フリーランスは産休・育休を取得できる?実態や補助金制度を解説

フリーランスは産休・育休を取得できる?実態や補助金制度を解説

フリーランスで働くにあたり気にしてる人も多いのは、産休や育休の取得ができるかどうかです。近年は働き方改革が浸透し、産休や育休を取得できる会社が増えてきました。フリーランスも同じように働きたいと考えるのも不思議ではありません。

特に出産前や出産後は普段以上にお金や時間が必要となります。そのため何かしらの制度を利用して、負担を軽減したいと考えるはずです。今回はフリーランスが産休や育休を取得できるのかと、その実態と補助金制度について解説します。

フリーランスに産休・育休は無い

結論から述べるとフリーランスに産休や育休の制度はありません。働き方改革などによって産休や育休が世の中に普及しているものの、フリーランスには当てはまらないのです。まずはこの点についてご説明していきます。

産休や育休は労働者への制度

一般的に産休や育休は労働者への制度となっています。会社が従業員に対して提供している制度で、会社が独自に実施していたり、法律に基づいて提供されていたりします。つまり会社に属している労働者向けの制度なのです。

なお、労働者とは労働基準法第9条に基づくと「職業の種類を問わず事業又は事務所に使用される者で賃金を支払われる者」です。つまり、フリーランスのように基本的には特定の事務所に使用されていない働き方は、労働者として認められないのです。フリーランスも労働者と変わらない仕事内容であるケースは多いのですが、残念ながら法律上の解釈の違いから産休や育休が適用されなくなっています。

フリーランスは事業者で福利厚生が弱い

フリーランスはそもそも労働者ではなく事業者に分類されます。会社に雇われているわけではありませんので、個人事業主などと同様に自分自身が事業者なのです。会社員などとは大きく異なる立場です。

一般的に産休や育休などを含めた福利厚生は、フリーランスには存在していません。自分を雇ってくれる会社が提供してくれるサービスですので、自分自身が事業者になってしまうとほとんどサービスを受けられないのです。一部フリーランスでも受けられるものはありますが、ごく一部だと考えてよいでしょう。

今回は産休や育休について取り上げていますが、フリーランスは社会保険の面でも不利な部分があります。例えば会社員であれば社会保険料は会社と本人で折半です。しかしフリーランスの場合、社会保険料は全額自己負担です。雇われているか事業者であるかは、福利厚生の面で大きな違いを生み出します。

そもそもフリーランスは休みを取れるのか


ご説明したとおりフリーランスには産休や育休の制度はありません。そのため必要に迫られても、自分でどうにか対応するしかありません。

また、そもそも重要なのは「フリーランスは休みを取れるのか」との部分です。これについて調査した結果がありますので、それを踏まえて考察していきます。

やむを得ない休み以外は取得しない人が半数

出産や育児を経てフリーランスがどのように活躍しているかは、フリーランス協会が実施した「雇用関係によらない働き方と子育て研究会 研究アンケート調査2017年度版」にて公開されています。少々昔のデータではありますが、こちらのアンケートが公開されてるものでは最新ですので、こちらを踏まえて確認してみます。

アンケート結果を確認してみると、妊娠から出産、育児を経て仕事へ戻るタイミングは産後2ヶ月以内が59%です。また、産後1ヶ月以内が44%もありました。つまり非常に短期間で仕事に復帰しているのです。会社員であれば3ヶ月から6ヶ月程度は産休を取れる可能性があり、その差は大きなものです。

このような実態が示すのは、「フリーランスはやむを得ない休み以外は取得しない」ということです。病院などの環境や体調面、家族のサポートなどどうしても休まなければならない部分はありますが、それも最小限に抑えているということです。クライアントなどの理解を得て、仕事への影響が可能な限り出ないように休んでいると考えられます。

収入面の悪化を懸念するフリーランスが多い

フリーランスが可能な限り休みを取らない理由は、収入面の悪化を懸念するからです。こちらについても先ほどのアンケートで触れられていて、産休や育休の制度がないことから収入を担保するためやむを得ず仕事に復帰しています。

多くの場合フリーランスは1ヶ月単位などで案件の契約をします。つまり会社員のように休んでも収入を得られる仕組みがなく、休むとそのぶん収入が減ってしまうのです。産後でお金が必要な時期にも関わらず休むと収入が減りますので、案件を受注して働くしかないわけです。

また、純粋な収入だけではなく案件の継続性との関係もあります。フリーランスの案件は中長期的に続くものも多く、そこに穴を開けたくないと考える人が多いのです。穴を開けてしまうと別のフリーランスを採用されてしまい、自分の中長期的な収入を失ってしまうのです。

短期的には生活への影響を懸念して、産休のように長期間の休みを取らないフリーランスが多い状況です。また、中長期的には参画できる案件の消失を懸念して、可能な限り隙間を空けないように仕事に復帰している状況です。

フリーランスが利用できる出産や育児向け補助金制度


まずはフリーランスが出産や育児にあたり利用できる補助金制度についてご説明します。

妊婦健康診査に関する補助

地方自治体によって妊婦健康診査の補助制度が提供されています。妊娠中は何度も病院に通わなければなりませんので、この時に発生する出費を補填できるように設けられた制度です。

具体的な制度の内容は、居住する地方自治体によって異なります。そのため制度を利用する際には、地方自治体の公式サイトなどで制度の概要をよく確認しなければなりません。

また、制度を利用するために必要な手続きも異なっています。場合によっては手続きをしなければ助成を受けられない可能性があり、手続きを忘れてしまうと大きな損失を被ってしまう可能性があります。

