・確保
  • 新テクノロジーを大胆に活用・調達や規制の改革

出典:デジタル社会の実現に向けた取組

それぞれについてデジタル庁がどのような取り組みをしていくのかご説明します。

徹底したUI・UX/国民向けサービスの実現

国や地方自治体は政府Webサイトの統一を図るほか、マイナポータルなどの情報システムのUI/UXの抜本的な改善を推進します。現状、これらのWebサイトは個々に運営されている状態ですが、これをまとめるためにデジタル庁が活躍するようです。また、それぞれのサイトでUI/UXが異なっているため、これらを統一し、 ユーザビリティの向上を目指すとも考えられます。

また、現在利用しているデータセンターについては、各省庁などがそれぞれオンプレミスで管理している状態を脱却するとしています。現在はクラウドサービスの活用が当たり前となっていますので、サービスの可用性向上などの観点から運用が変更になっていくようです。

その他にも、準公共などに対してもデジタル化を支援するためのプログラムが検討されています。こちらについてはデジタル庁が主導して事業を進めていく仕組みではなさそうですが、私たちの生活に大きく影響することが予想されます。

マイナンバー・マイナンバーカードなどデジタル社会の共通機能の整備・普及/PFとしての行政

日本ではマイナンバー制度が導入されているものの、上手く活用されていない状況があります。新型コロナウイルスの影響で利用される機会は増えていますが、それまであまり利用していなかった人は多いでしょう。今までに利用した経験がない人が居ても不思議ではありません。

しかし、現在はマイナンバーやマイナンバーカードの普及に、デジタル庁が率先して取り組んでいます。例えばマイナンバーカードについては、令和4年度末までにほぼ全員に行き渡ることを目指しています。また、最近ではマイナンバーカードが健康保険証の代わりに利用できるようになっています。これから先は運転免許証との一体化なども検討されていて、デジタル庁が積極的に普及させようとしています。

さらに、マイナンバーやマイナンバーカードを利用した個人の認証や法人の認証制度もデジタル庁によってシステム化される予定です。今のところ、マイナンバーの利用は一般的な企業には難しく、マイナンバーカード以外の運転免許証などを利用して個人の認証が行われている状況です。このような状況を打開するために、デジタル庁がマイナンバーを活用した認証ができる仕組みをデジタルで構築しようとしています。

マイナンバーは導入されてから期間が長いものの、まだまだ活用されていないのが事実です。デジタル庁によってマイナンバーの普及が推し進められれば、これから非常に便利なものとなるかもしれません。

データ戦略

行政手続きの簡略化を目指したデータ戦略が掲げられています。個人や法人など、行政機関が保有するデータを一元管理できるようにして、同じ内容を複数の手続きで何度も申請しなくて良い社会を目指しています。

残念ながら、現在の日本では官公庁がお互いに情報連携していない状況です。そのため、同じような内容をそれぞれの官公庁に申請する必要があり、行政手続きには無駄な時間を要しています。マイナンバーも上手く連携されておらず、個人情報はその都度申請するのが一般的です。

デジタル庁はこの状況を打開する方向で考えていて、データを一元管理しそれらを行政手続きで利用できるようにするようです。具体的な活用方法についてはまだデジタル庁から公開されていませんが、各種手続きが簡略化されることを期待できる事業です。

他にもデジタル庁はデータを活用する前提となるトラスト(真正性や完全性)の確保や、証明のための仕組みも構築するとしています。参照したデータが虚偽であっては意味がないため、そうならないためのプラットフォームもデジタル庁が主体となって構築します。

官民をあげた人材の育成・確保

デジタル化をすすめるに当たり重要となるのは、人材の育成や確保です。どんなにデジタル庁がデジタル化を進めたいと考えても、それを実装するエンジニアなどが不足していると対応のしようがありません。そこで、デジタル庁はデジタル化を進めるために人材の育成や確保についても掲げています。

例えば、人材を育成するために国や地方自治体向けの研修プログラムを検討しています。現在でも国や地方自治体の職員に対して研修は実施されていますが、このコンテンツが拡充されるようです。国や地方自治体の担当者のスキルが高まれば、エンジニアとの意思疎通も図りやすくなるなどのメリットが期待できます。

また、デジタル庁を中心として積極的に国家公務員採用試験の総合職試験(工学区分)や一般職試験(電気・電子・情報区分)等の合格者を採用する流れになっています。現役のエンジニアがこれらの採用試験を受験する可能性は低いかもしれませんが、エンジニアとしてのスキルがあり、国家公務員採用試験対策もすればデジタル庁で働ける可能性はあります。

