サーバのクラスタ構成とは|特徴やメリット・デメリットを解説!

サーバのクラスタ構成とは|特徴やメリット・デメリットを解説!

サーバを効果的に運用するための方法として「クラスタ構成(クラスタリング構成)」と呼ばれるものがあります。複数のサーバを組み合わせてサーバを構築するもので、可用性が高まるなどの効果を発揮するものです。

古くからある手法であり、今でも活用されていますが、具体的な考え方について理解できていない人はまだまだいるでしょう。今回は、サーバのクラスタ構成を解説し、採用するメリットやデメリットについても触れていきます。

サーバのクラスタ構成とは何か

サーバのクラスタ構成とは、複数のサーバを連携させて、一つのシステムとして動作させる設計や手法を指します。クラスタ構成を採用することで、可用性の向上や負荷分散などを実現するのです。

クラスタ構成にはいくつかの考え方があり、一般的に利用されるものは「負荷分散クラスタ」と呼ばれるものです。これは、サーバに極端な負荷がかかることを避けるために、複数のサーバを用いて負荷を分散させる仕組みです。ロードバランサーと呼ばれる技術と組み合わせてクラスタ構成を実現します。

また、上記以外にも「HAクラスタ」と呼ばれる、可用性を高める仕組みもあります。こちらは実行中の「アクティブ」と待機中の「スタンバイ」それぞれのサーバを用意して、予期せぬ停止などに備えるものです。負荷分散クラスタとは異なり、サービスを安定して提供することなどを目的としています。

クラスタ構成の特徴


クラスタ構成には重要な特徴がいくつもあるため、それらの中で実装前に理解しておきたいことをそれぞれ解説します。

冗長性

冗長性は、サーバをクラスタ構成にする最も重要な特性と言って良いでしょう。複数のサーバなどから構成されているため、特定のハードウェアやソフトウェアにトラブルが起きても、システム全体が停止することはありません。むしろ正常な動作を続け、利用者からはトラブルが起きていることを認識されずにすみます。

一般的に、サーバのクラスタ構成では複数のサーバが同じデータにアクセスして同じ処理を実現することが可能です。そのため、何かしらのサーバやソフトウェアでトラブルが生じても、他のサーバへ転送することによって、問題がなかったかのように処理を続けられます。

なお、複数のサーバで構築するだけではこのような機能は実現できず、クラスタリングに対応した設定が必要です。必要に応じてソフトウェアでの対応も求められるという点は正しく理解しておきましょう。

スケーラビリティ

冗長化と同様に、スケーラビリティの実現もサーバのクラスタ構成による重要な特徴です。システムのリソースを柔軟に変更できる仕組みがあるため、複数のシステムやサービスを運用していても、リソースを無駄にすることなく利用できます。

例えば、システムをバージョンアップする際に、今までよりも少し高いスペックが求められることがあるでしょう。しかし、そのためにサーバを更新していては、購入費用や運用費用が割高になってしまいます。そこで、サーバをクラスタ構成とすることで、システムの処理能力やストレージ容量を水平にスケールアウトできるのです。

また、クラウドサービスを利用していれば、アクセスの増減によるスケールの変更ができます。例えば、月末にだけアクセスが増加するシステムであれば、このタイミングだけスケールアップできるのです。事前にクラスタ構成を敷いておけば、スケールアウトもスケールアップも対応しやすくなります。

負荷分散

サーバのクラスタ構成を採用すると、システムへのリクエストやワークロードを複数のサーバ間へ分散できます。これにより、サーバの負荷を均一にさせることが可能となり、過負荷やボトルネックの発生を最小限に抑えられるのです。

どのような環境でも効果を発揮できますが、特にWebサービスや大規模なデータベースで負荷分散の効果を発揮します。大量のリクエストが同時に発生するようなシステムでは、クラスタ構成による負荷分散が特に求められていると考えて良いでしょう。

また、上記のスケーラビリティに関連する部分でもありますが、負荷分散の特徴があることで極端にスペックの高いサーバを用意する必要がありません。複数台のサーバでそれぞれ処理するようにすれば、サーバを並のスペックで用意しても高スペックと同様の処理を実現できます。

自動復旧の実現

負荷分散を含めたクラスタ構成を用意しておくことで、故障してしまった際に自動的な復旧が可能です。本来、サーバが物理的に故障したりデータベースが論理的に破損したりした場合は、エンジニアが対応しなければなりません。しかし、クラスタ構成の環境であれば、自動的に復旧して今までと同じように利用できます。

これは冗長性・可用性につながる部分ですが、クラスタ構成には「トラブル発生時は自動的に他の健全なノードに役割を移動する」という機能があります。エンジニアが操作する必要はなく、自動的にトラブルが生じていることを検知して、問題のないノードに切り替えてくれるのです。これはサービスを継続的に提供するために非常に大きな意味を持ちます。

ただ、自動復旧はあくまでも健全なノードが存在している場合のみです。例えば、非常に強力なサイバー攻撃により大半のサーバが破損してしまうと、自動復旧できないことが考えられます。また、物理的に復旧できる機能ではないため、最終的にはエンジニアが修理しなければなりません。

クラスタ構成を採用するメリット


サーバのクラスタ構成にはいくつものメリットがあるため、特に重要なものを以下の通り解説します。

高可用性の担保

サーバをクラスタ構成とすることで、高可用性を担保できるようになります。クラスタ構成の中でも特に重要なメリットであるため、最初に理解しておいた方が良いでしょう。高可用性とは、サービスの停止を最小限に抑え、可能な限り利用者へ提供し続けることを指します。

