マイクロサービスとは?今注目の開発手法を徹底解説!

マイクロサービスとは?今注目の開発手法を徹底解説!

システム開発の現場では「マイクロサービス」と呼ばれる考え方が浸透してきました。Amazonなど海外の大手サイトが採用し、日本でもLINEなど有名な企業が追従しています。これから、世界のスタンダードになりうる考え方です。

実際に導入する企業が増えてきましたが、正しく理解できている人は少ないのではないでしょうか。また、詳細について初めて学ぶ人もいるでしょう。今回はマイクロサービスの基本について解説します。

マイクロサービスの概要

マイクロサービスは、ソフトウェア開発手法の一種で、小規模なサービスを組み合わせ大規模なサービスを完成させるものです。言い換えると、大規模なシステムを細分化して、細かく開発するものをマイクロサービスと呼びます。

一般的なシステム開発との違いは、それぞれの「サービス」を個別に開発したり管理したりすることです。例えば、一般的なECサイトでは、ログインフォームからログイン後の画面まで一括で開発します。しかし、マイクロサービスではログイン機能やトップページ表示機能に分割し、それそれを開発するのです。

なお、どの程度細かく分割するかは、その時々で異なります。ここでは「細かく分割する」という認識さえ持てていれば良いでしょう。

マイクロサービスを構成する2つの要素

マイクロサービスを構成する要素は、大きくわけて2つあります。

API

細分化されたサービスは、APIとして提供される仕組みです。APIは「Application Programming Interface」の頭文字を取ったもので、サービスを外部へ提供するために実装されます。社外など第三者へ提供するイメージが強いようですが、マイクロサービスでは、APIを作成して内部で通信します。

サービスをAPIとして提供することで、利用側は内部の処理を意識する必要がなくなります。あらかじめ定められた形式でデータをやり取りすれば、それだけでサービスを利用できるようになるのです。ひとつの機能を「ひとつのサービス」と見立てて、必要なだけAPIを作成します。

APIを用いた設計とするため、柔軟なシステムの分割が可能です。将来的なシステムの拡張計画なども踏まえて、APIを設計しなければなりません。

コンテナ

マイクロサービスと親和性の高いテクノロジーとして「コンテナ」が挙げられます。OSを必要とせず、システム構築に必要な機能だけを活用できる技術で、API経由でOSを操作することも可能です。マイクロサービスは、必要最小限のOS機能やリソースだけあれば動作するため、コンテナ上で起動する設計とすることが多くあります。

特に、近年はクラウド技術が活用されるようになり、仮想サーバよりもコンテナが頻繁に使われるようになってきました。まだまだ、一般的には仮想マシンが多用される時代ではありますが、マイクロサービスにおいてはコンテナの利用が進んでいると考えておきましょう。

マイクロサービスを実装するメリット


マイクロサービスのアーキテクトとすることで、いくつものメリットを生み出します。特に注目してもらいたいものをあげると、以下のとおりです。

開発の高速化

システムをマイクロサービスにすることで、開発の高速化が期待できます。複数の開発を同時に進めることができるため、進捗を高められるのです。また、お互いの影響を最小限に抑える設計とすれば、一部分の遅延によって全体が遅延することを避けられます。

また、それぞれは小規模な開発となるため、バグの発見などトラブルを早期に発見可能です。一般的に、発見の工程が遅くなればなるほど、システム開発に大きな影響を与えます。全体の開発期間が長期化することもあるぐらいです。

しかし、マイクロサービスのように小さな単位で開発すれば、大きなトラブルが起きる前に発見から解決まで対応できます。結果的に、開発の高速化へつなげられるのです。

リスクヘッジ

システムを細かく分割することで、リスクヘッジを実現できます。システム開発からシステムの運用まで、幅広いリスクヘッジに役立つことが特徴です。

例えば、システムを細分化して開発することで、必要なスキルが固定され人材を確保しやすくなります。幅広いスキルを持つ人材の確保は、リスクを抱えやすいですが、マイクロサービスならばこれをエッジできます。

また、APIを軸としたシステムであることから、トラブル発生時の影響を最小限に抑えることが可能です。問題のAPIを利用しない部分については、日頃と同じように利用できます。運用面でもリスクヘッジができると考えて良いでしょう。

柔軟性の向上

システム全体の柔軟性を簡単に高められることがメリットです。制約が多いと、柔軟性の低いシステムになってしまいますが、マイクロサービスならこれを回避しやすくなります。

例えば、システムが細分化されているため、細かな修正が可能です。大規模なシステムは、影響範囲の大きさからまとめての修正になりがちですが、これを回避できます。また、障害が起きてしまった場合に、別のクラウドやコンテナへ移動させる負荷も最小限です。

また、必要最小限の要件さえ揃えばAPIを提供できるようになるため、OSや特定ベンダーのサービスなどへの依存を回避可能です。特に、特定のクラウド環境など、ベンダーへの依存度合いが減少する点に注目しましょう。

負荷の分散

コンテナをベースに設計されていることもあり、負荷分散に対応しています。大量のアクセスに備えて、複数のサーバでシステムを構築し、振り分けするような仕組みも容易です。

このような不可分散の実現は、マイクロサービスに限ったものではありません。近年はクラウドでスケールの自動化が当たり前になったため、多くのアーキテクチャが開発されています。マイクロサービスはその一つと考えれば良いでしょう。

