今さら聞けない!オーケストレーションと自動化の違いを解説!

今さら聞けない!オーケストレーションと自動化の違いを解説!

システム運用を効率化するための方法として「オーケストレーション」と呼ばれるものが活用されます。DevOpsが広がってきたことによって、オーケストレーションも同時に利用されるようになってきました。ここ数年で、積極的に利用されるようになったツールといえるでしょう。

DevOps自体がまだ新しい考え方であることから、オーケストレーションも新しいツールに分類されるものです。今回は、オーケストレーションとはどのようなものであり、同じような意味合いで利用される「自動化」とは、どのような違いがあるのか解説します。

オーケストレーションと自動化


オーケストレーションと自動化は、意味合いの異なったキーワードです。それぞれ、どのような意味合いであるのかまずは理解を深めていきましょう。

オーケストレーションの概要

オーケストレーションは、複数のシステムやサービス、ミドルウェア、アプリケーションなどを一元管理することを指します。それぞれを手動で操作することは、非効率的かつ誤操作のリスクが高まるため、ツールを利用して一元管理するのです。

例えば、大規模なクラウド環境では多くのサービスを起動して、それぞれを細かく設定しなければなりません。設定項目が多く、中には複雑なものも含まれるため、人力で対応することは望ましくないのです。このような場面において、誤操作なく効率的に進めるため、オーケストレーションが採用されます。

また、ツールを用いることで、それぞれのコンポーネントを一元的かつシームレスに制御できるようになります。例えば、サーバーの起動順序や、ネットワークの設定、データベースの接続などを自動化できるのです。オーケストレーションを利用することで、効率的なリソースの活用やデプロイの高速化、柔軟なスケーリングなどにも対応できます。

自動化の概要

自動化とは、人間の介入を最小限に抑え、システムやソフトウェアによって特定のタスクやプロセスを実行する行為を指します。日常業務や定期的に発生する作業、特定の条件を満たす場合のみに生じるトラブルまで、幅広いものが自動化の対象です。

このような自動化が必要とされる背景には、作業時間の短縮やミスの削減が挙げられます。一般的に、人間はコンピューターよりも作業に時間を要し、ミスを起こす可能性も高い立場です。そのため、コンピューターに任せられることは任せてしまうことで、短時間かつミスなく作業を進める自動化が生まれました。

なお、本来の目的は生産性の向上ですが、現在はIT環境の変化に対応するためのツールとしても用いられます。例えば、新しいソフトウェアのリリースやシステムのアップデートなど、変更が頻繁に発生する状況下で自動的に処理してくれるのです。対応が遅れると、攻撃の対象となってしまうかもしれませんが、自動化によりスムーズな対応を実現できればこれを防げます。

オーケストレーションと自動化の機能的な違い

オーケストレーションと自動化には機能的な違いがあるため、どのような違いであるのか確認していきましょう。

目的

オーケストレーションは、システム内のコンポーネントやサービスが、相互に動作することを重視します。単純にタスクを実行するだけではなく、それぞれのコンポーネント間で連携したり依存関係を守ったりするように設計されているのです。つまり、システム全体が最適に動作することを目的としています。

自動化はオーケストレーションとは違い、手動での操作や監視を不要にすることを重視したものです。事前に定義された手順やルールに基づいてタスクを自動的に実行することを目的としています。オーケストレーションのようにコンポーネント間の依存性などは考慮せず、事前に処理された通りにしか動作しません。

スコープ

オーケストレーションのスコープは、システム全体だといえます。個々のサービスやタスクだけを管理するのではなく、それらの依存関係なども考慮しなければならないからです。また、それぞれが相互にどのような影響を及ぼすか、あるいは最適に処理を進めるためにはどのような手順や条件が必要であるのかを管理することも含みます。

しかし、自動化のスコープは特定のタスクやプロセスのみです。例えば、日々のメール送付やデータの転記、データベースのバックアップなどが考えられます。オーケストレーションとは違い相互の影響などを意識することはなく、自動化として定義された部分だけをスコープとするのです。

コンポーネントの関連性

コンポーネントの関連性を意識した実装になっているか、という観点で違いがあります。オーケストレーションは複雑なシステム環境においてコンポーネントの関連性を重視しますが、自動化では全体の関連性ではなく、特定のタスク間の関連性だけが重視されるのです。

例えば、オーケストレーションはシステム全体の関連性を把握して、全体として一環とした機能や性能を提供することを保証してくれます。しかし、自動化はタスクの具体的な手順や条件の実行を保証するものであり、システム全体の関連性よりも狭い部分を保証範囲としているという理解が可能です。

複雑性

オーケストレーションは、コンポーネント間の関係を管理することが多く、複雑性が高いツールです。特に、大規模なシステムやマイクロサービスのように分散された環境では、より複雑なオーケストレーションになってしまうでしょう。

しかし、自動化は特定のタスクやプロセスに限定されるため、一概に複雑性が高いとはいえません。内容によっては、複雑性が高くなると考えられますが、単純な内容となることもあるでしょう。複雑なワークフローや多くの依存関係が生じる場合のみ、複雑性が高まるのです。

