今さら聞けない!VPSの仕組みやメリット・デメリットを解説

今さら聞けない!VPSの仕組みやメリット・デメリットを解説

サーバーを提供してもらうサービスとして、VPS(Virtual Private Server)と呼ばれるものがあります。古くから利用されている技術であるため、すでに利用している人も多いでしょう。VPSに対応したサービスベンダーも数多くあります。

今となっては当たり前に利用されていますが、具体的に理解できていない人もいるのではないでしょうか。今回は、今さらVPSについて聞けない人に向けて、基本的な仕組みからメリットやデメリットを解説します。

VPS(仮想専用サーバー)とは

VPSは「Virtual Private Server」の頭文字を取ったもので、日本語訳すると仮想専用サーバーです。ここでの仮想とは、仮想化技術を意味していて、VPSは仮想化によって構築されたサーバーを指します。1台の物理サーバーを複数の仮想サーバーに分割し、それぞれを提供してもらえると考えましょう。

仮想化が普及する前は、物理的にサーバーを購入して、そこにソフトウェアをインストールする必要がありました。導入までにお金と時間がかかり、非常にハードルの高いものだったのです。しかし、仮想化によりVPSが生まれたことで、簡単にサーバーを用意できるようになりました。

なお、仮想化は幅広く普及しているため、社内で物理的なサーバーを購入し、そこで仮想サーバーを運用するケースは多々見られます。ただ、このようなサーバーについては、基本的にはVPSと呼びません。VPSは、サービスを提供するベンダーが、使用料を取って貸し出す仮想サーバーを指します。

VPSにみられる4つのメリット


VPSには多くのメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、それぞれ順番に解説します。

OSが独立している

VPSは、それぞれのサーバーでOSが独立していることが特徴です。仮想的に独立したサーバーを作成する技術であるため、その上で動作するOSも独立したものになります。物理的なサーバーと異なったOSを運用することも可能です。

OSが独立していることから、同じ物理サーバーの中に複数の環境を同時に構築できます。例えば、LinuxとWindowsのサーバーを用意して、Webサーバーとデータベースサーバーとして利用できるのです。今までは、OSが違う物理サーバーを用意する必要がありましたが、VPSならばその必要はありません。

ただ、サービスによっては、最初からOSがインストールされています。そのため、OSが自由に選択できることではなく、独立していることがメリットだと理解しましょう。

サーバーのカスタマイズ性が高い

多くの権限を与えられるため、サーバーのカスタマイズ性が高いことが特徴です。共用サーバーでは、権限の都合で操作できない部分でも、VPSならば操作できる可能性があります。結果、自分が必要とするサーバーを構築しやすくなるのです。

例えば、Windowsの管理者権限を与えられることで、不要なサービスを停止できるようになります。起動しているサービスが多いと、リソースの消費量が増えるなどの問題があるため、これを自由に操作できるのです。同じサーバーを利用する「他者」を考慮する必要がないため、必要ならば自由に設定変更できます。

加えて、管理者権限があることによって、新しいソフトウェアのインストールが可能です。一部を除いてVPSでは自由にソフトウェアを導入し、詳細に設定することもできます。プログラムを実行するための専用ソフトウェアなどを導入し、高度なアプリケーションを運用することも可能です。

コストパフォーマンスが良い

専用サーバーと比較すると、コストパフォーマンスの高さがメリットです。VPSは専用サーバーと基本的な機能がほぼ同じであるにも関わらず、半額以下の料金で利用できます。専用サーバーとVPSで悩んでいるならば、料金面で非常に大きな強みを持つのです。

もちろん、全く同じ機能ではないため、一概にVPSが優れているとは言い切れません。料金が高くとも、専用サーバーの方が優れている部分はあります。例えば、専用サーバーは物理的なサーバー丸ごとを専有できます。

とはいえ、特別なこだわりがないならば、VPSで十分であることが大半です。少ない投資で、大きな価値を生み出すサーバーと考えておきましょう。

スケーラビリティが高い

仮想化されたサーバーであるため、スケーラビリティの高さが魅力的です。例えば、ストレージ容量に不足がみられるならば、手続きすることで増やしてもらえます。物理的なサーバーでは、このようなストレージの増加は難しいでしょう。

また、必要に応じてスケールアップもできるケースが大半です。例えば、CPUの処理能力に問題があるならば、コア数の多いサーバーに切り替えることができます。また、メモリの多いサーバーに乗り換えることも可能です。物理的なサーバーでも同様の変更は可能ですが、手間がかかるため、VPSのメリットだと考えられます。

他にも、仮想化されていることから、簡単に台数の増減が可能です。物理的なサーバーを手配するとなると、時間とお金がかかりますが、VPSならば問題を一気に解決できます。

VPSを採用する3つのデメリット

VPSには解説したようなメリットがありますが、同時にデメリットもあります。続いては、VPSのデメリットにはどのようなものがあるのか理解していきましょう。

運用の難易度が高い

サーバーの運用難易度が高い点がデメリットです。専門的な知識が必要とされるため、それに対応できる人材の確保が求められます。どんなにVPSを活用しようと考えても、運用できる人がいなければどうにもなりません。

特に、VPSは自由度が高い反面、各種設定などを自分で検討する必要があります。正しく設定できなければ、サーバーが思うように動作しないこともあり、行き当たりばったりでは対応が難しいのです。自己責任での設定が基本であり、サポートなどに問い合わせても対応してもらえないケースが多いでしょう。

