SCCMエンジニアとは?需要と将来性を解説
近年は耳にする機会が減ってしまいましたが、SCCMエンジニアと呼ばれる職種があります。特定のシステムだけを運用するエンジニアであるため、知らない人が多くともやむを得ません。
SCCMエンジニアは今でも活躍している職種ではありますが、システムのバージョンアップにともないMECMエンジニアに変化しつつあります。今回はSCCMエンジニアに絞って、どのような役割であり、需要や将来性はどうなっているのか解説します。
SCCMエンジニアとはなにか
SCCMエンジニアといわれてもどのような職種であるのかイメージできない人は多いはずです。まずはSCCMエンジニアとはなにかについて解説します。
そもそもSCCMとは
SCCMは、「System Center Configuration Manager」の略で、Microsoft社が提供するエンタープライズ向けのPC管理ツールです。SCCMを使用すると、WindowsPCやサーバーのデプロイ、ソフトウェアのインストール・更新、パッチ適用、セキュリティ設定の管理、インベントリの収集、レポートの作成など、運用担当者に求められる業務を効率的かつ一元的に実施できます。
また、SCCMは「クライアント/サーバーアーキテクチャ」を採用しているため、セキュリティや拡張性に優れている点が特徴です。また、Active DirectoryやGroup Policyなどの既存のMicrosoftの製品やサービスと組み合わせて活用できるため、多くの企業で導入されています。
SCCMエンジニアとは
SCCMエンジニアは、Microsoft社のSCCMの導入や運用、活用などを担当するエンジニアです。WindowsOSが搭載されているコンピューターの管理と監視を担当すると考えれば良いでしょう。
上記でも説明した通り、SCCMはWindowsOSのパソコンや各種端末などを幅広く管理するためのツールです。そのため、SCCMエンジニアはSCCMを駆使して、大規模なオペレーティングシステムの展開、ソフトウェアの配布、パッチ適用、セキュリティ設定の管理、ハードウェアとソフトウェアのインベントリの取得などを一括して担います。
また、SCCMエンジニアはWindowsOSを適切に管理する役割であり、Windowsについての詳しい知識が求められます。また、トラブルが発生した際に備えて、セキュリティやネットワーキング、ストレージなどに関連する知識も習得しなければなりません。部分的には社内のインフラ担当者と重なりますが、比較的、Windowsに特化した業務を担当すると考えましょう。
SCCMエンジニアに求められる役割
SCCMエンジニアには何が求められるのかについて解説します。
各デバイスの構成情報収集
SCCMエンジニアはSCCMを活用して各デバイスの構成情報を収集します。ハードウェアとソフトウェアのインベントリ、パッチ管理、ソフトウェアの展開、アプリケーションの監視などを一元管理できるようになるため、ルールに逸脱していないかを定期的に評価しなければなりません。
基本的にはSCCMにすべての情報が収集されているため、SCCMエンジニアはその内容を確認するだけです。事前の設定は必要となりますが、複雑な業務ではないと考えましょう。Excelファイルへのアウトプットも可能であり、一覧化して状況を把握します。
また、そもそもSCCMは構成情報の収集を自動化することが可能です。事前にスケジューリングしておけば情報を収集してくれるため、SCCMエンジニアは内容を評価するだけで済みます。
ソフトウェアの利用状況把握
SCCMは各デバイスでどのソフトウェアが利用されているのか状況を把握する機能を有しています。「ソフトウェアのインベントリ」と呼ばれるもので、事前の設定が必要です。各デバイスへの設定など、下準備からSCCMエンジニアが担当します。
事前の設定を済ませておけば、SCCMのコンソールからソフトウェアの利用状況レポートを出力可能です。ソフトウェアのバージョン、サイズ、インストールされたコンピューターの数、最終使用日時などが把握できるため、SCCMエンジニアは不審な動きがないか評価します。例えば、コンプライアンス違反となるソフトウェアやウイルスと思われるアプリがインストールされていないか確認しなければなりません。
なお、SCCMでは文字と数字のレポートしか作成できませんが、これをPowerBIに連携することで視覚的なアウトプットも作成できます。時にはこのようなアウトプット作成までSCCMエンジニアが対応範囲となるのです。
各更新プログラムの配布
各更新プログラムはSCCMから配布できるようになっています。各デバイスが個別に更新プログラムを適用することは手間であるため、SCCMエンジニアが一括で配布するのです。
SCCMから更新プログラムを配布するためには、「更新対象のグループ」や「更新するタイミング」などを設定しなければなりません。SCCMエンジニアは事前にこれらを検討し、必要に応じて各デバイスの保有者に展開します。事前に設定が必要となることもあるため、周知しなければなりません。
事前の設定さえ完了していれば、SCCMエンジニアがコンソールから更新プログラムの配布を実施します。一斉に更新プログラムが展開されるため、社内ネットワークの負荷なども考慮しながら対応することが求められるでしょう。
SQL Serverを活用したレポートの作成
各デバイスを管理するためにSCCMは利用されますが、管理の一環として多くの情報を収集しています。これらの情報を活用するために、SCCMは分析やレポートの作成にも対応しているのです。ただ、十分な分析とハイレベルなレポート作成にはSQL Serverの知識も求められます。