なお、これからデジタル庁などデジタル分野で働く人材として新しい区分を設けることも人事院で検討されています。まだ詳細は公開されていませんが、民間のエンジニアからデジタル庁のエンジニアに転身するチャンスが来るかもしれません。

新テクノロジーを大胆に活用・調達や規制の改革

今までの古い技術や考え方ではなく、新しいテクノロジーを積極的かつ大胆に活用するようです。現役エンジニアは官公庁に対して「古い」との認識を持ちがちですが、デジタル庁ではそのようなイメージの払拭を進めると思われます。

特に注目したいのは、デジタル庁が必要とする技術は自前で調達する方針であることです。今のところは民間企業の支援を受けるケースが多いのですが、デジタル庁ではエンジニアなどを抱えて独自の研究を進めるとしています。例えばセキュリティ対策やAIなど、新しいテクノロジーについて民間企業の支援無く実装を目指しています。

また、デジタル化を進めるだけではなく、デジタル化しやすい社会の構築も目指すようです。例えば既存の行政手続きをそのままデジタル化するのではなく、デジタル化しやすいように手続きを見直してからデジタル化します。

デジタル庁の発足とエンジニアへの影響


デジタル庁の概要については、皆さんご理解いただけたでしょう。ここで気になるのは「デジタル庁の発足がエンジニアに何かしら影響を与えるかどうか」という部分です。まだ新しい組織で詳細が確認できていない部分はありますが、エンジニアへの影響についてご説明します。

デジタル庁の発足に伴いエンジニアが求められる

まず、デジタル庁の発足に伴いデジタル庁で活躍するエンジニアが求められています。官公庁の中からエンジニアが集められていますが、民間出身のエンジニアも求められています。実際に求人も公開されていて、デジタル庁の発足はエンジニアが働く場所を広げるという意味で影響があります。

募集されているエンジニアの内容は様々です。詳細はここでは割愛しますが、デジタル庁の公式サイトを参照すると、どのような人材が求められているのか公開されています。また、勤務条件などについても案内がありますので、気になる人は参照すると良いでしょう。

ここ数年は官公庁でエンジニアが求められていますが、ハイレベルなエンジニアが求められている部署は限られていて、民間企業で働きながら官公庁の仕事を受注するのが良い状況ではありました。

しかし、デジタル庁の発足に伴ってエンジニアの需要は変化しています。民間企業以外にも活躍する場も増えているのです。

デジタル庁の案件を受注する機会も増えるか

エンジニアが働く場所の選択肢としてデジタル庁が考えられます。ただ、実際にはデジタル庁の中だけで全ての物事が完結するのではなく、民間企業と協力して様々な物事に取り組むと考えられます。

そのため、デジタル庁の発足に伴って民間企業への発注案件が増えると考えられます。入札などどのような仕組みで案件が発注されるかの判断はできませんが、デジタル庁だけではエンジニアが不足するはずですので、多くの案件が市場に流通すると思われます。

市場に流通する案件が増えれば、それだけエンジニアが活躍できるようになります。エンジニアの需要が高まることで、スキルがマッチするエンジニアは官公庁の案件に参画できるのです。官公庁の案件に参画したいと考えているエンジニアは、デジタル庁の発足でそのチャンスが増えると考えられます。

しかし、まだ発足して日が浅いため、確認できる案件数は限られており、まだまだ積極的に案件を獲得できる状況ではありません。これから案件が増え、エンジニアが活躍できる場を提供してくれると考えられます。

まとめ

デジタル庁とはどのようなものであるのかについてご説明しました。まだ新しい組織であるため、皆さんの理解と異なっていたかもしれません。また、今回初めてデジタル庁について理解できた人もいるでしょう。

まだ具体的な事業は多く進められていないため、デジタル庁の恩恵や影響を感じる場面は少ない状況ですが、これから数年でデジタル庁の取り組みは広く普及するはずですので、どのような取り組みがあるのか頭に入れておいて損はありません。

多くの事業に取り組むにあたり、エンジニアに案件が公開されるなどデジタル庁との繋がりができる可能性は十分にあります。また、エンジニアが民間から官公庁へ転職するチャンスも生まれる可能性があり、これからデジタル庁がどのように人材を調達するのかは注目しておきたい部分です。

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