オーケストレーションと自動化の運用的な違い

オーケストレーションと自動化には運用的な違いもあります。上記の違いと合わせて、運用面の違いも理解しておきましょう。

利用ツール

オーケストレーションと自動化では、運用時に利用するツールに違いがあります。

まず、オーケストレーションのツール例には、KubernetesやDocker Swarm、Apache Mesosなどのコンテナオーケストレーションツールや、AWSやAzure、GCPなどクラウドプロバイダが提供するサービスなどがあります。これらのツールには、複数のコンポーネントを一元管理する機能が備わっていて、適切なリソースの割当やスケーリングを実現してくれます。

また、自動化ツールには、UiPathなどのワークフロー自動化ツールやCI/CDツールがあるでしょう。これらは特定のタスクやワークフローを自動的に実行するための設定やスクリプトを管理・実行してくれるものです。

スキルセット

オーケストレーションを効果的に運用するためには、システム全体の構造や動作、各コンポーネント間の関係性、リソースの管理と最適化など、幅広い知識やスキルが必要です。運用の担当者には「異なるサービスやリソースがどのように相互作用するか」「どのように最適化や調整するか」などの理解が求められます。

それに対して、自動化では特定のタスクやプロセスについての知識や経験が必要です。また、自動化ツールの使用方法だけでなく、自動化対象の具体的な動作や仕様に関するスキルも必要となるでしょう。オーケストレーションよりも、具体的なスキルが必要となるのです。

オーケストレーションの種類


オーケストレーションの種類は、目的や使用するテクノロジーに基づいて分類されます。要件や課題に応じて、適切なオーケストレーションツールや手法を選択することが重要です。具体的には以下の種類が挙げられます。

コンテナオーケストレーション

コンテナ技術は近年のアプリケーションの開発・デプロイに欠かせない存在です。それらを一元管理するツールとして、コンテナオーケストレーションが開発され、これらのコンテナのライフサイクルを管理できるようになりました。

例えば、KubernetesDocker Swarmのようなツールは、コンテナのスケーリング、ローリングアップデート、ネットワークの設定などを効率的に実現してくれます。コンテナをオーケストレーションで管理することにより、高可用性や耐障害性を持つアプリケーションの展開が容易になるのです。

ワークフローオーケストレーション

複雑なデータ処理やバッチジョブの連携をスムーズに実現するためのオーケストレーションです。例えば、Apache Airflowは、タスク間の依存関係を視覚的に示したり処理したりできます。また「シーケンス」と呼ばれるまとまりで、処理を制御したり監視したりすることも可能です。

ワークフローを監視することによって、コンピュータのリソースを効率よく管理し、エラーハンドリングまで実現できるようになります。人間が管理すると負担が生じますが、オーケストレーションを活用すれば低負荷で運用が可能です。

インフラストラクチャオーケストレーション

環境のプロビジョニングや構成管理の自動化を実現するためのツールです。例えば、クラウド環境ではAWS CloudFormationと呼ばれるものがあり、コードでインフラを定義して、デプロイしたり修正したりできます。

コードで定義しておくことによって、一貫性や再現性を保った環境のデプロイが可能です。手動でのデプロイにはエラーが含まれる可能性がありますが、コードをレビューしておくとミスは発生しません。結果、スピーディな開発・デプロイを実現できるのです。

ネットワークオーケストレーション

ネットワークデバイスやトポロジーの自動設定・管理にも、オーケストレーションが利用されます。ツールに左右される部分はありますが、ネットワークの変更を集中的に管理することで、一貫性と効率性を発揮してくれるのです。

変更をひとつのツールで自動的に管理するため、エンジニアは必要最低限の手続きでネットワークについて把握できます。例えば、ネットワークの変更について遡ったりトラブルシューティングを迅速におこなったりすることが可能です。

サービスオーケストレーション

複数のマイクロサービスやAPIを調整・統合して、連携する際に利用されるオーケストレーションです。また、純粋なシステム間の連携だけではなく「ServiceNow」のように人間の手を介して、異なるサービス間を接続するものも存在します。

部分的には人間が介在しますが、全体を管理できるため、データフローやエラーハンドリングの効率化につなげることが可能です。その結果、ユーザに一貫したサービスを提供できることも魅力といえます。

データオーケストレーション

システムに保存されるデータの収集、変換、転送などを自動化したり最適化したりするオーケストレーションです。データのフローを視覚的に設計できるようになっているため、異なるデータソースからのデータを効率的に処理し、統合までできます。

近年は、大量のデータを効率よく管理する「データガバナンス」が重要視されています。これを実現するために、データオーケストレーションが役立つと理解しても良いでしょう。

まとめ

オーケストレーションと自動化の違いについて解説しました。 目的が根本的に異なるテクノロジーであるため、導入に際してはそれぞれの特徴や違いを適切に理解することが重要です。誤った理解を持っていると、それぞれの恩恵を十分に受けられない状態に陥ってしまいます。

また、それぞれの運用には専門的な知識が必要になるため、導入にあたってはある程度の準備が必要だと考えましょう。近年は数多くのツールが提供されていて、比較的簡単に利用できるようにはなっています。ただ、オーケストレーションや自動化は設計が重要な仕組みであるため、ツールを理解して適切に設計するスキルが必要です。

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admin