当たり前にはなっていますが、不可分散の実現に長けていることはメリットに違いありません。特にコンテナとAPIを活用した負荷分散は、運用も容易であるため、魅力的な手法なのです。

コードの再利用

可能な限り機能を最小化して実装しているため、コードの再利用が可能です。認められている範囲内で、コードの再利用を実現できれば、開発効率の向上などのメリットが生まれます。

大規模なシステムになると、特定の要件に沿った開発が増えてしまいます。同じ要件が求められることはほぼなく、1回だけの開発となってしまうのです。部分的に再利用できても、新しく開発した方がスムーズに進むケースが多いでしょう。

しかし、マイクロサービスのように細分化していれば、その機能をそのまま流用できます。また、著作権などの問題をクリアできることも多く、法的にも再利用しやすいことが特徴です。管理する手間が生じますが、それでも再利用できるメリットの方が大きいと考えられます。

システム停止の回避

コンテナを活用して複数の実行環境を用意できるため、システムの停止を回避できることがメリットです。実行環境が少ないと障害によって停止する可能性がありますが、分散して多く配置することで、この問題を解決できます。

特に、マイクロサービスはシステムが細分化されているため、コスト面での負担を抑えることが可能です。スペックの高いサーバーを数多く用意するとコストが高まりますが、マイクロサービスではコストを抑えられます。必要最小限のスペックさえあれば、システムを冗長化できるようになるのです。

ただ、コンテナやサーバの数を増やしてしまうと、管理の負担は高まってしまいます。「どのサーバで何が動いているのか」を把握することが難しくなるため、その点だけ注意しましょう。

マイクロサービスを採用する注意点


マイクロサービスは魅力的なアーキテクチャですが、採用にあたっては注意点があります。こちらも理解してから、採用するかどうか決定するようにしましょう。

プロジェクトマネジメントの難易度

一般的なシステム開発とマイクロサービスの開発は考え方が異なります。そのため、マイクロサービスに適したプロジェクトマネジメントを実施しなければなりません。ただ、このようなプロジェクトマネジメントは、難易度が高いことに注意しておきましょう。

例えば、マイクロサービスの開発では、アジャイル方式が採用されることがあります。現在は事例が増えていますが、経験が少ないと苦労することの多い方式です。プロジェクトマネジメントの経験があっても、アジャイル方式の開発手法は難しく感じてしまうでしょう。

どのようなシステム開発でも、プロジェクトマネジメントは非常に重要です。マイクロサービスはその点が課題になりやすいため、アサインできる人がいるか事前に評価しておきましょう。

設計のベストプラクティスが不明瞭

マイクロサービスは比較的新しい考え方であるため、設計のベストプラクティスが限られています。これから新しくマイクロサービスを設計したいと考えても、参考になる情報が少ないのです。根本的な部分から、設計者が正しく理解し、実際の設計へ活かさなければなりません。

ベストプラクティスの事例がなければ、設計者が自分の設計内容に自信を持てないことが考えられます。特に日本は、過去の実績を重視するため、事例がないと決済者に説明しづらいこともあるでしょう。このような2次的な問題にも注意しなければなりません。

ただ、クラウドサービスなどが、マイクロサービスの構築事例を紹介するようになってきています。こちらを参考にすると、多少は課題の解決に役立つでしょう。

デバッグや結合テストが難しい

システムが細分化されすぎることで、デバックや結合テストに問題が発生しやすくなっています。APIによってそれぞれがブラックボックス化されているため、機能を検証しづらいのです。結合テストについては、それぞれのモジュールを理解している担当者が必要とされます。

また、デバッグが必要な場面においても、APIの担当者がそれぞれ協力しなければなりません。一般的に、APIはそれぞれが独自のログを出力するため、個別に確認が必要だからです。トラブルを一人の担当者が一貫して調査できないことは、マイクロサービスの課題といえます。

ただ、サービスの細分化によるメリットとデメリットは、相反する部分です。独立しているからこそ、生み出されるメリットがあるため、バランスを意識しなければなりません。

API管理が求められる

大量のAPIを作成するため、これらの管理が求められます。適切に管理しなければ、システムの動作に影響しかねません。また、セキュリティホールになってしまうことも考えられます。APIの数が多くなると管理が負担になってしまうことが注意点です。

マイクロサービスを導入する際は、台帳などを作成すればすべて管理できるでしょう。ただ、導入してからある程度の期間を経つと、メンテナンスが追いつかなくなることがあります。例えば、APIを改修したにも関わらず、それが台帳に反映されないなどです。APIの管理が形骸化してしまうケースは、非常に多いと考えましょう。

管理が追いつかないと、マイクロシステムは崩壊してしまう可能性があります。継続的な負担が生じるため、必ず認識しておくべきです。

まとめ

マイクロサービスとは、どのような開発手法であるか解説しました。システムを細分化して開発する考え方で、APIを中心に実装します。必要な機能ごとにAPIを作成することで、それそれを独立して開発できる仕組みです。

システムを細分化することで、並行して開発しやすいなどのメリットを生み出します。ただ、開発が難しくなったりプロジェクトマネジメントが煩雑になったりするため、その点は注意しなければなりません。「これからの時代はマイクロサービスを採用すれば良い」と安易には考えないようにしましょう。

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admin