なお、手続きの詳細は地方自治体によって異なりますが、一般的には母子手帳の交付と同時に補助券の受け取りができます。補助券の受け取りができていれば、該当する保健機関で検診を受けるだけですので、大きなミスを犯してしまうことはないでしょう。これに当てはまらないケースの場合は注意が必要です。

国民年金保険料の免除

フリーランスなど個人で事業を行っている人は、一定期間国民年金の保険料が免除される制度があります。出産前後の期間で支払い免除が受けられますので、出費を抑えるために手続きしておいた方が良いでしょう。

まず、対象となるのは国民年金の第1号被保険者です。また、出産日が2019年2月1日以降の人と定められています。国民年金第1号被保険者の方であれば、これからの出産については何ら気にする必要がないでしょう。

免除される期間は定められていて、「出産予定日または出産日が属する月の前月から4ヶ月間」です。出産した後だけではなく、前から出費が抑えられるように考えられています。

なお、免除期間は双子以上の場合に優遇措置があります。多胎妊娠に該当する場合、「出産予定日または出産日が属する月の3ヶ月前から6ヶ月間」に変更されるのです。多胎の場合はそれだけ出費が多くなると考えられますので、免除期間もそれを考慮して設定されています。

出産育児一時金

国民健康保険を含む社会保険加入者に対して、出産育児一時金が支給されます。出産時には高額な費用が発生することが多く、この費用に対する補助としての位置付けです。

出産育児一時金の支給の対象となるのは妊娠4ヶ月以上で出産をした場合です。被保険者でも被扶養者でも支給の対象となりますが、フリーランスの場合は被保険者であるケースが多いでしょう。扶養の範囲内でフリーランスとして活動している場合など、被扶養者であっても安心して支給を受けられます。

出産育児一時金の支給金額は基本的に定められていて、1児につき42万円です。どの社会保険に加入していても同じ金額ですので、その点はあまり意識する必要がありません。

なお、支給方法は直接支払制度と受取代理制度を選択できます。病院の窓口で手続きをしておくと、直接病院に対して費用の支払いをしておいてもらえますので、自分で役所などに出向いて手続きをする手間が削減できます。

子ども医療費助成制度

地方自治体によって子供の医療費を負担する制度が実施されています。子ども医療費助成制度は大きな怪我など高額な支払いが伴う通院ではなく、風邪など一般的な通院に対しても適用される制度です。

具体的に子ども医療費助成制度でどの程度の金額を負担してもらえるのかは、居住する地方自治体によって異なります。また、制度の適用となる年齢も地方自治体によって異なります。最近は0歳から18歳までが対象となるケースが増えてきました。

ただ、こちらの制度には所得制限が設けられている場合があります。そのため必ず全てのフリーランスが利用できるとは限らず、状況によっては利用できない可能性はあります。

ただ、出産前後で案件の獲得を見送ると、それだけ所得が下がってしまいます。短期的にみると収入が下がってしまいますが、結果として課税所得が下がり医療費助成制度の適用になる可能性もあります。全国で共通のルールではありませんので、居住する地方自治体がどのようなルールで制度を実施しているのかは事前に確認しておくべきです。

フリーランスが状況により適用される出産や育児向け補助金制度

一部のフリーランスに限っては状況によって利用できる制度があります。働き方によって利用できるかどうかが大きく変化しますので、これらについては上記とは別にまとめていきます。

社会保険に加入している場合の産休

フリーランスの中には会社員などとの兼業で活動している人がいるでしょう。また、フリーランスの収入だけでは生活が厳しいため、パートやアルバイトをしている人もいるかもしれません。そのような人は加入している社会保険の産休や育休制度が利用できるかもしれません。

ただ、このような社会保険の制度を利用する場合、当たり前ですがフリーランスとしての収入は保証の対象となりません。社会保険に加入している会社から支払われている金額が対象となります。例えば週に3回など短時間勤務をしている場合は、その金額をベースに産休や育休の保証金額が算出されるのです。

そのため、制度としては利用できる可能性があるものの、収入が大きく守られるとは限りません。フリーランスとしての収入が多くを占めていては、産休や育休が適用されても限界があるのです。 適用される状況であれば運が良いだけであり、過度な期待はしない方が良いでしょう。

夫の育休

厳密にはフリーランス自身の制度ではありませんが、女性がフリーランスの場合は夫の育休制度を活用できる可能性があります。夫が育休を取得すれば、そちらで育児休業給付金を受け取れるようになるのです。

もし、夫が育休を取得し、休みと収入を両立できるならば、育児については負担を軽減できるでしょう。精神的にも肉体的にも余裕ができやすくなります。これだけでも大きなメリットです。

また、夫に育休を取得してもらい支援を受けられるならば、自分自身はフリーランスとして働くことも可能です。産後すぐに働き出すのは肉体的に負担が大きいとは思われますが、状況に応じてそのような選択肢も取れるのです。

まとめ

基本的にフリーランスには産休や育休の制度がありません。そのため、出産や育児のために長期的に休んでしまうと、収入がそれだけ減少してしまいます。このような収入の減少を避けるために、最低限の休みしか取得しないフリーランスが多い状況です。

ただ、産休や育休の制度は存在しませんが、フリーランスでも利用できる制度は存在しています。そのような制度を積極的に活用し、金銭的な負担を軽減できるようにするべきです。

なお、制度を利用するにあたり、所定の給付要件が存在しているものがあります。全てのフリーランスが利用できないものや申請してから時間がかかるものもありますので、その点は注意するようにしておきましょう。

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