例えば、オンラインビジネスや金融機関のようなサービスは、24時間365日の運用が求められるでしょう。もし、サービスが中断されるようなことがあれば、大きな損失を被ったり社会的信用力の減少につながったりしかねません。これを防ぐために、サーバのクラスタ構成が役立ちます。

事前にクラスタ構成としておけば、仮に一つのサーバやノードが故障しても、他のノードがカバーできます。利用者から見ると故障に気づかないことも多く、サービス停止による悪影響を最小限に抑えられるのです。

負荷分散

システムやサービスを多くの人が同時に利用すると、必然的に負荷が高まってしまいます。一定以上の負荷がかかってしまうと、サービス全体が停止するような状態に陥りかねません。しかし、負荷分散に対応したクラスタ構成としておけば、大量の通信が発生しても効率よく処理することが可能です。

例えば、通販サイトなど商品の発売と同時にアクセスが殺到するならば、適切な負荷分散をしなければなりません。クラスタ構成で複数のサーバにて対応できるようにしておけば、通販サイト全体がダウンするような状態は防げるのです。

なお、負荷分散のシナリオは複数考えられますが、リクエストやワークロードを複数のノードやサーバに均等に振り分けることが多いでしょう。ただ、メインとなる強靭なサーバを用意しておいて、他のサーバを補助的な意味合いで利用することもあります。

運用の効率化

クラスタ構成で複数のサーバを活用することで、運用を効率化できることがメリットです。例えば、システムのメンテナンスやアップグレード、サーバへのパッチ適用などを効率よく実施できます。

クラスタ構成ではないシステムでは、このような作業にあたってサービスを停止しなければなりません。サーバが1台しか存在しないならば、作業中は停止するしかないのです。これでは、サービスの利用者に悪影響が出てしまうかもしれません。

しかし、複数のサーバから構成しておけば「起動しているサーバ」と「停止しているサーバ」を同時に用意できます。段階的に作業を続けていくことによって、完全なサービス停止を避けながら、メンテナンスやアップグレードなどを実施できるのです。

クラスタ構成を採用するデメリット

クラスタ構成の採用には多くのメリットがありますが、以下のとおりデメリットもあるため注意しておきましょう。

運用の複雑さ

サーバをクラスタ構成にすることで、サーバ運用が複雑になってしまうことが考えられます。数が多くなればなるほど、デメリットが大きくなってしまうため注意しましょう。

例えば、複数のサーバを同時に管理することになるため、一台で運用する時よりも多くの手間が発生してしまうのです。パッチ適用が必要になった際は、すべてのサーバに同じ作業を繰り返し実施することが求められます。また、クラスタリングするために設定したりツールを管理したりすることが必要です。

他にも、クラスタ構成を実現するためには、ロードバランサーを導入することがあります。新しい機器を導入するとなると、それらを管理する必要が生じるため、その点でも運用の複雑さが高まってしまうのです。

コストの増加

多くのサーバやロードバランサーなどを運用することになるため、コストが増加することがデメリットです。台数が多くなれば、それだけコストが高まってしまいます。

まず、ネットワーク機器を導入するためのイニシャルコストが必要です。サーバを購入するとなると、まとまった出費が発生するため、注意しなければなりません。想定外のコストが発生することも考えられます。

また、継続的にクラスタ構成を運用するためには、ランニングコストの支払いも必要です。例えば、サーバをデータセンターに預けるならば、この費用を支払い続けることが求められます。

なお、コストはオンプレミスではなく、クラウドで運用することによって軽減できるかもしれません。もし、コスト面の課題が大きいのであれば、クラウドでクラスタ構成を構築することを考えてみましょう。

クラウドは内部的にクラスタ構成のこともある

AWSをはじめとしたパブリッククラウドは、内部的にクラスタ構成が採用されていると考えられます。サービスレベルアグリーメント(SLA)では、非常に高い可用性を担保しているため、これを実現するためにクラスタ構成を採用しているでしょう。ユーザー側がクラスタ構成の設定を取らなくとも、クラスタ構成によって障害などに備えているはずです。

そのため、クラウドサービスを利用する際は、サービスレベルアグリーメントを確認し、クラスタ構成を採用するか考えた方が良いでしょう。標準で提供されているシステムで十分ならば、自身でクラスタ構成を組まなくとも、安定したサービス提供を実現できます。クラスタ構成にはコストが生じてしまうため、無駄なコストを発生させないで済むことはメリットです。

ただ、クラウドサービスが提供するクラスタ構成は「可用性の向上」に限られています。同じくクラスタ構成の特徴である「負荷分散」は自分で構築するしかありません。同じクラスタ構成とはいえども、この部分は大きく異なるため、必ず注意するようにしてください。

まとめ

サーバのクラスタ構成について解説しました。複数のサーバを組み合わせて、1台のサーバであるかのように利用する技術で、多くの効果を生み出します。特に、障害に強くなるなど、可用性が高まることはメリットです。

ただ、サーバのクラスタ構成には、複数のサーバを用意する必要があり、コストが高まってしまうデメリットがあります。サーバが増えれば増えるほど、メリットが増えますが、それと同時にデメリットも増えるのです。相反する部分であるため、両面から評価しなければなりません。

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admin