ただ、VPSの利用者が増加しているということもあり、サポートプランを提供するベンダーも見受けられます。このような仕組みのあるベンダーを選択すれば、より低いハードルでVPSを利用できるのです。

物理的な機器は選択できない

必要なOSは自分で用意できますが、物理的なインフラは選択できません。例えば、物理的なサーバーやネットワーク機器は、VPSを提供するベンダーが選定します。基本的には、どのような製品が利用されているかも開示されないでしょう。

そのため、特定の機器に依存するようなアプリケーションは、VPSでは起動できない可能性があります。例えば、サーバーに「A社のB製品が利用されていることが必須」などの条件があると、トラブルが起きるかもしれません。VPSではこのような制約に対応できないのです。

デメリットではあるものの、このような制約が発生するケースは少ないでしょう。多くの場合は物理的なインフラを気にせずに済むため、大きなデメリットにはならないと考えられます。

共用サーバーよりはコストが高い

サーバーをレンタルする方法として、共用サーバーもあります。1台のサーバーを複数の利用者が共用する仕組みです。物理的に同じものを共用するため、他の利用者の影響を受けやすいなどの特徴があります。

ただ、ベンダーのコストが少なく済むことから、共用サーバーの大半は低コストです。結果、VPSよりもさらに安価で利用できます。料金面だけで比較すると、デメリットといえるでしょう。

しかし、VPSと共用サーバーは、根本的に異なったサーバーの考え方です。比較するものではないため、一概に料金だけで評価しないようにしましょう。もし、共用サーバーで事足りる用件であれば、VPSを選択することはデメリットになってしまいます。

具体的なVPSの利用シーン


VPSは数多くの利用シーンがあり、利用者の要求に応えてくれるものです。具体的に、どのような利用が考えられるのか例を紹介します。

Webサイトのホスティング

Webサイトをホスティングするために、VPSを利用することが考えられます。VPSのように、インターネットに接続されているサーバーの代表的な使い方と表現しても良いでしょう。VPSに限らず、共用サーバーなどもWebサイトのホスティングに利用されることが多いと思われます。

ただ、一般的な共用サーバーとは異なり、VPSはOSなどを自由に設定したりアプリケーションをインストールしたりすることが可能です。そのため、Webサイトのホスティングにあたって「IIS」「Apach」「Nginx」などを自由に選択できます。特に「IIS」は共用サーバーでは対応していないことが多く、VPSを利用することで実現が可能です。

また、Webサイトにはデータベースが必要になることが多々あります。このデータベースも共用サーバーでは指定されていますが、VPSならば自由にインストールが可能です。Webサイトに適した製品をインストールできるため、どのようなWebサイトでもホスティングできるようになります。

開発・テスト環境の構築

外部に公開するサーバーではなく、内部で利用するためのサーバーとして利用することが可能です。例えば、システム開発の開発環境やテスト環境をVPSに構築できます。外部に公開しない仕組みにしておけば、セキュリティを高めながら開発を進められるでしょう。

現在はリモートワークなども多いため、社内に設置されている環境を利用しづらくなっています。事前に多くの設定を済ませて社内へアクセスすることになりかねません。しかし、VPSを利用すれば、簡単な設定とインターネットさえあれば、専用の環境にアクセスして開発が可能です。

また、開発に必要なアプリケーションを自由に導入できることがメリットだと考えられます。例えば、デバッグに必要なツールを導入し、開発を効率化できるのです。このような部分も、VPSを利用するメリットだと考えましょう。

データベースサーバーの構築

さまざまなアプリケーションから接続できる、データベースサーバーを構築することが可能です。セキュリティの高い環境を構築できるため、そこにデータを集約するのです。特定のアクセス元からの通信のみを許可することで、高いセキュリティを担保できます。

データベースは、どのような設定を施すかによってパフォーマンスが大きく変化するものです。そのため、VPSのように自由に設定できる環境でないと、思うようなデータベースを構築できません。OSから自由に操作できるVPSならば、安価に高いセキュリティを保てるのです。

常時起動のアプリケーションを配置

常に起動するアプリケーションを配置したい場合に、VPSが役立ちます。VPSで提供されるサーバーは、基本的に24時間動作しているため、停止などの心配が不要なのです。また、24時間稼働させることによる、電気代などを意識する必要もありません。

例えば、FXなどの自動取引は、絶え間なく為替の変動を監視することが求められます。つまり、24時間アプリケーションを起動しなければなりません。このような時に、VPSは利便性が高いのです。

同様に、ゲームのホストサーバーなど、24時間の起動が求められるものにVPSは適しています。自宅やオフィスでは電気代や通信費が気になるものは、VPSにすると良いでしょう。

まとめ

VPSの仕組みについて解説しました。仮想化したサーバーを貸し出してもらうサービスであり、共用サーバーよりも利便性が高いことが特徴です。専門的な操作もできるようになるため、自分たちが求めているサーバーを構築しやすくなるでしょう。

ただ、サーバーの専門性が高まるため、それに適したスキルがなければ運用できません。自己責任で管理しなければならない部分も増え、リスクが高まってしまいます。ここはデメリットといえるため、メリットとデメリットの両面から、VPSを利用すべきか評価することが大切です。

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admin