マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違いは?メリット・デメリットを徹底解説!

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違いは?メリット・デメリットを徹底解説!

クラウドの設計指向として、マルチクラウドとハイブリッドクラウドと呼ばれるものがあります。最適なクラウド環境を構築するためには、ひとつのクラウドに固執しないことが重要なのです。結果として、このようなクラウドの考え方が生み出されています。

これから、クラウドを活用したいと考えているならば、マルチクラウドやハイブリッドクラウドを正しく理解することが重要です。意外と知られていないキーワードであるため、今回はそれぞれの概要とメリットやデメリット、これらの違いについて徹底的に解説します。

マルチクラウドとは


マルチクラウドとは、複数のクラウドサービスプロバイダーから提供される、異なるクラウド環境を組み合わせて利用することです。マルチクラウドによって、それぞれのクラウドサービスプロバイダーが持つ独自の技術や機能を活用できるようになります。それぞれの環境を個別に利用するため、ニーズに合わせて最適な環境にシステムを構築する方法です。

例えば、マルチクラウドを活用すると「A社の仮想サーバ」と「B社のデータ分析ツール」などのように、業務に合わせて異なるクラウドを利用できます。すべての機能が突出しているクラウドサービスプロバイダーは存在しないため、良いとこ取りを実現可能です。

ただ、マルチクラウドにすると、管理が複雑になるなどのデメリットもあります。良いとこ取りは、非常に魅力的な要素ではありますが、負担についても意識しておくことが重要です。

マルチクラウドのメリット

マルチクラウドを採用することで、いくつものメリットを生み出すことが可能です。今回は、それらの中でも特に理解してもらいたいメリットを3つピックアップして解説します。

カスタマイズが容易になる

複数のクラウドサービスプロバイダーを組み合わせるため、カスタマイズが容易になります。特に、自社独自の業務が存在するならば、それらをクラウドだけで実現しやすくなるでしょう。ひとつのクラウドサービスプロバイダーで、無理に業務を実装しようとするのではなく、業務に適したサービスをその都度選ぶようになるからです。

もし、マルチクラウドを導入しないと、クラウドサービスプロバイダーの制約を受けることになってしまうでしょう。仮に、業務に適したカスタマイズができたとしても、コストパフォーマンスが悪いなど問題が起きる可能性があります。また、そもそも、カスタマイズが難しいことすらあるでしょう。

特定のクラウドサービスプロバイダーに依存しなくて済む

マルチクラウドを採用することで、特定のクラウドサービスプロバイダーに依存しなくて済みます。特定の企業に依存すると、障害や仕様変更などの問題を抱えてしまいますが、マルチクラウドにすることで、このような問題が発生しません。

特定の企業だけを利用することは、効率よくクラウドを運用するために重要な要素ではあります。そのクラウド内では、サービスが連携しやすくなっているため、簡単に実装したり運用したりできるのです。しかし、それが別の問題を生み出すこともあり、マルチクラウドのような分散も求められます。

リスク分散できる

マルチクラウドを採用することで、サービス停止や終了などのリスクを分散できます。基本的に、マルチクラウドは、それぞれの環境を相互に接続しません。つまり、何かしらのサービスが停止したり終了しても、それ以外のクラウド環境はそのまま利用できるのです。

また、万が一サービスが終了しても、別のサービスを探しやすくなっています。同じクラウド環境に多くのシステムを構築していると、新しいクラウドサービスプロバイダーを探す作業に苦労してしまいます。しかし、一部のサービスだけであれば、新しいサービスも探しやすくなりリスク分散できるのです。

マルチクラウドのデメリット

マルチクラウドには、メリットだけではなくデメリットがあります。これらもいくつかのデメリットがありますが、ピックアップして解説します。

運用負荷が高まる

マルチクラウドを活用することで、リスク分散が可能です。ただ、複数のクラウドを運用する必要があるため、運用負荷が高まってしまいます。運用にあたって、ハードルが高まってしまうことは、マルチクラウドのデメリットだと考えましょう。

どの程度の運用負荷がかかるかは、マルチクラウドの設計に左右されます。多くのクラウドサービスプロバイダーを採用すると、それだけ運用負荷が高まるのです。カスタマイズしやすくなり、リスク分散できますが、広げれば広げるほど運用が負担になってしまうでしょう。

トータルコストが増加する

複数のクラウドサービスを契約することで、トータルコストが増加する可能性があります。例えば、クラウドサービスプロバイダーごとに基本料金がかかるため、無駄に多くの費用を支払うことになりかねないのです。

ただ、すべてのクラウドサービスプロバイダーで、基本料金がかかるわけではありません。料金プランによっては、マルチクラウドにしても、コストにインパクトを与えないこともあります。デメリットになりかねない要素だと認識するようにはしておいてください。

セキュリティ設計が難しくなる

複数のクラウドサービスを個別に利用するため、セキュリティ設計が難しくなります。例えば、データ連携のためにユーザがファイルをダウンロードすると、流出などのリスクが高まってしまうのです。マルチクラウドは、自動的にファイルなどを連携できず、これがリスクにもつながっています。

もちろん、セキュリティを高めることは可能で、運用ルールの徹底や暗号化などが考えられます。ただ、独立したシステム間のセキュリティ設計は容易ではありません。情報を連携しない場合は良いですが、何かしら連携が求められる際は、セキュリティ設計を吟味することが重要です。

ハイブリッドクラウドとは


ハイブリッドクラウドとは、複数の異なるクラウド環境を組み合わせたインフラストラクチャです。複数のパブリッククラウドを組み合わせることもあれば、プライベートクラウドを組み合わせることもあります。ハイブリッドクラウドを構築するにあたって、採用するクラウドの種類に制限はありません。