特にレポートの作成前には「SQL Server Reporting Services」と呼ばれるものを有効化しなければなりません。ただ、これはデータベースの設定であるため、SCCMエンジニアではなくデータベースエンジニアが担当する範囲です。SCCMエンジニアがレポートを作成したいならば、事前に連携してデータベースを設定してもらう必要があります。
また、レポートを出力するためにはSCCMの設定も必要で、こちらを誤るとデータベースに接続できない状況に陥りかねません。SCCMエンジニアしか対応できない業務ではありますが、リスクがあるため導入しないケースも多少ですが見受けられます。
クライアントコンピュータの遠隔操作
SCCMのコンソールからクライアントコンピュータを遠隔操作できます。何かしら遠隔地でトラブルが発生している場合は、SCCMエンジニアが遠隔操作して解決しなければなりません。
また、企業のポリシーによってはソフトウェアのインストールを管理者に絞っていることがあります。このような状況下では、SCCMエンジニアが管理者権限でクライアントコンピュータを遠隔操作して、ソフトウェアインストールなども担当業務です。
なお、遠隔操作は一方的にできるものではなく、クライアントコンピュータの利用者が操作のタイミングで同意する必要があります。SCCMエンジニアは利用者にその旨を伝えておくなど、事前のコミュニケーションが必要です。
モバイルデバイスの管理
基本的にSCCMエンジニアはSCCMを利用してWindowsデバイスの管理を担当します。ただ、モバイルデバイスの管理にも利用することができるため、こちらの管理も担当範囲です。
モバイルデバイスを管理するときもWindowsデバイスと同様に事前の設定が求められます。作業としては似た部分が多いですが、Wi-Fiの設定などモバイルデバイス独自の部分もあるため、設計から実際のSCCMの設定までを担当しなければなりません。
ただ、同じような管理はできるものの、モバイルデバイスとWindowsデバイスにはいくつもの違いがあります。SCCMエンジニアでモバイルデバイスも扱うことになったならば、違いを特に細かく理解することが重要です。
SCCMエンジニアの需要
SCCMエンジニアの需要は徐々に低下しています。まずはその状況について理解を深めておきましょう。
システムのバージョンアップに伴い需要は低下
現在は、MECM(Microsoft Endpoint Manager)と呼ばれるSCCMの後継製品が販売されています。SCCMをこのMECMにバージョンアップする企業が増えてきたことで、SCCMエンジニアの需要は低下しているのです。
SCCMとMECMにはいくつもの違いがあり、クラウドベースのプラットフォームであるかどうかなどが挙げられます。MECMはSCCMと比較するとモバイルデバイス管理に強化され、AndroidやiOSデバイスの管理にも対応可能です。そのため、SCCMからMECMへの切り替えが続いています。
切り替えが増えることによってSCCMの導入が減ってしまい、SCCMエンジニアの需要も低下している状況です。後ほどご説明する将来性を踏まえた対応が求められます。
一定の利用者がいるため案件は存在する
SCCMはMECMにバージョンアップされていますが、現時点でもSCCMを利用している企業が多くあります。切り替えるためにはまとまったコストが生じてしまうため、MECMが魅力的とはいえどもSCCMを使い続けているのです。
そのような企業が一定数あるため、SCCMエンジニアの仕事もある程度は存在しています。SCCMエンジニアが完全に仕事を失うのは、まだまだ先の話になると考えて良いでしょう。新規導入はありませんが、カスタマイズ案件などは継続的に発生します。
SCCMからMECMに切り替えることで将来性は明るくなる
SCCMエンジニアについて解説しましたが、現在はMECMが普及しています。そのため、SCCMエンジニアが将来性を明るくするためには、MECMへスキルを切り替えることが重要です。
活躍するためには新製品への対応が必須
SCCMエンジニアの将来性を明るくするためには、新製品であるMECMへの対応が必須だと考えましょう。自分自身がスキルアップしなければ、参画できる案件の数が減ってしまいます。多くの案件に参画するためにも、SCCMではなくMECMのスキルも習得すべきです。
また、SCCMからMECMに移行する場合は、Microsoft社が移行ツールを提供しています。具体的には、SCCMからMECMに移行するための「Configuration Manager コンソール」で移行できるのです。SCCMエンジニアはSCCMとMECMの両方を理解しているため、このような移行ツールを使いこなせるようになると将来性を明るくできるでしょう。
これからの導入はMECMのみ
これからの導入はSCCMではなくMECMのみです。そのため、SCCMエンジニアがさらに活躍するためには、MECMを導入できるように以下のようなスキルを習得しておきましょう。
- Microsoft Endpoint Configuration Managerインストールウィザード
- データベース
- 環境設計
- 運用設計
これらのスキルを習得しておくことで、SCCMの経験を活かしてMECMの導入にも対応できるようになり、将来性をより明るくできるはずです。
まとめ
Microsoft社のSCCMを扱うSCCMエンジニアについて解説しました。メジャーなエンジニアとはいえませんが、SCCMには多くの機能があり、これを使いこなせるエンジニアが求められています。特にSCCMは大企業で利用される傾向にあるため、専用のエンジニアが必要なのです。
ただ、現在はSCCMからMECMと呼ばれる製品にバージョンアップされています。そのため、求められるエンジニアもSCCMエンジニアからMECMエンジニアに変化している状況です。SCCMエンジニアの需要もありますが、需要を高めて将来性を明るくするためにはMECMのスキルを習得することが求められます。