一般的に、ハイブリッドクラウドは、それぞれの環境を相互に接続します。クラウド環境は独立したものですが、専用のサービスを活用して、データ連携などを実現するのです。つまり、複数のクラウドをまとめて、ひとつのサービスのように扱います。

ハイブリッドクラウドのメリット

ハイブリッドクラウドには、いくつものメリットがあります。特に理解しておいてもらいたいことを、ピックアップして以下のとおり解説します。

負担の軽減につながる

ハイブリッドクラウドを採用することで、負担の軽減につなげられます。データの連携などが実現できるようになるため、ユーザが使いやすくなるのです。例えば、マスタ情報を、ユーザが手動でシステムに取り込むようなことは必要なくなります。

システムが相互に接続されていないと、IT化のメリットが薄れてしまうことが多いでしょう。特に各種情報の連携は、システムを導入する大きなメリットです。ハイブリッドクラウドは、それぞれが相互に接続されているため、このような恩恵を受けやすくなっています。

負荷分散しやすい

ハイブリッドクラウドのように、クラウドを存分に活用することで、負荷分散を実現しやすくなります。特に、オンプレミスとクラウド環境を組み合わせるならば、負荷分散のメリットを十分に感じられるでしょう。

例えば、オンプレミスでは、突発的なアクセスの集中に対応できません。最初から、高スペックな環境を用意する選択肢もありますが、あまり良い選択ではないでしょう。無駄なコストが生じてしまうため、このようなアクセスの集中を意識した設計はできないのです。

それに対して、ハイブリッドクラウドを導入すれば、必要に応じてクラウド環境での負荷分散ができます。クラウド環境は、スケーラビリティの高いサービスが多く提供されているため、突発的なアクセスにも対応可能です。オンプレミスではできないことが、ハイブリッドクラウドならばできるという点で、メリットがあります。

セキュリティが向上する

必要な情報をシステム間で連携できるため、セキュリティが高まります。人間が情報連携すると、セキュリティが低下しがちですが、そのような問題を解決できるのです。

また、システム間の通信は、暗号化できるようになっています。例えば、SSL通信を利用することによって、情報の安全性を担保できるのです。複数のクラウドを接続する際は、インターネットを経由しますが、暗号化によってセキュリティは高められるようになっています。

マルチクラウドのデメリット

マルチクラウドにはデメリットがあるため、これらについてもピックアップして解説します。

設計難易度が高い

複数のクラウドサービスプロバイダーを接続する必要があり、設計難易度が高まってしまいます。それぞれのクラウドサービスプロバイダーは、相互に接続することを前提としていないため、ユーザが設計する必要があるのです。

また、設計に誤りを含んでいると、それがセキュリティホールになってしまうかもしれません。これは、マルチクラウドを採用する最大のデメリットともいえる部分です。すべてのクラウドサービスプロバイダを理解していないと、適切な設計はできないでしょう。

さらに、初回の設計だけではなく、継続的な利用にあたっての設計も重要です。クラウドサービスプロバイダーは、新しいサービスをリリースするため、必要に応じて切り替えなければなりません。このような作業が、マルチクラウドの設計全体に影響を与えることもあるのです。

運用しづらい

上記で触れたとおり、マルチクラウドには設計の難易度が高いというデメリットがあります。これは、運用にも引き継がれてしまい、運用しづらいというデメリットを生み出すのです。

例えば、マルチクラウドを運用するためには、それぞれを理解している担当者が求められます。「AWSは理解しているがAzureは利用できない」という担当者では、運用が難しいのです。この点で、運用しづらいと表現せざるをえません。

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの違い

最後に、マルチクラウドとハイブリッドクラウドには、どのような違いがあるのかまとめておきましょう。

環境

必要とされる環境に違いがあります。マルチクラウドは、パブリッククラウドだけで構築されていることが多いですが、ハイブリッドクラウドはオンプレミスも含むことが多いのです。

ハイブリッドクラウドは、複数の環境を専用のサービスを利用して接続します。接続先には、オンプレミスが含まれていることが大半であるため、ハイブリッドクラウドといえばオンプレミスも含む傾向にあるのです。

マルチクラウドは、あくまでもクラウドの選択肢が多い状況であり、ハイブリッドクラウドのようにオンプレミスは必要とされません。

独立性

マルチクラウドとハイブリッドクラウドは、独立性が大きく異なります。マルチクラウドは、それぞれが独立した環境ですが、ハイブリッドクラウドは全体でひとつの環境です。

独立性の違いは、障害などが発生した際の影響に関係します。例えば、マルチクラウドは障害が起きても他に影響しませんが、ハイブリッドクラウドは他に影響する可能性があるのです。全体としての可用性を大きく左右する違いだと認識しておきましょう。

コスト

必要となる環境が変化することで、コストに違いが生じる可能性があります。特に、マルチクラウドは多くの環境を契約する傾向にあり、ランニングコストが高くなりがちです。デメリットでも解説したとおり、注意しておくことが求められます。

もちろん、ハイブリッドクラウドでも、コストは高くなってしまうかもしれません。複数のクラウドサービスプロバイダーを接続すると、コストが増加する原因となってしまいます。マルチクラウドが、一概に悪いというわけではないのです。

まとめ

マルチクラウドとハイブリッドクラウドの概要や違いについて解説しました。どちらも、複数のクラウド環境を組み合わせる考え方ではありますが、根本的に違った部分があります。誤って理解せず、正しく使い分けるようにしましょう。

また、それぞれにメリットやデメリットがあるため、どちらが良いとは一概に言い切れません。これらの違いを理解して、最善の選択肢を選べるようになることが重要です。

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admin